下着を破られないために、胸をリルドの手に押し付けるという選択をしたシェラ姫。
それはいじらしくも、いずれは無為に帰す抵抗なのだが、彼女にはそれはわからない。
いまは必死に、彼女自身にとっては死にたくなるくらいの羞恥に耐え、自らリルドの手に胸を押し付けていた。
そう考えるように誘導し、まんまと目論見を成功させたリルドだったが、シェラ姫の乳房の感触は彼の想像を超えていた。
思考が、一瞬停止してしまったほどに。
(や、やわらかい……!)
シェラ姫の身に付けている下着は最上級の代物だ。
乳房の形を綺麗に見せるための強度は十分に発揮しつつも、リルドの指を柔らかく沈み込ませるほどの柔らかさも備えている。
その予想外の気持ちよさに、リルドの意識は完全に持って行かれてしまった。見た印象から、シェラ姫の乳房が極めて優れた感触を持っているであろうことはわかっていたが、その予想を遙かに超えてきた。
様々な女性の調教を行ってきているリルドは、女性の身体の扱いには当然慣れている。触れたことがない場所などない。膣内から直腸に至るまで、全てを把握している。
そんな彼をして、それは初めての感覚だった。
シェラ姫以上の巨乳の乳房を、直接揉んだこともあるリルドだが、それと比べてもシェラ姫の胸の感触はあまりにも気持ちがよかった。
思わず、リルドの手に力が入り、シェラ姫の乳房を歪めさせる。綺麗なお椀状の乳房が、リルドの指の形に変形した。指先から伝わった極上の感触に、リルドの脳が痺れる。
(ああ……やばいなこれ。いままでの女は、生活に困窮している奴が多かったからなぁ)
いまはインディーのペットになっている没落したばかりの貴族などがむしろ例外で、リルドが商品として扱う奴隷の女性の大半は、生活に困っていた者が多い。
口減らしのためや村から町に出た結果、奴隷身分へと堕とされてしまった者ばかりだ。
当然栄養状態は良くない者が多く、シェラ姫ほどの余裕はない者が大半だった。シェラ姫は王族としては細身で痩せている方だが、一般市民と比べられるものではない。
(シェラ姫は王族の中では質素な生活をしていたらしいけど……それでも、一般庶民に比べればよっぽど余裕のある暮らしだったんだもんな。容姿整えるのが一種の仕事みたいなところもあるし)
そんな極上の女体を好きに出来る立場に、いまのリルドはいる。
背徳的な興奮に支配されかけたが、リルドは冷静になろうと努めた。
(絶妙なバランスの調教をしなくちゃいけないんだ……冷静さは保たないとな)
リルドが目の前のシェラ姫に意識を戻すと、シェラ姫は羞恥のあまりか、ぶるぶると身体を震わせていた。
いますぐにでもリルドの指から逃れたいようだが、離れようとすれば今度こそ下着を剥ぎ取られるとわかっているので、そうできないのだ。
(さて……普通なら、ここから丹念に胸を揉んで、薬を使ってでも身体に快感を覚え込ませるところだが……)
ある程度は快感に慣れさせる必要はある。
最終的な、理想の完成形についてはリルドの頭の中にすでにできあがっていたが、それに至るまでの過程はかなり慎重に行動しなければならない。
やりすぎてもいけないし、甘すぎてもいけない。時間をかけすぎてもいけない。
(だがやるしかない……シェラ姫を死なせないためにも!)
