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MGガール19「高1:⑧影響」

『健ちゃん。学校終わったら、ウチに来て』

僕は放課後、真理奈から呼び出された。


「何だろ・・・」

ジムに行ってから、何日か経ち。

次にまた行くなら予約を入れないと、思った矢先。


この呼び出し方は、という既視感。

そして、ここ数日の真理奈の違和感。


「ジム用に新しいウェア買ったんだけど、どう・・・かな?」

保志さんを真似たのか、真理奈はタンクトップと短パンに身を包んでいた。

新品ウェアのお披露目をやりたかったんだろうか。


「・・・それ、サイズは幾つ?」

ノースリーブのせいもあってか、かなりダボッとした印象。


「・・・・・『7XL』」

「・・・え? ナナ・・・え?」

僕は二度、聞き返してしまった。

つい最近まで着ていたのは確か、『5XL』だった筈。


「ちょっと、思ったんだけど・・・」

「な、何・・・?」

真理奈は目線を伏せ、視線を合わそうとしない。

いたずらを叱られる子供のように、全身をくねらせながらモジモジしている。


「ひょっとして、大きくなった・・・?」

「そ、そうかな? ど、どうだろ・・・」

可愛らしい仕草とは裏腹に、肩や二の腕にモリッ、モリッと筋肉が膨らむ。

その全身は、筋トレしてパンプアップした時よりも大きく見える。


「『5XL』のTシャツって、まだ着られる?」

「き、着られるよ?」

直ぐに着替えるから待ってて、と僕は部屋を追い出される。


「もーいーよ」

「入る、よ?」

ものの数分で着替えは終わった模様。

僕は一応、入る前に声を掛けつつ、再び真理奈の部屋にイン。


「う、っわ・・・」

少し前まで“普通にしていれば”着られた筈のTシャツは、ピッチピチだった。


「ど、どう?」

「・・・どう、って」

いや、もう・・・何ていうか、無理あるでしょ。

胸元のポッチどころか、砲丸のように大きな乳房の形がクッキリ。


恐らく、無理にでも着ようとして、ブラジャーを外したんだろう。

巨乳にシャツの生地がピッタリと張り付き、ボディスーツの様相を呈している。


「袖も、それ良く入ったね・・・」

いや、良く見ると袖には既に、幾つか裂け目が出来ていた。

腕を曲げるまでもなく、自然なサイズの上腕筋が袖を通らなくなっていた。


本来であれば、身長190cmクラスの男性用『5XL』の特大Tシャツなのに。

真理奈の上半身は、筋肉美をこれでもかと主張していた。


「あ、もう・・・だ、め・・・ぷはぁっ」

「・・・え」

ピリッ・・・ビリビリッ、ビリリィッ!


いつの間にか呼吸を止めていたようで、我慢し切れずに真理奈は息を吸って。

その呼吸による上半身の蠕動(ぜんどう)で、Tシャツはビリビリに破けてしまった。


「やっぱ、大っきく・・・なったよね?」

「・・・・・ぅ」

真理奈はシュンとして、肩を落としてしまう。


流石の真理奈も、こうなると小さく見え・・・たりは残念ながら、しない。

猫背になって俯いていても、それでも真理奈は僕より遥かに大きかった。


「あ、いや。別に、責めてる訳じゃないんだけど・・・」

正直な感想として、真理奈の身体はカッコイイと思う。

そして、青少年としては、どうしても胸元に目が行ってしまう。


胸の大きな女の子が嫌いな男は、居ない。

いや、むしろ女の子の大きな胸は、大好きだ。


もし、これが成人男子なら、社会的に終わってもおかしくない様な台詞。

尤も、高校生男子であっても外で発言すれば、変態学生のレッテルは免れない。


「【腕輪】に、聞いても良い?」

「・・・ぁ、うん」

真理奈の態度に違和感はあるものの、【腕輪】に今の真理奈のサイズを問い掛ける。


「・・・え? 身長が・・・『180cm』?」

ここに来て、身長が・・・伸びてる?

