SamSuka
デアカルテ
デアカルテ

fanbox


悪魔のアプリLv12「Lv:??」

「あれ、仁美? もう、大丈・・・」

「あ、おはよ」

何日か振りの、明子との朝の挨拶。


「・・・・・・・っ!?」

「あー・・・、うん」

驚き過ぎて声にならない明子に、私は『わかった、わかった』とジェスチャーした。


「今、幾つあるの・・・?」

「身長、体重? それとも、バスト?」

私は、スマホにメモっておいた数値を明子に見せた。


「す、っご・・・」

明子は、スマホのメモアプリに表示されてる数値と、私の身体を何度も見比べていた。


「何かもう、数値がバグってるようにしか見えないんだけど・・・」

それに関しては、私も同意見。既に何度も通り過ぎた道だけども。


「でも“それ”、良く入ったね」

「うん、まあ・・・ね」

流石は『6XL』の制服、と言ったところだろうか。


190cm近かった明子の親戚と、今の私の身長は多分、かなり近い状態。

明子の親戚の身体のボリュームはわからないけど、少なくとも細くは無かった筈。


今の私の見た目も、身長が高くてちょっとガタイが良くなった程度、のシルエットに見えなくもない。

そのお陰か、クラスメイトもそんなに追及して来なかった。


因みに、面倒だったから明子には詳しく説明しなかったけど、二の腕にはサポーターを巻いている。

あの『研究所』はスポーツ用品も取り扱っていて、念の為買っておいたのだ。結構、値が張ったけど・・・。


軽く曲げただけで、50cmを超える極太の上腕。腕に関してだけは、無策じゃ袖が耐えられない。

『6XL』の制服と言えど、袖の猶予は50cmぐらいまで。借り物とか以前に、女の子として外で制服破りなんてしたくない。


「今日の体育、どうするの?」

「うーん、当分は見学かな・・・」

一応、体調不良を理由に数日休んでいたこともあって、先生も何も言わないだろう。


とてもじゃないけど、今の身体に慣れるまでは体育は休まざるを得ない。

バレーボールの時、跳び過ぎて顔面に晴井さんの『殺人スパイク』を喰らったのは記憶に新しい。


今日の体育は合同でバスケットボール。しかも、午後の日差しのキツい時間帯に、場所はグラウンド。

こんな身体でも、変わらずインドア派な私にとって、見学は素直に嬉しい。



「行ったよー」

「えいっ」

男子がサッカー、女子がバスケットボールでグラウンドのあちこちで声が響き渡る。

楽しそう、と思わなくもないけど、今は大人しくグラウンドの隅っこで我慢。


「ここなら涼しいかも」

私は、“涼”を求めてグラウンド端に放置されてる、今は使われていないバスケットゴールにもたれ掛かっていた。


今、みんながグラウンドで使っているのは最新式のバスケットゴール。丈夫で軽く、移動も楽チン。

一方の私の傍にある“旧式”は鉄製で錆び易く、重くて移動も大変。打ち捨てられるのも止む無し、な感じ。


「あー、暑くなって来たかも・・・」

ゴール板が陰になり、バスケットゴールの左側は日差しが射していない。逆に、右側は完全に日向。

最初は、この左側の陰に居るだけで涼しかったんだけど、気温そのものが上がって来ちゃった。


「あ、冷たくて気持ち良い」

私は、鉄製の骨組みを右手で掴んだ。陰側に入っている鉄の棒は、丁度良い感じでヒンヤリとしてる。


「・・・・・」

“これ”、どのぐらい重いんだろ・・・。私はふと、そんな突拍子もないことを思った。

以前の私なら、“そんなこと”絶対に思わないだろう。しかし、今の私は・・・。


「ん・・・っ」

思うより早く、右腕を動かしていた。


グアァッ。


「ぅわぁっ」

ドンッ、と慌てて、私はバスケットゴールを元に戻した。


思いの外、簡単に持ち上がってしまい、自分自身でビックリしてしまった。

勿論、持ち上がったのはバスケットゴールの左側だけ。決して、一気に全体が持ち上がった訳ではない。


昔ながらの、武骨な鉄の棒による骨組みが張り巡らされたバスケットゴール。

推定数百kg。多分だけど、少なくとも100kg程度じゃ効かないぐらい重い・・・筈。


それが、片輪状態とはいえ、片腕でヒョイッと持ち上がってしまったのだ。

もし、クラスメイトの誰かに見られでもしたら、大変。


「うーん」

・・・大変、なのかな。


周りに知られて困るとすれば、運動部へ勧誘されたり、とかだろうか。


「ねぇ、もう授業終わったよ」

「・・・え、あ」

気付いたら、いつの間にかみんな後片付けに入っていた。

脳内で思考を巡らせていたら、いつの間にか結構な時間が経っていたらしい。


「・・・ねぇ、さっき」

「・・・何?」


「“それ”、持ち上げてなかった?

