SamSuka
デアカルテ
デアカルテ

fanbox


X型女子10「ST型未亡人2:最初の夫」

最初の夫は、恋愛結婚だった。


大学生時代に知り合い、夫の就職を経て結婚。

失敗があったとすれば、籍を入れた後に同居したことだろうか。


もし、同棲を先に経験していれば、“間違い”は起きなかったかも知れない。

しかし、学生が賃貸出来るような部屋で、妻子が暮らせるかというと、それも無理な話。


発端は、ホンの些細な事だった。


「あら、ちょっとゴメンナサイ」

妻子は家事で両手が塞がっており、仕方なく“それ”を跨いだ。


「えっ・・・?」

夫は一瞬、何が起きたかわからなかった。


その時、夫はたまたま食卓と食器棚の間に居た。


妻子の体格も含めた色々な事情があり、家そのものは広い。

ただ、家具の配置上、どうしてもスペース的に狭くなる箇所はある。

夫はそこに居た為、結果として道を塞ぐ形になってしまっていたのだ。


「妻子。今、何を・・・」

夫は確かに、自分の“頭上を通って行く”妻子を見た。


夫は学歴も良く、大企業への就職が叶ったこともあり、夫として男として落ち度は無い。

ただ、背が低いことだけが、周りから見た夫に対する欠点、という認識だった。


そう、夫の身長は成人男子の平均を大きく下回る、150cmしか無かったのだ。

一方の妻子の身長は、331cm。更に付け加えるなら、股下は何と160cm近い。


妻子としては、夫にわざわざ退いて貰って煩わせるよりも。

気を利かせて跨いでしまえば、お互い手間が掛からず、楽。そんな、気遣い。


しかし、それは裏を返せば。

妻子にとって夫は、跨げる程度の高さの障害物でしかない、ということでもある。


「お、夫を・・・。夫を跨ぐなんて、何事だッ!」

「そ、そんなつもりは・・・」

結婚するまで、喧嘩どころか声を荒げた事すら無かった夫が、初めて激昂した。


夫からすれば、今まで敢えて気にしないようにして生きて来たコンプレックス。

それを寄りによって、生涯を誓った伴侶から思い知らされた格好になったのだ。


「このぉっ」

夫は、怒りに任せて右拳を振り上げ、妻子目掛けて殴り付けた。


バスッ、ン。


「・・・?」

「・・・く、このっ」


バスン。


「・・・・・?」

妻子は、夫が何をやっているか全くわからなかった。


「う、っそだろ・・・」

一方の夫は、渾身のパンチを何度も放ったのに妻子が身動(みじろ)ぎ一つしていない事に、驚きの色を隠せない。


夫は低身長ではあるが、決して貧弱な訳ではなかった。

どちらかというと、一般成人と比べてガッシリしていて体格も良い。


些細な夫婦喧嘩であるが、もしこれが仮に格闘技戦だったとすれば、勝負は火を見るよりも明らか。

ボクシングや柔道において何故、体重別のカテゴライズがされているのか。

それは言う迄も無く、相撲でも無い限り、体重イコール筋力差に他ならないからだ。


身長差は“倍程度”だが、体重差はそんなレベルでは無かった。

夫の体重は、身長150cmにしては重い、68kg。

だが、妻子の体重は何と、優に440kgにも及ぶ。実に、六倍超。


只でさえ、【X型女子】は筋力的に一般人を大きく上回る傾向にある。

【M型女子】は言うに及ばず、【T型女子】でさえ膂力はその身長差どころでは無い。


夫が殴ったのは妻子のお腹ではあるが、分厚い皮膚の下に埋まる常人以上の腹筋に敵う筈も無かった。


尤も、顔を殴ることが出来ればワンチャンスあったかも知れないが、それも無理だった。

夫が万歳しても届くのは精々、190cm弱の高さと言ったところ。

相対する妻子は、胸の高さの時点で260cmを優に超える。上半身を殴ること自体、不可能。


一般的な夫婦であれば、『DV(家庭内暴力)』案件だっただろう。

しかし、圧倒的な体格差が、そんな一般家庭で起きるであろうイザコザを無効化した。


「くそっ、こうなったら・・・覚えてろよ」

「そんな・・・」

夫に毒づかれながらも、矛を収めてくれたことに妻子は安堵した。


しかし、数日後。


それは、夫が一週間の出張で家を空けた時に起こった。


ガッ!


