SamSuka
デアカルテ
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悪魔のアプリLv.09「握力:127kg」

「来たよー」

「あ、上がって~」

インターホンから、明子の声。


「ほい、持って来たよー」

ガチャ、と明子が私の部屋に入って来る。


「ありが・・・」

私がお礼を言おうとした瞬間。


「うぇぇっ!?」

何度目かの、明子の驚きの声。勿論、それは“とある”回数に比例している訳で。


「・・・全く、その。何て言ーか」

「・・・ねぇ?」

私もどう答えて良いかわからず、取り敢えず相槌を打つ。


――今の時間は、既に日曜の午後。


「ご両親は、何て言ってるの?」

「・・・うーん。結局は、『成長期じゃないか』って感じに・・・」

朝になるなり、私は両親に直ぐに状況を話し、慌てて病院に連れて行って貰った。

尤も、話したと言っても、あくまで“身体そのものについて”だけだけど。


バレーボールの顔面ブロックの件と合わせて、たった数日で二回の受診。


「筋肉が凄い人って、注射針を挿し難いのよねぇ」

とは、採血時の看護師さんの弁。花の女子高生に使う台詞じゃない気がする。


「病院の先生も特に『異常無し』、だってさ」

正直なところ、体調も万全。強いて挙げるなら、寝間着破りで夜中に目が覚めて寝不足ってぐらい。


「取り敢えず、着る物だけは急いで買って来た」

私服に、部屋着。流石に着られる物がほとんど無くなったので、慌てて買い揃えた。


「それで、今その格好な訳?」

「あー、うん」

私は今、Tシャツと短パンっていう超、ラフな格好。客が明子だからこそ、許されると言っても過言では無い。


「胸も凄いけど、腕とか脚もホンッと凄いわね・・・。“アマゾネス”みたい」

「ちょ・・・“アマゾネス”って、酷い」

かく言う私も、服屋さんで何度もフィッティングしていてそれは思った。


今着ているTシャツは、『3XL(XXL)』。レディースとはいえ、かなり大きなサイズ。

『3XL』の推奨サイズは、身長180cm。実際、身長だけなら一つ下の『2XL(XXL)』が丁度良いぐらい。


だけど、胸が・・・入らなかった。胸回りは、『3XL』だと115cm、『2XL』だと108cmだったのだ。

衣服は基本、推奨サイズよりも若干余裕を持たせてある。だが、115cmのGカップ巨乳を収めるには、『2XL』ではキツキツだった。


「でも“それ”、ホントに・・・合ってる?」

「え・・・合ってるよ。どうして?」

私は最初、明子が何を見てそう言ったのかわからなかった。

肩幅も胸回りも、余裕はそんなに無いけど、それでもちゃんと収まってる・・・はず。


「それに、腕だって・・・」

腕も、ちゃんと試着して二の腕が通ることを確認した上で買った。


ビリ。


「・・・あ」

私はようやく、明子の言いたかったことがわかった。視線の“先”に気付いた。

明子は、私の二の腕の上部。正確には、上腕二頭筋を見ていたのだ。


今の私の全身は、それこそ筋肉だらけ。ムキムキという表現はもう足りないぐらい、モリモリ。

そんな上半身をワチャワチャと弄りながら、不意に曲げられた腕。前腕と上腕が近付くことで、行き場を失う上腕二頭筋。

力を入れずとも、それが“力瘤”となって二の腕を太くするのは自然な作用。


「そのTシャツ、袖口はどのぐらい太いの?」

「えーっと・・・」

まだ買ったばかりだったので、その辺に放ったままだった『タグ』を見てみる。


「・・・36cm」

レディースTシャツとしては、袖口が30cm以上あるのは充分だろう。


「で、腕の太さは?」

「・・・う。さ、30cm」

そう。私の腕の太さは、30cm。なので、問題無かった・・・はず。


「曲げたら?」

「ま、曲げたら・・・」

極力、力を入れないように、恐る恐る破れた方の右腕を折り曲げてみる。

軽く曲げただけで、私の腕は一回り・・・いや、半球大の砲丸みたいな力瘤がモコッと盛り上がった。


「・・・あ」

ミチ・・・ミチッ・・・ビリィッ。


「“それ”でも、まだ目一杯じゃないんでしょ?」

明子が言いたいのはきっと、“こう”だ。


「もう破けちゃったし・・・ま、良っか。ぬんっ」

ちょっと、女の子らしからぬ力み方しちゃった。


モゴォッ! ビリビリビリッ!!