「それ、って・・・?」

相手が明子だったら、惚けたりはしない。


「バスケットゴール、持ち上げてたよね・・・?」

「え、私が? そんな、まさか・・・はは」

しかし、今目の前に居るのは、晴井さんだった。


「貴女って、そんなに力持ちだったっけ?」

「え、いや・・・そんなことは」


「・・・ねぇ。もしかして、“あれ”をやってるんじゃ・・・」

「・・・あれ?」

“あれ”って、何だろう・・・。・・・あれ。・・・アレ。・・・・・。


「いや、ごめんなさい。忘れて」

“私だとここまでは”とか、“リスクが高過ぎる”やら、何やら。

普段ハキハキしてる晴井さんらしくない、ブツブツとした呟き。


「前も言ったけど、もしバレーボールに興味あったら言ってね」

「気が向いたら、かな・・・」

私は曖昧に返事して、晴井さんを見送った。


「もうちょっと、ちゃんと話した方が良かったかな・・・」

私は文字通り“後から”、この時のことを後悔することになる。



――帰り道。


「・・・で、どうしてこうなったの」

「う、ん」

今度は、明子からの問い詰め。


「嘘、そんなことってあるの?」

「だよ、ね」

私は、プレイを封印していた筈の『DQ』で、自キャラがレベルアップしてたことを話した。


「我慢出来なくなって、無意識にプレイしてたなんてことは・・・」

「さすがに、それはないよ」

流石の私も、そこまでゲーム中毒じゃない。


「じゃあ、システム面で何かあるんじゃないの? 何か、見落としてない?」

「システム・・・・・あっ」

『フレンド』システム・・・。

ソシャゲでは有り触れてるので、特に疑問に思わなかった『フレンド』システム。


フレンドに私のキャラが借りられまくって、レベルが上がった。っていうのなら、確かにこの状態もわかる。

だけど、冷静に考えれば買切型RPGなのに他プレーヤーとデータが共有されるのだろうか。


「・・・ん、どしたの?」

「・・・いや、もしかして」

そもそも、何処にも『買切型』なんて書かれてない。私が、勝手にそう思ってただけ。


単純な買切型なら、最悪はアンインストールすれば・・・なんて最終手段もあった。

だけど、もし一般のソシャゲ同様、データが運営のサーバー上にあるのだとすると・・・。


「普通のソシャゲだと・・・そういや、どうなんだっけ」

一般的なソシャゲの場合、スマホ側にあるのはあくまでゲーム側のデータ。

プレーヤーに関するデータはサーバーにあるので、スマホ側で消しても反映されない。


実際どうなっているかはそれこそ、ゲームとか運営次第なので、ブラックボックス過ぎる。

一定期間ログインが無ければ削除、も考え難い。一年振りにログインしたらゲームが初期化された、なんて話は聞いたことない。


「プレーヤーデータを消す方法、何か無いのかな・・・」

「キャラって、死んだらどうなるの?」

・・・・・っ!


プレイ初期にフレンドで連れて歩いた、『トシオ』。後にも先にも、“殺しちゃった”キャラは『トシオ』だけ。

死んじゃった以降、『トシオ』はフレンド一覧で一度も見ていない。


「確かに、キャラを殺せばリセットされるかも・・・」

あくまで、の話。『トシオ』の件も、単に私のフレンド一覧から消えただけ、の可能性もある。

でも、試す価値は大いにあると思う。


善は急げ、と全速力で走ったら、あっという間に家に着いてしまった。


「ふぅ・・・っ」

取り敢えず、帰宅して直ぐに制服を脱ぐ。一日ずっと、窮屈なのを我慢してた。

特に腕は、特製サポーターを巻いてるとはいえ、腕を曲げずに一日過ごすのはもう疲れ・・・


ミチッ。


「・・・あ」

つい、腕を曲げた状態で力が入っちゃった。着替え中なので、仕方ないんだけど。

制服自体は完全に脱いだ後だったので、最悪の自体だけは免れた。


「・・・・・」

サポーターの端っこに、裂け目が出来てる。買ったばっかなのに・・・。

ホンのちょっと、少し力を入れただけで、私の上腕二頭筋はすーぐに盛り上がろうとする悪い子。


「・・・ん」

恐る恐るサポーターを外し、コリを解(ほぐ)すかのように肩の高さで二の腕を折り曲げた。


モリッ、モリリッ! モゴォッ!


