SamSuka
夏目なつめ
夏目なつめ

fantia


南国は甘く切なく

§  小人に生まれたのが悪いんだよ。  ミーナは初めにそう言った。  君はボクのワクチンだ。僕を前に、そう言い放ったのだ。  僕は後ずさる。  目前にある、エメラルドみたいにキラキラした目。僕の顔より大きな瞳に魅入られ、怯えてしまった。  でも、どこに行けばいいだろう? 小人の国、僕は生贄に選ばれて、帰るところなんてない。  逃げられない。助からない。  観念して僕は、とびきりの美少女をおずおずと見上げる。ミーナといった南国娘。その肌は、健康的な小麦色に染まっていた。30倍の上位種少女。僕はこの子に、一生飼われ、使われる。  絶望した僕を、褐色娘はふふんと笑った。  そして、最後に。 「ボクを、守ってくれるね?」  そう言って、にっこり笑んだのだ。 §  僕が起きた時太陽はすっかり登っていて、膨らんだ三日月が、そろそろ顔を覗かせようという時分だった。 「寝過ぎちゃった……!」  慌てて僕は起き上がる。  怒られてはたまらない。  目覚まし係を仰せつかっていたのだ。  立ち上がり、ミーナの姿を求める。  けれどそこは、無限に広がるシーツの海の底。どこにいるのか、皆目見当もつかなかった。それでも聞こえるのは、くうくうと健やかな寝息と、圧倒的な少女の体熱。僕は、巨大娘が蹂躙し倒したベッドシーツの大波を超えて、巨体を目指し這い始めた。  そしてすぐに見えてくるのは、トラックもひと踏みで粉砕できそうな褐色の塊。ロイヤルミルクティーのようなそれは、紛れもなくミーナの素足だった。 「ミーナ! 朝だよ、起きて!」  足裏を上に向けた足。それは親指だけで、バランスボールに匹敵する巨大さだ。そこから足裏に登って、必死に叩いてみる。でも、起きるどころかくすぐったがってももらえない。僕は悔しくて思いっきり踏みつける。  でも、綺麗な裸足はピクリとも動かなかった。  ため息をついて、僕は足をよじ登った。  少しくらい気づいてくれてもいいじゃないか。だいたい、ミーナが朝寝坊なのが悪いんだ。そんな風にぶつくさ言って、ふくらはぎを、ひかがみを、這いずっていく。  それは、褐色娘特有のすべすべした脚。手に広がるのはきめ細やかな肌で、僕なんかじゃ少しもたわまない確かな肉質。手をつけば、僕の肌より濃い肌色は綺麗で、パリッとした小麦色だ。  むっちりした太ももの上を登っていく。まるでマンゴーみたいな、ぶっとい脚。手触りも柔らかくエッチになって、なんだか、いけないことをしてるみたいだ。  ……おっきな女の子と暮らすとは、こういうこと。ドアップ、大パノラマで、女の子の体を感じるのだ。とりわけこの上位種褐色娘は女性的、豊満な体は恵体というにふさわしい。南国娘らしく、おっきな胸にまるまるしたお尻、そんなエッチボディと暮らすのだから、とてもじゃないけど落ち着けやしない。  今だって。  僕は褐色肌をよじ登り、太ももの付け根へと到達していた。眼の前には、6メートル級のドデカいお尻。白いワンピースの裾がめくれ上がって、水着のようなパンツが覗いていた。こんもりとしたそれは山というにふさわしく、家さえ建てられるような丘と遜色ない。枯れ葉色のお尻と純白のコントラストが綺麗で可愛らしく、脂肪のしっかり詰まってそうな丸みが、エッチに見えてならない。  登らなきゃ。  起こさなきゃ。  僕は、意を決して太ももとお尻の境の線を越えた。  そうすれば、むっちりとした感触はポヨンと独特の弾力に変わり、服の裾からは、女の子の甘い香りが漂ってくる。  まるで、女の子の山脈を這う小さな虫の気分だ。それが情けないような嬉しいような、変な。複雑な気分で進んでいく。  後は、お尻から背筋の、ゆるい曲線。  ぱっくり背中の開いた背中には、綺麗な背筋が続いていく。そして、亜麻色の髪が、タオルケットの裾から覗いていた。 「……プハッ!」  ようやく女の子の布団の中から顔を抜け出し、僕はミーナの肩まで走っていく。うつ伏せになって腕を枕にしているものだから、ちょっと盛り上がった肩が可愛らしい。 「ミーナ! 朝だよ! おーきーてー!!」  僕は叫びながら、ご主人の耳元まで降りていく。  肩からするりと耳を求めて、稲穂色の髪をかき分けて。手を差し入れるたび、髪は少ししっとり暖かくなり、華やかな香りは少しエキゾチックに、甘く、暖かく。そして最後に両手で髪を払いのけると、形の良い耳が、やっと顔を覗かせる。 「ミーナ! 起きて! 起きてってば!!」 ありったけの力を込めて叫ぶ。周囲を取り巻く稲穂色の髪、草原に立ったような心地で。