ヒトネコライフ!21
Added 2020-08-31 12:58:44 +0000 UTCとうとう、ヒトネコパーティが始まった。
わたしは視線の集中するステージの上から、なるべく早く降りる。といっても階段を降りる時には、どうしても身体は大きく揺れてしまう。そのため、胸に気を遣いながら降りなければならないので、そんなに素早くは降りられなかった。
他の子たちの方がよっぽど速かった。というか早すぎて美里とかすでにパーティ会場に紛れて行ってしまった。
(うぅ……あれくらい吹っ切れればいいんだけど……)
ヒトネコスタイルの姿を人目に晒すこと自体は、この生活を続けているせいでだいぶ慣れてきてしまっていたけれど、大人数に注目されるのはまだ慣れない。
それに、いつもの生活では基本的に女性ばかりだったけど、このパーティ会場は男性の比率が多い。それもいつもより恥ずかしく感じる原因だった。
(わたしでも恥ずかしかったのに、大河原さんとか相当きつかったわよね……)
気になって彼女の方を振り返ってみると、彼女は可愛そうなくらいに真っ赤になって、ガクガク手足を震わせながらステージの階段を一段ずつ降りているところだった。
転落しないかハラハラするほどだったけど、階段の下にはメイド姿の丹波さんが控えていた。万が一転落しても、彼女が助けてくれるだろう。
わたしたちの中で飼い主側になりたい丹波さんは、ヒトネコとして不慣れな大河原さんにパーティ中は常についていることになっている。
この夏が終わった後、二人が今までと同じ関係に戻れるのか、若干不安に思ったけど、考えてみればわたしだって去年の今頃は今のような状態になっているとは思えなかった。
美里とも仲はそこそこ良かったけど、一緒にこんなことをする間柄になるとは思っていなかった。
色々な経験を経て、関係性は変わってしまったわけだけど、特にそれが不快というわけではないので、これはこれで良いことなのだろう。
大河原さんと丹波さんもそんな風になれれば良いのだけど。
(ああ、でもわたしと美里と違って、場合によっては飼い主とペットの関係になっちゃうのか……)
それはもはや関係が変わるというレベルでは済まないかもしれない。まあ、事ここに至った以上は、なるようにしかならない話ではある。
そんなことを考えつつ、ステージから降りたわたしはパーティ会場をぐるりと見渡した。
ところどころに置かれているテーブルは、パーティ会場らしく足元付近まで伸びる白いテーブルクロスで覆われていて、ヒトネコの視点の高さだと目隠しになってしまう。パーティ会場の全部を一度に見渡すことはできなかった。
(ここにいる人……みんな天景院さんと同じ、ヒトネコ愛好家なのよねぇ……)
正確に数えたわけではないけれど、さっきステージの上から見た限りでは、大体全部で二十人くらいだったと思う。
その全員がヒトネコ愛好家だというのは、考えてみれば結構すごいことなんじゃないだろうか。
それにパッと見た感じ、みんな相当なお金持ちっぽかった。
特に男性のスーツなんて形状もほとんど変わらないし、良し悪しなんて見ただけじゃわからないと思っていたけど、こうしていざ目の前にしてみるとやっぱり明らかに違う。
それは服だけの話じゃなく、着ている人の放つオーラというか、いかにも裕福そうな気配が関係しているのかもしれなかった。
いかにも上流階級のパーティ、といった様子だ。
天景院さんのパーティに招待されるくらいだから、それはある意味当然なのかもしれないけれど。
(粗相をするつもりはないけど……本当に気を付けなくて良いのかしら……?)
