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夜空さくら
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状態変化なふたり ~液体ゴム抱き枕・ありさ視点~


 ことねは、呪われている私を受け容れてくれている、得がたい私の同居人だった。

 私にかけられている呪いは、自分の身体を自由にゴムに変化させることが出来る、というものだ。

 本当は体がゴムになる段階で自我も溶け、消えてなくなってしまうらしいのだけど、元々楽観的な私はそんな人智を超えた状態にも順応出来てしまった。

 いまではそのゴム化能力を、本来の呪いによって生じる現象よりも遙かに使いこなし、気ままに生きている。

 ことねという理解者も得ている私に怖い物なんて、何もない――というのは半分本当で、半分は嘘。

 実は、この体質にはひとつ大きな問題があった。普通は体がゴム化すること自体が大きな問題なのかもしれないけど、私にとっての大きな問題は別にある。

 ことねには「この呪いには狭かったり小さかったりする場所に入り込みたくなる」衝動が生まれて困る、と説明しているけど、実のところそれは楽しいことでもあるので私としてはあまり困ってはいない。

 私が困っている問題とは、この呪いには『誰かに移したくなる』衝動も生じさせるということだった。

 私と同じような体質にするだけなら、その衝動に困ることはないのだけど、本来私が受けている呪いというのは、自我が消えてしまう類いのものだ。

 ことねが順応できずに、溶けて消えてしまったとしたら、私は自分が許せなくなる。だからこの衝動は極力押し殺して過ごしていた。

 だけど、誰かをゴムに変えてしまいたいという衝動は日に日に強くなっていた。自分に関することは順応出来たけど、人に関することまではどうしようもできない。

 時々ことねの体を、形を変えない程度に呪いを移すことで、多少の発散は出来ていたけど、完全にゴムに変えてしまわない程度の移し方では、我慢出来なくなって来ていた。

 そこで私は、あることを思いつき、それを実行してみることにしたのだ。



 そしていま。

 私の前には、液体ゴム化したことねが、全身を隙間なく覆うラバースーツの中に詰まっていた。

 分厚いラバースーツを見繕ってきたから、まだ人の形を保っているけど、実はその中身はドロドロの液体ゴムになっている。

 私にはそのことが見えなくても感じられた。

「ふふ、ふふふ……!」

 いままでの人生の中で、経験した覚えのない充足感が、体の底から沸き上がってくる。

 呪いによる衝動を正しい方法で満足させたからだろうか。

 ことねが呪いのことを初めて伝えた時に、すぐに受け容れてくれた時のような、これ以上はないという多幸感を覚えていた。

(このまま溶け合えたら……もっと気持ちいいのかもね)

 呪いが本当に目指しているのはそれなのかもしれない。

 けれど、私はそうならないように、あえて自分の身体とは別のラバーでことねの体を覆っていた。

 ラバー越しに液体ゴム化していることねを感じるだけでも、相当な快感を得られているのに、直接私が彼女を包んでいたら、どうなっていたことか。

 普通なら衝動を抑える自信があったけど、その状況でことねを自分に取り込まなかった自信はさすがにない。

(いまはこれでいい……)

 私はことねの体から手を離さないようにしつつ、ことねと一緒にベッドに潜り込んだ。

 のっぺりとしたラバースーツの人形に腕を絡め、脚を絡め、ことねに言ったように、抱き枕として扱った。

 ラバースーツの中で、液体ゴム化したことねの体が対流しているのがわかる。その動きは私にとっては心臓の鼓動みたいなものだった。

 全身でことねが生きている実感を覚える。

(ああ……気持ちいい……)

 私はことねの首に回した腕に力を込めてみた。ことねの体はぐにゃりと折れ曲がり、動けないながら、ぴくぴくと痙攣するのが伝わってきた。

 単なる反射的な動きだろうけど、もっと経験を詰めばことねもこの状態で動けるようになるかもしれない。

(私と違って、外側の輪郭の維持に意識を割かなくていいんだから……出来るようになるかもしれないよね)

 少しずつ慣らしていけば、いつか私と同じ体質になって、私と混ざり合っても自我が消失しない程度に自我を保てるようになるかもしれない。

 そんなことが出来るようになった時のことを考えると、幸せな気持ちになる。

 そのためにも、いまはことねをひたすらに気持ちよくさせてあげる必要があるだろう。

(全身が液体ゴム化して、すべての感覚が混ざり合ってるはず……なら……)