リルドは新たに決意を固め、シェラ姫の胸に触れている手に力が籠もった。
両手を天井から吊され、下着姿に剥かれ、両足は肩幅に開いた状態で床に繋がれ、目隠しと口枷を施されたシェラ姫。
胸を揉まれ、その身体がびくりと震えたが、身体を引いて逃がすことはしなかった。下着が破れない方を選んだのだから、胸を揉まれることは我慢するつもりなのだろう。
そんなシェラ姫の葛藤を、文字通り手中に収めるように把握しつつ、リルドはもう片方の手も使って、シェラ姫の両の乳房を掴んだ。
「ンッ、ウゥーッ!」
口枷越しにシェラ姫が悲鳴を上げる。羞恥にその頬が赤くなっていた。
十八年間、恐らくはほとんど誰にも触れさせたことのない胸を、明らかにそういう目的で触られて、恥ずかしがらない道理はない。
例え囚われの身で、相手がそういうことを平気でする奴隷商人だとしても、彼女の女性としての羞恥心が遺憾なく発揮されていた。
そんなシェラ姫の初心な反応を内心楽しみつつ、表面上は平静を装い、リルドはゆっくりと彼女の胸の感触を確かめるように手を動かす。
「うむ……いい張りと弾力だ。これなら、きっと買い手にも気に入ってもらえるだろう」
当然、リルドは誰かにシェラ姫を買わせる気など欠片もないのだが、奴隷商人を名乗っている以上、自分はこれから誰かに売られるのだと思わせておかなければならない。
(場合によっては、俺以外の奴に運んでもらうこともあり得るからな……誰に対しても奴隷としての振る舞いを心がけてもらわないと)
一時的な扱いだとしても、肝心の国境を越える際に不自然な振る舞いをされては、最悪シェラ姫であるということがわかってしまう。リルドの思い描いている完成形では、見た目からしてほとんど疑われることはないはずだが、それでもより確実を期す必要がある。
そんなことを考えながら、シェラ姫の乳房を下着越しに丹念に刺激し続けていた。
柔らかく、あくまで優しく、乳房を揉んでいく。
彼女は逃げたくなっているであろう身体を必死にその場に抑え付けていた。若干戸惑っている気配がしているのは、もっと乱暴に扱われると考えていたためだろう。
(実際のところ、奴隷商人が奴隷をそこまで乱暴に扱うことはないんだけどなぁ。やっぱりそういう認識だったっぽいな)
奴隷商人にとって奴隷はそのものずばり商品だ。
一般人がイメージする鞭打ちや殴る蹴るの暴行など、滅多にするものではない。たまにはするが、理由あっての行為であり、普通はそういう調教の仕方はしないのだ。するにしたところで、再起不能にしては意味がないので絶妙な加減が必要なのである。
そうしている内に、リルドの掌の中心に少し硬い感触が生じ始めた。
(よし、乳首が立ってきたな。まあ、健康な体なら当然な反応だ)
羞恥心をどう煽るか、リルドは慎重に考える。
親指の腹でその突起物を軽く擦った。下着越しとはいえ、強い刺激に思わずシェラ姫の肩が跳ね、上半身を引きかけて――下着が引っ張られ、慌てて体を元に戻す。
「いい反の――とっ!」
煽ろうとしたリルドだったが、シェラ姫が体を戻した際、勢い余って強くリルドの手に胸を押し付ける形になって、その乳房の圧に押されそうになった。
(うわっ、すごい弾力っ……っとと!)
リルドの掌でシェラ姫の豊満な乳房がぐにゃりと歪む。思わずリルドは手を引きかけて、危うく意図しないところでシェラ姫の下着を剥ぎ取るところだった。
余裕を装いつつ、リルドは動揺を押し隠して言葉を続ける。
「い、いい反応じゃないか。全く感じない体質の女も稀にいるが、そういう奴はなかなか難しいからな……性奴隷として、健康な体は誇るべきことだぞ」
王族であろうと女は女。まずはそれをじっくりと理解させる。
シェラ姫は王族のため、性知識がそう多い方ではないはずだった。無論、嫁ぐためにそういったことを勉強することもあるだろうが、シェラ姫の場合、年頃になる頃に両親の不仲が始まり、それどころではなかっただろう。
(最初から急ぎすぎると、シェラ姫本人の性認識を歪めてしまいそうだからな……身体的に弄られれば感じるのは自然なことだ。特別自分が淫乱なわけではないということは知っておいてもらわなければ)
極端に振り切ることができないというのは、なかなかに大変な方針だった。
いまのところ、シェラ姫はリルドの目論見通り、性的快感を得るところまでは達していないようだった。初めて覚えさせられる性感帯の感覚に戸惑っているというところか。
リルドはそれから少しだけシェラ姫の乳房を揉み、刺激を与えてから次の段階に進むことにした。
