縮小スキエンティア
Added 2021-04-29 10:15:56 +0000 UTC§ 「まったく、キミは度し難いな」 穏やかな、けれどわずかに慈愛を含んだ声が言う。荘厳なほど巨大な少女が俺に笑みかけ、呆れたように、愛しむように。 「度し難い、本当に度し難い小人だよ」 一点のくすみもない見事な女体をそびえさせ、小さな俺へと語り掛ける。もう言葉も必要ない。ただ、その乳白色の体に焦がれるだけだ。 「まあいい。ボクはキミを愛してみよう」 それから、女神はクスリと笑うと。 「“そういうもの”、なんだろう?」 かなわないな、という風に笑ったのだった。 ⁂ 遡ることわずかに三日。 チャイムが鳴り、いそいそと移動教室へ向かう折のこと。 「出た、雪西」 妖怪にでも出くわしたように、友人が言った。 「……ホントだ」 見遣れば前方から、トテトテと歩いてくる小さな人影。ちんまりした背丈にフワフワとした白衣が眩しく、周囲のひそひそ話にも涼しい顔でふんふん鼻歌交じりだ。 雪西紗英。 本学きっての有名人とは、彼女のことである。 「あいかわらずちっちゃいな~」 「急にデカくなったら怖いだろ」 「頭も小さいからスタイルは悪くないんだがな」 「あれのどこにあんな頭脳が詰まってるのやら」 彼女の非凡さに、あまりに凡庸な感想を吐く俺たち。一方の雪西は白衣をなびかせ科学者然とした格好、その姿は伊達ではなく、成績優秀、特に科学の成績が抜群で、彼女のクラスの授業では教師の背筋が伸びるほどだった。 けれど、何より目を引くのはその容姿。 小動物然としつつも美しい、その出で立ちにあった。 低い身長に制服のブレザーをまとった姿は、いかにも美少女といったところ。長いまつ毛に静かな琥珀色の瞳、その落ち着いた相貌が麗しい。スラリと長い手脚がスタイルの良さを際立たせ、なんというか、目の離せない魅力を放っている。 それは、まごうことなき白衣の美少女に違いない。 違いない、のだが。 「おい、あいつ何を持ってるんだ?」 「あれは……、鉢植え??」 様子がおかしいのはその所有物。腕に抱えているのは、巨大な食虫植物の鉢植えに違いない。いかにも南国的な色の捕虫器官がブラブラ揺れていて、変なにおいが漂ってきそうだ。 「また何かやってるよ……」 そう、あの御仁。奇行が目立つのである。 とびきりの美人だがとびきりの変人で、寧ろ後者の方面で勇名をはせていた。所属した科学部からひと月と経たず全部員が退部したというのは、嘘のような本当の話である。 「いくら可愛くてもあんな奇人、物好きじゃなきゃ近寄んないよな」 「……まあな」 あいまいに返事をしつつ、その姿を視線で追う。 ひらひらと白衣をたなびかせ、歩く姿は一見優雅。だが華奢なせいでサイズがないのか、床に引きずりそうになっている。そこに流れる長い黒髪もクセ毛で、歩くたびぴょこぴょこ跳ねていた。 なんというか、全体的に小動物っぽい。 「嫌いじゃないけどな」 「お、お前物好きか~~?」 思わず呟く声を、耳ざとく聞きつける友人殿。無視して俺は足を速める。 「……お前、いつもそっけないよな」 「そうかもな」 僅かに寂しそうに言われながら、俺は教室の中へと入っていった。 「……」 ちらりと、雪西が一瞥くれたのにも気づかずに。 ⁂ その後も、彼女は独特のテンポ感で学生生活を送っていった。 黙っていればこそ、どこか周りを突き放したような大人びたただの美人。だが、何を考えているんだかいないんだかわからないその頭脳は凡人には計りがたく、奇行の類は例に事欠かなかった。 ウツボカズラをすり鉢で潰しているのを見かけたと思えば。 実験動物なのか、ネズミの入った籠をぶちまけて教室を騒然とさせたり。 挙句、オカルトまがいの本まで読んでいたのだからいよいよ理解に苦しむ。学際研究は結構なことだが、それがどこに行き着くのか。 目が離せなかった。 もちろん、野次馬的な興味もある。正直、遠巻きで見てるとめちゃくちゃ面白い。 けれどなにより、俺はどうも物好きらしかった。 「……」 雪西が、ずっとこちらの姿を捉えていたことにも気づかないくせに、だ。 ⁂ そんな雪西から、突然実験室からお呼びがかかったのはしばらくしてのことだった。 「……失礼します。