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夜空さくら
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軟体怪盗リィンツリーの受難 小箱圧縮拘束⑤

■ 現代の義賊・黒猫怪盗リィンツリー(本名:鈴木志保)は、とある資産家・渡部亜希子の罠に嵌って捕らわれの身となってしまう。渡部の目的は怪盗リィンツリーの全てを手に入れることだった。リィンツリーは怪盗としての意地をかけ、彼女と拘束からの脱出ゲームを行うことになる。しかし渡部の狂気すら宿る拘束度合いにリィンツリーは振り回される毎日を送っているのだった。

■ 今回あんまりエロくないです。今回で一端一区切りです! 変な奴に愛されるリィンツリーの受難はまだ続きます……ーw-ウム


■ この作品には拘束・軟体・調教などの描写が含まれます。苦手な人は回避をお願いします。

■ 続きは支援者様向けと、全体向けの交互に書いていく予定です。今回の作品は紛れもなくハッピーエンドになる予定ですので、ご安心いただける構成となっておりますーw-ペコリ

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 リィンツリーを包んでいたラバー状の蓋の圧縮が解除され、彼女の体は久方ぶりに完全に開放された。

 首輪によって体の自由は奪われているので、逃走することは出来ない。

 最も、仮に動かせたところで気力・体力を限界近くまで消費してしまっている今、まともに動くことは出来なかっただろう。

 大きな机の上に寝かされたリィンツリーの体は、汗や愛液、尿などによってかなり汚れていた。

 そんなリィンツリーの体を、渡部は濡れタオルを使って丁寧に拭いて綺麗にしていく。

「とりあえずざっと綺麗にしよう。本格的な処置は屋敷に戻ってからということで……」

 ふふふ、と渡部は不敵に笑う。

 リィンツリーは彼女がどんなことを考えているのか、わかるような気がして溜息を吐いた。

 また風呂場で彼女の気の済むまで弄ばれるのかと思えば、溜息の一つも出ようというものだ。

 渡部はご機嫌な様子でリィンツリーの手足を拭き、その色や艶、肌触りの最高さにうっとりとした目を向ける。

「ああ、ほんとうに君の体は最高に美しいな……細すぎることも太すぎることもない……まさに奇跡の塩梅だ……」

 指先の一つ一つまで綺麗に磨いた後、渡部はその指先に唇を触れさせた。

 まるでおとぎ話で王子が姫にやるような行為ではあったが、リィンツリーはドレス姿ではなく、生まれたままの姿である。

 渡部が女性ながらに凛々しく整った顔立ちをしているため、そこまで違和感はなかったが、リィンツリーにしてみればそんなことしていないでさっさと済ませて欲しいものだった。

「……このままこの暮らしを続けていたら、間違いなくそのバランスは失われますけどね」

 実際、彼女はここ一週間ほど、全く体を動かせていなかった。

 散々嬲られるときに筋肉が動きはするものの、基本的には寝たきりの生活に近い。

 必要最低限の栄養や水分を与えられているため、極端に痩せたり太ったりはしないものの、確実に筋肉と脂肪のバランスは変わっていっている。

 渡部のいう奇跡の塩梅も、いつ崩れるかわからないということだ。

 そのことを指摘された渡部は、そこが悩ましいところなんだよ、と唸る。

「君の奇跡の躰を維持するために、様々な方策は取っているが……どうしても賄い切れないところはある……かといって、少しでも君に自由を許せば、あっという間に逃げられてしまいそうでね……」

 渡部は反則レベルの手段を駆使して、リィンツリーを捕まえることに成功している。

 多少でもその手を緩めれば、リィンツリーという怪盗は彼女の元からあっさり逃げおおせて見せるだろう。

「……それこそ、貴女お得意の財力を用いて、脱出不能なトレーニングルームでも作ればいいのでは?」

「私が君を侮ると思うのかい? 君に少しでも自由を許せば、君は逃げおおせて見せるだろう。脱出不可能な空間など、それこそいままで君を閉じ込めて来たような箱や装置くらいだ」

