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MGガール20「高1:⑨排球」

「真理奈、学校行くよー?」

「ちょ、待ってぇ」

紅世宅の玄関前で立っていると、ガチャと真理奈が出て来た。


「夏服にしたんだ。まあ、そうなるよね・・・」

オーソドックスな半袖制服だけど、真理奈は袖を完全に捲り上げていた。

ノースリーブ状態なので肩口が完全に露わになり、二の腕の逞しさが目立つ。


首元の僧帽筋、背中の大きな広背筋。そして、『Hカップ』爆乳。

夏服の薄い生地は、真理奈の巨大な上半身をアリアリと見せ付けていた。


「・・・ぅ。キッツ、い」

夏服の半袖セーラー服に身を包んだ真理奈が、苦しそうに身を捩らせる。


勿論、制服そのものの締め付けが苦しい・・・訳ではない。

真理奈の筋力を以ってすれば、一般的な衣服なんて紙同然。


むしろ、逆で。紙製の服が全身にピッタリとフィットしていて。

一日を過ごす上で破いてはいけない、という制限が課された状態なのだ。


「新しい制服、来週には届くんだっけ?」

「うん」

一先ず在庫がある『7XL』の制服を、慌てて取り寄せることにしたらしい。


春先の時点では、『5XL』で余裕があった筈なのに。

たった数ヶ月で合わなくなるなんて、思いも寄らなかった。



「え、何あれ?」

「うっそ、すご」

高校デビューならぬ、夏服デビューとでも言うのだろうか。


今までずっと、制服も体操着も全て長袖で隠し通して来たのが。

突然、半袖になった途端、超絶筋肉ボディが露わになったのだ。


「紅世さん、腕凄いね」

「ね、力瘤見せてよ」

「あ、はは・・・」

最初は都度、クラスメイトの要求に応えていたものの。

徐々に疲れて来たのか、苦笑いを浮かべるだけになっていた。



「脚も、すっご」

「ちょっと、男子。やめなさいよ」

体育授業でも、真理奈フィーバーは変わらなかった。


体操着になった真理奈は、制服以上に全身が露わになり。

力瘤だけでなく、太腿でも注目を集める羽目になった。


「何センチあるの?」

「は、『87cm』かな」

男子女子合同の体育授業なので、かなりの人数から感嘆の声が漏れる。


「お、俺の太腿より太い・・・」

そう嘆いたのは、自転車部所属の次村君だった。

次村君の太腿は確かに太くて、僕より明らかにサイズがある。


だけど、それでも真理奈の剛脚と比べると、大人と子供だった。

因みに、競輪選手の太腿は男子平均『61cm』、女子平均『59cm』らしい。


「ねぇ、紅世さん。自転車部に入らない?」

「自転車は、ちょっと・・・。ごめん、ね」

恐らくは勢いで誘っただけなんだろうけど、即断りに次村君はシュンとしてしまった。


ママチャリとはいえ、真理奈の脚は容易にペダルを踏み壊してしまう。

例えそれが競技自転車であっても、結果は変わらないだろう。


「うぅ。何かもう、疲れたかも」

心肺機能が強化された筈の真理奈も、人疲れだけは対応し切れないらしい。


「授業はバレーボールだし、まあ楽出来るでしょ」

実際の競技ならまだしも、体育授業レベルならバレーボールは楽な部類に入る。


バレーボールコートを男子で一面、女子で一面ずつ。

男子と女子それぞれ人数を上手く割って、グループ毎に入れ替わる形で始まった。


ウチのクラスは運動部員もそれなりに居るが、バレー部員は少なく。

慣れない球技な事もあってか、試合展開はどれもグダグダだった。


しかし、真理奈が入った最終グループは、その数少ないバレー部員が居た。

女子バレー部のホープ、馬場さんだ。


「紅世さん、よろしくね」

馬場さんはバレー部員なだけあってか、高校一年にして身長は180cm後半。

体格も良く、バレー選手らしいムチムチッとした肉体美。


「? あ、うん」

一方の真理奈は、『何で私に』と言った感じでキョトンとしていた。


運動神経やスポーツ経験で言えば、馬場さんと真理奈は月とスッポン。

僕同様、真理奈は陰キャ体質なので、球技なんて不得手も良い所。


でも、実力差を考慮しても、馬場さんが真理奈を意識するのはわからないでもない。


運動部と帰宅部なのに、馬場さんが勝っているのは身長だけ。

というか、学校全体でも真理奈にフィジカルで勝る人間は居ない。


それだけの圧倒的な体格差・・・いや、“筋肉差”と言ったところか。


戦いは物量差だけで決まる訳ではない、と思うけども。

それが“一対十万”となると、話は違って来る。


「馬場さん、流石に上手いなー」

既に試合を終えた見学組から、感嘆の声が上がる。

蓋を開けてみれば実力通りで、ワンサイドゲームの様相を呈していた。


バレーボールはそもそも、常に全員がボールに触れる訳ではないんだけど。

積極的に動けば、当然ながら得点機会は多くなる。


素人メインなのもあってかローテーションはもう、滅茶苦茶で。

馬場さんは打ちたい時にスパイクを打つ、みたいな感じでやっていた。


「紅世さん、何で動かないの?」

前衛同士で向かい合った二人が、試合中にも関わらず会話を交わす。


「あ、いやぁ。私、バレーやったことないし」

「ブロック、跳んで見せてよ」

馬場さんは物足りないと思ったのか、何と真理奈を煽り始めた。


「えー・・・うん、わかった。じゃあ・・・」