天景院さんからは事前の説明で「当日パーティ会場にはいてほしいけど、お客様に無理に媚びたりしなくて大丈夫よ。基本的にはいつも通り自由に振る舞ってくれて良いから安心してね」と言われていた。本当にそれでいいのかと思わなくもないけど、主催者がそういうのだから平気なのだろう。
わたしは一抹の不安を感じつつ、周囲から好奇の視線を向けられながら、パーティ会場を歩き回る。
向けられてくる視線がなんともむず痒い。
その視線は可愛らしいペットを見るような視線で、本来人に向けられるような視線ではない。人として立派な人たちの間を、裸同然の格好で歩き回るのは、ある意味とても惨めで恥ずかしいことだった。
けれど、わたしは人としてではなく、ヒトネコとしてここにいるわけだから、自分の状況をそこまで惨めには感じなかった。
この場合、惨めさを感じない方が問題な気もするけどね。
(どれだけヒトネコとして慣らされているのかって話よねぇ……それにしても)
周囲から興味津々な視線は感じるものの、無闇矢鱈に近づいて触れてこようとする人はおらず、あくまでこちらの自由意志に任せてくれている。
さすがは天景院さんが選んで招待した人たちといったところだろうか。
とはいえ、向こうが近づいて来ないからといって、こっちから全く触れ合いにいかないのは、さすがに問題があるとも思う。多少はこっちから絡みに行った方がいいはずだ。
(けど、男の人が多いしなぁ……)
この数週間、メイドさんたちに色々と世話を焼いてもらい、女の人に触れられるのはだいぶ慣れたけど、男の人との触れ合いはほとんどなかった。
乱暴する人がいるとは思っていないけど、どうしても男性相手は苦手で、二の足を踏んでしまう。
そんなわたしの視界に、美里が男性客の足元にすり寄っている様子が飛び込んできた。
「にゃ~ん♡」
甘えた鳴き声を揚げ、男性の足に身体を擦りつけている美里。
美里が擦り付いている男性を見上げて――わたしは思わず硬直した。
(だ、大丈夫なの、美里……?)
美里が身体を擦りつけていたその人は、物凄い強面の男性だったのだ。
ヤクザの組長やってます、と言われたら、思わず信じてしまいそうなほどだ。
そんな人を選んですり寄りに行くなんて、美里は何を考えているのだろうか。
私は男性客が怒り出さないかハラハラしていたけど、男性は外見ほど怖い人ではないのか、いい笑顔を浮かべて美里の頭を撫でてくれている。
その笑顔と手つきだけを見れば、近所の気のいいおじさんのように見えるのだから不思議なものだ。
美里はその人の本質を見抜いて、あえてすり寄りに行ったのだろうか。
相変わらず観察眼に優れた子だ。
(普段から見た目で損してそうな人だし、美里がすり寄りに来て、凄く喜んでいるみたいだけど……)
わたしにはとても真似できそうにない。
美里から少し視点をずらすと、気の強そうな瑞紀さんが、逆に気の弱そうな男性客を押し倒しているところだった。
一瞬何をやってるのかわからなかったけど、とんでもないことをやらかしている。
(いや、ほんと、何やってるの瑞紀さん!?)
おそらく、瑞紀さんが男の人に近付いたら、男の人は目線を合わせてしゃがんでくれたのだと思う。そこに瑞紀さんが飛びついて、男の人を押し倒したのだ。
いくらわたしたちが裸で走り回っても平気なように整えられている人工芝の中庭とはいえ、地べたには違いない。
高そうなスーツを着た人に尻もちを突かせるとか、わたしからするととんでもない暴挙だった。
さらに瑞紀さんの暴挙は重なる。
瑞紀さんはこういう性的な格好には慣れていて、大河原さんと違って最初から堂々としている。けれど、ヒトネコとして振る舞うのにはいまひとつ慣れていないみたいだった。
押し倒した男の人に頭を擦り付けて甘えてやろう、という意図はわかるのだけど、勢いがあり過ぎてほとんど頭突きしているような形になっていた。
甘える仕草を、瑞紀さんはいまいち理解していないんじゃないだろうか。
幸い相手の男の人は、瑞紀さんに乱暴に押し倒され、半ば頭突きにしかなっていない擦り寄りを受けても、特に不快には感じていない様子だった。
瑞紀さんのやることを普通に受け入れている。
(心が広いなぁ……)
ヒトネコの振る舞いに不慣れなのはわかったとしても、あれだけ思いっきり頭突きされたら、わかっていても怒ってしまいそうなものだけど。
天景院さんが招待しただけあって、多少のことは大らかな心で流せる人のようだ。
瑞紀さんみたく絡みに行ける気はしなかったけれど、それくらいで触れ合っても大丈夫そうだという事実は、わたしにとってもありがたいことだった。