「……慎重ですね」

「慎重にもなるさ。いまの私は、たまたま煙が掴めているような状態なのだと、自覚しているからな」

 少しでも手を緩めれば、あっさり煙は彼女の手からすり抜けてしまうことだろう。

「だが逃がさないことに拘って、それそのものの価値を落とすなどそれ以上にあってはならないしな……困ったものだ」

 渡部は溜息を吐きながら、リィンツリーの体を隅々まで磨き上げる。

 そしてその体に、普通の服を着せ始めた。

「……? また箱に詰めるんじゃないんですか?」

「今日はさすがに少しやり過ぎたからな……これ以上の無理はするなと、君の主治医からドクターストップがかかってるんだよ」

「初耳なんですが。勝手に私に主治医をつけないでください」

「健康を維持するためには、定期的な検診は大事なことだぞ?」

「そういうことを言っているんじゃなくてですね……いえ、まあいいです」

「いままではどうしてたんだ? 主治医曰く、君の体は類まれなほど健康体だったそうだ。とてもまともに健康診断や問診を受けていないとは思えないそうだが」

「得意な方ではありませんが、変装は怪盗の嗜みですからね」

 別人に成り済ますなどして自身と関係のない存在として受けることは可能なのである。

「主治医が褒めていたよ。虫歯ひとつなくてかえってどこか悪いところを見落としているんじゃないかと不安になったと」

「身嗜みを整えるのも、怪盗の嗜みですから……って、ちょっと待ってください」

 リィンツリーはそう話を変える。

「なんですかこの服は……」

 渡部がリィンツリーに着せた服は、普段体にぴったり張り付くラバースーツを着ている彼女からは全く縁遠い、フリルのたくさんついたゴスロリ系の服だったのだ。

 リィンツリーの人並以上に整った容姿も相成って、よくできた人形のように見える。

「うん! やはりこういう服も君には似合うな! 普段とは比べるべくもないが、オッドアイが映える!」

「…………そうですか」

 リィンツリーを椅子に座らせ、パシャパシャと撮影しまくる渡部。

 ツッコミを入れる気力もなかったリィンツリーは彼女の気が済むようにさせるのだった。

「フゥ……いいコレクションが増えた……♡ これまでの分も当然写真に収めてあるから、またスライドにして見せてあげるよ♡」

「結構です」

 ざっくり切り捨てるリィンツリーを、渡部は笑いながら抱き上げる。

 リィンツリーが小柄かつ軽いため、渡部の腕力でも抱き上げることは可能だった。

「よし、それではうちに帰るとしようか!」

「私にとってはあの場所にまた戻る、ですけどね」

「志保くんはつれないなぁ! だがそこがいい!」

「はぁ……」

 全く動じた様子のない渡部に何度目かわからない溜息を吐きながら、リィンツリーは抱き締められる感触を密かに感じていた。

(こんな風に人に抱き締められることは、あまりありませんでしたね……だからといって、彼女に絆されたりはしませんが……)