両腕にこれでもか、と山盛りの『ダブルバイセップス』が盛り上がった。

極太な力瘤(精密値62.9cm)は実際、ハンドボールよりも大きい。因みに、ハンドボールの外周は約59cm。


「胸も、本物だよねぇ」

こちらも同じく、ハンドボール張りに大きな、Jカップバスト。ここまで来るともう、巨乳と言うより爆乳。

このサイズになると、武骨な機能重視のブラジャーしか無く、しかも値段もかなりお高め。


私の場合、広背筋が盛り上がり過ぎて、フロントホックのブラでは胸回りが足りず、更に選択肢が限定された。

脹(ふく)よかな胸と、超肉体派な背中。その両方を持った女性なんて今まで見たことない、とは下着店員談。


「やっぱ、女子高生の身体じゃないよね」

立て鏡で改めて、マイ筋肉ボディを確認。


胸元にハンドボールがドン、ドンッと二つくっ付いた感じ。足元なんて全く見えない。

両腕にも、Jカップ爆乳と同じ、ハンドボール大の力瘤。ドン、ドン、ドドン。


スカートのお陰か外では目立たなかったけど、ハンドボールな力瘤よりも更に太い、太腿(精密値82.8cm)。

家(ウチ)にあったメロンと比べても、私の太腿の方が明らかに太かった。因みに、メロンの外周は約80cmだった。


「う~ん・・・」

久々に、帰宅直後の『DQ』起動。いつの間にやら、八頭身化したモリモリマッチョな私のアバター。

『みりょく』の数値が高いからか、おっぱいも大っきくて、筋肉モリモリな割にスタイルは良い。


「やっぱり、“イコール”だよね・・・」

八頭身アバターの為か、現実との比較は容易だった。

状況証拠だけなら間違いなく、アバターと私自身の身体の変化・成長は連動してる。


「うーん、どうしよっかな・・・」

取り敢えず、私は周辺を探索しつつ、戦闘をこなしてみた。

と言っても、無抵抗。こちらからは、一切抵抗しない。


【ゴロツキの攻撃! ミスッ!ダメージを受けない】

【ノライヌの攻撃! 1ポイントのダメージ!】


「ダメ、か・・・」

単純に、その辺の敵にヤラれてみよう、と思ったんだけど・・・。


このゲーム、地味に武器込みで、ステータスが下がる行動が取れないようになっている。

なので、身に着けている装備を外したり、弱い装備に切り替えたり出来ない仕様なのだ。

ひょっとしたら、ステータスを下げる何かがあるかも、と思ったけど、そういうのも無さ気。


「こりゃ、ダメだ」

周辺の敵が雑魚過ぎて、とてもじゃないけど、死にそうにない。やるだけ、時間の無駄だった。


【あたらしいばしょにいきたいのかい? なら、たいりくボスをたおさないとね】


「大陸ボス、か」

いわゆる、エリアボスって奴なのかな。


こういったRPGだと、エリアが進むごとに敵が段階を踏んで強くなるのが定例。

その例に漏れず、『DQ』もその辺の仕様は同じらしい。


かみなりまじんはかなりつよいよ。なかまもそうびもちゃんとじゅんびしないとね】


「『かみなりまじん』ってのが、大陸ボスなのかな」

今まで、中ボス的なのは何度か戦ったけど、準備すれば勝てるレベルばっかりだった。

まあ、私が『DEF型』育成したせいか、死に難いキャラに育っちゃったってのも原因なんだろうけど。


「・・・行って、みるか」

エリアボスならぬ、大陸ボスなら相手としては充分だろう。


ハンデ、じゃないけど、仲間は『メイコ』一人だけ連れて行くことにした。

『メイコ』のレベルは、24。『AGI型』だけど、ステータスは先ず先ず。


「ふぅ・・・やっと、着いた」

『かみなりまじん』の居るダンジョンまで、かなりの時間を要した。

幾つかレベルも上がっちゃったけど、“キャラ殺し”作戦が上手く行けば、それも帳消し。


【よくぞ、ここまできた。つぎのたいりくにすすみたくば、われをたおしてみよ】


おどろおどろしいダンジョンBGM、いわゆる“雷神”を思わせるボス然とした風体。

「ま、最初わね」

モノは試しと、【にげる】を選択。


【にげるとはなにごとか。われからのがれられるとおもうな】


「ですよねー」

でも。

【まだ、にげるきとは。われからのがれられるとおもうな】


「まだまだ」

【おのれ、まだわからぬか。われからのがれられるとおもうな】


「まだ台詞変わるんだ・・・」

