角折
Added 2025-09-24 12:28:14 +0000 UTC翌日。
アキラは指示された場所に到着した。
そこは繁華街に立ち並ぶビルの一つ。薄暗い地下に繋がる階段だ。この奥にある。アキラが心の底から求めた場所がある。
アキラは、真夏にはとても似つかわしくない厚手のコートを羽織っていた。例によって下半身をギリギリ隠せない、短丈のコートだ。
階段を降り、その先にあった戸を叩く。
コートを脱ぎ捨て、その下に隠してあった裸体を曝け出す。乳はデカく、尻もデカく、雄に媚びるためだけにあるような身体を晒す。
「……おう。来たか、マゾガキ」
扉が開いた時、アキラは絶頂した。
それは歓喜だろうか。絶望だろうか。
いずれにせよ、アキラはこれから自分の角が折られる事を実感して、絶頂した。この筋骨隆々な角無し男に、今から角と人生を滅茶苦茶にされるのだと。理解していながら、あるいは理解しているからこそ、アキラは深く長い絶頂に至った。
「汚ねえな、有角種はトイレの場所も知らねえのか? 犬でもよく躾ければトイレくらい覚えるぞ」
「ずみ゛ません゛っ!」
「まあ良い、入れ。拾うな、コートはそこに置いていけ。お前らにはもう衣服なんて必要無えからな」
招き入れられる。指示通り裸のまま。
扉の先に広がっていたのは、あまりに酷い光景だった。
有角種「だった」者たちが、至る所に裸で置かれている。そう、居るのではなくて、置かれていた。まるで剥製みたいに全く動かないが、胸やら喉の動きから呼吸はしていると分かる。どれも生きている。机や、椅子や、まるで組体操みたいに何人も裸のメスが集まって肉家具を必死に構成している。その頭にはもう角はなく、かつて角だった削ぎ残しがあるだけ。
なんて。
なんて酷く、素晴らしい光景だろうか。
「…………ッ♡♡♡」
アキラの目が輝く。そこにあるのは明らかに羨望の色。こんな目に遭っている同族のメスをアキラは羨ましいと感じていた。
「お前、名前は」
「東アキラですッ!」
「その名前は今日から捨てろ」
急な指示に、アキラは困惑した。困惑を隠せないまま、けれど勢いよく返事だけはした。
「……? はっ、はいッ!」
「お前、合格。今日から『6号』な」
「あっ、ありがとうございます……?」
「お前のバカ乳が気に入ったから俺の6人目のオナホにしてやるって言ってんだ。それとも家具行きが良かったか? オイ5号。コイツあとで折るから“奥”に連れてっとけ。4号、サクッと抱いてやるから寝室来い」
目の前で「4号」「5号」と呼ばれたメスは、そこで家具をしているメスと同じく角を折られてはいるが、どちらもモデルやアイドルが務まりそうな美人で、彼の「お気に入り」なのだと一目で分かった。他の家具メスとは、ハッキリ言ってしまえばメスとしてのレベルが違う。
それに、アキラも選ばれたらしい。背中に少し、家具達からの羨望と嫉妬の入り混じった視線が刺さった気がした。
「ありがとうございますっ!」
◁ ▶︎
何時間待ったかも分からない。仰向けで拘束されて、薄暗い部屋で身動き出来ないまま。
「5号、さん……? まだそこにいらっしゃいますか?」
「ええ、いますとも。……隣の部屋の喘鳴が止みましたね。もうじきご主人様がこちらにいらっしゃるでしょう」
「ほんとですかっ」
頭だけを動かして視線を向けると、5号と呼ばれた女と、足元に置かれたチェンソーが見えた。5号はとても華奢だ。スレンダーというより単に小柄。身長は120cmも無いくらいで、肉付きも消して良くはない。とても未成熟な身体。小さな背中にはびっしりと隙間なく、雌を蔑み貶める為の卑猥なタトゥーが刻み込まれていた。
その華奢な体躯に見合わず、5号の側頭部に残った切り株のような角の跡は、目測でも直径10cmはある。太いということは当然、今は無い角もかつては相応のサイズがあったに違いない。太く長い角は有角種のステータスだ。そこまで育てるには長い年月と適切な手入れが必要不可欠で、それが可能なのは、一部の選ばれし名家だけだからだ。