僕は慌てて、数ヶ月前に記録した数値と比較してみる。

体重も、『10kg』増えてる・・・。

でも、何でまた急に身長が伸びたんだろう・・・。


ちょうど、一年前。中三の頃に『177cm』になってから。

筋肉が付いて幾ら体重が増えても、身長は1ミリも伸びなかったのに。


実際、第二次性徴で伸びた身長が、ほぼ成人体での身長なのは統計が示している。

縦に伸びて止まった後は、肉付きの方にカロリーが消費されるのがセオリー。


以前、【腕輪】から聞いた遺伝子云々は一先ず、置いておくとしても。

真理奈が人間であることが変わらないなら、その成長過程も変わらない。


そう、思っていた・・・んだけど。


「どうして、真理奈の身長は伸びたの?」

「ちょ、健ちゃんっ」

僕はつい、ストレートに聞いてしまう。

幼馴染とは言え、年頃の女の子の個人情報なのに・・・という一般常識は何処へやら。


『肉体へ、【高負荷】が掛かった為です』

「それって、筋力トレーニングのこと?」

確かに、『プラチナジム』で真理奈はかなりの高重量を挙げていた。


そうは言っても、一般トレーニーから見て、高重量であっても。

真理奈自身は軽々と挙げていたし、限界重量には程遠かった印象。


そもそも、そのたった一回の筋トレも、つい先週の話。

幾らなんでも、身長に影響が出るには早過ぎる。


『【筋力鍛錬】の効果は、“まだ出ていません”」

え、“まだ”ってことは、これから・・・。いや、今はそれよりも。


「・・・あ、そうだ。ジョギングの効果が出たとか?」

真理奈はジムに行く前、ジョギングを日課にしていた。

何故、ジョギングを辞めてしまったのかは気になる所なんだけど。


『【運動軽走】の効果は、心肺機能の強化として現れています』

肺活量の多さとか、筋肉の疲れ難さとか。そういった方面の話・・・なのかな。


「じゃあ、別の理由があるとして。それって、時期はいつ頃?」

『およそ、一ヶ月前です』

一ヶ月前? 一ヶ月前って確か、ジョギングを辞めた頃なんじゃ・・・。


「け、健ちゃん。もう、その辺で・・・」

「真理奈。ジョギング、何で辞めちゃったの?」

真理奈は、バツが悪そうに僕から目を逸らす。


実際、胸が大きくなったり、筋肉が付く事は。

僕が褒めることもあってか、真理奈は嫌がっていない。


だけど、背が高くなる事についてだけは、やや嫌がる節を見せていた。

てっきり、身長が伸びた事への拒否感からだと思っていた。


バレーやバスケの選手、もしくはファッションモデルとか。

高身長が有利な職業を目指すのではないなら、高過ぎる身長はデメリットだ。


「・・・・・」

真理奈の態度への、違和感。

隠し事をバレまいとする、子供の態度のような・・・。


「高負荷って、具体的にはどんなの?」

『車両による衝突、高圧電撃、銃弾などです』

・・・え。え?

最初の二つもアレだけど、流石に『銃弾』という単語は聞き流せなかった。


「・・・えぇっ!? 銃弾って・・・」

「ぁ、あ~」

真理奈は諦めからか、大きな溜め息を付いた。


「真理奈、何があったの? いや、“何をした”の?」

「いや、その・・・。あのね・・・」

真理奈は観念したと言わんばかりにポツリ、ポツリと話し始めた。


轢き逃げ犯を追い掛けた事。

後日、その轢き逃げ犯に拉致され、廃工場で一悶着。


「・・・真理奈。ほんっと、良かったぁ・・・」

僕は大きく、安堵の声を上げた。


「え、健ちゃん? てっきり、怒られると思ったのに・・・」

「そりゃ、怒りたい気持ちはあるけど・・・」

【腕輪】の話を全て信じないにしても、真理奈は確実に“強い”。

それ自体は確かに、間違いようのない事実。


ただ、【腕輪】は無敵ではない、とも指摘していた。

焼死や窒息死なら有り得る、と。高所からの落下も、あくまで将来的に大丈夫って話。


「やっちゃった事は仕方ない。でも、真理奈が無事で良かった」

そして、今回。実際に、スタンガンで失神している。

拳銃で撃たれて無事だったのは、結果論でしかない。


「健ちゃん、ぅ・・・。ごめぇえん~っ!」

真理奈は感極まったのか、ガバァッと僕に抱き付いて来た。


「ちょ、真理・・・ぐぇっ!」

ミシ、ミシッと僕の身体が軋む。


「あ、ごめん・・・」

真理奈は直ぐに、僕の身体を解放。

僕は、一瞬で潰されそうになるも、何とか事無きを得た。


「加減、したんだけど・・・じゃあ」

「・・・え。うっ、ぷぉ」

今度は優しく、真理奈は僕の顔を自分の胸元に引き寄せた。

砲丸大の『Hカップ』という巨乳、ならぬ爆乳の柔らかな感触。


「私のおっぱい、どう? キモチイイ?」

「あ、うん」

僕はつい、正直にそう答えてしまった。


「あはは。健ちゃん、ヤラしぃ~♪」

「・・・う」

真理奈はニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべていたが、余りに嫌な印象は受けない。

それは、真理奈の目尻に涙らしきモノが浮かんでいたせい、だろうか。


「これからは、無茶はやっちゃダメだよ」

「う、ん」

真理奈はおっぱい抱擁から僕を解放すると、右手で目尻を擦った。


「でも、急に胸が大っきくなってビックリしちゃった」

トップバストが『10cm』も増え、『125cm』という想像も付かないサイズに。

アンダー差が『2.5cm』もアップした結果、その差は今や『30cm』。


それまで『Gカップ』だったのが、たった数ヶ月前で『Hカップ』爆乳に。

『Hカップ』は、乳房一つが砲丸と同じぐらいで、片手に余る大きさ。


「体脂肪率が上がってるけど、もしかして・・・」

『電撃に対応し得る脂肪を搭載した結果です』

まさかの、ズバリだった。

いや、でも電撃に耐える為に脂肪を増やすって、短絡的過ぎないだろうか。


「後、“こっち”はどうしよ」

『5XL』シャツの袖を通らなくなった、『45cm』の剛腕。

真理奈はそれを、目一杯に力を籠めて盛り上げて見せる。


「・・・っん」

モゴゴゴォッ!