(でも……瑞紀さんのあの絡み方は、猫というよりは、犬よねぇ)
猫だって甘えてくるときは飛び掛かってくるような勢いだから、間違ってはないのかもしれないけれど。
わたしはどんな風に触れ合いたいかを考える。
(うーん……頭を撫でられるくらいなら……いいかなぁ……)
そう思いながらさらにパーティ会場を進んだ。
パーティに招待されているお客さんは、ほとんどが男性だったけど、女性もいないわけではなかった。
そのうちのひとり、いかにも高そうな優雅なドレスを着た女の人のところには、天景院さんのお気に入りである、小柄な三人のメイド娘のうち、どこか眠そうな顔をしたナナちゃんがいた。
芝生の上に腰を降ろして寛ぐ体勢の女の人に、膝枕をしてもらっている。
ドレスが皺になっちゃうんじゃないかと思わず心配したけれど、女の人はニコニコと優しい笑顔でナナちゃんに甘えられるのが嬉しそうだ。
ナナちゃんはナナちゃんで、まるで子猫のように女の人に頭を預けていた。
「んにゃぁ……」
ごろごろ、と猫なら喉を鳴らしているだろう甘え方をしている。女の人が優しく頭を撫でると、気持ちよさそうに啼き声をあげる。
と、ナナちゃんが身体を反転させ、ぱかりと身体を晒すような体勢になった。犬や猫が時たま見せる、最上級の気の抜けた姿勢だった。
当然ナナちゃんも女の子なのだし、その姿勢を取った時の恥ずかしい状態と来たら、見ている方が思わず赤面してしまうほどのものだった。
特にナナちゃんは小柄ながらわたしと遜色ない乳房の大きさをしていて、『女体』としてのインパクトも強い。男性客の中には、いまのナナちゃんはヒトネコなのに、思わず目を逸らす人がいたくらいだ。
けれど当の甘えられている女の人は全く動じず、ナナちゃんの喉を優しく撫でるのと並行して、無防備に晒された胸も優しく揉んであげていた。気持ちよさそうにナナちゃんが身を捩っているところを見ると、触り方がとても巧妙なのだということがわかる。
(初対面……よね? それであそこまで気を許せるのって、すごい……)
個々の人懐っこさにはよるのだろうけど、わたしにはとても真似できそうにない触れ合い方だった。
変に警戒することなく、素直に身体を預けているからこそ、成り立つ触れ合い方だった。
(うぅ……どうしよう……)
いっそ美里やナナちゃんのように、猫に成りきってしまう方が自分の気持ちとしては楽なのかもしれない。
けれど、それをやろうとしてすぐ出来るのなら、そもそも悩みなどしていないわけで。
どうしたものか悩みつつパーティ会場を歩いていると、ふと数人のお客さんの視線が特定の方向に向いていることに気付いた。
(……? 何かあるのかな?)
気になって視線を追い、そちらの方に向かってみる。
テーブルや人の影になって、直前まで気付けなかった。
そもそも四つん這いで視野が狭く、恥ずかしさでつい俯きがちになってしまうわたしは余計に周りが見え辛いのだ。
だから、直前まで――その子の存在に気付かなかった。
わたしがテーブルの脇をすり抜けるようにして進むと、女の子が目の前に立っていた。
その子は、このパーティ会場にはそぐわない、学校の制服らしきセーラー服を身に着けていた。ステージの上から見渡したときは身長に見回す余裕がなくて気付かなかったけど、いざこうして目の前にすると、物凄く目立っている。
セーラー服ということは、もしかしなくても現役高校生なのだろうか。
(いえ……まさかね……でも……)
そうでなかったら女子高生のコスプレでパーティに参加する成人女性ということになってしまう。
それに、その子は明らかにわたしや美里よりも若い気がした。本物の女子高生のような気がする。
そんな若い女の子と、バッチリ目が合ってしまった。
思ったよりも距離が近く、お互いぴしりと固まってしまう。その目線の動きや真面目そうな風貌から、わたしは彼女がわたしの同類であるとなんとなく察した。ヒトネコとしてではなく、なんとなく性格が似ている気がした、という意味だ。
その子の傍には三十代の男性と、わたしたちの少し上くらいの年齢の男性がいた。歳が違い方は雰囲気がたまに大学で見かける先輩たちに近いので、一般人のような気がする。
女の子はその二人に促され、その場に膝をついて視線を合わせてくれた。
そして、わたしの方に手を伸ばし、ちちち、と舌を鳴らす。
それはなんともぎこちない動きで、その子がこういうイベントなどに慣れていないのは一目瞭然だった。
(これは……わたしの方から、歩み寄らないと……!)
