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筋肉ダメイド拡大記02「新しく始まる何か」

とある日のこと。


「・・・ん、芽衣子。何か、変わった?」

「いえ、特に何もないですけど・・・」

何だろう。何か、“違和感”を覚える。


「相変わらず、ジムには行ってるの?」

「はい。中二日ぐらいのペースで通ってます」

芽衣子は“今の身体”になってから、『プラチナジム』に通い始めた。

恐らく、ウチから通える範囲では最大級のトレーニングジム。


「筋トレって、家(ウチ)でもやってたりするの?」

「いえ? 特には・・・」

それもそう、か。


芽衣子は家に居る間、テキパキとメイド仕事をこなしている。

僕は掃除ぐらいしか出来なくて、炊事やら洗濯なんかはホントに助かっているんだけど。


かといって、自由時間が取れない程、ブラックな業務時間を強いているかというと、否。

芽衣子は暇な時、読書をしたり、僕に振る舞うお菓子を作ったり。

思い思いの過ごし方で、自由時間を謳歌している。


雇い主のウチの両親から充分な給金は貰っている筈なので、経済的な余裕はある。

だけど、その給料で筋トレグッズを購入した様子はない。


以前、芽衣子は怪力パフォーマンスで鉄アレイを“引き千切って”見せた。

でも、その鉄アレイも元々は家に置いてあった物を拝借したに過ぎない。


「芽衣子。力瘤、見せて貰っても良い?」

「突然、どうしたんです?」

僕の突飛なお願いに、芽衣子は少し訝しげな表情。


「・・・もう、ご主人様も好きなんですからぁ♪」

と思いきや、満更でもないような顔で、喜々として袖を捲る真似をする。

そもそも、ノースリーブなカスタムメイド服なので、袖に相当する生地は存在しないんだけど。


「じゃあ、行きます・・・ねっ」

肩の高さで折り曲げられた両腕には、モゴゴォッ!と特大の力瘤が隆起する。


「す、っご・・・」

身長195cmを誇る芽衣子が見せる『ダブルバイセップス』ポーズは、圧巻の一言。


何度も『大玉スイカ』と形容した、超・上腕二頭筋と三頭筋。

実際のところ、メートルを遥かに超える筋肉と比較になるような果実は存在しない。


「測って、良い?」

「? ええ、良いですよ」

僕は巻尺を持ち出し、芽衣子の右腕に這わせる。


「・・・え」

「どうしました?」

僕は巻尺を見て一瞬、戸惑う。


「左も、良い?」

「良いですよ」

左腕も同様に測ってみると、同じ数値。

測り間違いや、目盛りの見間違いでないことの証左。


「サイズは、どうでした?」

「・・・『116cm』

巻尺の数値は何と、『116cm』を示していた。


「ホントですか? やったー」

そう歓喜して、芽衣子はその場で跳び上がった。


ドズンッ!


