SamSuka
デアカルテ
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悪魔のアプリLv.07「垂直跳び:70cm」

「私の筋肉は良いから、そろそろ“これ”運ぼうよ」

「“それ”、錆ついてて動かすのしんどいのよね・・・」

私たちは、バレーボールが入った『ボール籠』を見遣った。


1m四方ぐらいの鉄製の籠で、中には所狭しとバレーボールが満載。

バレーボールって確か、1個あたり260gぐらいって聞いたことある。多分、籠込みでトータル50kg近い。

一応、四隅に車輪が付いてるんだけど、錆び付いててまともに動きゃしない。


「ほら、そっち持ってよ」

私は籠の片側を持って、明子を促した。


「わかったわよ・・・って、あれ?」

「どしたの」

ブツブツとずっと不満気だった明子の表情が変わった。


「何か、今日は軽くない?」

「ん、そういや」

いつもはギィギィ鳴らしながら無理矢理にでも車輪で転がすか、気合い入れて持ち上げて運ぶかの二択。

どっちにしても、女子高生にとってはキツい重労働。


「確かに、軽いかも・・・」

重労働・・・な筈が、スイスイ進む。


「・・・ねぇ。もしかして、“それ”」

「ん?」

明子は、私の腕を“指差した”。


「ちょっと、明子。手を放したら危な・・・・・あれ」

明子は確かに、両手を籠から放している。なのに、籠は“浮いた”まま。

私は何時の間にか、バレーボールが満載したボール籠を“持ち上げていた”のだ。


「通りで・・・腕、凄いわよ」

「・・・え、腕?」

私は明子に指摘され、自分の腕を見た。


「うぇっ!?」

制服より厚手の生地の体操服。その袖が、パンッパンに張っていた。


「体操服なら目立たない、とか思ったけど、そうでも無さそうね」

明子は、私の力瘤の隆起を布越しに見ながら、そう言った。


――ガヤガヤ、ガヤガヤ。


そうこうしてる内に、他のクラスメイト達もやって来た。


「大人しくしてれば、きっと目立たないよ」

「・・・まあ、そうね」

明子も、体育館に入って来た晴井さんを見て、納得した。


2クラス合同のバレーボールだけど、ことバレーに関しては、間違い無く目立つ“人”が居る。

バレーボール部のエース、晴井(はれい)さん。当然というか当たり前なんだけど、私達ど同い歳ながら175cmの見事な体躯。


彼女は半袖短パンのやる気満々のスタイルなんだけど、腕も脚も太い。私と違って、バレー部らしいムチムチッとした感じだけど。

その剛腕から放たれるスパイクは、“殺人スパイク”なんて凄くおっかない呼び名があるぐらい。


「そーれっ」

バシィッ・・・ドゴォッ!