生真面目な責任感に火がついてしまった。せっかく勇気を出して触れ合おうとしてくれたのだから、ここでわたしが逃げたらその勇気が台無しになってしまう。
わたしは恐る恐る、その子の差し出した手に近付いていった。
その子の手は震えている。とても緊張しているのが、その手を見るだけでもこちらに伝わってきて、思わずドキドキしてしまう。
(この子は……どういう気持ちでパーティに参加したんだろう)
彼女はどういう立場でヒトネコに惹かれたのか。ちょっと訊いてみたい気がした。
わたしがヒトネコを続けていたら、もしかしたらどこかで会うことになるのかもしれない。それは彼女に限らず、ここにいる全ての人に言えることだったけれど。
わたしは女の子の差し出した手に、頭を擦りつけるようにして、猫耳を触れさせる。
「――っ」
彼女が息を呑む気配を感じる。ふるふると小刻みに震える手が、わたしの頭を撫で、猫耳の感触を確かめるように動いた。
猫耳はわたしの意思で動かせるわけじゃないし、神経が通っているわけでもなかったから、彼女がどんな風に触って、どんなことを感じたかまではわからなかった。
ただ、手を離した彼女は、わたしの頭に触れた自分の手をじっと見つめて、深く息を吐き出した。
「……っ、――、ふー……」
感動しているのが、言葉はわからなくともその息遣いだけで伝わってくる。
なんとも初々しい彼女のことが可愛く思えて来たわたしは、色々触らせてあげようと、さらに彼女に近付いた。
彼女の真横に手を置くようにして、身体を女の子に寄せて行く。一瞬身を引きかけた彼女だったけど、すぐに関心の方が上回ったようで、わたしの身体をじっと見つめていた。
(そんなに見つめられると……さすがに恥ずかしいんだけどなぁ……)
私はそう思いつつ、彼女が触りやすいように彼女の前にわたしの腰がくるように位置を調整する。
身体の側面を晒すようなその体勢なら、彼女はわたしの腰――というか、尻尾飾りが触りやすくなったはずだ。
次に気になるとしたらそこだろうと思ったので、あえて晒しにいく。
それを見た彼女は目を見開きつつ、私の腰に手を置いた。
「んっ……」
すべすべした彼女の手の感触が心地よい。その手は程よく暖かくて、思わず反応せざるを得なかった。
裸なのにどうやって尻尾飾りを固定しているのか気になっていたらしく、彼女の手がゆっくりとわたしの尻尾の付けねに移動してくる。
肛門に挿し込まれたアナルプラグには、尾てい骨付近までを覆う形のカバーが突いている。尻尾飾りはそのカバーに付けられていた。
カバーは必要最低限の大きさだから、普通にしているとカバーがあるかどうかはわからない。お尻に吸いつくように密着していて、見え辛くなっていることもある。
ただ、触れるほど近くに寄れば、それがどういう理屈で身体にフィットしているかは、自然とわかる。
彼女もどうやってわたしの身体に尻尾飾りがついているのか、理解したのだろう。
赤面していたその顔がさらに赤くなるのがわかった。
その反応を見て、わたしは自分のやっていることが、一般的にみて、いかに恥ずかしいことなのか、思い出してしまった。
(あああ……しまった! なんだか、もう、慣れ切ってたぁ……!)