「凄っ・・・。力瘤で袖を破くって、まるで『ポ○イ』みたいね・・・」

それまでの半球ではない、丸々とした砲丸大の力瘤が、残った袖の生地を完全に引き裂いた。


因みに、実際の砲丸の外周は、だいたい40cm。力瘤を盛り上げた状態で私の腕は、51cm。

二の腕にそのまま、砲丸が載ったような感じ。肩に重機・・・ではなく、二の腕に砲丸。


「まあ、そんな仁美でも“これ”なら着られるでしょ」

明子に慌てて持って来て貰ったモノ、それは“制服”だった。


明子の親戚にウチの高校のOGが居て。その人はバレーボール部のエースだったらしい。

女バレのエースって意味では晴井さんと同じだけど、身長は晴井さんを優に超える180cmオーバー。


「卒業する頃は190cm近かったらしいよ。『6XL』でもギリギリだったみたい」

「・・・ふぅん。ホントに、大っきい」

明子から制服の入った紙袋を受け取り、中から出した。


ゴトン。


「・・・ん?」

「何、これ」

制服に挟まっていたのか、“何か重いモノ”が落ちた。


「・・・グリップ?」

いわゆる、『ハンドグリップ』・・・のような、それらしいモノ。


「『No.3』・・・メーカー名かな?」

「ちょっと聞いてみる。仁美は着られるかどうか一応、制服を試しておいて」

そう言って、明子はスマホのメッセアプリで親戚に確認してくれるみたい。

貴重品・・・では無いっぽいけど、普段使いするモノだったら返さないといけないし。


「すっご、大っきい」

流石は、『6XL』だった。上下の丈は勿論、胸周りも腕周りも余裕ある感じ。

何より、スカート丈が凄く長いので、極太の太腿が全部隠れるのが何より嬉しい。


「腕、も・・・」

恐る恐る、腕を折り曲げてみる。自分の服ならまだしも、借り物なので簡単に破く訳には行かないのだ。


「あ、大丈夫そう」

軽く曲げただけだと全くの余裕で、力を篭めた状態でやっと袖の生地が張る感じ。

制服って意外と頑丈に作られてて伸びも良いので、これなら“今の私”の身体でも何とかやってけそう。


「明・・・子はまだ問い合わせ中、か」

明子は、部屋の隅っこでスマホと格闘しているようだった。


「ホント、これ・・・何だろ。トレーニング器具、なのかな」

グリップ用と思しきゴムが巻かれた鉄の棒が二本、これまた鉄のスプリングで繋がった器具。

電子的な機械は全く無く、あくまで単純な鉄製の器具。


「どれどれ・・・」

私はその、『ハンドグリップ』を握ってみる。


「・・・ん」

ニギ・・・


「あれ? 意外と、固・・・っ」

ニギ・・・


「んぅ・・・くっ!」

ニギ・・・ギュギュ。


「・・・んっ」

ニギ・・・ニギ・・・


「・・・ぬっ」

・・・ギュウッ!


「・・・ふぅ、っん」

ニギ・・・ニギ・・・ギュッ!


ニギ・・・ニギ・・・ギュギュ。


「こういう使い方で、合ってるのかな」

最初に持った時は閉じるのもキツいぐらい固かったけど。ようやく、力加減というか、力の入れ方に慣れて来た感じ。


「それ、間違って紛れ込んじゃっただけだっ・・・」

ニギ・・・ニギ・・・ギュギュ。


「ふーん、やっぱそうだったんだー」

ニギ・・・ニギ・・・ギュギュ。


「・・・て、嘘。え、マジ・・・仁美、“それ”」

「って、え? 試しに握ってみたんだけど・・・ダメだった?」

ニギ・・・ニギ・・・ギュウ。


他人のモノとは思いながらも、私はグリップの感触が段々と気持ち良くなり。何度も握って閉じては開いて、を繰り返した。


「それ、握力が“127kg以上”無いと閉じられない器具らしいんだけど・・・」

「・・・え。・・・え?」

握力、127kg。正直、ピンと来ない。


ピコン。


「・・・んー、なになに」

明子のスマホに返信なり追記があったっぽい。


「えっと・・・。『その【No.3】は世界でも100人ぐらいしか閉じた人居ないよ』だって」

世界で100人・・・。


「もし、『その“【No.3】を閉じた”のが本当なら、女性では世界初じゃないか』ってさ」

「え、ええぇっ!?」

世界で100人ってのも充分ショックなのに、その100人は全員、男ってこと?