けれどこんなに全力を出したって、巨人種さまは少しも起きてくれやしない。 「起きて!! 朝! 朝だからっ!!」 「……ん、……まだ、もうちょっと……」  ようやくもぞりと動いたミーナ。  少し頭を揺らしただけで、まるで起きようという素振りを見せない。 「ミーナ!! 寝坊は良くないよ!」  けれどミーナは、枕から少し顔を覗かせると、おっきな瞳で恨めしげに僕を見るばかり。それも段々重そうに閉じて、遂には再び寝息を漏らし出す。 「ミーナ! ミーナってば! ……、もう……」  僕は巨人に向かって叫び続ける。もちろん、無駄なこと。眠りに沈む大巨人を、僕は為す術なく見守るしかない。  揺り動かせれば、少しは起こしてあげられたのかも知れない。けれど、僕はミーナの髪さえ重いカーテンに感じるほど、無力な存在だ。手はもちろん、指さえ持ち上げられない。  30倍少女、50メートルを超える女の子。  どっしり寝転ぶ巨体を前に、僕は途方に暮れる。意志が無いぶん、一番無力を感じる瞬間だった。  僕は行き場のない気持ちで、少し耳の輪郭をなぞった。それから、力尽きたように座り込む。  あたりは亜麻色の雲海。ドキドキする女性の首元。甘い香りは生々しく僕のパーソナルスペースに入り込み、歴然とした次元の差を思い知らせる。 「もう、ミーナったら……」  なんだか、すっかり疲れてしまった。  横倒しの肩に背を預け、美少女の頭を眺めやる。  どうしよっかな。起きてくれないかな。  一人じゃ、ベッドから降りることも出来ない。何をするにも、ミーナに頼らざるを得ない。起きてもらわなきゃ、何も、出来やしないのだ。  ……寝ちゃおっかな。  少し肩に頭を擦り寄せながら、そう思った。  まるで丘のような女の子の体。  今ばかりは、僕の好きにしていい。  僕は腕から肩へ進み、女性らしい背中に戻っていった。チョコレートでできたような、柔らかな平原。胸踊る起伏は背筋で、細い肩が、首筋が、滑らかに目を撫でる。照らされて出来た陰影も褐色の肌に溶け込んで、思わず頬ずりしたくなるほど。  巨大な女性の背中は、僕をどうしようもなく惹きつける。そして、ベットシーツにもぐりこむように首筋に飛び込めば、求めていた快感にワッと襲われた。  肌の触れ合う気恥ずかしさ、緊張、疚しさ、それから一気に弛緩して、思いっきり巨大な少女の背中に沈み込む。褐色娘の僕は高体温に暖められ、特上のビロードに似たすべらかな肌触り、手で撫でれば女の子のきめ細やかな感触が手で踊った。肩甲骨と首筋の間、肩とも背とも首ともつかない危うさに抱きついて、こんな気持ちのいい場所はない。  そこに、スリスリと頭を寄せる。  滑らかな質感。  ギュウウッと抱きつけば、もう、多幸感はうなぎのぼりだ。  十分ほどそうしていた。  そして、ゆっくり。  僕は眠りに落ちようと。  した、一番気持ちいいときに少女は動き始める。 「…………ん」  もぞ、っとカフェオレ山脈が動き出したのだ。僕に気づいたのか、やっと起きる気になったのか。けれどミーナは寝返りを打とう気配で、僕は慌ててせり上がってくる背中を飛び越した。 「んん~~っ……。よく寝た~」  ミーナは大きく伸びをして、枕にしていた大きなクッションに身を預けた。  そしてポンポンと当たりを探って、僕をつまみ上げる。 「おはよ♪」 「……おはよ」  綺麗な指からぶら下がり、僕は不満げにつぶやく。  そんな様をおもしろがりながら、ミーナはお腹の上に僕を乗せた。  カフェオレとクリームのような色のコントラスト。  ホカホカしたワンピースの上から、僕はミーナに言ってやった。 「……ねえ、もうちょっと大きくしてよ。魔法、使えるんでしょ? そしたら、ちゃんと起こしてあげられるから」  ミーナはキョトンと首を傾げる。 「だってそれじゃあ、起きちゃうじゃん」 「……はい?」 「朝はゆっくりしたい。下僕が起こせなかった、って言えば、ボクは悪くない。ほら、一石二鳥」  ”ね?”と言って笑うご主人サマ。  僕は呆れ返った。 「それじゃ僕が悪いみたいじゃないか! そ、それに、こんなにおっきなミーナと一緒じゃ、潰れちゃうよ! こないだだって、僕をお尻でぺったんこにしたじゃないか。もっと大きくしてよミーナ。僕、一人じゃトイレにも行けないんだよ?」 「なら、もとの世界に戻ってもいいんだよ? 同じ小人と暮らせて、君もはるかに楽だろう? あーあ、残念だなぁ、”朝ごはん”もまだだっていうのに♪」  そしてわざとらしく、唇を撫でるのだ。南国娘の、肉厚な唇。エッチなその肉が、少し引っ張られる。 「戻る、って。そんな……」  激しく動揺する。