『“つながり”は“はんえい”となる。おぼえておくといいよ』
『てきのこうげきをかわすには、“すばやさ”のほかに“しりょく”もよくないとだめ』
「ふぅん・・・」
私は、地道に情報収集していた。
拠点となる街。そこの人々、つまりはNPC(ノンプレーヤーキャラクター)に話し掛けているのだ。
マップ移動するゲームが減ったので、そもそもNPCが居ないゲームも多い。
一周回って、こういった単純作業は今となっては珍しく、あまり苦にならなかった。
眼の件は、保留。
眼科で診て貰った結果、「慢性的な眼精疲労が治った」だけなんじゃないか、とのこと・・・。
確かに、『デビルズクエスト』やるようになってから、他のゲームはやってない。
でも、他ゲーは眼に悪いけど、『デビルズクエスト』は眼に良い、なんてことがあるんだろうか。
取り敢えず、経過を見ることになったので、今は考えても仕方ない。
――で、このゲーム。
とにかく、情報が少ない。何をするにせよ、情報が提示されないのだ。
ステータスの上がり方も謎だし、“せいかく”とかのパラメータにしたって、そう。
何処にどう影響するのか、全くわからないのだ。マイナーアプリのせいか、攻略サイトも無い。
せっかくキャラメイクした自分のアバターが1ミスで即死してご破算、だけは避けたい。
必然的に、周到に情報収集し、綿密に計画を立て、無理をせず進行する、というプレイスタイルになる。
「みのまもりとすばやさだったら、やっぱりみのまもりだよね」
いわゆる、『DEF型』か『AGI型』かという問題。
守備のパラメータを上げて“被ダメージ量”を減らす、『DEF型』。
敏捷のパラメータを上げて“被ダメージ回数”を減らす、『AGI型』。
ゲームにおける“回避”は通常、確率判定。パラメータ補正はあるにせよ、100%にはならないはず。
一方、“守備”は引き算。もしくは、割合ダメージ(敵の攻撃値に対してマイナス補正)。
つまり言い換えれば、“みのまもり”は“被ダメに100%影響する”のだ。
しかも、このゲーム、回避に“しりょく”っていう別パラメータまで影響する。
“すばやさ”“しりょく”の2つを上げて更に確率判定では、効率が悪い。『トシオ』みたいなことになりかねない。
「後は、“与ダメ”に影響しそうなステを上げてけば大丈夫かな」
“力”は正義、ってことで私は“わんりょく”と“みのまもり”を中心に上げて行く方針にした。
【クエスト:みちをふさいでいるいわをどけろ】
【クエスト:まちのいえづくりをてつだえ】
【クエスト:まちのひとのひっこしをてつだえ】
わかり易く、肉体労働系のクエストばっかりこなして行った。
「また何か、増えてる・・・」
“きゃくりょく”に関しては、わかり易かった。移動速度が上がったのだ。
敵とのエンカウント率にも影響してるっぽくて、敵に遭い難くなった。
「今日はこの辺かなー」
ある程度、ステが上がったことに満足して、その日は床に着いた。
「おはよー・・・あれ?」
「どしたの?」
明子が私を見るなり、驚いた表情。
「今日、早くない?」
「うーん、そうなんだよねー」
登校時間はいつも、私より明子の方が早い。
明子はバス通学、私は徒歩通学プラス毎晩ゲームで夜更かし。
どっちの登校が早いかは明白、だったはずなんだけど・・・。
「何か今日、身体の調子が良いんだよね」
朝起きたのは、いつもの登校ギリギリの時間。家を出たのも、いつのもギリギリのタイミング。
通り道の青信号のタイミングは良かった。だけど、今まで運良く早く来れてもマイナス2分ぐらい。
だけど、今日はマイナス5分。所要時間の歴代最短記録。勿論、私の登校人生の中で、だけど。
「ま、こういう日もあるよね」
たまたま、“全ての信号が偶然青だった”そういう日が今日だったかも知れない。
ゲームキャラと違い、自分の体調なんて数値化出来ないモノ、気にしたってしょうがない。
この時の私は、まだそんな風に思っていた。