「す、っご・・・」

脂肪が増えたとは到底思えない、ガッチガチに血管の走り捲った特大の力瘤。

『66cm』というサイズは既に、バレーボールと同じ大きさになる。


「触って、みる?」

「う、ん」

高一女子の二の腕とは思えない、バレーボール大の筋肉の塊。


「・・・か、硬っ!」

山のように盛り上がる上腕二頭筋を、左手で掴んでみる。

それはまるで岩のようで、僕如きの握力でどうにかなるように思えない。


「・・・じゃあ」

左手で二頭筋を掴んだまま、反対側の上腕三頭筋に右手を宛がう。


「んぅ、ぐぉっ!」

両手で挟み込むように、全身の力で押し込んでみる。

しかし、真理奈の腕は微動だにしなかった。


「・・・? 何、してるの」

真理奈は、涼しい顔をしていた。

僕は真理奈の腕を1ミリも動かせないどころか、負荷を与える事すら出来なかった。


【腕輪】の計測値通りだとすれば、この腕一本で『532kg』もの出力を秘めている。

僕程度にどうにか出来る訳がないのだ。


「力の方は・・・その、大丈夫なの?」

「ジムに行ったから、かな」

真理奈はそう言うと、冷蔵庫から生卵を持って来た。


「調節が効くようになって来たみたい。注意すれば、だけど・・・」

そして、それを指で摘まんで見せた。


「すご。ほんと、だ」

女の子がただ単に、生卵を手で摘まんで持っただけ、である。

しかし、握力『321kg』という怪力女子となると、話は違う。


「だから逆に、力が強くなった実感が凄くわかるようになったかも」

真理奈は、部屋に常備するようになった鉄アレイを持ち出して。

肘の反対側の窪み、『肘窩(ちゅうか)』に鉄アレイを無造作に置くと。


「行くよ。見てて、ね」

鉄アレイを前腕と上腕二頭筋で挟み込むように、徐々に腕を曲げて行く。


グググ・・・グギャ、グゴギャッ!


「・・・え、え?」

真理奈の腕は、綺麗に『45度』で折り曲げられていた。

『66cm』のバレーボール力瘤と、握力『321kg』を生み出す前腕筋群に隙間は皆無。


「ほら、凄いでしょ」

真理奈の右腕には、極限まで薄く引き伸ばされた鉄アレイだったモノが載っていた。


「“こっち”でも、出来るよ」

真理奈は少しだけ股を開き、両方の太腿で鉄アレイを挟み込んだ。


僕の胸周り(84cm)より太い、『87cm』の極太の太腿。

真理奈の両足の腿周りを合わせれば、僕の身長とほぼ同じ。


ググググ・・・メギョッ!


「・・・ね?」

「・・・・・」

一瞬で、鉄アレイは煎餅に早変わりした。


「後は、ちょっと“端(はした)ない”んだけど・・・」

真理奈は、財布から『十円玉』を取り出した。


「それ、どうす・・・」

真理奈は少し背伸びをして腹筋を広げると、その隙間に『十円玉』を縦に挟んだ。


「・・・えぇぇ?」

レンガと言っても過言ではない、綺麗に六分割された真理奈の腹筋。


割れたというよりは、盛り上がって溝がある。そんな、イメージ。

その溝に、『十円玉』がギッチリと挟まって固定されてしまった。


「それ、どうす・・・っ!?」

メギョッ、と一呼吸で『十円玉』は真っ二つに折れてしまった。

まさかの、腹筋によるコイン曲げ。


「ね、凄くない♪」

「あ、あぁ。うん」

そう誇らし気に話しながら、真理奈はグイッと『十円玉』を元通りに戻してしまう。

真理奈にとって、コイン曲げレベルだと片手間でやれてしまうのだ。


「あれ? ちょ、健ちゃん。何か、引いてない?」

「ひ、引いてないよっ」

全身の筋肉全てが凶器となり得る、なんて思ってはいない。


「あー、『人間凶器』とか思ってんでしょっ」

「お、思ってないよ」

もし、真理奈の筋肉にホールドされ、捕まってしまったら。

僕に逃れる術は、存在しない。


「じゃあ、何を考えてたの」

「大きくなったのって、ここ一ヶ月の話だよね」

僕が、真理奈に感じていた違和感の正体は、それだった。


「う、ん。そう、だけど・・・」

「制服、入るの?」

一ヶ月ほどの短い期間で、急に身体が大きくなったせいか。

日々、真理奈の制服のシルエットが変わって行っていたのだ。


「・・・あ、うん」

今の『うん』は、いわゆる『YES』ではなく。

状況を理解している、と言う意味の『うん』だった。


『5XL』の長袖の制服は、完全に通らなくなっていたのだった。

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