帰るだなんて、ご無体な。 「ミーナの意地悪……」  僕は恨めしげにつぶやく。 「ふふん、何を今さら。ボクは意地悪さ。君をお薬にしてるんだからね?」 「それは、僕の体質のせいだから……」  小人のマナ、それが時に役に立つ。  僕の体質なら、ミーナの力を高め、守ることが出来る。  らしい。 「戻ったって、他の人に売られるだけだよ」 「そうさ! だからたっぷりボクに尽くすことだね。劣等種を飲み込んで、ずっとお腹の中で飼う人だっているらしいよ? そうなったら大変だね?」 「……」  むぐぐ、と押し黙る。お腹の上、僕はプイッと横を向いてしまった。  こう体格差があると、所作のいちいちが子供らしくなる。小動物みたいで嫌だ。けど、抗えなかった。  一通り立場を思い知らせ、満足した様子のミーナ。  それから、トントンとイチゴ色の唇を叩いてみせる。 「あ・さ・ご・は・ん。ちょうだい?」 「もう……」  僕は負け惜しみたっぷりの視線を投げながら、でも、ミーナの上を歩いていった。  逆らえない。体も力も頭も何もかも、ミーナのほうが段違いに上なのだ。  苦々しく思いながら、足に感じるお腹の感触を噛みしめる。清純な白いホルターネック。それをあがり、徐々に急になる傾斜、胸をよじ登って。  苦労して僕は鎖骨の上にまで登っていった。そして、綺麗な色の唇に頬を寄せる。プニッと女の子の柔らかさ。ハンモックのような大きな唇を撫でて、シワを指先でなぞりあげ、褐色娘のリップを愛でてやる。  それから、僕は口を開けて。  あむっと、そこにキスをする。  それはとても非対称な2人のキス。僕なんか簡単に乗せられるようなリップに思いっきり顔をうずめて、ミーナに忠誠を誓うのだ。プリプリした唇が僕の唇を押しのける。弾力を舌で頬張って、繊細なシワを味わって、想いのあまりミーナに吸い付いてしまう。  肉厚な下唇。それが僕の顔全体を受け止める。小麦色の肌を彩る、薄桃のリップが柔らかい。プルンッとおっぱいみたいに柔らかく、もちもちした暖かさ。頬ずりもしてやった。とてつもない多幸感。普段食べ物を頬張るはずの場所が、僕を受け止めて、柔く優しく包み込む。おっきくて、暖かく、女性的な感触。  最高だった。  そうしているうち、僕をミーナがつまみ上げる。暖かな肌の上から、涼しい外気へと吊り上げられ、眼下に広がるのは、褐色美少女の微笑。  そして、いたずらっぽく唇を開くのだ。  薄くリップを塗ったような唇が、二つ弧を描いて開けれていく。見えてくるのは綺麗な舌先で、薄暗い中にわずかに差した光が、色っぽいその口内を照らし出す。  目をつむり、あーと舌を出し、どことなくエロティックな表情のミーナ。  ゴクリ、と、つばを飲む。  魅せられたから、だけじゃない。  覚悟を決めるために。  そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、ミーナはわずかに頬を染める。  そして、丸い舌先を伸ばすと……。 「あー……むっ!」  一気に僕を頬張るのだ。  まるでぶどうの房に下から咥えるようなような素振り。  しかし被食者からすれば、そんな可愛らしいものではない。  僕は思わず悲鳴をあげる。丸く開いた可愛いお口、それがいっきに迫りくるや否や本性を現し、艶かしく光る口内で一気に僕に食らいつくのだ。急に生ぬるい空気に触れたと思うやいなや、もう足は舌の上、ヌルっとローションみたいな唾液で口内に滑り込むと、エッチな唇はもう、パクンと僕の胸を咥えていた。 「……♪」  何度経験しても慣れない状況。  僕はもがいて、けれど褐色娘様はそれを笑うのだ。”つ・か・ま・え・た♪”と、目は笑い頬は緩み、ムニムニの唇はもう僕を捕らえて離さない。その間にも、唇の舌では僕の足が必死にあがいている。でっかいベロを蹴って、口蓋に足をかけようとして、でも、そこは巨人の口の中。何度も跳ね返されては疲れ果て、抜け出すことなんて絶望的だった。こんな全力の抵抗も、口の外には少しも届かない。完全に僕は無力だった。  ミーナはむはむと唇を押し付け、こすり合わせ、僕を柔らかな感触でもみくちゃにする。口の中ではローションをたっぷり絡ませたベロで僕を舐め回し、トロトロとエッチな感触を思いっきり僕に浴びせかけた。両手を広げたってミーナの唇の端にも届かない。そんなでっかい美少女の口に加えられ、少しずつ、少しずつミーナの口内の一部にされていくのだ。 「やめてっ、やめてミーナ! ヘンに、なっちゃうぅ……!!」


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