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巨幼女03「相撲」

「行って来まーす」

「はーい、行ってらっしゃい」

黄色い帽子に、赤いランドセル。

小学生らしい格好で、小夜子が登校して行く。


「小学校で、上手くやって行けるだろうか」

「きっと、大丈夫よ」

清神夫妻は、元気良く駆けて行く愛娘を見送る。


虚弱だった体質は、何処へやら。

健康で美しく成長しつつある小夜子は、小学校に通う年齢になった。


「お医者さんは、問題ないと仰ってましたし・・・」

「ああ。そうだ、な・・・」

妙子の含みのある物言いに対し、剛一郎も同じような返事。


「背も胸も、遺伝なんだろう」

小夜子は、二人の想像以上にスクスクと育った。

いや、強いて言うのであれば育ち過ぎ、と言っても過言ではない。



「あの子、この一年で30cm以上も伸びたのよ。胸だって・・・」

身長『150cm』は、小学六年生並の数値である。

胸は、トップ『88cm』という大人の女性顔負けな胸囲。


高身長の剛一郎と、豊満な妙子。二人の血を引いている、と言えばそうだが・・・。

小学一年生の時点で、着せてる服は高学年用。


ブラジャーを初めて着ける年代は、個人差があるものの。

小学一年生の時点で『Cカップ』を着けなければならないぐらい、成長著しい。


「まあ、ちょっと成長が早くなっただけさ」

『オーラマスター』の事なんて、既に忘れ掛けていた頃合い。

二人は直ぐに、現状の認識が甘い事を知らされる。



――とある日の、昼休み。


「なぁ、お前がキヨガミ?」

「え、なにー」

小夜子のクラスに、五年生の男子たちが押し掛けていた。


「何で、五年生がいるのー」

「わー、なになにー」

一年生のクラスなんて、物心が付いて間もない子供も居て。

状況を理解が出来ている者は少なく、対応も様々。


「うわ、すっげ」「胸、でけー」

「ちょっとー。女の子にそんな事言っちゃダメなんだからぁ」

一年生としては育ち過ぎな小夜子を揶揄する五年生の男子たち。


「なぁ、俺らと遊ぼうぜー」「良いだろー?」

「何で、小夜子ちゃんが男子と遊ばなきゃいけないのよ」

小夜子と初めて友達になった梨花ちゃんが庇ってくれる。


「うるせー」「下級生は黙ってろよ」

男子が、梨花ちゃんに掴み掛かろうとした時。


「いいよー」

「え、小夜子ちゃん。良いの?」

庇っていた筈の、小夜子の承諾。


「うん。たまには男子と遊んでみたい」

小夜子は最近、剛一郎に余り遊んで貰えておらず。

常々、身体を動かしたいとウズウズしていた。


「おーし。じゃあ、運動場行こうぜ」

「お外? わかったー」

五年生の男子数人と、小夜子が教室から出て行った。


「心配だから、行こ」

「うん」

梨花ちゃんと他のクラスメイト女子も、心配で付いて行く。


「なにするの?」

「相撲でもしよーぜ」

運動場に仕切りの二本線と、俵かわりの円を描き始める。

男子たちは、最初からそのつもりだったのだろうか。


「えー、おすもう? まあ、いいけど・・・」

「相撲はルールが簡単だからな。一年生でも出来んだろ」

手や身体で押して、相手を土俵から出すか。

もしくは、廻しを掴んで投げて地面に転がせば、勝ち。


種目ごとでルールが異なる球技と比べれば、下級生でも簡単。

しかし、それなら他にも鬼ごっこや隠れんぼ等、遊びは幾つもあるのだが・・・。


「へへっ。誰から行く?」

「俺から行かせろよ」

五年生の中でもガキ大将と思しき大きな男子が、前に躍り出る。


「俺は、権田(ごんだ)ってんだ」

自分を指差し、そう名乗った。


「何だ、やっぱり俺の方がデケェな」

権田は確かに、小夜子より目線一つ分ぐらい背が高かった。

小夜子が『150cm』なので、下手すると160cm近いだろうか。


「目方は、俺の方が圧倒的だけどな」

古い言い回しをする権田は、実はわんぱく相撲の横綱だった。