 純粋に心地よい感触であることは事実なのであった。

 そんな風にリィンツリーが考えているとは露知らず、渡部は嬉々として彼女を抱えたまま店から出て――そこを、呼び止められた。

「失礼。渡部亜希子さんですな?」

 渡部が店にいるのを聞きつけ、出て来るのを待ち構えていたらしい。

 渡部の執事が警戒して間に入る。

「何のおつもりですか?」

「少し渡部さんに話を聞かせていただきたいだけですよ――リィンツリーのことについて」

 そう言いながら警察手帳を示すその男――リィンツリーを追う警察官の男はギラリとその目を光らせた。

 渡部は抱えているリィンツリーを、改めて抱き締めながら、その男に対応する。

「おや……誰かと思えば、柴田竜一警部補ではありませんか。その節はどうも。まんまとリィンツリーを取り逃がした釈明でもしに来たんですか?」

「む……確かにあの日は不覚を取りましたが……次こそリィンツリーを捕まえてみせますよ」

 彼はリィンツリーを追っている警察官だ。

 怪盗という現代社会には馴染まない珍妙な存在に対し、日本の警察はどう対応すればいいのか、迷っているところがある。

 彼はその中でいち早くリィンツリーの特異性に気付き、管轄を越えてリィンツリーを追うことが出来るようにしていた。

 結果、リィンツリーとは頻繁に顔を合わせ、そしていつも出し抜かれるのが恒例となっていた。

 なお人々の間では『某刑事の成り損ね』、『某刑事の部下レベル』などと痛烈に揶揄されていたりするが、彼は至って真剣にリィンツリーを捕まえようとしていた。

 つまり当然、リィンツリーが渡部邸に忍び込んだ時も、警備に当たっていたのである。

 渡部はそのやたら熱血な警部補をあまり好んでいなかった。

 リィンツリーを捕まえるなどという妄言を口にしていることもあるが、何よりリィンツリーに対する執着に自分と似たものを感じたのだ。

 言ってしまえば、同族嫌悪である。同担拒否ともいえるかもしれない。

 バチバチと視線で火花を散らす二人の間で、じっとし続けるリィンツリーは冷や汗を流していた。

(この警部補……無駄に鼻が利くんですよね……バレることはないと思いたい、ですけど……)

「あの日のことで少し確認したいことがありましてね……」

「そういう話であれば、会社を通していただけますか? いま私はプライベートで遊びに来てたんですよ」

「ほう? リィンツリーのファンが集うというこのバーに? 盗みに入られたというのに、ファンになってしまわれたのですか?」

「あの完璧な警備網を突破し、盗んでいったのですよ? 怒りよりも称賛の気持ちが勝っても何らおかしなことはないでしょう」

「なるほど、確かにそうですな……しかし、とある筋からお聞きした話だと、盗みに入られる前から、リィンツリーを独自に調査していたという話がありますが……」

「結果的に盗まれてしまったとはいえ、盗みに入られる可能性を考えずにはいられませんでしたからね。事前に対策を練るのは当然でしょう?」

 渡部は柴田の探りを上手くかわし続ける。

 じりじりとした攻防に、間で聞いているリィンツリーの方がハラハラしていた。

 リィンツリーはこういった人対人のやりとりに接する機会がなかったため、どう話が転んでいくのかわからず、ドキドキしてしまう。

 そんな二人のやりとりは暫く続き、聞きたいことを聞いてメモを取っていた柴田が手帳を閉じる。

「……わかりました。もしまたリィンツリーから予告が来たなら、すぐにご連絡下さい。次こそ捕まえて見せましょう」

「その時は頼らせていただきますよ」

 ようやく話が終わる気配を感じ、身じろぎ一つしていないリィンツリーはほっと内心胸を撫で下ろした。

「ところで……そちらの方は、どうかされたのですか?」

 いきなり自分に水を向けられ、リィンツリーは心臓の鼓動が早くなるのを感じる。

「ああ、この子はドールですよ。ドール、わかりますか?」

「……ドール? 人形、ということですか?」

「ええ、ほら。この通り」

 堂々とした様子で、渡部はリィンツリーの体を片手で抱き直し、その顔を柴田の方へと向けさせる。

(ちょっ!?)