真理奈自身も、目の前でプレーする馬場さんを見ていて。

もし自分が同じ様にプレーしたらどうなるのか、気になっていたようで。


「そーれ」

真理奈チームが、下手(したて)打ちで恐る恐るサーブ。


馬場さんチームの後衛が上手くレシーブ出来て。

トス役がこれまた上手い感じに、トスを上げた。


「行くよ」

馬場さんはワザワザ、予告した上でトスに向かって跳び上がる。


「ブロック、だよね」

真理奈はその場で“力を籠め過ぎない”ように、軽く脚を屈伸させる。


モリモリ・・・ボボンッ。


「っ!?」

僕は、真理奈の太腿がボンッ、と隆起するのを見逃さなかった。


「え、い!」

180cm後半の高身長で垂直跳び70cmの記録を持つ、馬場さん。

肩口までネットの上に飛び出るぐらいの、驚異的なジャンプ。


「・・・いぃっ!?」

その馬場さんが目線の先に見たのは、真理奈の肥大化した“太腿”だった。

相手コートのネット上には、真理奈の“膝から上”があったのだ。


「あ、れぇ?」

真理奈としては、加減して跳んだ筈だった。


高校女子バレー準拠の、高さ220cmのネット。

高いポールで吊り下げられ、コートを仕切る筈のネットは、遥か下。


「く、っそ!」

今更止まれない、と馬場さんは渾身のスパイクを放つ。


ドゴッ、ン。


時速100km/h近いプロ並みの高速スパイクは、真理奈のお腹にヒットし。

まるでコンクリート相手に壁打ちしたかのように、弾き返され。

ヒューッと大ホームランで、コートの遥か後方まで飛んで行ってしまった。


「紅世さん、大丈夫?」

馬場さんは素人相手なので、ある程度は加減するつもりだった。

しかし、真理奈の余りにも驚異的な高さのブロックに、つい本気で打ってしまったのだ。


「え、今・・・どうなったの」

当の真理奈は、スパイクを喰らった事すら気付いていなかった。


それも、その筈。

真理奈の腹筋は、只の腹筋ではない。


六分割、程度ではなく。腹直筋が六つ、レンガブロックの如く隆起した超腹筋。

銅貨ぐらいなら簡単に折り曲げる腹筋は、ゴム製のボール程度では負荷にならない。


「・・・え、嘘でしょ」

対抗試合で、相手チームを怪我さえたことすらある、自慢のスパイクが。

目の前のフィジカルモンスターには、全く通用しなかったのだ。


「うっわ、すごい」

「どんだけ、跳んだの!?」

馬場さんチームの得点だったにも関わらず、真理奈チームは勝ったかのように沸いていた。


「ねぇ。サーブ、やって見せてよ」

得点はワンサイドで勝敗には影響がなく。授業時間的にも、ラストプレー。


「・・・う、わかった」

チームメイトにせがまれ、仕方なく真理奈はサーブを打つことになった。


「紅世さん、思いっ切りやってみてよ」

「そーそー。見てみたーい」

周りのクラスメイトたちも、一気に囃し立てる。


「・・・うぅ。もう、どうなっても知らない・・・」

左手にボールを載せ、右手を『グー』で握って力を籠める。


「・・・よっ」

モゴォッと力瘤が盛り上がるタイミングで、真理奈は右腕を振り抜いた。


バァンッッッ!!


「「「っ!!?」」」

何かが破裂したかのような音と共に、ヒュゴーッと凄まじい速度でボールが飛んで行く。

ボールは、体育館の“天井”にブチ当たり。


「「「・・・?」」」

空気が詰まった筈のバレーボールは、まるで木の葉のようにフラフラと舞うように落下。


「ねぇ、これ・・・」

案の定、というか。バレーボールは破けて、空気が抜けてしまっていた。


「あはは、凄い・・・ね」

クラスメイトたちは互いを見合い、苦笑いをするしかなかった。



帰り道。


「お腹、大丈夫だったの?」

「うん、ボールは見えてたんだけど」

何と、真理奈はあの高速スパイク自体は目で追えていたらしい。


だけど、『Hカップ』爆乳が邪魔して、何処に当たったかが見えず。

また、当たった感触もなかったので、何がどうなったかわからなくなってしまったとのこと。


「サーブはあれ、全力だったの?」

「うぅん。少しは加減したつもりだったんだけど・・・」

あれで加減していた・・・のか。


バレーボールが破れて空気が抜けた事と、天井方向に飛んだことは幸いだったかも知れない。

もし、破れずに真っ直ぐ飛んでいたら、誰かに当たって・・・。


「あの後、バレー部に誘われたけど、断ったよ」

「そう、なんだ。まあ、それが良いよ」

真理奈は、力加減が徐々に出来るようになっている、とは言うものの。

どちらかというと、ゆっくり力を入れる場合に限定されるらしかった。


球技とかの瞬発的な運動においては、まだまだ懸念の余地あり、ということ。

身体的な接触の少ないバレーボールだから、まだ良かったものの。


もし、サッカーやバスケットボールのように、接触の多い競技で。

今日のような超筋力が発揮されれば、高校生なんて一溜まりもない。


『真理奈を変に煽ったり、囃し立てたりしない』


クラスメイトたちの間で、そんな暗黙の了解が出来ていたことを、僕は後から知った。


そしてくれると助かる、と思いつつ。

真理奈に伝わると、ショックを受けるだろうな、と思ってしまった。


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