どうせ負ける勝負と、私は引き続き、【にげる】を選択。

【いいかげんにせよ。ぜんりょくでむかってこぬか】


「・・・あれ?」

【にげる】が、無い。そればかりか、【たたかう】以外の選択肢がみんな、選択出来なくなってる。

ピッ♪


「・・・あ」

どうしようか迷ってる内に、間違って選択肢を押しちゃった。


【ヒトミのかいしんのいちげき! かみなりまじんに573のダメージ!】

【かみなりまじんのらいげき! ヒトミに89のダメージ! メイコに268のダメージ!】


「次からは気を付け・・・あれ?」

選択肢が、出ない。


【ヒトミのこうげき! かみなりまじんに289のダメージ!】

【かみなりまじんのこうげき! メイコに335のダメージ!】


「・・・また。もしかして」

選択肢が【たたかう】だけなので、さっきのターンで選択した状態のまま戦闘が進んじゃってる・・・!?

何その仕様。そんな、無駄な気遣い要らないんだけど・・・。


【ヒトミのこうげき! かみなりまじんに312のダメージ!】

【かみなりまじんのらいげき! ヒトミに75のダメージ! メイコに420のダメージ!】

【メイコはしんでしまった!】


「・・・あ」

私のパーティ史上、二人目の“死者”。


【ヒトミのかいしんのいちげき! かみなりまじんに691のダメージ!】

【かみなりまじんのつうこんのいちげき! ヒトミはひらりとかわした!】


「う、っそ。『DEF型』なのに躱(かわ)した・・・」

【ヒトミのちょうかいしんのいちげき!! かみなりまじんに1235のダメージ!】


「何、“ちょうかいしん”って・・・」

初めて、見た。何か、元の四倍ぐらいダメージ出てるんだけど・・・。


ティラリン♪


【かみなりまじんをたおした!!】


「・・・あ」

倒し、ちゃった・・・。


ティラリラリタッタッターン♪


「やば・・・」

【ヒトミはレベルが1あがった!】

【つながりが1あがった!】

【みりょくが5あがった!】

【あくりょくが7あがった!】

・・・・・


「ちょ・・・」

【ヒトミはレベルが1あがった!】

【つながりが1あがった!】

【みりょくが3あがった!】

【あくりょくが10あがった!】

・・・・・


「もうヤメ・・・」

多分だけど、『メイコ』が死んだことにより、貰える経験値が全て『ヒトミ』に入っちゃったみたい。

どんだけ上がるの、ってぐらいレベルアップが続いた。

「やばい、やばい」

めっちゃ、レベル上がった。レベル53って、どんだけ・・・。


「しかも、【255】ってカンストじゃなかったんだ」

【ちから】関連と【みのまもり】が軒並み、【300】オーバーしてる・・・。


「“これ”、何日かしたら“来る”ってことだよね・・・」

今でさえ、ハンドボールとかメロンと比較するような体型なのに、これ以上になっちゃったら・・・。

今まで四回も続いたんだ。五回目も来る・・・よね。


今日この後寝たら、とか。明日の夜とか、そんな直ぐには来ないけど。

今までの経験則だと、一週間は掛からない感じ。


「実験は“失敗”か・・・。明日、明子に報告しないと」

次の作戦を練らないと、そう思いながら私は床に就いた。


果たして、“実験”は“失敗”だったのか、否か。


私はそれこそ後から、“それ”を知ることになる。

悪魔のアプリLv12「Lv:??」 悪魔のアプリLv12「Lv:??」 悪魔のアプリLv12「Lv:??」

Comments

感想ありがとうございます。 次はある意味、予定調和な展開になってしまうとは思いますが、乞うご期待下さい。

デアカルテ

一気にレベルが上がり、来たる日の成長が凄く楽しみです。

okita

感想ありがとうございます。 自分で望んでパワーアップも勿論好きなんですが、やっぱり望まぬパワーアップで右往左往、な展開が好きだったりします。

デアカルテ

感想ありがとうございます。 次の展開に関しては、当初の予定とは変わった、というか変えてしまった所があります。乞うご期待、ということで・・・

デアカルテ

明子ちゃん生きてて欲しいなぁ

投稿お疲れ様です! 嫌でも上がるレベルの描写が好きですね 本人の意思とは無関係にパワーアップしていく所がドキドキします!

名無しです


More Creators