SamSuka
夏目なつめ
夏目なつめ

fantia


バニーガールのお気の召すまま

§  放課後、カラオケでも、という話は残念ながらお流れとなった。  雪村が断ったからだ。 「ごめーん、今日ちょっと忙しくてさ」  手を合わせて雪村は悪いねと笑った。  そうなれば後は空中分解。 「なら俺はいっかな」 「ユキ来ないなら私さっちんのところ行くー」  こんな具合で。  あれよあれよという間に解体していく集まり。思わず鼻白んでしまう俺に、雪村が申し訳なさげに近づいてくる。 「ありゃりゃ。ごめんね萩原。なんか流れ壊しちゃったみたいでさ」 「雪村が謝ることないって。まあ、次の機会にさ」  グループの違うもの同士、ぎこちなく言葉を交わす。  そんな風に言葉をかけて回る雪村の背をぼんやり眺めて、人気者は大変だなと思ったりした。  実際、雪村も苦労が多かろう。彼女には人を巻き込む力がある。その分、今回のようにかき乱してしまうこともあるはずだ。クラス一の美少女で、快活で、凡そ理想的なプロポーションに性格、好意が多ければ妬みも集まるというもの。俺のようなクラスメートにも丁寧に接して、苦労が偲ばれる。いつか陰キャに勘違いされるぞ、あれじゃ。  未熟な人間を詰め込んだ一つの箱の中、恵まれているのもそれはそれで困りもの。安定のため、銘々にグループを作ったりランクを作ったり、密かな緊張感に身を浸しながら暮らしてる。そこで目立てばいつか爆発しそうなものだが、まあ、さすがの雪村といったところか。  そんなことを考えながら、渋々いつもの帰路につく。  とはいえ、買い食いに出たり服を見たりとついつい寄り道が進んでしまうのは、当てが外れてしまった口寂しさか。  そして普段入らない繁華街の路地に立ち入った頃には、もうとっぷり陽も暮れていた。  段々怪しくなっていく並び、看板の色もピンクが増えてきて、そろそろ引き返そうと思った時。 「……ん?」  妙なものが目に入った。  漏れる光はチカチカ目に痛いが、見たところ風俗店には見えない。けたたましく響く音からして、ゲームセンターかダンスホールか。何より興味を惹かれたのは、流れてくる音楽だ。自分の掘り当てた、知る人ぞ知る古い曲。こんなニッチなものを流すのだから、さしずめレコードバーかなにかだろう。  刺激を欲し、思わず足を向ける。  ドアを押し、店内へ。 「いらっしゃいませー!」 「どうも、……え、わっ、何だこれ?!」  開けてみればそこは真っ暗な廊下。  一瞬ひるんだが、女性らの声に迎えられ踵を返すわけにもいかない。仕方なしに闇の中へ踏み込めば、グニャァッと突然の目眩に襲われる。  そのまま倒れるようにして進むとようやっと二つ目の扉に突き当り、俺は一気にそれを押し開けた。  そして。  我が目を疑うことになる。  そこにあったのは、10人程度の人影だった。一見して、スーツを着た女性、ナース服、セーラー服……。それが単なる女性の集まりで無いと、バニーガールの姿が教えてくれる。それらが無数の園児に囲まれているのだ。  理解不能な光景。  しかし混乱は、次の瞬間一挙に倍増した。  子供に見えたその一々が、紛れもなく成人男性、それも、俺よりよほど大柄の大人たちだったのだ。俺含め男たちと、それを遥かに超える3メートルレベルの巨女らがひしめいていた。  あまりに常軌を逸した光景に、思わず気圧されてしまう。巨木のような女性に、群がり縋る無数の男たち。保母と園児のように見えなくもないが、コスチュームに体つき、雰囲気がまるでそれらしくない。  これはひょっとして、ヤバい店なんじゃないか……?  どう考えても遅すぎる疑念が、俺の胸に湧き上がった。  そんな様が目立ったのだろうか。 「あれ? キミ、大丈夫?」  熱狂の中立ち尽くす俺に、上空から女の声が振ってくる。  見れば、腰を折って俺を見下ろすナースの姿。頭上でω型に膨らむ乳に、思わず顔が熱くなる。 「いや、大丈夫、です……」 「そう? 楽しんでいってね」  ニコリと笑いかけられ、途端に心が揺れてしまう。  子供扱いにこんな笑み、とても普通じゃ得られない。