SamSuka
夏目なつめ
夏目なつめ

fantia


凛とした様は氷に似て

§  潜んで忍んで漁って逃げて、僕は糧を頂戴する。生きる道はそれしか知らない。僕は今日もコソ泥だ。  或いはそれも、小男の生きる宿命というもの。若い娘ならいざ知らず、ただ小さいだけの小人男子を飼う物好きはそう多くはなかった。飼われていたのも今は昔、今では当然のように捨てられ食うにも困る野良暮らし。50㎝の体は猫というには大きく、種馬扱いになるのもよほどの美男子、来る日も来る日も少女に犯される日々だと小耳にはさむ。それと今の野良人生活、どちらが良いかというとわからないけれど、とにかく生きているのだからそれで良い。    何より最近、新しい餌場を見つけたのだ。  素晴らしい一室だった。風通しのいい窓は無防備に開いたまま、一直線に食物まで僕を通してくれる。なによりその食事というのが上質で、会ったこともないその姿には頭が上がらない。  これで生きていける。それは随分勇気づけられることだった。わずかに開いた隙間を縫って入り込む、巨人の国の静かな一室。その静謐さが緊張を強いはするものの、それも今日は何が待っているかと思うと期待の鼓動に変わってしまう。とてつもなく広大な空間を囲う、コンクリートの壁、わずかな温かみを伝えるフローリングの床、置かれた家具は少なく無造作で、持ち主の人となりを伺わせる。  そして、今日も。  ソファの先、ローテーブルに皿の影を見つければ、僕は歓喜のあまり快哉を叫んでしまいそうなほどだった。  けれど、それでぬか喜びする僕じゃない。  慎重に周囲を見渡し、身の安全を確認する。  そこは相変わらずの謎満ちた部屋、生活感がない割には人の気配があって、無機質なホテルのようだ。  見上げれば、ソファから覗くのは美しい足。トレンカタイツを穿き、踵とつま先が白い肌を晒している。ギョッとしたのも確かだが、若い女性のものなのは一目瞭然で、ほっそりした半素足が頭上で揺れるのがどこかドキドキさせた。  どんな人なんだろうか。  眠れる美女に想いをめぐらすが、ともかく今は逃げることが先。  はしゃぐな慌てるなと念じつつ、巨大なソファの陰に隠れ、極力静かに一歩ずつ。抜き足差し足とはこのこと。目指す先にはごちそう、今日のご飯はナッツだ。 (これならしばらくは……)  そう思った瞬間。  目の前で脱出口が、勢いよく閉まる。  腹の底が、一気に凍った。 「……」  仰げば、ソファ越しに僕をジッと見つめる巨大美女の瞳。ビルにも思える壁を越え、銀髪を滝のように垂らしながら、小人を見下ろす真っ赤な瞳。  それが、どうでも良さそうに僕を見下ろし、窓を閉めてしまっていた。  僕は固まった。無理もない。家宅侵入、窃盗未遂、それも、あろうことか巨人種の家に。その場で処刑されるのが当然の流れだ。  しかも相手は長身で、ゴキブリ同然の小人相手に怯えるほどヤワではなさそうだった。  詰んだ。  けれどそれが、僕を絶望させることはなかった。  絶望する余裕もなく、その美しさに見惚れてしまっていのだ。  美しかった。  浮世離れした美しさに僕は魅入られた。どこか遠くを見ている目が、銀糸の滝に似た長い髪が、透き通る肌と絶妙に均整の取れたプロポーション、そのどれもがこの世ならざる者に見せていたのだ。白蛇を思わせる肌は白く髪は白く、達観したような瞳は瞼の隙間から赤く燃えている。  けれど、夢じゃない。  背もたれにどっしり乗っかっている乳房は大きく生命感に満ちていて、肌に貼りつくキャミソールも乳房型に張りつめている。  そして、彼女が呼吸を一つするごとに。  揺らぐ大気の生気、揺れる乳と締まった体の存在感、何より、視界を占領する圧倒的な迫力が。  彼女の実在を、生々しく伝えていたのだ。  現実感が希薄なほどに美しく、目が離せなくなるほど肉感的。この矛盾がますます彼女の存在感を引き立てて、僕を立ち竦ませる。 「…………」  温度のない視線が、ジッと僕を見つめる。燃えるように赤いのに静かで冷たく、謎めいた美女のすべてを表しているようだ。  そんな視界が、不意に揺れたと思うと。 「わっ、ひゃっ……!?」  僕は首根っこを掴まれ、そのまま家の奥へと拉致されてしまった。  それは、彼女に至近距離で見つめてもらった最初で最後の時。  それ以降始まった足元の生活の中、この一瞬を何度繰り返したか知れない。  とりわけそれが、狂おしい蹂躙の時にあっては。 *  惨殺されると震えていた僕に、訪れたのは死でも解放でもなかった。  正確を期すなら、何も訪れなかったというべきかもしれない。  確かなのは一つ、五体満足で一日目をやり過ごせたという事実のみ。  