160cm、80kgの巨体を活かし、四年生から無敗を続けている。


「権田くん。“取組”みたいに、泣かせたりすんなよ」

「わーってるって」

小学生がメインとなるわんぱく相撲は、体格差が激しく。

大人顔負けの権田が相手だと、大抵の子供は泣き出してしまうのだ。


「はっきよーい・・・のこった」

「まあ。“結果的”に泣かせちまうかもだけど、なっ」

行司代わりの男子の仕切りを受け、権田が小夜子に組み付く。


ぽよんっ。


「うっほ。すっげぇ感触」

権田は、小夜子のスカートを掴み、小夜子の身体を引き寄せる。

いや、正確には自身の顔を、小夜子の胸元に押し付けた。


「ちょ、なに。やー」

「何って。これが相撲だぜ」

物心が付いて間もない小夜子は、権田が何をしてるか良くわからない。

だけど、生理的な悪寒だけは、十二分に感じられる。


「おすもうって、どうすればかちなの?」

「小夜子ちゃんっ。土俵から押し出せば勝ちだよ」

梨花のアドバイスに、小夜子は初めて土俵の線を確認。


「なぁんだ」

「させる、かよっ」

権田は、少しでも長く小夜子の胸の感触を味わいたい腹積もり。

自分の優位になるよう小夜子を下がらせるべく、上手(うわて)に力を入れる。


「・・・っ!?」

しかし、小夜子の身体は、一向に動く気配がない。

まるで、お地蔵さんか何かを相手にしているよう。


「なん、っで・・・だ」

摺足で電車道、が自分の得意技で。大半の相手は、押すだけで勝てたのに。

今組み合っている一年生女子は、一ミリも動かない。


「“こう”やれば、いいんだ」

小夜子は、権田を真似て相手の腰辺りのむんずと掴む。


メキ・・・


「うぎぃっ!?」

権田の腰骨は突如、激痛の悲鳴を上げる。


メギ・・・


「痛って! おい、何処掴んで・・・っ」

「あとは、おせばいいんだよね」

小夜子は、ベルトのつもりで権田の腰骨をガッチリと掴んだまま。

権田の巨体を押してズン、ズンッと土俵際に寄せて行く。


「小夜子ちゃん、すごーい」「そのまま、押し出しちゃえ」

優勢な女子側のギャラリーが、一気に沸く。


「どーっん」

「う、お、わぁ・・・っ」

小夜子が両手をバーッと広げると、権田の巨体が宙に浮き。

土俵際を大きく越えて、運動場にお尻から強制着地した。


「・・・がぁっ!?」

ドゴンッ、ゴロゴロゴロ・・・


80kgの巨体が宙に浮くほどの勢いは簡単に収まらず。

権田は後ろ向きにでんぐり返しを繰り返して、やっと止まった。


「うっわ。だっせー」

「権田くん、手加減し過ぎじゃね?」

男子たちが、一年生女子に転がされた権田を囃子立てる。


「う、うるせー。お前ら、良いから全員で行け」

「えー。何だよ、それー」「どうする?」

権田以外の男子が相談して、取り敢えず二人掛かりで行くことになった。


「ちょっと、男子ー」「二人掛かりなんてヒキョウよ」

いつの間にか他クラスや学年も集まり、ギャラリーが増えていた。


「うーん、いいよ。ゴンダくん、弱かったし」

「なぁっ!?」

小夜子は権田を弱いと言い切り、男子二人相手に向き合う。


「はっきよーい、のこった」

「うりゃ」「そぉいっ」

土俵中央で、男子二人が小夜子に組み付く。


「何だ、これ・・・」「動かね・・・ぇっ」

男子二人の頭がそれぞれ、小夜子の胸元に当たっているものの。

二人とも、その感触を味わっている余裕はなかった。


「やっぱり。なんか、やー」

小夜子は、男子たちと組み合う度に嫌悪感を感じていた。


「おさなくても、どひょうからだせばいいんだよね」

「え、何言って・・・」

小夜子は、右側の男子の腰を右手で。左の男子を左手で掴み。


「どーっん!」

権田と同じ要領で、思い切りブン投げた。


「「う、わぁぁぁっ!!?」」

ドッゴン!と男子二人が宙を飛び、土俵の外で尻餅を付いた。


「小夜子ちゃん、すっごい!」

「えへへー♪」

小夜子は何処で覚えたのか、観衆に向かってピースサイン。


「だって、かるいんだもん」

投げ飛ばされた二人は、五年生らしい体格ではある。