アナルプラグが肛門に挿し込まれているということも、決して一般的なことではないというか、普通の人は一生経験するはずもない行為なのだ。
わたしは意図せず、そんな変態的行為を、たぶんそんな経験など微塵もないだろう無垢な女の子に見せつけてしまったことになる。
(穴があったら入りたいって、まさにこのことね……っ)
顔が熱い。火が出ていてもおかしくないと思う。
逃げられるのなら逃げ出していたかもしれない。けれど、女の子がわたしの尻尾飾りを握っているのがわかったので、逃げるに逃げられなかった。
幸い、後ろで見ていた男の人たちが何かしらのフォローを入れてくれたみたいで、女の子の視線はわたしではなくふたりの方を向き、視線が外れている間に、わたしはなんとか平静を取り戻すことが出来た。
顔の熱も徐々に引いていく。恥ずかしいことに変わりはなかったけど。
女の子の視線が再びこちらを向き、恐る恐る胸の方に手が伸びてくる。
「んにゃ……っ」
わたしは思わず身をすくめて乳房を庇ってしまった。女の子が慌てて手を引っ込める。
(うっ、しまった……)
避けたみたいになってしまった。そんな風に思われるのはわたしの望むところじゃない。
わたしは恥ずかしいのを堪えて、一度竦めた身体を奮い立たせ、彼女の膝に胸を――おっぱいの膨らみを押し付けた。
「ひゃっ!」
その子が驚くのが人声抑制機能越しでもわかった。言葉じゃない悲鳴とかだと、ある程度はそのまま聞こえる。
驚かしてはしまったようだけど、これで触れられることを拒否した訳じゃないということが伝わればいい。
幸い男の人たちのフォローもあってか、わたしの意図はちゃんと伝わったようだ。
また女の子がわたしの胸に向けて手を伸ばしてくる。わたしは今度こそ動かないようにして、女の子の手を受け入れた。
――むにっ……
女の子の手がわたしの乳房に触れた。
「んにゃ……っ!」
思わず声が出てしまうのはどうしようもならなかった。
声に反応して女の子の手が一瞬引きかけたけど、そのまま手を離さず、わたしの乳房を掴んでくる。掴むというか、摘まむというか。柔らかい乳房が女の子の指の形に歪む。
「んにゅぅ……っ」
女の子の触り方は、相手を気持ちよくさせてあげようという感じではなく、気になったものに触れてみたい、というだけの動きだった。
だからとても気持ちいいというわけではないのだけど、シチュエーションによる興奮が強い。こういうことに不慣れな女の子に、こんな格好をしている自分の乳房を触られている――その背徳感がわたしの頭を痺れさせる。
「にゃ……あぁ、んっ……♡」
この数週間。
ヒトネコライフで何かと開発されてしまったわたしの身体は、刺激が足りなくとも十分な快楽を得て、そして際限なく気持ちよくなってしまっていた。
身体がどうしようもなく火照っているのがわかる。自分がどんな顔をしているのか、わたしにはわからない。
けれど、わたしの胸に触れている、どこか熱に浮かされたような彼女の顔を見たら、自分も似たような顔をしているのだろうと、想像はついた。
熱く火照った体を、女の子に擦り付ける。
女の子は少し吹っ切れたのか、優しく私の体を受け止め、撫でてくれた。
全体を撫でるように、前へ、後ろへ。
わたしの気持ちを反映して動く尻尾が、くるりと丸まって触れてくれる彼女の手に絡みつく。
「にゃふっ……♡ ふふっ、なぁお……♡」
女の子の手が、わたしの顎の下をくすぐってきて、思わず猫が啼くように声が出てしまった。気持ちいい。彼女に触れられたところが熱を持つ。
すっかり気分ができあがりつつあったわたしは、もっと彼女が触れやすいようにと、彼女の前でごろりと仰向けに寝転んだ。
さっきナナちゃんがやっているのを見て、そのイメージが強く残っていたようだ。わたしは自然と同じ姿勢を取っていた。
さすがにその開けっぴろげな格好には、女の子は息をのんで触れてきてくれなかった。
(あれ……逸りすぎた……?)
