SamSuka
デアカルテ
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凄惨な夜

「おい、ジョージは何処行った?」

「んぁ、外で小便でもしてんじゃね」

とある海外の地方都市。その外れにあるマフィアの事務所。


“その日”、その地方一帯は猛吹雪に見舞われ、外は一面の銀世界。

マフィアの組員たちも、こんな悪天候の日ばかりは、と戸や窓を閉め切って酒を呑んでいた。


「おい、ニック! “今日”は外に一歩も出るな、ってボスから言われてんだろッ」

「へへっ。おぃおぃ、ブライアン。俺らは小便臭いガキじゃねぇんだ。泣く子も黙るマフィア様だぜ」

そう言って、ニックと呼ばれた男は拳銃を手に取る。


「何かありゃ、これで“ズドン”よ」

部屋の壁に向けて、いつでも撃てるぜ、という仕草をした。


現に、この一帯はこのマフィアが仕切っていた。

麻薬に銃器、殺し。何でもアリ。警察ですら、このマフィアの言いなりだった。


「そういや、お前は新入りだったな。この町には、“絶対に外に出ては行けない日”がある。それが――」

「はぁい♪」

二人の男は、思いも掛けない声にギョッとした。


外は猛吹雪。更には、マフィアの事務所。付け加えるなら、時間は完全に深夜。

普通に考えれば、外を出歩く者は居ない。・・・筈だった。


「ねぇ。開けて?」

“それ”は、窓の外から話し掛けていた。


銀髪の美女。しかし、大柄なのか、屈むような姿勢で窓を覗き込んでいた。


「ほら、“お仲間”さんも開けてって言ってるよ?」

女は、ムンズと一人の男を窓に押し付けた。


「た、助け・・・」

「ジョ、ジョージ!」

女に首根っこを“片手”で掴まれ、ジョージは為すが儘になっていた。


「もぅっ! ジタバタうるさいなぁ」

「うぐぇ」

断末魔は一瞬だった。


ジョージの首を掴んでいた女の左手が、無造作に閉じられた。

当然、そこに握られていた男の頸椎は一瞬で砕かれた。首が、力なくダランと垂れ下がる。


「ジョージィーッ!」

「手前ぇっ! よくもっ!」

先ほどから銃を手にしていたニックは、あっという間にセーフティを外し、窓に向かって引き金を引いた。


バンバンバンッ!


「おいっ! ウチの窓は防弾ガラスなんだ。撃ったって無駄だ」

「な、なら・・・あれは、どういうことなんだ」

突き刺さった三発の銃弾、その反対。外側で、ガンッガンッと物凄い衝撃が起きていた。


「ねぇ、開・け・てよっ」

女は、左手一本で男の身体を振り回しながら、防弾ガラスに叩き付けていたのだ。


ガンッ、ガンッッ・・・ガシャアァンッ!!