あのー、雪西?」 薬品の臭いに顔をしかめながら、室内を覗く。 「やあやあ、よく来てくれたね」 窓枠に腰掛けているのは、純白白衣をまとうちんまりとしたシルエット。黒ストのスラリとした脚を投げ出して、なんというか、実験室の小さな女王のようだ。コーヒーのような黒髪をくるくると跳ねさせ、どこか儚げに見える。しかしその表情は大胆不敵そのもの。その視線をまともに受け止めてしまったのだから、思わず胸がドキンッと飛び跳ねた。 「悪いね忙しいところ。いや、忙しくはないか。ならまあいいかな? ほらほら、そこに座りたまえよ。椅子はそこだ」 「え? あ、ああ……」 のっけからいいパンチを打ってくる雪西。他方で俺は、突然ペラペラと話し始める、そのハスキーな声に耳が痺れる。おちょくるような声音とセリフがクセを感じさせるが、それすら甘い引力を伴って俺を惹きつけた。 ダメだ、ドキドキしてしまう。 胸が苦しいくらいだ。 「で、何の用?」 ろくに知らないくせにと言われたらそれまでだが、やはり彼女のことを憎からず思っているらしい。いつもの癖で妙にドライな口をきいてしまうが、それもご愛嬌といったところだった。 「まあ待ってくれよ。いまコーヒーを淹れるから」 そういって、ガチャガチャと騒々しく実験道具を取り出す少女。アニメでよく見るやつだ。 「……実験器具でコーヒーとはまたおあつらえ向きな」 「うん。一度やってみたかったんだよね」 「今日が初めてかよ」 「安心してくれ。もちろん新品だ」 あっけらかんと言いながら、重そうにポットを傾ける雪西。ぷるぷる腕が震えているが、流石にその小躯では重いのか。いや、重かろう。いかにも運動出来なさそうだし。背も低いし。 「手伝おうか?」 「いい。自分で淹れた方が美味しい」 「さいざんすか」 ことここに至っては言葉もない。にべもなく断る雪西に、ますますどう伍すべきかわからなくなってくるばかりだ。 「……」 「……」 俺、ここにいていいんだろうか? っていうか俺、なんで呼ばれたんだ? 一人でソワソワしている自分がバカに思えてくるが、当の雪西はコーヒーに夢中のご様子。傍らに人無きが如し。意味は違うけど。 「それにしても」 そんな彼女が、次に口を開いたのはコーヒーを淹れ果せた後のことだった。 「気づいてないとでも思ったのかい?」 「?」 コーヒーを差し出しながら、曰く。 「好きなんだろう? ボクのこと」 「ぶっ!?」 全く、脈絡も何もあったものではなかった。思わずコーヒーを吹く俺を笑いながら、なお彼女の表情は涼しげなままだ。一方の俺は平静でいられようはずもない。相手に好意を知られる、しかもずっとバレてたとなればなおさらだった。 「い、いつから知ってた!?」 「ああ、やっぱりそうだったんだね」 「へ?」 「言ってみるものだね」 「……お前、試したのか!?」 「ははは、怒らないでくれよ! それにしても、意中の相手を前にずいぶん冷静だねぇ?」 鎌をかけたくせに悪びれもせず、ニヤニヤと笑うマッドサイエンティスト。こいつ、サイコパスに片足突っ込んでるんじゃないか? ペースを乱して不意を突く、しかも人の心も知ったことではない。ドキドキしているのを悟られないのが幸いだが、その分いつボロを出すかと思うと冷や汗が出る。 「いやあキミも存外わかりやすいね。でもそんな態度だと女の子は逃げていくんじゃないかな? あいにくボクはこういうことはやりつけないので知らないけど、もう少し愛嬌とかあった方がいいと思うなぁ♪」 ダメだ、こいつ。 こっちの身がもたない。 「俺、帰る」 「まあまあそう言わないでくれよ。ボクらの仲はまだ始まったばかりだろう?」 「いいや、帰るね。 ……さ、さっきのことは誰にも言うなよ?」 竜頭蛇尾に言い残しつつ、そそくさと立ち去ろうとする俺。 一方の雪西はケラケラ笑いつつ、 「まあ、もう帰れないんだけどね」 一言、そう言った。 「なんだって?」 「今にわかるよ。……ほら」 そう言うや否や。 突如、心臓に電撃が走った。 「がっ、う、あああ!?」 ドキドキなんて可愛いものではない強烈な動悸に、思わずうずくまる。体が熱い。手足が痺れて、妙に頭がクラクラする。 まさか、一服盛ったのか? 