 乳房や秘部などの性感帯を狙って刺激する必要はない。

 私は自分の身体を液体ゴム化させ、ラバースーツに包まれたことねを、さらに上から包み込んだ。

 ラバースーツという皮を一枚隔てたところで、液体ゴム化したことねの体が流れているのがわかる。

 その流れを促すように、うねりを加えながらことねの体表面を撫で擦って動く。

 体が溶けて混ざり合った時、全身が性感帯になっている。それは乳房とか乳首とか大陰唇とか、体表面だけの感覚じゃない。

 膣道が、もっというなら、子宮口の感覚やGスポット並みの性感帯が全身に広がっているのと同じなのだ。

 頭を撫でるというのはGスポットを撫でるのと変わらず、指先に体を絡めればそれは子宮に絡みつくのと変わらない。

 普通なら絶対に経験することのできない、性感帯への強い刺激。

 それを彼女は味わっている。

(声や考えが聞こえないのが残念だなぁ……)

 もっとも、もし聞こえたとしても、凄まじい悲鳴というか、喘ぎ声を上げることしかできずに、言葉になっていないと想うけど。

 私は体の一部を細い棒状のゴムにして、ことねのおへそ辺りに押しつける。一点に力が集中した結果、その部分のラバースーツが凹んでおへその穴が、本当の穴へと変わる。

 全身が溶けていることねには、膣道に入れられた感覚でもあり、肛門に入れられた感覚でもあり、口に入れられた感覚でもあり、耳や鼻、穴という穴に入れられたに等しい感覚になっていることだろう。

 本来何かが入ってくるところではない、乳首や目に棒が入れられた感覚でもあるかもしれない。

 もしかしたら、掌や踵に棒が通る感覚でもあったかもしれない。

 とにかくことねは棒を体に入れられた、という感覚を全身で覚えているはずだった。

 実際にはおへその穴しか刺激していないのに、そんな感覚になるのは、液体ゴム化している時の特徴だ。

(私なら、任意の場所の感覚に絞ったりも出来るけど、ことねにはまだ無理だよねぇ)

 かつて私は、ジャムの瓶の中に液体ゴム化して詰められてみたことがある。

 その時、蓋を閉めてもらうついでに、蓋の裏に取りつけたバイブを体に入れてもらったけど、私はそのバイブを受け容れるとき、挿し込まれる場所に女性器だけを再現していた。

 それによって全身が膣になったような感覚を味わうことが出来たものだ。

 いまのことねとどっちが気持ちいいのかは正直わからない。

 全身から強烈な快感が生じるというのは変わらないはずだから、どっちも同じくらい気持ちいいのかもしれない。

(今後、あえて完全な液体状になって、ことねにやってみてもらおうかな……)

 ラバースーツを破らないように注意しながら、しばらくことねのおへその穴を弄る。ことねの全身の痙攣が激しくなっていた。

『うふふ……気持ちいい? ことね』

 答えは返ってこない。

 私は棒状に固めた部分を元に戻して、ことねの体が元通りの形を取り戻すように穴を作っていた部分を外から揉んであげた。ラバースーツは元の形に戻り、ことねは再び私の抱き枕になる。

『さて……そろそろ寝ようかな』

 私は液体ゴム化した体をことねの体に纏わり付かせつつ、掛け布団を被った。

 傍目から見るとベッドに寝かされた、顔までのっぺりしているラバースーツを着た人型に、ドロドロとした黒い液体が纏わり付いている、というカオスな光景だろう。

 私は液体ゴム化してラバースーツの中に詰まっていることねを、液体ゴム化した自分の身体で抱き締めながら弄びつつ、眠りにつく。

 少しうとうとし始めたところで、意図せずラバースーツを取り込みそうになった。

『お、っと! あぶないあぶない……』

 慌てて意識を覚醒させる私。

 寝ぼけてことねと混ざってしまうところだった。

『うーん、やっぱり液体ゴム状態で寝るのは危ないか……』

 少し残念に思いつつ、私は自分の身体を普通の状態に戻す。

 そうすると、素肌とラバースーツとが擦れ合って、これはこれで奇妙な快感を生む。

「ん……っ、密着度でいえば、さっきまでのが強かったんだけどなぁ」

 液体ゴム状態でラバーに触れるのと、人間としての素肌でラバーに触れるのでは、受ける感覚が全く違うのだ。

 素肌でラバーの感触を味わうのも、同系統のゴムとしてその感触を味わうのも、どっちも気持ちいいといえば気持ちいいのだけれど。

 人間の体は触れられる表面積が限られているから、どうしても単純な気持ちよさは一歩劣る。

(んー……でもこれはこれで)