 なんとなく嫌な予感がしていたので、辛うじて人形のフリをするのが間に合った。

 焦点をあえてぼかし、瞬き一つせずに人形に擬態する。

 リアルな人形――というか人間なのだから当たり前だが――を目の当たりにした柴田は、ぎょっと目を剥いた。

「り、リィンツリー!? ……の、人形……え、等身大……?」

「可愛いでしょう? ファンになってから、彼女に愛おしさを感じてしまいましてね……こんなそっくりな人形を作る程度には……」

 ふふふ、ふふふ、と渡部は割と素で笑いながらリィンツリーを抱きしめる。

 リィンツリーにしてみても溜まったものではない愛情の向けられ方だが、目の前のリィンツリーが人形だと思っている柴田からすれば、言葉に出来ない異様な光景である。

 本気でドン引きした様子で挙動不審に陥る。

「え、あ、まあ……その……うん、あっと……ご、ご協力に感謝します! 本官はこれで失礼いたします!」

 そこに触れるのがやばいと感じたのか、柴田はそそくさと逃げ出していく。

 あまりの逃げっぷりに、渡部は少し呆然としていた。

「あんなにしつこかったのに……なぜ、彼は急に逃げ出したんだ?」

 柴田を誤魔化すためでなく、彼女の素での行動だったと知ったリィンツリーと執事は、何も言えなかった。

 特に執事は頭痛を堪えるかのように片手で頭を抑えている。

「……とりあえず、車に乗りましょ?」

 リィンツリーはそう促すことしか出来なかった。

 なぜドン引きされたのかわからない様子だった渡部は、そんなリィンツリーの言葉に大人しく従い、車に乗り込む。

「……やはり納得がいかない……あの警部補、裏から手を回して二度と君を追えないようにしてやろうか」

 リィンツリーは何とも言えずに、それこそ本当の人形の如く、黙って渡部に撫でられるのだった。



 リィンツリーを追う警察官・柴田竜一は、急ぎ足で夜の街を歩いていた。

 かなり急いで足を進めた後、立ち止まって息を整える。

 最後に思いがけない衝撃を与えられてしまい、動揺していたが今は少し落ち着いていた。

「ふぅ……やはり、渡部は何か隠しているな……リィンツリーが最近活動していないことと、無関係ではなさそうだ」

 彼はリィンツリーを捕まえるという使命に、心を燃やしていた。

「絶対に、俺がお前を捕まえてやるからな……! 首を洗って待っていろよ、リィンツリー!」

 そう考えた彼は、先ほど渡部が抱えていたゴスロリ服を着たリィンツリーの人形――実際は本人――のことを思い出してしまい、その顔を赤くした。

「ぐぬぅ……! 俺としたことが……! 人形とはいえ、犯罪者を可愛いなどと思ってしまうとは……! 未熟だぞ! しっかりしろ!」

 ぶつぶつと呟きながら顔を平手で叩いて、自身の心を戒める彼。

 割と彼もリィンツリーに対し、捩らせた感情を抱いているのである。


 リィンツリーの受難は、まだまだ続く。



おわり

Comments

これまで私が書いて来た資産家系キャラの中でも、頭のおかしさが頭一つ抜けてますからね^w^; 人外万能系キャラの方が人格的にはまだマシに見えて来る不思議(笑) リィンツリーはいつでも脱走の隙を伺っているので、渡部も実は気が気でなかったりしてます。 実際、脱出不可能のはずの場所から脱出は怪盗の十八番なので、その警戒も間違いではないのですが……ーw-;

夜空さくら

なんていうか渡部さんは気遣いの方向がどこか常人とは違いますな~ 主治医に止められているので健康上の理由で無茶はしませんが絶対に逃がさないから体は動かせないままという矛盾。まぁそれもリィンツリーがあまりにも優秀だからこその警戒とも言えますが。 そして執着心も常人のそれとは明らかに違いますね~ 柴田竜一警部補相手に嫌悪と嫉妬心を抱いたり、リィンツリーを宝物のように見せつけたりと… うん、やっぱり頭おかしいですわこの人w ある意味当たり前なんだけど、それが度を超えると道徳って何だろうに行きついてしまう。 渡部さんはそんな度合いが常人のラインを簡単に踏み越えるというか躊躇しないんでしょうね。 お金持ちだし、人脈もあるから余計に。 リィンツリーは引き続き苦労しそうですが、完全に動けないくらい筋肉が衰える前に是非脱走して欲しいですね~

ミズチェチェ

ここまでお付き合いくださり誠にありがとうございます!^w^ 渡部は痛い目をみればいい、ですと? ……正直私もそう思いますーw-ウム またしばらくしたら続きを書きたいと思っています。ご期待くださいーw-ペコリ

夜空さくら

面白かったです。 ただ、渡部はどこかで痛い目を見てもいいのでは?なんて思ってしまいますw 今回で一区切りとのことですが、次回も期待しています。


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