「おや、苦しいのかい? おかしいな、副作用かな? ちょっとどんな感じか教えてくれないかな?」 自分に好意を寄せているはずの相手が倒れているというのに、この言いよう。しゃがんで俺の様子を見ているようだが、どうにも霞んでよく見えない。 「お前、人が苦しんで、るのにな……!」 「口はきけるようだね。ああ、効いてきた効いてきた♪」 そして、ようやくピントが合ったと思えば……。 「なっ」 目に飛び込んできたのは、しゃがんだ雪西の、スカートの中身だった。屈んで、股間を雪西に見せつけられていたのだ。ふくらはぎやふとももの、むっちり感が増した肉付き。黒ストのマットな艶が肉感を強調し、肌の透けているのも色っぽい。なにより、存外に可愛らしい薄桃色のショーツが目に飛び込んできて。 いかん、いくら雪西でも、これはまずい。 危うく魅入ってしまう視線を、何とか股間から引きはがした。 「くそっ、体が熱い……、お前、何しやがった……?」 ふらふらと、千鳥足になりながら立ち上がる俺。 そして、眩む目であたりを見回せば。 「おはよう」 しゃがんだ少女の顔が、目の前にあった。 「……ん?」 「なんだい? そんなに見つめられると照れるじゃないか」 頬を染め視線を逸らす雪西。その仕草こそ愛らしいが、今はそれどころではない。 どう考えてもおかしい。わずかに見上げられてはいるが、しゃがんだ雪西と大差ないこの背丈。さっきまで俺は、雪西を頭一個分以上上から見下ろしていたはずじゃないか? 一方の雪西は立ち上がると。 「実験は成功したようだね!」 そう言って、1.5倍になった躯体で俺を見下ろしたのだ。 「なっ!?」 「うんうん、計算通りの大きさだね! なかなかどうして、役に立つじゃないか!」 そういって、わーいわーいとでも言いそうな勢いで俺を持ち上げくるくる回って見せる雪西。その満面の笑みこそ可愛らしいが、俺を実験台にしてのそれとなれば話も変わってくる。 「こっ、こらっ、持ち上げるな! 子供じゃないんだぞ!?」 「ははっ、軽いなキミは♪ ボクでも楽々じゃないか♪」 「おい、服が、服が脱げる……!」 ぶかぶかになってしまった服をなんとか抑えながら、俺は雪西の細腕に振り回されるばかり。だって、110㎝まで縮んでしまったのだ。さすがに意中の女子を前に全裸は憚られ、尊厳を守ろうと必死だった。 一方の雪西は、無邪気に笑って成功を喜んでいた。 いたのだが。 「さて」 ピタッと手を止め、急に冷静になる少女。まるで猫のようだ。そう思えば確かに、顔立ちもどこか猫っぽい。急に足元に叩き落され呻く俺を、一顧だにしないところもまた。 「何から調べようかな。そうだね、まずは力比べといこうか」 子供大になった俺を、ニヤニヤしながら見下ろす雪西。それから、逃げようとする俺の前に立ちはだかる。 「これで怪力だったりしたら困るからね。どうだい?」 そう言って、せせら笑うように俺を見下ろす巨大娘。その顔は余裕の表情そのもの。 舐められてる。 もう、ヤケだった。 「怪我しても知らないからな」 数歩後ろに下がると。 一気に俺は、駆け出した。 体当たり。勝てるとも思えない腕力勝負にこの体じゃ、全力でぶつかるほかなかったのだ。 敵うわけない、その体格差。 けれど、その細い体は予想以上に非力で、 「きゃっ!?」 可愛らしい声を上げて、一、二歩後ろへよろけたのだった。 もちろん俺は跳ね返されて後ろへ吹っ飛ぶばかり。それでも、予想を裏切ったという点では敢闘したといったところだった。 けれど、それ以上に俺の心をとらえたものがあった。 「おいおい、いきなり体当たりはないんじゃないかな? いくら子供同然の体でもさすがにびっくりしたよ。手荒いなぁ」 さしもの雪西もムッとしたようで、いや、というよりは思わず出てしまった声を恥ずかしがっているようだが、少々饒舌になる。 そして腰に手を当てて俺へと屈みこむのだが。 「まったく、っておい、聞いてるかい?」 子供の背丈になって見上げる雪西は、なんだか美しくて。 思わず、魅入ってしまう引力を放っていた。すべての寸法が1.5倍になって、これまで見えなかった細部までその美貌が見えてしまうのだ。ぷるぷるとした唇に、大きく丸い茶色の瞳。そして何より、視線を奪うのは。 (こいつ、巨乳だったのか……!) 