 私はベッドの中でラバースーツ人形になったことねの体に、素っ裸の体を絡めながらそう想った。

 おまたを擦りつけるようにして、ことねの体の感触を感じる。

 ことねのラバースーツ人形の中身は液体ゴムで常に対流している。その上、人間の体が変質したものなのだから当たり前なのだけど、人肌程度に暖かい。

 密着していると湯たんぽのような暖かさを感じ、とても気持ち良かった。

(ううん……良い感じにまどろんできた……)

 人の形を保っている限り、寝ぼけても呪いの力を発揮することはない。

 私は安心して、微睡んできた意識を手放した。

 液体ゴムとなったことねは相変わらず、小さく痙攣し続けていて、液体ゴム化したことで気持ちよくなっているようだった。



 そして翌朝。

 寝起きのいい私は、目をぱっちりと開けた。

 目の前に、真っ黒なラバースーツ人形の中に詰まった液体状のことねがいる。

 挨拶代わりにぎゅっと力を込めて抱き締めると、液体ゴム化していることねの体がぐにゃりと歪んだ。

「おはよ~、ことね」

 私はことねの体に自分の身体をすりつける。

 されるがままに、ぐにゃぐにゃと歪むことねから反応はない。

(気絶しちゃったのかな?)

 夜中の間もずっと液体ゴム化していたことになる。呪いを移していた時間は、それまでの最長記録を数時間は上回っていた。

 気持ちよさが限界を突破して、気絶してしまったことは十分考えられる。

「いま元に戻してあげるね~」

 言いながら、ことねのお腹に触れ、ことねに移していた呪いの力を回収する。

 もしかすると私の呪いが完全に移ってしまい、ことねは元に戻れなくなってしまうかもしれないと、半ば覚悟していたけど、幸いというべきか、ことねの体は元の人の体に戻っていった。

 ぴっちりしたラバースーツを、顔も含めた全身に纏っていることね。

 しばらくは死体のように動かなかったけど、やがて呼吸が出来ないことを思い出したかのように、びくんびくんと体が震え始める。

 私は手早く液体ゴム化した腕をことねの顔に当て――気まぐれで口の部分だけ開いてみた。鼻の下から顎の下だけ解放する形だ。

 例えが正確かはわからないけど、戦隊ものの雑魚戦闘員みたいに見える。

「ぷはっ、はーっ、はーっ、はーっ」

 ことねが自由になった口で、必死に呼吸をくり返す。首を左右に倒し、戸惑っているような様子だったので、再度声をかけてあげることにした。

「おはよー、ことね。気持ちよかった?」

 耳もラバースーツに覆われていて、聞こえづらかったみたいだけど、ことねはびくんと体を震わせたあとで、思いだしたように怒り出す。

「気持ちよかった……じゃ済まなかったわよ! 輪郭はあったけど、それ以外は自分の体がなくなっちゃったというか、色んなところで色んな感覚がして、頭がおかしくなるかと思ったんだから! 途中からわけわかんなかったわ!」

 怒りが収まらないことを示すように、ことねの手が私の身体をぺちぺちと叩いてくる。怒ってはいるみたいだけど、本気で激怒しているわけではないらしく、大して痛くはない。

「ごめんごめん。初めてやってみたけど、気が狂わなくてよかった」

 私はそう言いつつ、ずいぶんすっきりしている自分を感じていた。

 呪いを『移さなければならない』と感じていた焦燥感のようなものは、すっかりなくなっている。

 ことねの全身を液体ゴム化させたことで、十分な発散になったようだった。

(あとはこれでことねに影響が出ていなければいいんだけど)

 いまのところ異常はなさそうだけど、果たして本当にそうかどうかはわからない。

 経過をじっくり眺めておく必要があるだろう。

 ベッドの上で体を起こしたことねが、窮屈そうに体を捻る。

「ねえ、ありさ。このラバースーツ脱がして欲しいんだけど……」

「あ、そうだった。了解了解」

 私は全身を液体ゴム化し、ことねの体にまとわりつく。

 その上でラバースーツを自分の身体に取り込んで、今度は自分の身体を覆った状態で再構築した。口元だけ穴を空けた、雑魚戦闘員っぽいスタイルだ。

 素っ裸になったことねが、そんな私の姿を見て呆れるのがわかる。

「なにしてるの……」

「さっきまでことねがなってた状態をわかりやすく見せてあげようかなって。どう? エッチいでしょ?」

「…………どうかしらね」

 ことねは言葉を濁した。

 それがこの姿をエッチに感じてしまったからだということを、私は正確に読み取る。

 自分もさっきまでその姿であった以上、正直に「エッチな格好だ」と認めるのは恥ずかしいのだろう。

(ことねはいつまで経っても可愛いなぁ)