「う、そだろ・・・。防弾ガラスが・・・」

今まで、何度も敵対組織の襲撃から事務所を守って来た防弾ガラスが、いとも簡単に破られてしまった。


「ん、っと」

女は窓枠を物ともせず、、バキバキッと身体でぶち抜きながら部屋に入って来た。


「ジョージ・・・」

女の手に握られたジョージの上半身は、まるで轢死体のように人の呈を為していなかった。


「手前ぇ、女っ! 何処の差し金だ!?」

「差し金・・・? 私の“この格好”が、マフィアとかに見えるの?」

女は、“白い服”を来ていた。

厚手の生地のようではあるのだが、こんな真冬にも関わらず、半袖にミニスカートをスカートを穿いていた。


「・・・・・っ」

改めて、目の前で女の身体を見ると、異様という他なかった。


ややウェーブの掛かったプラチナブロンドに、胸元の生地を押し上げるメロンのような巨乳。

これだけなら、『プレイメイト』でも早々お目に掛かれないような美女然とした佇まい。


しかし、マフィアの男たちのが見上げるぐらい、女の身長は高かった。190cm・・・いや、2mはあるだろうか。

そして、半袖やミニスカートから覗く素肌には、これでもかと盛り上がる筋肉。

二の腕の力瘤は、某ホウレンソウ水夫を思い浮かばせ。極太の太腿は、大型のプロレスラーを想起させた。


「じゃあ、何の為にここに来やがった。ここがマフィアの事務所ってわかってのか!?」

「んー? たまたま、外に“コイツ”が居たから、つい」

そう言って、女はジョージの亡骸を指差した。


「このアマッ! つい、だと・・・」

「私は、“マリア”。折角の“今日”だし、何処で“プレゼント”あげようか迷ってたのよ」

マリアと名乗った女はつい、思い付きで、マフィアの事務所に押し入ったというのだ。ジョージは、その次いでに殺された。


「俺らはお前みたいな“ディーヴァ”に用は無ぇんだよ」

ディーヴァとはいわゆる、女プロレスラーを指す。どちらかというと、ショープロレスの演者を指すことが多い。


「どっちにしろ、生きてここを出られると思うな」

闖入者の目的が何であれ、町で鳴らしたマフィアが押し入られた挙句、仲間を殺されたとあっては只で帰す訳には行かない。


「んー、そうねぇ」

マリアは銀髪を揺らしながら、品を作るように身体をクネクネさせた。


本来なら、豊満な美女が作る品である。色香が、周りの男たちを魅了したであろう。

しかし、目の前の女は男たちを遥かに見下ろす長身で且つ、全身にはこれでもかと搭載された筋肉の塊。


只の女ではないのは勿論、醸し出す雰囲気は熊か何かの大型の肉食獣を思わせた。


「“誰も生きてここを出られない”のは、確かにそうね。私以外は、ね♪」

そう言うや否や、マリアは先ほど発砲したニックに拳を振り下ろした。


「ぶぎゃ」

「え」

近くに居たブライアンは、まるでスローモーションを見ているかのようだった。マリアが、力を入れたようには見えなかった。

子供の頭を撫でるような。そんな手付きで振るわれた拳は、ニックの頭ごと上半身を叩き潰してしまった。


「ニックーッ!」

「ふぅん。この人、ニックって言うのね・・・覚えておくわ」

マリアは、手に付いた血糊を自ら白い服に塗り付けながら、感情も無くそう言い放った。


「おい、どうした!?」

奥や地下から、何事かと騒ぎを聞き付けたマフィアの組員たちがゾロゾロと姿を現した。


「あら、大漁♪」

多勢の男たちに囲まれながら、マリアは歓喜の声を上げた。


「もう、逃げられねぇぞっ!」

「別に、逃げてないんだけどぉ?」

マリアは大きな手で、銃を構えた男の手を掴んだ。


グシャッ!


「うぎゃあぁぁぁっ!!」

拳銃ごと、男の手は一気に握り潰された。


パンパンパンパンッ!!


マリアの背後から、四発の銃声。


「これで、どう・・・だ!?」

「ちょっと、穴空いちゃうじゃない!?」

マリアはケロッとしては居たが、その日初めて狼狽した表情をしていた。


「私の一張羅に何してくれてんのよっ」

マリアは無造作に、後ろから発砲した男に平手打ちを噛ました。


バチコーンッ!!