屈んで豊かに吊り下がる、まるまるとした乳房だった。デカすぎる訳ではないが、それは明らかに豊満と言って良い。ちんまりとしたイメージが先行していたし、大きめの白衣とカーディガンが起伏を隠してよく気づかなかったのだ。ぶつかった時、確かに感じた“ばるんっ!”という独特の弾力。それに心を奪われて、途端に悪いことをした気がしてくる。隠れ巨乳。この俺の目をしても見抜けなかった。 「ジロジロみてなんだい?」 「い、いや……」 かぁっと顔を赤くしなんとか視線を引きはがす。そして、ごまかすように言った。 「と、とにかく、力比べには勝ったんだから戻してくれ」 「そうだね、確かに思ったより力はあるようだ。だけど……」 雪西は少し腕を開き、ふわふわとそれを揺らして見せると。 「これならどうだい?」 そう言って、突如俺に抱きつくのだ。顔がぱふっと巨乳に埋もれ、吸い込んでしまう女子高生特有のいい香り。骨抜きになったところを一気に壁に押し付けられたと思えば、次の瞬間には膝で股間を責められていた。 「この体勢なら力も入らないだろう? ははっ、もう硬くなってきたね。本当はサルなんじゃないかい?」 語りかけるも俺を胸で押し潰し、バタつく腕も壁に押し付けてしまう。そして太ももで掬い上げると、“グリッ、グリグリッ♡“と股間をイジめてくるのだ。雪西の丸っこい膝が、膨らんだ股間にめりこみとてつもなく気持ち良い。しかも谷間の香りを嗅がされながらでは嫌でも西村の存在を感じさせられて、余計に快感を覚えてしまう。 ああ、このまま雪西に溺れたい。ぽふっと乳房に顔をうずめ、大きな体で抱きしめられて。しかも、力比べのためだけに性欲を掻き立てる。男のリビドーを弱点としか思わず、ご自慢のボディで弄んでいるのだ。薬品の臭いがする部屋の中、ふわふわと雪西の香りだけが鼻腔をくすぐる。何かに目覚めそうだった。 一方の雪西は冷静そのもの。 そして、喘ぎそうな俺の顔をニヤニヤ見下ろしながら。 「言い忘れてたけどね」 そう、胸元の俺に囁いた。その唇は質のいいモルモットを手にした喜びで満ちていて、嗜虐的な声音を隠しきれない。 「この薬は、射精するたびキミの体を蝕むんだ。縮むってことだね。退廃的だと思わないかい?」 「……正気で言ってるのか?」 「嘘だと言って欲しいかい?」 「……くそっ!」 そういう間にも、膝は残酷に股間をイジめてくる。“縮め♡ 縮め♡”というように甘く、しつこく、俺の気持ちいいところを刺激してくる。 「おかしいな。これじゃ気持ちよくないのかい? こういうのはどうも不慣れだからね。少し体勢を変えた方がいいのかな?」 パッと手を離して、俺を床に落としてしまう。俺はぐちゃっと叩き落され、それでもドアへ向かって這いずり始めた。 「だ、誰か! 助けてくれ……!」 したたかに腰を打ったのも構わず、なんとかマッドサイエンティストから逃げ出そうとする俺。 一方の雪西はゆったりした歩幅でこちらに近づいてくる。 「ひ、ひぃ!?」 「意外に粘るね。見直したよ。それともボクのメスとしての刺激が足りなかったのかな? それなら申し訳ない限りだ」 それから、怯える俺の腕をつかむと。 「なら、趣向を変えてみようか」 背後から羽交い締めにして、脚も太ももで挟んでしまうのだ。そうすれば俺は西村の体に埋もれて、白衣で外界からも隔絶されてしまった。股間は無防備。頭は谷間の中。黒ストとむっちりした肉付きのコンビネーションがスリスリ下半身を包み込み、全方位から俺を興奮させてくる。 勃起するのは当然のことだった。 「あはっ、反応がいいじゃないか! もしかしてマゾなのかい? なら都合がいいね。どこまで縮めるか試してみよう♪」 そういいながら、触診をするような淡々とした手つきで俺の股間をいじくり続ける雪西。ほそっこい指先で亀頭をこすり、シコシコと陰茎をストロークしてくるのだ。機械的に俺を射精させるその手つきはけれど温かくて、柔らかくて、気持ち良くて。なにより、好きな女子にこんな目に遭わされている。それが奇妙な興奮を煽ってくる。 白衣の内側に籠る、雪西の良い匂い。おっぱいのずっしりとした重さに、脚を挟む太もものむっちり感。逃げ場はない。全方位雪西だらけだ。 「早く出すんだ。どうせ今のボクには勝てっこないからね。