 私はそう笑いつつ、ラバースーツを着た体でことねの体に絡みつく。

「わっ、ちょっとありさ。もう十分楽しんだんじゃないの?」

「んー、ことねがあんまり可愛いから、その気になっちゃった♪」

 私は体を液体ゴム化する。ただし、ラバースーツはそのままで。

 ことね視点からすると、ラバースーツの口元の空いていた部分から見えていた私の身体が液体ゴムの形状に溶けたのが見えたはずだ。

(……想像したら、ちょっとしたホラーよねぇ)

 ことねは液体ゴムの状態では全く体を動かせなかったけど、私は液体ゴム状になっても体を動かすことが出来る。

 だから、ことねを逃がさないようにラバースーツに詰まった体でホールドしつつ、ラバースーツに空いた穴から伸ばした体でことねの体を絡め取った。

「うひゃっ!? あ、ありさあんたまた器用なことを……!」

 体を絡め、一緒にベッドに寝転がりながら、私は笑う。

『なんだかこうすると、地球を侵略しにきた謎の生命体に襲われてるみたいだね』

 ラバースーツのおかげで、中途半端に人型が維持されていることもあって、余計に怖いかもしれない。

「わかってるなら、もう少し考えなさいよ……」

『いいじゃない。楽しいし』

 私はラバースーツで覆われている部分の体を動かし、ことねに巻き付かせた。

 液体ゴム化した状態でラバースーツを着ていて便利なのは、関節を無視して動かすことが出来るという点だ。

 私はことねの四肢に自分の四肢を、文字通り絡めた。タコが獲物を捕獲するように、という表現が適切かもしれない。包帯のようにぐるぐるとことねの体に巻き付いていく。

 しっかり巻き付けていくと、ことねはほとんど動けなくなった。

『うふふー。このまま食べちゃおっかなー』

「もう勘弁してよぉ……疲れて……はないけど、精神的に疲れたわ……」

 呆れたように呟くことね。

 なんだかんだいっても、本気で私を拒絶しようという気は一切ないのだから、本当に得がたい同居人であり、恋人である。

 私はまた折りをみて彼女を液体ゴム化してあげようと思いつつ、今日も彼女を弄ぶのだった。


状態変化なふたり ~液体ゴム抱き枕~ おわり

Comments

天才と変態は似たようなものだということです。 もしもファンタジー世界に生まれていたら、英雄に値するような存在なのかもしれません。

夜空さくら

十分に伝わってきました。 ありさは、実はすごい人ではないかと思います。 呪いの悪い衝動を抑えており、自我も崩壊することなく正常に生きており、むしろ呪いによる変化を巧みに操っているからです。

festo

失礼しました。 「曲がりなりにも呪いではありますから」は「ありさの呪いも、呪いであることに違いはないので」くらいの意味です。これで伝わるといいのですが……。

夜空さくら

名前も文章の一部に翻訳してしまって理解するのに少し時間がかかりましたが、申し訳ないとも他の部分は理解したが、[曲がりなりにも呪いではありますから、本来は広がっていくものなのです。]の部分が3つの翻訳機を使用してみたが、翻訳がそれぞれ異なって理解できません。本来は[呪い]広がっていくのです。 と後ろの文章は理解できましたが、前文章は全然理解できませんね。TT

festo

曲がりなりにも呪いではありますから、本来は広がっていくものなのです。ありさが異常に適応して受け入れたため、そうなっていないだけなのですね。 ことねがゴム化の呪いを受け入れられるか、扱いこなせるかは彼女の素養次第です。でもありさが調整している分、慣れやすいということはあるかもしれません。 今後の話でどうなるかはまだ未定です(笑)。ご期待ください。

夜空さくら

ありさに誰かに移してあげたいという衝動があるとは驚くべき事実ですね。 こういうやり方でゴム化に慣れ、ことねもありさのようにゴム化呪いを巧みに受け入れて、扱えるようになるとか? 次の話はどう展開するのかすごく気になる話でした。

festo

コメントありがとうございます! 形のないものに形を与える! 良い趣味してますね~^w^ 全身タイツだとどこからでも滲み出てこれそうですね0w0

夜空さくら

不定形好きかつ、形ないものが形取られるのが好きな自分にどストライクでした。 全身タイツにスライム娘が入ったりとか、透明人間が服を着たりとかに興奮します。

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