あまりの飛びっぷりに引かせてしまったのではないかと、わたしの中の冷静な部分が焦る。
けれど、彼女の側にいた男の人たちが促してくれたようで、女の子は顔を固くしながらも、わたしの体に向けてその手を伸ばした。
仰向けになったお腹に、女の子の手のひらが当てられる。じんわりと女の子の体温が伝わってきて、気持ちよかった。
お腹の奥がきゅんと反応するのがわかる。
さらに、そこからゆっくり撫でさすられると、くすぐったくて無性におかしくなってしまった。
「にゃふっ、ふふふっ、にゃっ♡」
自分よりも明らかに年下の女の子相手に、恥ずかしいところも全部含めて体を曝け出して全身を撫で擦ってもらっている。
そのヒトネコプレイでしか成り立たないであろう、特殊なシチュエーションが、わたしをどこまでも昂ぶらせてくれていた。
――とろり……
わたしは自分の股の間の状態を、しっかりと認識していた。これだけ刺激を与えられれば当然だけど、わたしの秘部からは熱い愛液がしっかりと滲み出していた。
それはこの行為にどれほど気持ちよくなっているかを、だれの目にも明らかにするものだ。
女の子もわたしのそこの状態にふと気付いたのだろう。戻りかけていた顔色が、あっと言う間に真っ赤に染まる。
本物の猫が相手なら決してない状態。彼女が戸惑うのもわかる。
けれど、わたしはヒトネコで、彼女はわたしの飼い主でなくとも人間の立場だ。
その濡れそぼった秘部に触れて欲しい。きっととても気持ちいいのだろう。
「んにゃ……♡」
わたしは催促するように声をあげ、女の子の膝を猫の手で突いた。
女の子はびくっと肩を震わせつつも、わたしの身体へと再び手を伸ばして。
――くちゅり……
思った以上に大きな水音が響いた。快感が体中を走り、痺れさせてくれる。
「ふー……ふー……ふー……」
一度触れ、躊躇が吹っ切れた女の子がわたしの秘部を撫でるように手を動かす。
腰が勝手に跳ね、身体を捩って快感に震える。
(ああ……ああ、きもち、い、い……っ♡)
自分より年下の女の子に触られていることとか。
周りの人たちから見られていることとか。
細かなことは全部頭から吹き飛んで、触れられて気持ちいいという感覚だけがわたしを覆いつくしていた。
きっと女の子の指の動きは大したものではなかったのだろうけど、その時のわたしにそんな激しい動きは全く必要ではなく、ただ、快感がどこまでも高まって行って、弾けた。
「~~ッ♡♡♡」
女の子にどう思われるかとか、周りからどう見られているかとか。
そんなことは気に成らなかったし、気にしている余裕もなかった。
とてつもない快感に気持ちよくなったわたしは、幾度となく絶頂したのだった。
わたしが少し落ち着いて、ふと気づいたとき、わたしの傍には女の子がへたり込んでいた。さっきまでしゃがみ込んでいた姿勢だったのに、脱力してしまったようだ。
呆然とした様子でわたしを見つめている女の子。
少し冷静になったわたしにとって、その視線は少々恥ずかしかった。
「んにゃ……っ」
わたしは気まずさを誤魔化すため、まず身体を起こし、伏せの姿勢に近い体勢で女の子を見上げる。
その顔に嫌悪の色は浮かんでいない。ただ、目の前で見てしまったわたしの痴態をどう処理していいのか、キャパオーバーになって呆然としてしまっているのだ。
「にゃぁ……」
わたしは気にしなくていいよ、という気持ちを込め、女の子の手の甲に頬を擦り寄らせる。
女の子はいまだ呆然としていたけど、わたしの動きに反応して頭を撫でてくれた。
しばらくそうして女の子に寄り添っていると、ステージの上に天景院さんが再び上がっていた。そしてその後ろに大きなモニターが用意され、動画が映し出され始める。
(あー、そういえば、そうだった……)
タイトルには『ヒトネコ飼育記録』とでかでかと銘打たれている。
わたしと美里がこの館にやって来てからの一部始終を動画にまとめ、パーティ参加者に披露するという話は聴いていた。
わたしたちがこの数週間、どんなヒトネコライフを送って来たのか、衆目に晒されるわけだ。
檻――というかケージに入れられ、美里と一緒に館に運ばれてきたところから映像は始まっていた。そんな自分の姿を客観視すると、無性に恥ずかしくなる。
(話を聴いてから覚悟は決めてたけど……やっぱり、恥ずか死ねそう……!)
擦り寄っている女の子にさらに身体を寄せ、恥ずかしさを堪えるわたし。
女の子はそんなわたしを慰めるように、撫でてくれたのだった。
その後も、様々な余興を交えながらヒトネコパーティは進行した。
シロさんとキャットファイトの真似ごとをすることになったり、参加者さんたちから手渡しで餌付けされたり――とにかく色んなことをして、盛況のうちにヒトネコパーティは幕を閉じたのだった。
余興などで疲れ果てたわたしは、途中から眠気が酷く、あまり記憶に残っていないのだけど、散々辱められた感覚だけは残っている。
そうして最大のイベントも無事過ぎ去り、ヒトネコライフの残りの期間は、天景院さんたちと穏やかに絡みつつ、特にトラブルなく過ぎていった。
ヒトネコライフ エピローグにつづく