もちろん、ただで済むはずもない。それは、逃がされも踏み殺されもしなかったというだけのこと。あの時、きっちり窓の鍵をかけた巨女神様の背中を見上げたとき、直感的に僕は飼い殺しされることを悟った。  その後起きたのは、ある意味以降の生活を象徴する出来事だった。  無関心と放置、生殺しと不可解。その全部だ。  だから、汚れ切った僕を風呂場に放り込んだ時も。    僕は放置されたまま、途方に暮れて巨大なバスルームに立ち尽くすことしかなかった。 「あ、あの……っ!」  けれど続く言葉をくしゃみが許さない。真っ裸なまま冷たいタイルの上に立たされて、巨人種サイズの世界にたった一人。結局湯の蛇口を開くことはできず、震えながら湯桶に残った水を浴びざるを得なかった。 (僕、どうなっちゃうんだろ……)  歯の根も合わないほど身を震わせて、やけくそに肌をこする僕。虐待されるかと思えば放置され、優しくされるわけでもなくなぜか風呂場を貸されている。あの無口無表情な美女に僕は、既に翻弄されつつあった。いつ生皮をはがれ、剥製にされても驚かない。  水面に映る自分の顔。その情けなさと言ったら。  だがそれも、不意に揺らぐ。  「……あれ?」  そこに、重い地響き。何やら、巨大なものの立てる音が近づいてくる。  代わって響く、何かのこすれる音。  落ちる音。    背後でドアが開く。  凍える体を更に縮こませ振り返れば。 そこには、全裸の彼女が立ちそびえていた。 「へっ!?」  突然現れた全裸の長躯。僕は完全に硬直するけれどそれに構う巨女ではない。巨大な足で踏み入ってきて、素足爆撃で僕を右へ左へ翻弄させるのだ。  こんな状況じゃ、待望のお湯もどう受け止めたらいいかわからない。どんどん温かくなってくる湯桶の中で、僕の頭は疑問符だらけだった。  何より。 (なんで、こんな惜しげもなく……!)  見せつけられたのは、直視できないほど妖艶な美女の裸姿だった。 それは、艶めかしくうねる継ぎ目のない肌。そんな真珠色の肌が、爆乳型に、安産型に伸び広がって視界一杯に広がるのだ。柔らかな裸婦像のような、取扱注意のむちむち媚態。そこにささやかに主張する、銀糸のような陰毛が麗しい。濡れそぼったそれから滴る雫に打たれることさえ、どうしようもなく僕を興奮させる始末だ。 (ダメだ、エッチすぎる……!)  遠目で見るだけでも射精ものの体つき、それを真下から、大パノラマで眺めればどれほどの絶景が広がっているか。スラッと長いおみ脚に視線を走らせれば、空には丸々どっしりとした豊満なお尻。シャンプーの泡が尻肌に沿って流れ落ち、余計に丸みを強調してしまっている。そして、更に上空では重く濡れた銀髪ロングが波打って、背に貼り付き乳房に貼り付くのだ。 「あ、あの、僕、出ます……!」  いつまでも見ていたい光景。でも一踏みで僕を踏み潰せる女神さまに、このギンギンの愚息を見せる訳にはいかない。必死に前かがみになって僕は耐えた。  もちろん、わざわざドアを開けてくれるはずもないのに。 「すみません、その、僕、出して、出してください……!!」 「……」  哀訴する僕にくれたのは、冷たい冷たい視線、ただ一つ。  その、蔑むでも憐れむでもない視線に思わず股間を押さえると、やっと少し“フッ”と笑ってくれるのだった。     それから、ほっそり白い素足で小突くと。 「ぎゃっ!? やめ、やめてください……!」  泡だらけの足で、ぐりぐりと僕の体を洗い始めたのだ。 「潰されッ、だ、誰か、助けてえ!!」  湯桶から逃げ出そうとする僕を、汚らわしそうにしつつも淡々と揉み洗う美女のおみ足。泡だらけにされつつ、僕の上半身より大きな存在にもみくちゃにされて抗えない。しかもふっくらとした足裏は気持ちよくて、繊細な指紋に、巨体を支える柔らかさに、否応なく股間を刺激されてやまない。  それはまるで、汚い靴下の踏み洗い。  あまりに乱暴な汚れ物扱いが止まるまで、ひそかに二度、僕は耐えきれず性を泡に紛れさせることになった。  瑞々しい肌をころころ転がる、雫の流れが目に沁みつく。  “くちゅくちゅっ♡”と僕をイジメるおみ足が、上空で“ぶるんっ♡”と震えるおっぱいが、脳裏に焼き付き離れない。  そしてやっと猛攻が済んだ後も、しばらく僕は放心状態で痙攣することしかできなかった。  でも、まだ終わりじゃない。    湯船の城壁を、脚が飛び越え、腰を下ろすと。    僕ごと、身を浴槽に沈めたのだ。 「あっ、あのっ、僕にはもったいないので……」  恐縮したていで、けれど明らかに自衛目的で。  狭い湯船、背後の巨体から股間を守ろうとする僕。  