「きゃっ」

妻子は深夜、ベッドに寝ていたところを頭部に衝撃を受けて跳び起きた。


窓のある寝室ではあるが、今夜は雨が降っており、外は真っ暗。

夫は居らず、寝室には妻子以外、誰も居ない筈なのに。人の気配があった。


部屋の明かりを点けようとスイッチに手を伸ばそうとすると、ガッと又しても衝撃。


何か・・・いや、誰かが居る。しかも、武器を持っている。


「ちょっと! 誰なんですかっ!?」

夫が居ない夜。一人寂しく寝室で寝ていたら、まさかの暴漢。

裕福なマンションに夫婦二人暮らし。夫が出張中なのが、何処からか漏れたのだろうか。


ガッ。


「きゃっ」

暴漢は無言で再び、武器の様な物で妻子を殴り付けた。


「ちょっと、警察を呼び・・・あれ? 何で・・・」

妻子は、手元にスマホが無いことに気付いた。いつも、寝る時は手元に置いて寝るのに・・・。


通報も出来ず、また部屋を明るくすることも儘ならない。

しかも、暴漢は絶えず、無言で殴り付けて来る。


「この、いい加減に・・・っ!」

普段から温厚な妻子なのだが、修羅場に至ってはそうも言って居られない。


ドガッ、シャーンッ!


「ぐぎゃあっ!」

妻子が無我夢中で右手、それも平手を繰り出すと、男は後ろに吹っ飛んだようだった。


「このぉっ!」

吹っ飛んだにも関わらず、暴漢は再び妻子に襲い掛かって来た。


「もうっ! こうなったら・・・」

妻子は、暴漢を止めるには捕まえて“落とす”しかないと意を決した。


暴漢は、少なくとも巨女な自分よりは小さいことは殴り飛ばしてわかっていた。

しかし、未だ暗闇の中で相手の姿を視認することが難しい。


であれば体格差、具体的にはリーチの差を上手く使えば良いのだ。


妻子は少しだけ腰を落とし、置き網漁のように、獲物を零さないよう両手を広げる。

そして、一気に突進して、暴漢と思しき男を目一杯、渾身の力で抱き留めた。


「んぅ~~~っ!!」

「むぎぃ」

ギュウウウウウウ・・・


メキッ、メキメキ・・・


バキバキバキッ・・・バキャッ! メギャッ!!


「あ、あれ・・・」

「・・・・・・・」

妻子の手の中・・・正確には、胸元に暴漢の頭がカッチリと挟まり、その身体はブランと垂れ下がっていた。


「や、やり過ぎちゃったかな・・・」

妻子は胸元に暴漢を挟んだまま、部屋の明かりを点けた。


「・・・・・え?」

妻子は、二つの意味で想定外だった。


妻子としては、“少しだけ力強く”抱き締めて。その結果、暴漢を落として行動を封じる作戦だった。

しかし、440kg近い体格から行われる“抱き締め”は文字通り、『ベアハッグ』と呼べる代物だった。

暴漢の太腿より遥かに太い妻子の剛腕は、暴漢の上半身を粉々のグチャグチャにするのは訳なかった。


そして、部屋が明るくなって初めて気付けたのだが、暴漢の正体は、出張していた夫その人だった。


「・・・え、え? う、そでしょ・・・」

後からわかったことだが、夫は予定通り、ちゃんと出張には出掛けていた。


予定外だったのは、出張が二日ほど早く終わったこと。

そして、日頃の恨みを晴らすチャンスと、半ば衝動的に事に及んでしまったのだった。

恐らく算段としては、暴漢として襲い掛かり怪我を負わせ、自分は何食わぬ顔で帰宅するつもりだったのだろう。


暗闇での犯行。そして、完全な夫の逆恨みであることから、妻子は正当防衛で罪に問われることは無かった。


これが、妻子と最初の夫との顛末である。

Comments

感想ありがとうございます。 ここまで体格差があると色々描写出来る余地があって、もうちょい広げて行きたいキャラだと思っています。

デアカルテ

更新お疲れ様です。 夫を悪気無く、容易く跨ぎ越す圧倒的な体格差大好きです。 手加減した状態でも男をグチャグチャに出来るのに、穏やかな性格のギャップも良いですね。

okita


More Creators