非日常的な経験を得るにはもってこいだ。何より、楽しまないと、ここでは却って浮いてしまう。  ここで尻込みしてるようじゃ、男がすたるというもの。  ……いや、巨大娘に見惚れて男もクソもないかもしれないが……。  俺はかぶりを振って思考を払い、ヤケクソ気味に場の中へ飛び込んだ。  目についたのは、中でもとびきりエロい格好をしたバニーガール。おそらく女子高生だろう、長い髪は清純に美しく、だのにその美脚に尻にむっちり太ももは、どれも強烈な劣情を掻き立てる。大きく開かれた背は、背筋さえ丸見えで、肩甲骨から肩のラインは女性の色気を漂わしていた。  ひと目見て惚れ込むその女体。思わず飛び込みたくなる背中に、猛烈な引力を感じた。一目惚れだった。  そうなればもう一も二もない。  俺はスラリとした巨大女性の元へ駆け寄った。 §  そこには既に常連と見える男たちが群がっていて、抱き上げられたりじゃれ合ったり、或いはただ、その彫刻のように美しい脚を撫で回したりと、いかがわしい時間を過ごしていた。バニーはそちらに目もくれない。いや、小男のことなど気づきもせず、ただ自身の体を触らせるにまかせていた。  物言わぬ長い脚が、目前にドンとそびえ立つ。俺などたやすくまたぎ越せてしまいそうな女性の脚は、美しく、網タイツをまとって褐色の光沢を放つばかり。ひかがみのくぼみが可愛らしく、対象的に太ももは、マンゴーのようにずっしり肉感的だ。  試しにそっと、指先を伸ばしてみる。そして、ヒタッ、と。それは指先に現れる、暖かく、色彩豊かな肌触り。柔らかく丸く、ストッキングの繊維感に網の硬さ、無機質さ。女性の肌に触れる、犯罪じみた行為に頭がピリピリ痺れ出す。  けれど、少女に気づく素振りはない。  俺は恐る恐る、バックシームに沿ってなで上げた。踵から裏もも、尻へと抜ける一本の線、それを、膕から、臀部まで。そうすれば、指先が辿るのは太もものむっちりしたライン、尻と太股の淡い段差、そして、豊臀の丸まり……。ゾゾゾッと快感が背筋を走り、思わず股間が熱く滾る。はじめての女体。強烈な快感に、快楽物質が噴出する。  もう耐えられっこなかった。  俺はぶっとい脚にすがりつく。手の回らない太さがたまらなくエロい。無機質なストッキングに包まれて、肉感的な起伏と熱を溢れさせ、いかにも女子高生の脚といった造形が1メートル半、しっかりと腕の中にそびえ立つ。手を滑らせれば網タイツの凹凸と、肌を守るために穿かれたストッキングの手触りとが俺を襲う。その中からしっかり主張するのは、JKの脂肪と体熱、確かな弾力。  こんなことが許されるなんて。俺は夢中になって女の脚に張り付いた。網タイツの格子模様が肌の丸みで歪められ、余計にその曲面美を際立たす。そのいちいちをなぞり、ストッキング、その奥の肌を手のひらで転がし、ゆっくり、ゆっくり指を這い登らせて、そっと、隙間からバニースーツの中へ……。  そして、少女の叱責を食らうのだ。 「も~、触りすぎっ!」  彼女は困ったように笑った。  そして、ドンとお尻で一突き。  少女の軽い戯れ。  しかし飛んできたのは、400キロはある2倍少女の、デカ尻だ。エロい肉鈍器を叩き込まれ、生々しく痛感する体格差。初め俺の頭はめり込んだ。豊臀の柔らかさがむにぃっと顔面に広がり、奥に潜む生尻の感覚に胸がざわめく。  歓喜の瞬間。しかし次に押し寄せたのは、女尻の猛烈な暴力だ。無限に思える尻肉は、若々しいハリを主張したと思うと、一気に復元力を俺に叩き込んだ。  短い悲鳴。  小男の体が跳ね飛ぶ。 「ダメじゃんそんな触っちゃ~」  苦笑交じりに振り返る少女。 「あんまりおいたが過ぎると出禁……って、…………え?」  そして次の瞬間。  デカ女の目が点になる。 「いたたたっ……。……ん?」 「は、萩原!?」  のそのそと立ち上がる俺を、蒼白になって見つめる影。  それこそ、クラスのヒロイン。  雪村その人だった。


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