ヒトネコライフの後日談 中編
Added 2020-09-07 14:07:23 +0000 UTC露わになった二人の拘束は、先ほどまで施されていたバキュームチューブを差し引いても、なお厳しいものだった。
それはほぼ裸の状態で抱きしめあっているにも関わらず、肌の多くが体に取り付けられた様々なものによって覆い隠されているという時点で、察してもらえるだろう。
まず目立つのは、二人の顔を覆う口枷だ。
二人の顔の下半分を完全に覆う形のそれは、二人の口を完全に覆っていた。さらにその口枷は中央に円筒形の穴ができるようになっておりーー口を開いたままの状態で固定するようになっていた。
それは要するにフェラチオを強制するための仕組みだ。
ただ、現在その機能は全く活かされていなかった。なぜなら二人の口枷同士が繋げられており、口と口がぴったりと合わさった状態で固定されているためだ。
二人は強制的にキスをさせられているような格好になっていた。顔と顔をくっつけた体勢のまま、離れられない。
合わさった口枷の中がどうなっているのかは外からは見えないが、その中は外からは想像できない状態になっていた。ある意味とても凶悪な仕掛けが施されていたのである。
さらに、彼女たちを結びつけているのは、その部分だけではない。
お互いの体に回すようにさせられた腕は、互いの腰に手を回させられ、しっかりと抱きしめう合うような体勢を取らされていた。
腰に回した腕は、相手の腰に巻かれたベルトに沿うように、手首から先に被せられたグローブのような、ミトンのような、指先が分かれていない手袋によって、放したり離れたりできないように固定されていた。
まるでお互いの体を強く抱きしめ合い、一切離れないことを誓っている恋人同士のような強固な繋がりだが、すべては拘束された結果に過ぎない。
身長がほぼ同じ二人は胸を合わせた状態で、乳房と乳房を押し潰し合うように押しつけあっている。そうなるように交叉する襷掛けのような形で太い革のベルトが彼女たちの体に纏めてしっかりと這わされており、彼女たちが身動ぎするたびにギシギシと軋みを上げていた。どんなに離れたくても、相手に胸を押し付けざるを得ないようにさせられているのである。
彼女たちの間には、鼻に差し込まれているチューブが繋がっているリブレスバッグが挟まっていた。彼女たちが鼻で呼吸をするたびにリブレスバッグが膨らんでは胸が潰され、その胸の弾力によってリブレスバッグも潰され、交互に呼吸をしなければまともに呼吸も出来ないようにさせられていた。
リブレスバッグ自体は新鮮な空気を取り入れられるようにしてあったが、一定以上膨らませられないというのは相当に厳しい状態である。
さらに、腰のベルトはただのベルトではない。厳密には貞操帯のようなものの一部で、彼女たちの体の正面同士を合わせる形で連結されていた。
顔には目隠しと耳当てが取り付けられており、二人は目も見えず音も聞こえない状態になっている。密着した体を通して、聞こえるのも感じられるのも相手の体の感覚だけだろう。
わずかな動きでもギシギシと音を立て、二人は絡み合わされていた。
彼女たちの身に付けている貞操帯は、強固な金属でできていた。その内側がどのようになっているのかは外側からは窺い知れない。
だが、少なくとも外から見ただけでも、その貞操帯が彼女たちの貞操を守るための単純な道具ではない事は明白であった。
なぜなら、二人の股間には外から見えるだけでもーー真下の台座から伸びた金属製のパイプが接続されていたのだ。
美少女フィギュアなどで、不安定なポーズを取らされているものには、そう言ったポールで体勢を支えられているものがある。
彼女たちの股間に接続されているポールも、その目的で取り付けられているものであった。それがあることによって、彼女たち自身がいくら倒れたくても、休もうと座り込もうとしても、立ちっぱなしの姿勢を無理やり維持させるのだ。
天景院はホクホクと楽しそうな笑顔で二人のことを見上げている。
「いいわよねぇ。こういうフィギュアを作ったら、売れないかしら?」
「需要がそんなにあるとは思えませんし、そもそもこのポーズのフィギュアを作るなら、むしろフィギュアの場合ポールは不要になってしまうのではないかと友香は思います」