男の身体が錐揉みしながら、数メートルは吹っ飛んで壁に叩き付けられた。

男の首は、絞った雑巾のほうにグルグル巻きで細く千切れそうになっていた。勿論、頸椎が無事である筈も無く。


自分で白い服に死体の血糊を付けていたにも関わらず、銃で撃たれると怒る、という理不尽さ。

だが、それ以上に、拳銃で背中から撃たれても全く意に介さない頑強さ。


「「う、が、あ、ぁ、ぁ・・・」」

二人の男が同時に、マリアの腕の中で抱き締められていた。

マリアの巨体もあってか、男たち二人はそれぞれマリアの巨乳に顔を埋める形になっている。


だが、豊満なマリアの胸を味わう余裕など到底、男たちには無かった。

マリアの巨体に相応しい剛腕が更に逞しくなり、男たちをこれでもかと締め上げているのだ。


「お前、まさか・・・。“あの噂”の・・・確かファミリーネームは、クラウス」

「あら、嬉しい。私のこと、ご存じなのね。そうよ。私は、“サンタマリア・クラウス”」

ブライアンの質問に答えつつ、マリアは二人の男を締め上げる手を緩めない。


「「やめ・・・」」

ボキボキボキッ、ボギャ!!


マリアの剛腕は、二人の男の身体が二つ折りになることすら、許さなかった。

余りに太過ぎるマリアの腕は、男二人分の身体を圧し潰し、その白い服に新たな血糊をプレゼントした。


「まさか、『死のサンタクロース』・・・実在していたのか」

「私としては、不本意なのよねぇ」

マリアはいわゆる、“サンタクロース”に連なる一族の出身だった。


サンタクロースは世界中に子供たちにプレゼントを配って回る為、超人的な筋力と体力を必要とする。

(実際、人間のサンタクロースにおいても、認定試験は体力テスト、なのである)


「頑張って鍛えて、こんなに大きくなったのに、人格でダメだなんて・・・失礼しちゃう」

マリアは、余りにも粗野で粗暴過ぎたのだ。


「私以上に力持ちなサンタクロースなんて、一人も居ないのに」

そう言って、マリアは肩口で腕を折り曲げると、モゴォッと超特大の力瘤が二の腕に盛り上がった。


鍛えに鍛え過ぎた結果、文字通り誰も敵わないような超筋肉と超怪力を手にしてしまったマリアは。

いつしか、その力を他者に振るうようになってしまったのだ。


結果、マリアに与えられた使命・・・いや、役職は『死のサンタクロース』だった。

年に一度、聖なる夜。本家のサンタクロースがプレゼントを配って回る傍ら。

その裏で、“人間の間引き”を行う、というミッション。


つまりは、『死のプレゼント』。


生きていて、罪を一度も犯したことがない者など、居ない。

クリスマスの夜、マリアの目に付いた者に強制的に罰がプレゼントされる、という訳だ。


「悪事を働き、善行を積まなかった者。その魂が地獄に堕ち、その果てに子供たちのプレゼントへの糧、元になるの」

世界はそうやって限られたリソースで回ってるのよ、とマリアは説明した。


「何で、そんなことを俺に・・・」

残るは、ブライアン一人。


「冥土の土産、よ♪」

そう言って、ブライアンはマリアの剛腕に抱き抱えられる。


「最後の一人だから、念入りに・・・と」

長身のマリアに抱き上げられたブライアンの足は、完全に床から浮く。その足を、マリアは自分の両脚で挟み込んだ。


メキ・・・ゴキ・・・


徐々に、ブライアンの身体がマリアの身体の中に、埋まって行く。


ゴキ、ゴキャ・・・


ブライアンの意識は、既に無い。


ゴキキッ


しかし、マリアは最後の一人を愉しむように、念入りに圧し潰して行く。


ブライアンの身体が跡形も無くなる頃には、マリアの白かった服は、真っ赤なサンタらしい装いになっていた。

Comments

感想ありがとうございます。 バキみたいな外連味のある作風が個人的に好きだったりします。

デアカルテ

銃弾が効かないなんてまるでバキですね。

ゼネガル

感想ありがとうございます。 前々からクリスマスで一ネタ出来ないかなと思ってまして、ようやく書けて安心しました。

デアカルテ

素敵なクリスマスプレゼントありがとうございます。 ファンタジーな存在が残酷なのゾクゾクしますね。 クリスマス以外の平日もとっても気になります。 更新お疲れ様でした。

okita


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