バレーボールの授業が始まると、もう晴井さんの独壇場だった。晴井さん一人だけ、“音”が違う。

ボールをスパイクする音や、放ったスパイクが床を打ち付ける音。床を踏み込む『ギュッ』って音までみんなと違った。


「よ、よろしくね」

お手柔らかに、という意味も込めて、私は晴井さんに軽く挨拶した。


バレーボールの授業は全員が全ポジションをこなすように、全員で2チーム分、ローテーションしている。

Aチームで前衛から始めて、Bチームの後衛で終わる、みたいな感じ。


前衛スタートの人も居れば後衛スタートの人も居るんだけど、私はその『後衛スタート』組。

んで、初めて私が前衛に入ったタイミングで、相手チームの前衛に晴井さんが居た、という訳。


「・・・ねぇ、バレー部とか興味ない?」

「え、私? 何で・・・。う、運動部はちょっと・・・バレーやったことないし」

合同の体育授業以外では全く接点の無かった私を、晴井さんはいきなりバレー部に勧誘して来た。


「・・・なかなか良いカラダしてると思って。勿体ない」

晴井さんは中々に鋭かった。運動部ならではの着眼点、なんだろうか。


長袖長ズボンの体操服をチョイスしたお陰もあってか、クラスメイトが私の身体について何か言って来ることは無かった。

胸や腕、脚周りのボリュームは明らかにおかしいんだけど、それも今までの私を知っていれば、こそ。

“絶対値”で言えば、私よりも目の前の晴井さんの方が上背も体格も良いんだけど。


「それっ」

バンッと、また晴井さんのスパイクが決まった。


前衛同士、身近で見てると、確かに晴井さんは凄かった。身体の使い方が上手いというか。

踏み込みとか、膝の曲げ方とか。筋肉の力を上手く、無駄なく発揮している、そんな感じ。


「そーれ」

相手コートで、また晴井さんにトスが上がる。


「“こう”かな」

私は“つい”、晴井さんのジャンプの所作を“真似してしまった”。

深く膝を落とし、床を踏み込み。溜めた力を一気に上方向に開放させる。


ドギュォッツ!


体育館用シューズから、今まで聞いたことのないようなグリップ音がした。


「「っ!?」」

晴井さんのスパイクに対して、私はブロックに跳んだ形になった。


バゴォッ!


「あ痛」

晴井さんの“殺人スパイク”は、私の顔面にクリーンヒットしていた。いわゆる、顔面ブロック。


「大丈夫!?」

晴井さんが慌てて、私を心配してネット越しに声を掛ける。


「あ痛つ・・・大丈夫、大丈夫」

特に吹っ飛ぶでも、倒れ込むでもなく、私は普通に足から床に着地した。


「仁美、大丈夫?」

明子も心配になったのか、掛け寄って来てくれた。


「おい、大丈夫か? 念の為、保健室に行きなさい」

「じゃあ、私が連れて行きます」

先生は頼んだぞ、と明子に私を保健室に連れて行くよう指示した。


「ねぇ、ホントに大丈夫?」

「うん。ホント、全然」

たまたまか、保健室には先生が居なかった。なので、明子が私の手当てをしてくれている。


「でもホント、あの“晴井さんのスパイク”をまともに喰らって“この程度”・・・ってのも凄いわね」

まあ、手当といってもこれといった傷もなく、鼻の頭がホンのちょっぴり赤くなった程度。冷すぐらいしか出来ないんだけども。


「ってかさ、スパイクを顔面で受けてたけどさ、“凄い跳んでた”よね」

「あー、うん・・・」

正直なところ、“自覚”はあった。


それまで体育はヘナチョコだった私が、晴井さんの真似をしてジャンプしただけで、“ネットから顔が出る”ぐらい跳んでしまったのだ。

バレーボールのネットって確か、2mちょい高さあった気がする。今の私の身長が154cmだから・・・。


・・・・・ん?


“今の私”の身長って、ホントに154cmなのかな・・・。

胸や腕が脚が“こんなに”成長してて、身長だけ前のまま、なんてことがあるんだろうか。


「ん? 仁美、どったの?」

「いや、ちょっと・・・」

折角の保健室。ちょっと前の放課後にもコッソリ測ったけど。今日は、保健室に居る大義名分がある。


カチャ、カチャ。ガシャンッ。


身長と体重。堂々と、二測定。


「・・・160cm」

「66kg・・・」

私が身長に驚き、明子が体重に驚いていた。いや、まあ、二人ともどちらの数値にも驚いては居たんだけど。


前回測った154cmから、6cmもアップしている。“ゲーム始める前”まで遡るなら、10cm伸びた計算。

体重に関しては何と、16kg近く増えてる。


「成長期にしては、ちょっと育ち過ぎじゃない?」

「うーん、ははっ・・」

私は、笑って誤魔化すしか出来なかった。


私の頭を過ぎる“荒唐無稽な考え”。それを明子に話したところで、冗談で流されるに決まってる。


因みに、高校生の平均値は次の通り。


高1女子:身長156cm、体重51kg。握力26kg、垂直跳び43cm。

高1男子:身長168cm、体重59kg。握力39kg、垂直跳び57cm。


今 の 私:身長160cm、体重66kg。握力65kg、垂直跳び70cm?

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