「ふむ。とりあえずはこれくらいでいいか。さて、次は……」
ある意味とても重要な箇所に手を伸ばす。シェラ姫はどこに触れられるのか悟ったのか、慌てて逃げようとしたが、すぐに彼女を縛る鎖が鳴って、逃げられなくなった。
「まあ、そう怯えるな。そう簡単に初物は散らさない。そう簡単には……な」
まだ挿入などをする気はなかった。それは一番効果的なタイミングでするべきだとわかっているからだ。
いまはただ、彼女の下半身を覆う下着の上から、指を当てるだけだ。
「ンアッ、ウアァッ」
男の指がそこに触れているということ自体に、彼女の忌避感が耐えられないのだろう。呻き声を上げ、少しでも指から逃げようと限界まで腰を引いている。
その滑稽な姿こそが、リルドの嗜虐心を刺激するということは、シェラ姫にはわからないようだ。
「ク、ククッ。姫様、可愛らしいお尻をそんなに突き出して。それではまるで、逆に誘っているようですよ?」
揶揄する目的でわざとらしく声をかける。シェラ姫の耳の先まで赤くなって、彼女は羞恥に悶えた。
そんな彼女を観察しつつ、リルドは指先でシェラ姫の股間の状態を感じ取る。
(ふむ……やはり全く濡れてないし、感じてもいないな。そりゃそうか……)
倒錯的な性癖の持ち主であれば、こうして縛り付けられ、自由を奪われ、羞恥心を煽られ、胸を刺激され――ということをされれば、そこに反応があるはずだった。
実際、希有な例ではあるが、奴隷として買って、調教を始めた直後から、いきなりそこを濡らしていた者もいなかったわけではない。
(あれには本当に驚いたな……薬も何も使わないのに、縛って吊しただけで感じるとか……いまのちょっと生意気なインディーからは想像できない)
いまでこそリルドの片腕として、業務の代理までこなすインディーだが、元は奴隷として購入した者だった。奴隷調教を初めてすぐ、明らかにそういった扱いをされて興奮しているのがわかって、少し特殊な扱いになったのだ。
インディーとの出会いを思い出しつつ、リルドはシェラ姫の状態をしっかり確認した。
(もしシェラ姫が被虐性質の持ち主だったら、それはそれで気が楽だったんだが……流石にそう都合良くはいかないよな)
シェラ姫が元からそういった素養を持っていたとしたら。
話はずいぶん容易いことになっていただろう。
リルドとしては国外への脱出のために彼女の性格や性癖を歪めてしまった場合、生きてこの国を脱した後も歪んだ性癖のまま生きることが忍びない、と感じているからこそ、なるべく一時的な状態で済ませようとしているという事情がある。
それがもし彼女自身に元から、性奴隷として、あるいは肉便器として扱われることを受け入れる素養があったとすれば、リルドはいままで培ってきた調教方法を躊躇なくシェラ姫に用いることが出来る。
そうすれば短時間で身も心も肉便器に堕とすことは容易だっただろう。
だが、彼も予想していた通り、シェラ姫の性癖や性質は極普通のものだった。そう都合良く姫がマゾヒズムであるということはないとわかっていたが、改めて困難なことをしようとしていることを、突きつけられた形だ。
(だが、それならそれでやりようはある。俺は自分が信じる通りにやればいい……)
シェラ姫の状態を確認したリルドは、姫の股間に触れていた指先を離した。ひとまずその秘めたる最後の砦からリルドの手が離れたことに、シェラ姫が安堵するのが彼にも伝わった。
しかし、直後、シェラ姫の体が不自然に震えた。
脚に繋がれた鎖を鳴らして、膝と膝をくっつけようとしているのがわかった。鎖の長さ的に実際にそうすることは出来ないが、姫がどうしたいかは動きを見ればわかった。
(ん? これは、もしかして……?)
ぴくぴく、と内ももに力が入っているのがわかる。目隠しがあるために一部は隠されているが、その額に皺が寄るのを見て、リルドの予想は核心に変わった。
「催してるな、シェラ姫」
その端的な指摘に、びくん、と彼女の体が震えた。
「ウゥゥ……ッ」
顔を逸らして羞恥に呻き声を上げる彼女は、小動物が怯えているようでもあり、リルドの心の琴線を震わせる。
地下室は肌寒い。凍えるほどの寒さではないにせよ、下着姿で何時間も放置されれば、催すのは当然のことだ。
胸を揉まれる羞恥に忘れていたところ、リルドが股間に触れたことで、思い出してしまったのだろう。
ある意味予定通りの流れに、リルドの顔が微笑みに歪む。
生理現象であるがゆえに、それは避けられないことで、それをいかに活かして調教の度合いを進めるか。
リルドの腕の見せ所だった。
つづく