MGガール20「高1:⑨排球」
Added 2024-03-14 15:00:00 +0000 UTC「真理奈、学校行くよー?」
「ちょ、待ってぇ」
紅世宅の玄関前で立っていると、ガチャと真理奈が出て来た。
「夏服にしたんだ。まあ、そうなるよね・・・」
オーソドックスな半袖制服だけど、真理奈は袖を完全に捲り上げていた。
ノースリーブ状態なので肩口が完全に露わになり、二の腕の逞しさが目立つ。
首元の僧帽筋、背中の大きな広背筋。そして、『Hカップ』爆乳。
夏服の薄い生地は、真理奈の巨大な上半身をアリアリと見せ付けていた。
「・・・ぅ。キッツ、い」
夏服の半袖セーラー服に身を包んだ真理奈が、苦しそうに身を捩らせる。
勿論、制服そのものの締め付けが苦しい・・・訳ではない。
真理奈の筋力を以ってすれば、一般的な衣服なんて紙同然。
むしろ、逆で。紙製の服が全身にピッタリとフィットしていて。
一日を過ごす上で破いてはいけない、という制限が課された状態なのだ。
「新しい制服、来週には届くんだっけ?」
「うん」
一先ず在庫がある『7XL』の制服を、慌てて取り寄せることにしたらしい。
春先の時点では、『5XL』で余裕があった筈なのに。
たった数ヶ月で合わなくなるなんて、思いも寄らなかった。
「え、何あれ?」
「うっそ、すご」
高校デビューならぬ、夏服デビューとでも言うのだろうか。
今までずっと、制服も体操着も全て長袖で隠し通して来たのが。
突然、半袖になった途端、超絶筋肉ボディが露わになったのだ。
「紅世さん、腕凄いね」
「ね、力瘤見せてよ」
「あ、はは・・・」
最初は都度、クラスメイトの要求に応えていたものの。
徐々に疲れて来たのか、苦笑いを浮かべるだけになっていた。
「脚も、すっご」
「ちょっと、男子。やめなさいよ」
体育授業でも、真理奈フィーバーは変わらなかった。
体操着になった真理奈は、制服以上に全身が露わになり。
力瘤だけでなく、太腿でも注目を集める羽目になった。
「何センチあるの?」
「は、『87cm』かな」
男子女子合同の体育授業なので、かなりの人数から感嘆の声が漏れる。
「お、俺の太腿より太い・・・」
そう嘆いたのは、自転車部所属の次村君だった。
次村君の太腿は確かに太くて、僕より明らかにサイズがある。
だけど、それでも真理奈の剛脚と比べると、大人と子供だった。
因みに、競輪選手の太腿は男子平均『61cm』、女子平均『59cm』らしい。
「ねぇ、紅世さん。自転車部に入らない?」
「自転車は、ちょっと・・・。ごめん、ね」
恐らくは勢いで誘っただけなんだろうけど、即断りに次村君はシュンとしてしまった。
ママチャリとはいえ、真理奈の脚は容易にペダルを踏み壊してしまう。
例えそれが競技自転車であっても、結果は変わらないだろう。
「うぅ。何かもう、疲れたかも」
心肺機能が強化された筈の真理奈も、人疲れだけは対応し切れないらしい。
「授業はバレーボールだし、まあ楽出来るでしょ」
実際の競技ならまだしも、体育授業レベルならバレーボールは楽な部類に入る。
バレーボールコートを男子で一面、女子で一面ずつ。
男子と女子それぞれ人数を上手く割って、グループ毎に入れ替わる形で始まった。
ウチのクラスは運動部員もそれなりに居るが、バレー部員は少なく。
慣れない球技な事もあってか、試合展開はどれもグダグダだった。
しかし、真理奈が入った最終グループは、その数少ないバレー部員が居た。
女子バレー部のホープ、馬場さんだ。
「紅世さん、よろしくね」
馬場さんはバレー部員なだけあってか、高校一年にして身長は180cm後半。
体格も良く、バレー選手らしいムチムチッとした肉体美。
「? あ、うん」
一方の真理奈は、『何で私に』と言った感じでキョトンとしていた。
運動神経やスポーツ経験で言えば、馬場さんと真理奈は月とスッポン。
僕同様、真理奈は陰キャ体質なので、球技なんて不得手も良い所。
でも、実力差を考慮しても、馬場さんが真理奈を意識するのはわからないでもない。
運動部と帰宅部なのに、馬場さんが勝っているのは身長だけ。
というか、学校全体でも真理奈にフィジカルで勝る人間は居ない。
それだけの圧倒的な体格差・・・いや、“筋肉差”と言ったところか。
戦いは物量差だけで決まる訳ではない、と思うけども。
それが“一対十万”となると、話は違って来る。
「馬場さん、流石に上手いなー」
既に試合を終えた見学組から、感嘆の声が上がる。
蓋を開けてみれば実力通りで、ワンサイドゲームの様相を呈していた。
バレーボールはそもそも、常に全員がボールに触れる訳ではないんだけど。
積極的に動けば、当然ながら得点機会は多くなる。
素人メインなのもあってかローテーションはもう、滅茶苦茶で。
馬場さんは打ちたい時にスパイクを打つ、みたいな感じでやっていた。
「紅世さん、何で動かないの?」
前衛同士で向かい合った二人が、試合中にも関わらず会話を交わす。
「あ、いやぁ。私、バレーやったことないし」
「ブロック、跳んで見せてよ」
馬場さんは物足りないと思ったのか、何と真理奈を煽り始めた。
