SamSuka
デアカルテ
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悪魔のアプリLv10「身長:174cm」

「でもさ、今って実際、どのぐらいのサイズなの」

「・・・え、今? えーっと・・・」

明子には病院行く前に慌てて連絡取ったから、ちゃんと測ったサイズは伝えてなかった。


「このぐらい、かな」

私は紙に、“今の私”のサイズを書いて見せた。

「う、っそ。すっご・・・」

「あ、ははっ・・・はは」

まあ。そりゃ、驚くよね。


握力は、明子がこのぐらいじゃない?って描き加えたんだけど。それ以外は、病院で無理言って測って貰った実測値。


「身長は晴井さんって例もあるから驚かないけど、体重・・・」

「やっぱ、“そこ”気になっちゃうよね」

115cmのバストとか、100cmのヒップとか。他にも、おかしい数値は幾つもあるんだけど。


花の乙女な女子高生としては気になる、体重。

「こんだけ増えてるの、やっぱ変だよね・・・」

私は、『デビルズクエスト』をやる前の、自分自身の四測定の数値を比較してみた。勿論、腕とか脚は推定だけど。


「体重、ほとんど倍になってんじゃん。ってか、アンダー・・・」

「・・・だよね」

実は、私も地味に気になってたアンダーバスト。115cmもトップバストがあるのに、“Gカップしか無い”のだ。

アンダー88cmって、裏を返せば胸板が88cmある、ってことで。胸囲って括りだと、成人男子の平均並み。


「ウェストがキュッと縊れてるから体型そのものは凄いセクシーだけど、地味にウェストも太めだよね」

ウェストは、66cm。肥満とまでは行かずとも、ちょっと肉付きの良い女子高生なら有り得る範疇の数値、ではある。


アンダーバスト、ウェスト、ヒップ。上腕に、太腿。倍化した、体重。


「胸はちゃんと“おっぱい”みたいけど、他はその・・・ねぇ?」

「あー、うん。間違い無く、“筋肉”だよね・・・」

明子が言い淀んだ“筋肉”って単語を、私は敢えて口に出した。


「これって全身、筋肉の塊だよね。筋肉隆々」

何度か、自分を“そう形容した”けれども。改めて言われると、やっぱり“これ”は現実なんだ、と思わざるを得ない。


「でも、何か“違和感”あるのよね・・・何だろ」

「そりゃ、こんだけ筋肉付いてる女の子なんて、何処にも居ないだろうし」

そもそも、何の運動もしてない帰宅部ゲーマーな私が、“こんな体型”になってること自体、異常事態なのだ。


174cm、92kg。


こうして、身長と体重だけ抜き出してみると、すっごい肥満体か筋骨隆々かのどっちかにしか見えない。

女子柔道の世界クラスだと、同じぐらいの身長で体重100kg超なんて海外選手も居るには居るみたい。


「でも、何でここまで大きくなったんだろね」

「あー、うん・・・」

ある意味、“本題”な部分。


「もし、『ゲームアプリ』のせいで“こうなった”って言ったら、信じる?」

「・・・え? ゲーム?」

明子は、何言ってんの、的な反応。まあ、当然と言えば当然なんだけど。


「これ、見てみて」

私は『DQ』を起動して、アバターの画面を明子に見せた。


「何、これ。仁美・・・なの?」

スマホ画面には、いつの間にやら『六頭身』になった私のアバターが表示されていた。


「キャラの体型、今の私とソックリじゃない?」

「うーん、似てるっちゃ似てるけど・・・」

私は、今までの経緯を簡単に掻い摘んで説明した。


「『ゲーム』でレベルアップしたら、現実でも身体が成長した、ねぇ・・・」

俄かには信じ難い、そんな表情。


「それこそ、『ラノベ』とかでありそうな設定よね」

ラノベ。いわゆる、ライトノベル。今も昔も、流行るのは異世界転生モノ。

異世界に転生したついでに、何かしらかの能力をゲットして無双するのが主流のジャンル。


「リスクっていうか、デメリットは何も無いの?」

「デメリットは・・・」

寝てる間とかに突然、成長が始まって服を破いちゃうことぐらい、なのかな。

残念なのか、幸運なのか。体調面は本当に何も無い。


眼が良くなったり足が速くなったり、身体が頑丈になったり。良い事尽くめ、な感じ。

女の子なのに筋肉モリモリになっちゃうのに目を瞑れば、だけど。


ノーリスクで付加能力をゲット、って意味ではやっぱラノベちっくなのかな・・・。

・・・でも。本当に、ノーリスクなんだろうか?