「やぁんっ。友香ちゃん、正論すぎるわぁ……」
そう言って嘆くふりをする天景院であったが、言葉ほどは不快に思っているわけではないようだった。
本人的にも口に出してみただけで、それが実際に売れるとは思っていないのだろう。
拘束されている彼女たちに近づいた天景院は、彼女たちの股間に接続されているそのポールを愛おしげに撫でる。
「うふふ……姿勢の維持と実用性を両立するって素晴らしいことよね」
二人の女性の股間に突き刺さっているように見えるポールは、外からは実際に内側がどうなっているかはわからない。しかしそのポールに触れた天景院は、そのポールの中で何かが動いているような、そんなわずかな振動を感じ取っていた。
そのポールには、彼女たちの足に取り付けられたベルト状の拘束具が接続されていた。彼女たちは貞操帯にポールの先端が固定されている以外にも、その拘束具によって固定されているため、足を動かして逃げるという事はできなかった。
そもそも、股間に連結したポールの高さは彼女たちの腰の高さより若干高くなる、彼女たちの足が地面についているのは、爪先の本の一部だけだった。体重がかかっているようにも見えないため、実際二人はポールによって串刺しにされ、固定されているようなものなのだ。
いかに彼女たちがポールの上から逃げようとしたところで、爪先の一部しか床に触れていないのではどうにもならない。
それでも反射的に地面を蹴ろうとしてしまうのか、固定された足首から先のわずかな部分がピクピク痙攣していた。
倒れることも座り込むこともできないまま、二人はずっと責め続けられているのである。
天景院が三人娘に向かって確認する。
「今でどれくらい経過してしたかしら?」
「えーと、昨日の夜からですから……大体十二時間くらいですわ」
さらりと述べられた経過時間に、友香は息を呑んだ。
「……それ、大丈夫なんですか?」
「ちゃんと脈拍や心拍数はモニターしてるから大丈夫よ」
「ただ、そろそろ反応が鈍くはなってきてました!」
「それは、そうでしょうね」
少し呆れ気味に友香は呟く。ほぼ半日ぶっ続けで責められて体力が持つはずがない。
それに加え、夜通し責められていたという事は、睡眠も満足に撮れなかったはずだ。
「夜のあいだは責め具を動かしてなかったから、少しは寝れてるはず……」
眠そうなナナが呟き、実際にあくびをする。
「三人も満足に寝れてないのでは?」
「あたくしたちは平気ですわ。そのための三人体勢なのですし」
「うん、ちゃんと交代で寝てますよ!」
「ナナはいつも眠そうにしてるので変わりませんわ」
それもどうなのかと友香は思いつつ、呟く。
「この状態で寝ろと言われても、満足に寝れてはないでしょうね……」
「そうでもない。瑞紀はよく寝てた」
「それは……まあ、慣れの問題ではないかと……」
彼女たちよりも先んじて天景院家でプレイに興じていた彼女は慣れもあるだろう。
しかしもう一人の方は違う。
「……彼女に負担はかかっていないのですか?」
友香は思わずそう言って天景院を睨みつけていた。
天景院にとっては何人目かの弄ぶ対象かもしれないが、友香にとって彼女は最初のペットと言っていい存在だ。特別視してしまっている。
そのことを理解する天景院は、そのことについて何も言わずに、ただ優しく微笑むだけだった。
目配せをされたルルが、二人が拘束されている台座を開いて、中の容器を指し示す。その中には、透明な液体が溜まっていた。量こそ違うが、溜まっていることは間違いない。
「こちらが瑞紀さんの、そしてこちらが大河原さんの分泌したラブジュースですわ♡」
「責めが負担になるのは否定しませんけど、大丈夫ですよ! ちゃんと気持ちよくしてあげてますから!」
「……身体的には、ちゃんとモニターしてるし」
三人娘からそう立て続けに言われた友香は、難しい顔をしつつも納得せざるを得なかった。
「ならいいんですが……早く休ませてあげてください」
もちろん、と告げた三人が、さらに手早く二人の拘束具を取り外していく。
台座の中から夜通し回収したと思われる愛液と、尿、そして大便らしきものが入った容器が取り出されたのち、台座が床に飲み込まれるように下がっていき、飾られていた二人の体が床と同じ高さに降りてくる。