「えー・・・うん、わかった。じゃあ・・・」
真理奈自身も、目の前でプレーする馬場さんを見ていて。
もし自分が同じ様にプレーしたらどうなるのか、気になっていたようで。
「そーれ」
真理奈チームが、下手(したて)打ちで恐る恐るサーブ。
馬場さんチームの後衛が上手くレシーブ出来て。
トス役がこれまた上手い感じに、トスを上げた。
「行くよ」
馬場さんはワザワザ、予告した上でトスに向かって跳び上がる。
「ブロック、だよね」
真理奈はその場で“力を籠め過ぎない”ように、軽く脚を屈伸させる。
モリモリ・・・ボボンッ。
「っ!?」
僕は、真理奈の太腿がボンッ、と隆起するのを見逃さなかった。
「え、い!」
180cm後半の高身長で垂直跳び70cmの記録を持つ、馬場さん。
肩口までネットの上に飛び出るぐらいの、驚異的なジャンプ。
「・・・いぃっ!?」
その馬場さんが目線の先に見たのは、真理奈の肥大化した“太腿”だった。
相手コートのネット上には、真理奈の“膝から上”があったのだ。
「あ、れぇ?」
真理奈としては、加減して跳んだ筈だった。
高校女子バレー準拠の、高さ220cmのネット。
高いポールで吊り下げられ、コートを仕切る筈のネットは、遥か下。
「く、っそ!」
今更止まれない、と馬場さんは渾身のスパイクを放つ。
ドゴッ、ン。
時速100km/h近いプロ並みの高速スパイクは、真理奈のお腹にヒットし。
まるでコンクリート相手に壁打ちしたかのように、弾き返され。
ヒューッと大ホームランで、コートの遥か後方まで飛んで行ってしまった。
「紅世さん、大丈夫?」
馬場さんは素人相手なので、ある程度は加減するつもりだった。
しかし、真理奈の余りにも驚異的な高さのブロックに、つい本気で打ってしまったのだ。
「え、今・・・どうなったの」
当の真理奈は、スパイクを喰らった事すら気付いていなかった。
それも、その筈。
真理奈の腹筋は、只の腹筋ではない。
六分割、程度ではなく。腹直筋が六つ、レンガブロックの如く隆起した超腹筋。
銅貨ぐらいなら簡単に折り曲げる腹筋は、ゴム製のボール程度では負荷にならない。
「・・・え、嘘でしょ」
対抗試合で、相手チームを怪我さえたことすらある、自慢のスパイクが。
目の前のフィジカルモンスターには、全く通用しなかったのだ。
「うっわ、すごい」
「どんだけ、跳んだの!?」
馬場さんチームの得点だったにも関わらず、真理奈チームは勝ったかのように沸いていた。
「ねぇ。サーブ、やって見せてよ」
得点はワンサイドで勝敗には影響がなく。授業時間的にも、ラストプレー。
「・・・う、わかった」
チームメイトにせがまれ、仕方なく真理奈はサーブを打つことになった。
「紅世さん、思いっ切りやってみてよ」
「そーそー。見てみたーい」
周りのクラスメイトたちも、一気に囃し立てる。
「・・・うぅ。もう、どうなっても知らない・・・」
左手にボールを載せ、右手を『グー』で握って力を籠める。
「・・・よっ」
モゴォッと力瘤が盛り上がるタイミングで、真理奈は右腕を振り抜いた。
バァンッッッ!!
「「「っ!!?」」」
何かが破裂したかのような音と共に、ヒュゴーッと凄まじい速度でボールが飛んで行く。
ボールは、体育館の“天井”にブチ当たり。
「「「・・・?」」」
空気が詰まった筈のバレーボールは、まるで木の葉のようにフラフラと舞うように落下。
「ねぇ、これ・・・」
案の定、というか。バレーボールは破けて、空気が抜けてしまっていた。
「あはは、凄い・・・ね」
クラスメイトたちは互いを見合い、苦笑いをするしかなかった。
帰り道。
「お腹、大丈夫だったの?」
「うん、ボールは見えてたんだけど」
何と、真理奈はあの高速スパイク自体は目で追えていたらしい。
だけど、『Hカップ』爆乳が邪魔して、何処に当たったかが見えず。
また、当たった感触もなかったので、何がどうなったかわからなくなってしまったとのこと。
「サーブはあれ、全力だったの?」
「うぅん。少しは加減したつもりだったんだけど・・・」
あれで加減していた・・・のか。
バレーボールが破れて空気が抜けた事と、天井方向に飛んだことは幸いだったかも知れない。
もし、破れずに真っ直ぐ飛んでいたら、誰かに当たって・・・。
「あの後、バレー部に誘われたけど、断ったよ」
「そう、なんだ。まあ、それが良いよ」
真理奈は、力加減が徐々に出来るようになっている、とは言うものの。
どちらかというと、ゆっくり力を入れる場合に限定されるらしかった。
球技とかの瞬発的な運動においては、まだまだ懸念の余地あり、ということ。
身体的な接触の少ないバレーボールだから、まだ良かったものの。
もし、サッカーやバスケットボールのように、接触の多い競技で。
今日のような超筋力が発揮されれば、高校生なんて一溜まりもない。
『真理奈を変に煽ったり、囃し立てたりしない』
クラスメイトたちの間で、そんな暗黙の了解が出来ていたことを、僕は後から知った。
そしてくれると助かる、と思いつつ。
真理奈に伝わると、ショックを受けるだろうな、と思ってしまった。