「取り敢えずさ、当分はプレイするのを控えたら?」

「どゆこと?」

明子が言うには、数日から数週間を様子を見てみれば、とのこと。


その間にまた“成長”が有れば、『DQ』は無関係。只の単なる、成長期が原因。

もし、“成長”が無ければ『DQ』が影響してる可能性がある、ってことらしい。


「『ゲーム』の仁美と現実の仁美が今イコールなら、何もしなきゃ何も起きない筈よ」

「そ、っか。そう、よね」

もし、『DQ』が影響してると仮定すれば、間違いなく“タイムラグ”がある。

今回、たまたま数日プレイしなかったことで、一時的とはいえ、現時点でその差は無くなった・・・と思う。


Lv30 ≒ 174cm、92kg


ここは敢えて、『イコール』ではなく『ニアリーイコール』としておく。


“このぐらい”で収まるのであれば・・・


「まあ、アリかな」

・・・なんて、私は高を括っていた。


バレー部ばりの長身で筋肉モリモリのマッチョだけど、身体能力高めの筋肉系女子と思えば、アリっちゃアリ。

“このままで済む”のであれば、全然アリ。有りよりのアリ。



――そして、それから二週間。


「今日は、どう?」

「うーん、特にいつも通り」

ここ数日、私と明子の朝の挨拶はこんな感じ。

『デビルズクエスト』を封印してから、それなりの時間が経ったと思う。


ハマりつつあったゲームを封印するのは地味に辛かったけど、何とか耐えた。

明子が家(ウチ)に来た日から、本当に一度も起動すらしていない。


明子の親戚に借りた『6XL』の制服は私に丁度フィットして、着慣れて来た感じ。

ワザワザ、『2m』の巻尺を買って、身長は毎日測ってる。でも、特に変化なし。


変わった事と言えば、晴井さんが顔面ブロックの件の謝罪ついでにバレー部に勧誘しに来たぐらい。


「あなたの身体能力をそのままにしとくなんて、勿体ない」

とか色々言われたけど、何とか躱(かわ)した。


「もし、“身体に関する部分で何か気になる事”があったら、気軽に聞いてね」

そう言い残して、晴井さんは去って行った。何が言いたいのか、良くわからなかったけど・・・。


「・・・うーん」

身体能力、って言ってもねぇ・・・。


ベギィッ。


「・・・あ」

私の手の中で、シャーペンが真っ二つに折れていた。


“また”やっちゃった」

考え事をすると、つい力加減を間違えてしまう。


100kgオーバーの超絶握力は、ちょっと力加減をミスるとシャーペンぐらいなら直ぐに折っちゃう。

正直なところ、私自身も“今の私”を持て余してしまっているのだ。


『6XL』の制服越しに、二の腕や太腿、お腹を摩(さす)ってみる。


モリッ。モゴッ。モココッ。


と、明らかに筋肉の隆起による圧力が厚手の生地越しに伝わって来る。


制服のお陰で目立ってないけど、多分、クラスで一番逞しくなっちゃったと思う。

同じクラスには身長180cm、体重100kgの関口君(通称:関取君)が居るから、体格だけならまだ上が居るけど。


もし今、体力測定やったら、凄いことになりそう。


・・・なんだけど。不意に手にしたパワーで無双、みたいな『ラノベ』的な展開、私はお断り。

学校では、お気楽ヒッソリ帰宅部ライフを満喫したい。目立つなんて、以ての外。


――でも、それこそ『ラノベ』で無くても、現実はそんなに甘くないのだ。

自分自身の思う通りに、現実は都合良く行く訳が無い。この後、私はそれを否が応でも知ることになる。

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