そんなの、無駄だというのに。  だって、耳に聞こえる“ちゃぷんっ”と乳房の揺れる音が耳を犯し。  左右では、窮屈そうに折りたたまれた美脚の柱。    おまけに、浮力でぷかぷかと浮いている爆乳に乳首で背を撫でられたりなんかしたら。 「ッ、~~~~っ!!」  耐えられなかった。  濃い物が先端から溢れ出る感覚。  次の瞬間飛んできたのは、僕と同サイズの足だった。 *  それから、数日の間。  平穏無事に、生殺しの日々が続いた。  何も起こらないというのはそれはそれで不安だった。彼女の考えを全くつかめないでいたからだ。  タダほど怖いものはないと言うし、食用か実験台にでも供されるんじゃないかと怯える日々。一度閉められたドアはもう自力では開けられず、ただ巨体の存在感に肌を舐められることしかできなかった。  語りかけても答えてくれない。服従の意志にも哀願の言葉にも一瞥すらもらえない。時折ガーネットのような瞳で見つめたと思えば、邪魔だと言わんばかりに足が飛んでくるのが関の山だった。  結局、彼女が“朔”という名前だと知るのにも数日を要したほどで、短く自分の名を零してくれた時には感涙さえ催す始末。いよいよ自分の存在意義がわからなくなれば、不安は更に高じてやまない。  何事も起こらなかった日の夜、背を向け眠るたおやかな女体の山を見上げるたび、彼女自身僕を持て余しているのでないかとすら訝しんだ。  懊悩は尽きない。  けれど一方、朔様は今もご就寝中。  ソファに気だるげに横たわり、死んでいるのではないかと不安になるほど静かな午睡に沈んでいた。  静謐という言葉は彼女のためにあるのだろう。  伏し目がちな切れ長の目も薄っすら色づく唇も、今は静かに閉じられ動くこともない。シュッとした美人なのに、その表情は気だるげで物憂げ。眠ってしまっては、何人も触れてはならない繊細な美を醸し出す。  それを前に出来るのはただ、瞼が再び開かれ辺りを探って、生気を僕に感じさせてくれる瞬間を待つだけだ。  ベッドの見える位置で膝を抱えて、僕は彼女の起床を待った。  肩元で、シーツがはだけてしまっている。  直してあげるのが僕の務めだろう。たとえ感謝されなくても。  そう思いベッドをよじ登って、  ギョッとする。  何も着てない。  全裸だ。眠れる美女が全裸でシーツにくるまっていた。 「な……っ!?」  瞠目してしまうのも無理はない。5m以上もの裸体が目の前に広がって、艶めかしい彫刻のような肌を晒しているのだ。継ぎ目もなく曇りもない美しい肌、それが鎖骨を、乳房を、腹を尻を足先に至るまですべてを惜しげもなく見せつけてくる。  目が離せない。  魅了されてどうにかなりそうだ。    ご主人様の体を、不逞にも視姦してしまう僕。  そんな僕の視線が、あまりに熱烈だったのか。  不意に朔様の喉が上下し。  うっすらと、瞼が開いた。 「……」  それから、あの視線をこちらに向けるのだ。 「ッ!? ち、違うんです朔様、これは……」  しどろもどろになって僕は弁明しようとする。  そんな様を、一糸まとわぬ巨人女性は見るともなしに眺め遣り、  フッと、勃起する僕の一物を笑ったのだ。 「~~っ!」  真っ赤になって股間を隠す僕。それでも、朔様が体を起こすに合わせ、“たぱぁ……♡”と流れるおっぱいの動きを見れば堪らない。だって視界の中で肌色がうごめくさまはダイナミック。とてもじゃないが無視できる光景ではない。  しかも上体を起こせば上から僕の愚息は丸見え、見下ろされる感覚だけでゾクゾク僕を興奮させてしまうほど。小ばかにしたような笑みを浮かべれば、奴隷精神染み付いた小男をますます翻弄してしまう。  それから、朔様が身じろぎすると。  掲げられたのはスラっとした美脚。こちらに体を向き変えるように腰をひねらせると、長い脚をこちらに振り落としだす。  潰される……!  そう思い反射的にうずくまる僕。けれど、そのおみ脚は頭上を飛び越え。  “ズダンッ!”と、僕の側に振り下ろされたのだ。  跳ね飛ばされた僕を他方の太ももで受け止めれば、それは僕をM字開脚の間に閉じ込める構図。長くも肉感溢れる脚たちで僕を囲み、その小ささを強調するようにそびえさせた。 「あ、あの、朔様、何を……」  他方朔様は、意味ありげに乳房を撫で、手のひらでたぷたぷ揺らしたり、むぎゅうぅ……っと寄せ付けたり。それから手でお腹のラインを撫で、銀糸の陰毛へ、内股へと指を滑らせると。  “くぱぁっ……♡”とおまんこをこじ開けたのだ。


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