三人は手早く彼女たちの足を拘束していた道具を取り外した。いまだ爪先は地面についていなかったが、ひとまずある程度自由になる。
「股間部の接続、解除しますわ」
そう告げられると同時に、二人の股間から音がして、二人の体がびくん、と跳ねる。
ポール自体が下がり、二人の足が地面につくーーが、力が入らないのか、踏ん張ることもできずに膝から崩れていった。
そんな二人を、三人娘のうちの二人が左右から抱きしめるようにして、ポールの代わりの支えになる。
アイコンタクトで意思を交わしたもう一人が、コントロールパネルを操作してさらにポールを下げた。
抱き抱えられた二人の体から、ポールが離れていく。
だがそのその際、明らかに長すぎるポールの全体図が露わになった。
彼女たちの股間に突き刺さっていたと思われる張り子がずるずると引き抜かれ、愛液なのか腸液なのか尿なのか潤滑油なのか、全くわからない液体がポタポタと二人の股間から垂れ落ちる。
透明な液体が糸を引いているのを見て、友香は二人がとても感じていたことを知る。
「すごい分泌量ですね……よくもまあ、脱水症状にならなかったものです」
「胃に直接必要な栄養分を含んだ水分を流し込んでたのよ。ほら、鼻に刺さっている管の片方は、リブレスバッグに繋がってないでしょう?」
そう天景院に指摘された友香が改めて鼻から伸びているチューブの先を辿ると、確かに二本ともリブレスバッグに繋がっているように見えて、片方は股間の方まで伸びており、ポールの中を通して別の場所に繋がっていたようだ。
「つまり二人は片方の鼻の穴でしか呼吸できていなかったと……それは、相当苦しかったでしょうね」
「苦しいなんてものじゃ済まないでしょうねぇ」
のほほん、と、会話を交わす天景院と友香。
ようやく床にへたりこむことを許された二人だったが、二人の体はまだ連結されたまま、離れる事ができていなかった。
そんな二人の拘束を、まず腕から解いていく。
しっかりと相手のことを抱きしめるような形で固定されていた腕が、外れてだらんと垂れ下がる。もう腕を持ち上げる元気もないのだ。
あまりの脱力ぶりに二人を心配する友香だったが、計測しているデータ上大丈夫だと言われると納得せざるを得ない。
次に二人の上半身を纏めて縛り、固く押し付け合わせていたベルトが取り外される。ベルトは相当強烈な食い込み方をしていたらしく、はっきりと彼女たちの柔肌にベルトが食い込んでいた跡が残っていた。
血こそ滲んでいないが、しばらくは消えないレベルの痕だ。
「後でちゃんと治療するから大丈夫よ。跡は残らないわ」
思考を読まれ、そう声をかけられた友香は、少し納得できない気持ちを押さえ込んだ。二人の今のご主人様はあくまで天景院であり、一メイドに過ぎない友香が彼女たちの扱いを決める事はできない。
(……そう、あくまで今の友香は天景院さんの補佐でしかないんだから)
文句を言うのは筋違いというものである。
理性でモヤモヤとした気持ちを抑え込む友香を、天景院は優しい目で見つめていた。
ご主人様とご主人様の卵がそんな話をしている間に、大河原と瑞紀の二人は、並んで仰向けに床に寝かされていた。
二人の間に置かれているリブレスバッグが、二人が呼吸する度に膨らんでは、小さくなる。
その様子を見るとはなしに見ていた天景院は、何かを思いついたのか、にこりと笑みを浮かべ、友香の背後に回り込んだ。
「友香ちゃん、こっちこっち、ここに座って?」
そして友香を二人の間に座らせ、リブレスバッグを手に持たせる。
友香は手の中で膨らんでは縮むそれに、思わず見入ってしまった。
(こんな小さな袋に……二人の命がかかってるのよね)
ドクン、ドクンと心臓が激しい鼓動を奏でる。
二人分の命が手の上に乗っているような気がする友香だった。
だが、天景院がリブレスバッグを友香に持たせた理由はそれではなかった。
何かを取ってきた天景院は、それを友香の手に持たせる。
「はい、友香ちゃん。どうぞ♡」
軽い調子で持たされたそれを見た友香は、目を見開いて驚く。
「え、待ってください。これ、って……!」
「ええ。リブレスバッグの蓋よ♡」
それは、リブレスバッグの空気弁を閉じるための蓋だったのだ。
後編に続く