断ち切られ、綺麗に磨かれたその断面は、かつてそこに生えていた立派な角との落差ゆえに情けないほど無様だ。生き恥とも言える。この太さなら100歳は超えている。そんなに長い年月を生きたにも関わらず、立派に育てた角を快楽の為に捨ててしまったのだ。彼女の側頭部にある角の跡はマゾメスの証に他ならない。人生の全てを雄様に捧げた証左。背中に刻まれたタトゥーも、折られた角も2度と元に戻らない。これから何百年と、ご主人様が死んだ後も、5号は死ぬまでマゾの証を背負って生きていく。これを無様と言わず何と言うべきか。
まあ、かくいうアキラも今から「そう」なってしまうわけだが。
「待たせたな。準備出来てるか」
「はい、勿論です」
厳重な拘束のせいで頭を動かせる角度に制限があって、彼が部屋に入ってきたというのに、その姿がよく見えない。分厚く筋肉のついた足が見えるばかりで、それだけでもアキラの心中はひどく強烈に高鳴った。
チェンソーの音が間近で響く。
────。
「ッぎょオ゛お゛ォ゛お゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ???!??♡♡♡♡♡♡♡♡ ッぎ、ほぎッ、ほっ、ほォ゛お゛ッ、お゛ンぎょオ゛お゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡♡♡♡♡♡ お゛ッほォ゛お゛オ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡♡♡♡ お゛ぎッ、ぎひッ、イ゛ぎギッ??♡♡♡♡♡ 壊れ゛ッ、ぎ、イグっ♡♡♡ ッお゛ォ゛オ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♡♡♡♡ ほヒョお゛お゛オ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ??!?♡♡♡♡♡♡」
絶叫。あまりの快楽に、拘束の意味を身体で理解した。頭の方は思考が出来るような状態ではなかったからだ。
角に刃が食い込んだ瞬間から、意思とは無関係に身体が暴れて、拘束を激しく鳴らす。それでも身体は全く動かず、角が揺れることは決してない。切断が邪魔されることはない。ただ延々と深い絶頂だけがあった。
「イグい゛ぐイぐイグいぐイ゛ぎッ、壊れ゛ッ、しぬ゛ッこれ死ぬ゛ッ♡♡♡♡♡ これッ、こ、これ、これこれコレしッ、しひ、ッ、むり、無理ッ、イグっ????♡♡♡♡♡♡ まんこも゛ッ、あた゛ま゛もッイグっ、い゛、ぎぐぐグぎュ゛ッ♡♡♡♡ 無理しぬ゛しぬッ、じギュ゛っ♡ ぎッギぃ゛ぎッ♡♡♡ お゛ッ許し゛ッギぎ、イ゛ぐッ♡♡ ぐッ、お゛ォ゛ぎゅぐゥ゛う゛ッ♡♡♡♡♡♡」
脳が絶頂に埋め尽くされる。口をついて情けない喘鳴が溢れ出た。意思に反して謝罪の言葉が飛び出し、アキラは泣いていた。絶頂漬けが苦しいからでもなければ、今になって角を喪うのに怖気付いたわけでもない。謝罪の言葉を吐き出しながら、無意識に謝罪を吐き出すほど痛め付けてくださる「主人」の存在に感謝して涙している。一生を彼に捧げることが出来た喜びを噛み締めて泣いているのだ。
「はッ、は、あ゛ッ、あ、あッ♡♡♡」
あと5ミリ。ほんの少しで角を完全に切り落とせてしまうところで、チェンソーは止まる。アキラはその意味を理解した。持ち上げられる脚を視認せずとも理解した。理解した直後、アキラの角を冷たい靴底が踏み付ける。
酷い音を立てて、角が折れた。
「ッほギョお゛オ゛ォ゛お゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!??!????♡♡♡♡♡♡♡」
脳が灼ける。届いてはいけないところまで快楽信号が到達してしまったような、多幸感と全能感に満ちるような絶頂。
アキラは幸せだ。
何故なら不幸を感じる脳を失ったから。
「ほッ、ほひ〜ッ♡♡♡ ひっ、ありっ、あ、あり、ありがっ、ひょっ♡♡ ごッ、じまッ、しま、す……ッ♡♡♡♡ お゛ッ♡♡ ほ♡ お゛ォ゛お゛ッ♡♡ お゛ーーーーッ♡♡♡」
もう片方の角は、これから一週間後に同様の手順で折られる予定だ。それまでの間アキラは重心の不安定な片角状態で過ごし、専属オナホール「6号」としての立ち居振る舞いから言葉遣い、奉仕技術に至るまで様々な知識を先輩オナホ達から仕込まれることになる。