それとももっと手荒に扱われたいかい? 縛らないだけ温情だと思うけどね?」 くすくす笑いながらも、滑らかな指は淡々とペニスを擦り続ける。触診でもするかのような無感情な手つきは、完全に実験道具を扱う科学者のそれだ。モノとして扱われている。ふわふわな香りで酔わされて、むちむちの太ももで拘束されて、人間扱いもされず射精を強要されるのだ。泣きそうだった。 けれど、生理現象は西村の掌の上で転がされて。 「あはっ、あっけないものだね♪」 西村の手に、粗相をしてしまうのだった。 ⁂ 「84.6cm……、半分サイズってところかな? もうボクの腰元にも届かないね。比べてみるかい?」 メジャーを巻き戻しつつ、雪西はニマニマとそう言った。予想通りの結果に喜色を浮かべ、誇らしげですらある。そして俺を見下ろして、おちょくるように屈みこんだのだ。 更に縮んだ小男に、憐笑さえ浮かべながら。 「さて、次の縮小に入ろうか。先は長いぞ。限界までキミには縮んでもらうんだからね♪」 そう言って、忍び寄る美少女の魔の手。 それが、まさに俺を掴もうとした、その時。 予鈴が鳴った。 「おや。もうこんな時間か」 「も、もういいだろ? な? 突然いなくなったら先生も困るし……」 「……仕方ないな。すまない、根回しが足りなかったようだ」 見当はずれな詫びを入れながら、嫌々解毒薬を手にする雪西。なまじ合理的な分、一度納得すれば後は素直だった。ただそのしかめっ面と言ったら他になく、みすみす大物を逃した漁師のようだ。 「解毒剤の検証だ。ミュータントになったりしても……恨まないでくれよ?」 「勘弁してくれ……」 そう言いながらも他にしようもなく、俺は一息にそいつを飲みほした。 「……うん、こちらの効果も実証されたようだね」 多分、これを試したい気持ちもあったのだろう。 さっきよりずいぶん小さくなった雪西を見下ろしながら、俺は呆れたようにため息をついた。 § なんとか元の体を取り戻した。 あとはもう、そそくさと家へ帰るだけ。 の、はずだった。 「やあ、来てくれると思ったよ。……おや?」 放課後の実験室に慌てて飛び込んだ俺を、薄ら笑いを浮かべ雪西は出迎えた。 それから既に縮みつつある俺の姿を見ると、好奇心に目を輝かせたのだ。 「もしかしてキミ、授業中にしけこむシュミがあるのかい?」 「ねえよ!! それより早く、こんな姿誰かに見られたら……!」 視線は既に雪西の胸元を下回り既にシャツもズボンもぶかぶか、歩くうち足がもつれて転んでしまう始末だった。やっと戻ったと思った身長も逆戻り。きっちりとさっきと同じ、80㎝の赤ん坊サイズだ。 そんな俺を机に乗せながら、雪西は目をキラキラさせて観察してくる。 「これはこれは……。どうやら解毒剤の効果が切れたようだね。ちょっと検査したいから、生体組織を提供してくれないかな?」 「い・や・だ! それより解毒剤を……」 「まあまあ、人類の進歩に貢献するチャンスだよ?」 「絶対に嫌だ!」 断固拒否する俺。 一方の雪西は急にしおらしくなると。 「ダメ、かな……?」 顔を袖で隠し、机の上の俺を上目遣いに見つめるのだ。 うるうるとした瞳を長いまつげでパチクリさせ、しっとりした視線で俺を見上げる美少女。 なんだよ。 可愛いじゃないか。 憎からず思っている相手の、愛らしいまなざし。 美少女としての雪西。 俺の急所だった。 「い、いや、まあ、痛くなければ……」 絆され、思わず口走ってしまえば。 「……言ったね?」 急に表情を戻し、ニヤリと仄暗い笑みを浮かべるマッド女子高生。 「おま、は、ハメたな!?」 ハマる方がわるい。とはいえ俺の小物根性が、そう叫ばせずにはいられなかった。 「恋愛感情の科学への転用は禁止されてないはずだけど?」 「人体実験はどうなんだよ!!」 「いやなに、自由契約というやつさ。愚行権もれっきとした自由だろう?」 使うものは何でも使う。恋愛も、性欲も、女子としての自分の体さえ。そして俺の抗議もなんのその、ケラケラ手を振って俺をいなすのだ。 けれど。 それが一転。 急に黙り、廊下へ目を遣る雪西。 それから。 「誰か来る」 慣れているのだろう、手早くあたりを片付けると椅子に座り、俺を足元に放り出してしまった。