しかし、権田に劣るとは言え、二人合わせれば重量は権田以上。


「くそっ! こうなったら、四人全員で行くぞっ」

「「「お、おうっ」」」

権田と、取り巻きの五年生三人。合計で、男子四人が。

小学生とはいえ恥も外聞も掻き捨て、一年生女子に向き合う。


「うーん。いつでもいいよぉ」

行司が居なくなったから、ではなく。

小夜子からすれば、“この程度”の男子に開始の合図は要らないとの判断。


「てんめぇ、舐めやがって」

「俺らが行くから、権田くんは後ろから押してくれ」

男子三人が前衛とばかりに、小夜子に取り付く。


「何っ、で・・・」「動かねぇ、んだっ」

「・・・お」

正確には、小夜子の身体はジリジリと後ろに押されていた。

しかし、裏を返せば男子三人掛かりでも、やっと少し押す程度。


「お前ら、そのまま抑えてろ・・・よっ!」

まるで、ラグビーのスクラムのように、権田が男子三人に後ろからブチかます。


「あ、これは・・・」

この日初めて、小夜子が苦しそうな顔をした。


「“パパぐらい”にはつよそう。なら・・・」

“本気出しちゃえ”と、そう呟くと。


小夜子は、その長い腕を大きく広げ。

男子三人を抱え込みながら、後ろに居る権田の腰骨を再び掴んだ。


メキメキ・・・


「あぎゃ」「いぎぃ」「うげぁ」

両サイドの二人と、後ろの権田が同時に呻き声を上げた。


「う、ぅんっ!」

男子三人から骨が軋む音がするのも、構わず。

小夜子が、渾身の力で男子四人を土俵際まで一気に押し出す。


「ど、っせーいっ!」

バキバキッ・・・メギョッ!


両サイドの男子の脇腹と、権田の腰から厭な音がしたと同時に。

男子四人は、土俵の外まで吹っ飛ばされる。


「いぇーい♪」

「きゃー、すごーい」

沸くギャラリーに、小夜子は完全勝利のピースサイン。

・・・とは、行かなかった。


「ちょっと! 何やってるの!?」

騒ぎを聞き付けた先生が、何人か駆け付けて来た。


「うわぁぁぁん」「痛いよー」

投げ飛ばされた男子たちが運動場に転がり、泣き叫んでいる。


「おい、これ・・・」

「ああ。救急車を呼ばないと」

只事じゃない様子を感じ取ったのか、先生が携帯で『119番』。



――二時間後。


『大変申し上げ難いのですが、清神さんの娘さんが・・・』

「えぇっ! ウチの娘が怪我をさせた!?」

電話口の先生が告げた内容に、剛一郎は我が耳を疑った。

小夜子が、上級生四人に怪我を負わせたと言うのだ。


「これは、一体・・・」

病院に駆け付けると確かに、“相手と思われる男子たち”がワンワン泣いていた。


「お昼休みに、相撲を取ったらしいんです」

高学年並の上背がある小夜子は入学当初から、目立っていて。

そこを、上級生の男子たちに見咎められたのが発端。


「小夜子さんは、その・・・膨(ふく)よかなので」

担任の先生は言葉を選んでいるものの、言いたい事は直ぐにわかった。


高学年とはいえ、所詮は小学生の男子たち。

小夜子の『Cカップ』バストに目を付け、あわよくば触ってやろうと画策したのだ。


「小夜子さんは、普通に相撲を取っただけのようなんですが・・・」

一年生女子一人に対し、五年生男子四人。

どう考えても、怪我をするなら小夜子の方だろう。


しかし。


腰骨の骨折が、一人。

肋骨の骨折が、二人。

臀部の打撲が、四人全員。


死屍累々の屍を晒したのは、上級生である男子の方だった。

巨幼女03「相撲」

Comments

感想、ありがとうございます。 密度が高い肉体を表現したかったのですが、上手く読み取って頂けて有難いです。

デアカルテ

更新お疲れ様です。 身長が10cmも低く体重は同じくらいなのに、目方が圧倒と言う事はとても密度の高い身体なのでしょう。 小学生相手とはいえ、簡単に骨を折る程の圧倒的な力。 今後も楽しみです。

okita


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