片角は半人前、未熟者な無能オナホの証。
一週間経っても、無条件で残りの片角を追ってもらえるわけではない。
研修を完了したかどうか、アキラには最後に一つ、ご主人様から試練が与えられる。
「お待たせしましたご主人様ッ! ご主人様専用メスオナホ6号、ただいま参りました!」
バランスの悪い身体で駆けてきて、ご主人様の前で元気に敬礼。デカい乳を揺らして、無様極まりない醜態を晒す。
今日ようやくもう片方の角を折っていただけると考えているアキラは、その喜びが言葉と態度にあからさまに出てしまっている。
「は、はい……?」
最も大切だった人間に、今の姿を見せて、自分がこれからどういう存在になるのかハッキリ自分の口で説明してきなさい。
「────お前はこれから、人権を捨てる。分かってるだろうが、俺の所有物になるってのはそういうことだ。俺が死ねと言えば死ぬ、そういうバカメスになるんだろ。だから、1番大切な人にそれを説明して、納得させて来い」
出来ないなら、角は折らない。
「お前をそいつから奪うんだ。筋は通しておかねえとな」
「………………はっ、はいっ! かしこまりましたッ!」
◁ ▶︎
「────待って」
逃げ出そうとした“彼”の手を、アキラは捕まえた。
「ねえ、見て」
唯一の友達。好きだった動画の話でよく盛り上がった“彼”の前で、アキラは躊躇なく服を脱ぎ捨てた。肉付きのよくなった淫らな身体が露わになるが、彼の視線は、身体ではなくアキラのスマホに向いていた。
スマホを操作して動画サイトを開く。そこには「6人目」と書かれた動画。だが以前に話題に上がったそれとは違い、そこにあるのは黒塗りの画面ではない。キチンと画面の中に、動く人影があった。
角を切り落とされる、アキラの姿。
ご丁寧に個人情報まで添えられた、人間卒業レベルのバカマゾ姿を晒す動画。
「これは……右の角を切り落とされた時の動画。隠し撮りされてて、今は非公開動画になってるから、こうして投稿アカウントからしから見れないようになってる。でも私があの人に逆らったりしたら、いつでも即公開できる準備が整ってるらしいよ」
動画の中で喘ぎ続けるマゾ肉。声を掻き消すようなチェンソーの音。コレと目の前のメスが同一だと、理解出来ないと言いたげな表情。
「私はね、これからこの人に、もう片方の角も折ってもらいにいくの。両方とも折ってもらって、正真正銘、あの人の奴隷になるの」
上気した頬、虚な瞳、蕩けた声。アキラを構成する全てが、今のアキラを正常ではないと主張しているようだった。
「でもあの人は、君が納得しないと、折ってくれないって言うの。人権を奪ってくれないって言うの。私が君を好きだったから。君から私を奪うのに、君の許可が必要なはずだって」
けれど、気付けたところで何だ。
「私が君のこと好きだったのは、もうとっくに昔の話なのにね?」
止めれなければ意味はない。
「今は、あの人が好き。ご主人様が」
目を逸らしてはいけない。
「だから納得してほしいな。私が人間を辞めるの、君に認めてほしい」
耳を塞いではいけない。
「私、ご主人様に『君のこと説得してくる』『絶対あなたの奴隷になります』って約束しちゃったから…………君のこと説得出来ずに戻ったら、約束破ったことに……逆らった事になっちゃうね」
嫌だと、否定しなければいけない。
「…………ふ、ふふ♡ そうしたらこの動画は公開されちゃって、私の本名で検索すれば、この動画がヒットするようになる」
それが簡単に出来れば苦労はしない。
「そうしたら私、おしまいだね。ご主人様にも飼ってもらえず、角は片方しかないし、終わってるバカマゾだって世界中にバレちゃうし」
脳が理解を拒む。
「そんな私のお世話、君に出来る? お金も無い、立場も無い、ただの学生の君に。ご主人様になら出来るよ。君には出来ない事が」
思考を放棄しようとする。
「だから、首を縦に振って」
ダメだと、理解しているのに。
「それだけでいいの。私が君に求めるのはそれだけ」
“彼”はその日の記憶を心の奥底にしまい込んで、無かったことにした。東アキラの角は、その日のうちに切り落とされた。人間を辞め、取り返しのつかないアクメを享受しながら、東アキラはひたすら幸せだった。