「うぉ・・・っと」

『165kg』という、小兵の相撲取り並な巨体が跳んで着地するだけで床が揺れる。


「ちょ、芽衣子」

「あはは、ごめんなさ~い」

芽衣子は可愛く、ペロッと舌を出した。


「前の数値って、確か・・・」

前回の記録値は確か、『113cm』だったと記憶している。

そこから、いつの間にか『3cm』もアップしている。


「前に測ったのって、いつだったっけ?」

「えーっと、覚えてません~」

縦幅(高さ)だけでも、目測で『40cm』近い。

だって、30cm定規を縦にして当ててもまだ足りないのだ。


強いて例えるなら、ドッジボール(外周56cm)が二の腕に引っ付いているイメージ。

片手に余る大きさのドッジボールを縦に二つ重ねて、やっと芽衣子の腕の太さになる。


「これ、ひょっとして『バルクアップ』って奴なんでしょうか」

「そう、なのかな・・・」

筋肉量の肥大化を指して、筋トレ用語で『バルクアップ』と言うらしい。

少なくとも今日はメイド仕事しかしていないので、『パンプアップ』はしていない筈。


さわさわ・・・

 ぐいぐい・・・


「・・・いゃん♪ もぅっ、ご主人様ったら。擽(くすぐ)ったいです」

「あ、ごめん」

『別に良いですけど』と、芽衣子はニッコリと微笑んだ。


僕としては、“目一杯の力を入れて思いっ切り”指で押し込んだんだけど。

芽衣子的には、擽られた程度にしか感じなかったらしい。


指で触診した感覚は、まるで“岩”だった。


以前はもう少し脂肪が乗っていて、筋肉までの距離(厚み)があるイメージだったのに。

明らかに脂肪が削ぎ落とされていて、皮膚の直ぐ下に筋肉が在った。


「プロテインの効果が出たのかも」

「プロテイン、か・・・」

いわゆる、『プロテイン』とは。

タンパク質やアミノ酸など、人体および筋肉の構成要素を効率的に摂取する製品の総称。


筋肉量を増やし、筋肉疲労や損傷を回復。

また、タンパク質の消化によるエネルギーの消費で、代謝を高める効果もある。


筋肉を付けたい人だけでなく、男女問わずダイエット目的で嗜む者も居る。

そういう意味で言えば、芽衣子が摂取していても全くおかしくはないんだけど。


「・・・? ご主人様、どうしました?」

「あ、いや・・・」

小柄で可愛かった芽衣子が、今やプロテインを飲んで筋トレをするようになった。

思えば遠くに来たものだ、っていう程に時間は経ってないと思うんだけどなぁ・・・。



「でも、ご主人様って凄いですっ!」

「・・・え。何で、僕が凄いって話になるの?」

芽衣子の肉体、筋肉が凄いって話をしていた筈なんだけど。


「いつも、私のことを気に掛けてくれて、嬉しいです♪」

「どういうこと?」

今一つ、要領を得ない。


「だって、私自身がわからないような“僅かな変化”に気付いてくれたってことですよね」

「え、っと。そう、なのかな・・・」

二の腕が『3cm』太くなるのは僅かな変化、なんだろうか。


『3cm』といっても、あくまで力瘤を盛り上げた状態での話で。

ダランと伸ばした状態だと『79cm』で、『1cm』しか増えていなかった。


正確に書くと。


        前回      今回

上腕(伸展囲): 78cm(+1cm) 79cm

力瘤(屈曲囲):113cm(+3cm)116cm


こんな感じ、か。

改めて指摘されると、我ながら良く気付いたと思う。


「というか、僕の胸板と同じぐらいなのか・・・」

一般的な男子の体型を自負する僕の胸周りと、芽衣子の伸ばした腕が同じサイズ。


「・・・試してみるか」

僕は思い立ったが吉日と、箪笥の奥から『Tシャツ』を引っ張り出して来た。


「ご主人様。何です、これ」

「これは、ねぇ・・・」

両親の海外土産の『Tシャツ』、ってところまでは良いんだけど。


どこの国の意匠かわからない、かなり奇抜なデザインをしていて。

部屋着としても、とてもじゃないけど着たくないタイプの『Tシャツ』。


「これに、右腕を通してみて」

「え、でも・・・」

パッと見、『Lサイズ』ぐらいの大きさの『Tシャツ』。

芽衣子にとっては着るまでもなく、明らかに小さ過ぎるサイズ。


「普通に着るんじゃなくて、えっと。“こう”やってみて」

「え、はい」

僕が一度、実演して見せて。

芽衣子にはそれを真似して貰う。


やり方は、簡単。


『Tシャツ』の裾口から右腕を入れて、貫通させる感じで首口から右手を出す。

あたかも、横にした『Tシャツ』を袖に見立てた格好。


芽衣子の巨体だと、『Lサイズ』にも関わらず、まるで子供服を纏っているかのよう。

この時点で『Tシャツ』の胸元の生地がピンッと張り詰めて、既に余裕はない。


「思いっ切り、力瘤を盛り上げてみて」

「良い・・・んですか?」

流石の芽衣子も、“それ”をやればどうなるかは想像が付いたみたい。


「どうせ、着ないし。ひと思いに、ヤッちゃって」

「はい! わかりました♪」

首口から出した右手を握り込むと、芽衣子は一気に腕を曲げ。


「んぅっ・・・ん!」

上腕に、目一杯の力を籠める。


バァンッ!!


「うぉっ!?」

「きゃっ」

何と、『Tシャツ』が“爆ぜた”

胸回り、というか。胴回りの生地が飛んで、分断されたのか。


『Tシャツ』の生地は右手首にリストバンドみたいに掛かっているのと。

芽衣子の肩に、駅伝のタスキみたいに掛かった二つに分かたれていた。


身体全体ではなく、力瘤の隆起だけで行う『Tシャツ破り』という離れ業。


こんな凄いモノを見せられてしまうと、『1cm』とか『3cm』なんて気のせい。

誤差の範囲だと僕は勝手にそう結論付けて、独り納得してしまったのだった。



そんな、力瘤での『Tシャツ破り』から一ヶ月ぐらい経った頃。


ゴスッ。


「あたっ」

居間でソファに寝転がっていたら、何かが当たった音と芽衣子の声。


「どうしたの?」

「あ、いえ」

芽衣子は、頭を摩(さす)っている。


「ちょっと、頭をぶつけてしまって・・・」

「ふーん・・・」

そうか、頭を。


・・・ん?