単純な握力の数値だとピンと来なかったけど、世界初とか言われると流石に・・・。


市販されてる握力用のハンドグリップは何種類もあるけど、最高レべルは『No.4』の165kg。

これは流石に、世界でも数人しか閉じた者は居ない・・・らしい。


『No.4』 :握力165kg以上、世界で5人程度。

『No.3.5』:握力146kg以上、世界で10人超。

『No.3』 :握力127kg以上、世界で100人超。

『No.2.5』:握力108kg以上、女性の認定者あり。

『No.2』 :握力 88kg以上、女性の認定者あり。


発売メーカーが閉じた人を認定していて、上から順に並べるとこんな感じ。

何処までがネット情報で、何処からが明子の親戚さん情報かは不明だけど・・・。


「『リンゴを握り潰せる私でも一度も閉じられたこと無いのに』って愚痴られちゃった」

「う、っへぇ・・・」

つい、変な声が漏れちゃった。制服を借りておいて何だけど、リンゴを握り潰せる明子の親戚も充分凄い気がする。


「ねぇ、リンゴ握り潰して見せてよ」

「え、ええ!?」

明子は突然、変なことを言い出した。


「そんな都合良く、家(ウチ)にリンゴなんて・・・」

・・・有った。たまたま、冷蔵庫とかが一杯で、居間に出したままにしてあるリンゴが。


「いや、さっきお邪魔した時にリンゴ見えたから。もし成功したら、今度パンケーキ奢るよ」

「え、ホント!?」

つい、食べ物に釣られた。まあ、制服とかを持って来て貰った手前、無碍(むげ)に断るのも何だか悪い気もする。


「『リンゴ潰し』って良くテレビで観るけど、一度生で見てみたかったのよねぇ」

『ボウル』とリンゴを数個、部屋に運んで来た明子は、何処か上機嫌だった。


「じゃ、行くよ」

私は『ボウル』の上で、リンゴをおもむろに右手で掴んだ。


グシャッ。


「・・・あれ」

「え、もう?」

グジュジュジュ・・・と、私の右手の中からリンゴジュースが『ボウル』に滴り落ちている。


「腐ってたのかな・・・」

一瞬、というか握った感覚すら無かった気がする。


「うーん、そんな風に見えなかったけど・・・。じゃ、これ」

そう言って、明子は腐っていないことを確認した上で、新しいリンゴを手渡して来た。


「うん。じゃ・・・」

グシャッ!


「「・・・・・」」

またしても、一瞬でリンゴはジュースに成り果てていた。


「リンゴってさ、私みたいな“女の子”の掌には余る大きさなんだよね。だから、片手で持とうとすると、どうしても・・・」

「それって、つまりさ。“ちょっと力入れただけ”でリンゴが砕けて潰れた、ってことだよね」

正(まさ)しく、明子の言う通りだった。


「じゃあ、今度は左手で・・・」

バゴォッ!


「「・・・・・」」

左手は、右手とは違う意味で力加減を間違えた。

割るまい、割るまいと真ん中を持とうと力んだら、リンゴは中心から砕け散った。ジュースになる前に、飛び散ったのだ。


因みに、割ったり砕いたりする『リンゴ割り』は握力80kg以上。

さっきみたいに、一気にジュース化しちゃう『リンゴ潰し』は握力100kg以上無いと出来ない芸当らしい。


「ホンットに凄いのね・・・。127kgで効かないんじゃない?」

「ちょっと、ヤメてよ~」

握力100kgオーバーなんて、プロの格闘家とか、相撲取り並じゃない。


体育用具室に置いてあった握力計は、100kgまでしか目盛りが無かった。調べてみたけど、市販の物もそうだった。

つまり、一般人の握力はほぼ間違いなく、100kg未満で収まるって訳で。


只の女子高生が、本当に成長期ってだけで、“ここまで”凄くなるなんてことが有り得るのだろうか。

Comments

感想、ありがとうございます。 服の描写はいつも悩むので、コメント頂けるのは大変有難いです。制服については今後の話で展開させたいと思っています。

デアカルテ

服のサイズがどんどん大きくなるの良いですよね 今回の6XLの制服でも今後の成長で収まりきらなくなるって思うとドキドキです

名無しです


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