「芽衣子。何処にぶつけたの?」

「入口です」

部屋の入口、か。でも、もしドアにぶつけたなら、“ガンッ”って軽めの音がする筈。

さっきしたのは“ゴスッ”っていう、硬いモノにぶつけた鈍い音。


「入口の、“何処”にぶつけたの?」

「え、っと。“縁(へり)”です」

へり、ふち。それは、いわゆる『ドア枠』に他ならない。


ウチは、一般的な家屋より余裕を持った造りをしていて。

玄関もそうだけど、『ドア枠』は全て『2m』の大きさがある。


「跳び上がったりしたの?」

「いえ、別に。普通に、部屋に入っただけなんですけど・・・」

普通に考えて、そりゃそうだ。

自宅に居て、居間へ移動するのに跳び上がる人なんて居ない。


「・・・なぁ、芽衣子」

「はい、何ですか?」

芽衣子の態度や仕草は普段通りで、おかしい所は何も無いように見える。


「ひょっとして、背・・・伸びた?」

「・・・え? さぁ、そんなこと無いと思いますけど・・・」

この遣り取り、何だか懐かしい気もする。


「芽衣子。ちょっと、待ってて」

「・・・?」

僕は自室から、巻尺を持ち出して来て。


「これ、踏んでみて」

「測るんですか? じゃあ・・・」

僕は屈んで芽衣子の足元に、巻尺の目盛りの端(爪)を置いて。

踵に噛むように踏ませ、床を起点にして巻尺をグッと引き伸ばして行く。


・・・ガキッ、と巻尺が止まる。


「どうですか、ご主人様」

「・・・あ、うん」

『2m』まで計測出来る巻尺は、芽衣子の前髪の付け根辺りに位置していた。


「『2m』、超えてる・・・」

「えー、ホントですか?」

当の本人である芽衣子自身は、何処か他人事な驚き方。


「こっちでも、やってみよっか」

柱の傍に立たせて印を付ける、昭和の時代からある原始的な作法。

柱に付けた印を目掛けて巻尺を伸ばして行くが、やはり届かない。


『203cm』・・・だね」

巻尺の終点から更に定規を置いて、ようやく計測した数値。

間違いなく、芽衣子の身長は『2m』を超えていた。


「わぁ、ホントです♪」

「何で、嬉しそうなの」

少し前に、僕は違和感を覚えた事があった。

その正体に今、やっと気付いた。


「芽衣子。いつから“そう”なってたの?」

「へ? ・・・あ。そういえば・・・」

わさわさ採寸して作った、特注のカスタムメイド服。


肩回りや腕回り、それに胴回り。

芽衣子のド迫力な筋肉ボディが収まるよう、再三の注意を払った。


そのお陰か今のところ、ジム通いでのバルクアップにも耐えている。

その筈なのに、何故かお腹が露わになっているのだ。


正確には、メイド服の裾が腹筋の二段目までしか覆えておらず。

三段目の、レンガのような腹筋の隆起が完全に晒されていた。


芽衣子の身体が“縦に伸びた”、としか考えられない。


「芽衣子。まさか・・・」

“あの秘薬”は一度、完全に使い切った。


『滋養強壮』『体力増強』を謳う、【アマゾンの秘薬】

その効果は、“ご覧の通り”な『成長促進』だった。


『滋養強壮』は【一次効果】として、身長を伸ばし身体を大きく成長させ。

『体力増強』は【副次効果】として、筋肉を付き易い体質に変化させた。


そう。


“今の芽衣子”はあくまで、筋肉が付き易い体質なだけであって。

何も無ければ、身長が伸びたりしない・・・筈なのだ。


「・・・ひょっとして。ウチの両親に、頼んだりした?」

「え、いえ。“頼んではいない”・・・です」

そう、か。流石に、ね。

【アマゾンの秘薬】の“お替わり”を貰っていたり、はしないか。


だとすると何故、今になって芽衣子の身長は伸びたんだろう。


十代後半とはいえ、どちらかというと成人に近い年齢の僕たち。

今更、成長期が遅れて来た、なんてことが有り得るんだろうか。

Comments

感想、ありがとうございます。 これからの展開に乞うご期待下さい。

デアカルテ

これからの成長に一層期待ですね!

sunagimo7


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