「・・・・・」
体験入部シリーズを終えて帰宅・・・したのは良いんだけど。
私は心の中に、“モヤッ”としたモノを抱えていた。
「・・・『トール』、ねぇ」
ボクシング部の面々の前では“ああ言った”ものの、何処か消化不良だった。
『DQ』でレベルアップするに連れ、同じように成長して行く“私”。
筋肉が増し、身体が大きくなり。比例どころか相乗効果で、超絶パワーアップ。
握力はボクシング部での結果から、腕力は自動車挙げからの推定。
「望んで“こうなった”訳じゃないけど・・・」
私は下着姿になり、姿見用の立て鏡の前でポージングを決めてみる。
「・・・ん」
少し力を入れただけで、
モリッ、モリリッ! モゴゴォッ!!
と、全身の筋肉が所狭しと盛り上がる。
「・・・あれ?」
力瘤や太腿が特大の盛り上がりなのは、もう慣れっこなんだけど。
彩度が上がった、っていうのかな。それとも、彫りが深くなった、のだろうか。
「あ、そういうことか」
今までそんなに気にしてなかったんだけど、どうも血管の浮き具合が凄くなってるようだった。
前はちょっとだけだったと思うけど、今はあちこちにバリッバリな血管が走り捲っている。
自動車挙げの成果なのか、筋肉量が増えて、脂肪分が減った印象。
「・・・・・」
因みに、既に鏡には上腕や太腿は収まり切っておらず、枠からハミ出している。
140cm近い太腿は言うに及ばず、130cm近い力瘤も常軌を逸したサイズなので仕方ない。
プロレスラーが羨むような、筋肉の絶対量。ボディビルダーが羨むような、筋肉の彫り。
それら全てが見せ掛けではなく、アスリートが羨むような筋力を兼ね備えている。
バルクにカットに、パワー。差し詰め、筋肉の三冠王。
今風に言えば“なろう系”も真っ青、って所だろうか。
“なろう系”と違うのは、ゲーム内でも日常生活でも、それ程には無双出来てないってトコ。
ゲーム内では未だに、キャラ死亡イコール現実世界での死、というリスクが付き纏う。
現実世界でも、スポーツや格闘技界で無双、活躍したいかというとそんな意思もなく。
むしろ、日常生活で物を壊したり、服が直ぐに着れなくなったりでマイナス面が大きい、まである。
「・・・なんだけど、ねぇ」
とは言え、私自身がこと、筋力に関しては。
いつの間にか、“自信や自負のようなもの”が芽生えていることに気付いた。
そう、現実世界で無双出来なくても特に何も、困らないのに。
450kg超えの握力があれば閉じることが出来るハンドグリップ。
それに後一歩、届かなかったってだけ。そう、その筈なんだけど・・・。
「悔しい・・・」
・・・のかな、やっぱり。
「かといって・・・」
前に買ったハンドグリップを片手で握り締める。
「・・・んっ」
ちょっと力を入れただけで、グニャリと鋼鉄製のスプリングは手の中で拉(ひしゃ)げた。
握力鍛錬で思い付くのは、こういうハンドグリップを定期的に握るのが一番。
他の方法としては、懸垂とかダンベルトレーニングも効果あるみたい。
・・・なんだけど、手持ちのハンドグリップ程度だと、一瞬でスクラップ。
自重を使う懸垂も含め、その辺のウェイトだとトレーニングにすらならない。
「林檎なんて、“こう”だもんね・・・」
林檎を手に取り、握り締めるとグジュジュジュ・・・と一瞬で林檎ジュースが出来上がる。
林檎を“砕く”のに必要な握力は、『80kg』と言われている。
でも、それはあくまで“砕く”場合の話。
私の場合、余りに握力が強過ぎるのか、一瞬で“圧縮”出来てしまうのだ。
もし冗談でも同級生とかに『アイアンクロー』なんて掛けたら、一瞬で“柘榴(ざくろ)”の出来上がり。
そんな、440kgという超絶握力でさえ、潰せない物があるという事実。
“ネタ”器具とは言え、それだけ件(くだん)の『トール』が凄いって事なんだろうけど。
じゃあ、それを買えば、ってなるけど、やっぱり“本丸”そのものを買うのはちょっと癪。
ギリギリ出来ないだけで、閉じる寸前まで行ったのは確か。
でも、じゃあ、ここから握力をどう鍛えるのか、って感じ。
「ちょっと、頑張ってみようかな・・・」
それは現実世界だけではなく、『DQ』でも、という意味。
現実世界での筋トレは、『DQ』をプレイせずにレベルを上げたいというのがあった。
それに付いては効果があったし、成功してると言える。
だけど、自動車挙げはどうしても目立つし、両親が居ない時しか出来ない。
となると今度は、学校や街のトレーニングジムで、ってなるんだけど。
元々、出不精で引き篭もりな私には如何せん、ハードルが高い。
それに、自動車挙げだと握力の鍛錬になるのかな、という懸念もある。
全く鍛えられない訳じゃないだろうけど、実際に筋トレとして何処まで効果あるか不明。
『DQ』には、明確に『あくりょく』ってパラメータがあるのだ。
じゃあ、それを上げた方が早いよね、って話。
後、忘れがちだけど、“制限時間”は無限にある訳じゃない。
今の瞬間にも、誰かに私のキャラが借りられて、頓死しちゃう可能性は常にあるのだ。
「結局は、“併用する”のが無難なのかな」
機会を見て自動車挙げで筋トレしつつ、『DQ』の攻略にも精を出す。
現実世界では、兎に角やれる方法で身体を鍛え、レベルの底上げをして。
『DQ』では、上げたいパラメータを重点的に上げて行く。
何だろう。
キャラメイクって意味では、今まで一番、『RPG』らしい。
この期に及んで、やっと、このゲームを心底楽しめてる気がする。
「取り敢えず、『トール』を閉じられるようになるぐらいまでは、ね」
何だか、久々に腰を据えて『DQ』をプレイする気がする。
これまでは『死なない為』っていうネガティブな目的だったのが。
現実で『こうしたい』っていう、ポジティブな目的が出来た。
「よぅっし、頑張ろう」
私はある意味、“自分自身を舐めて”いた。
学業では発揮されないようなレベルの集中力が、ことゲームとなると発揮されるのだ。
目的のパラメータが上がるクエストを、的確に抽出。
死なないよう注意しつつ、慎重かつ迅速にクエストを熟(こな)して行く。
「“これだけ”上げれば、行けるでしょ」
ホンの数日で、『あくりょく』のパラメータは【510】まで上がっていた。
「・・・あ」
私は数日もの間、『あくりょく』の数値“しか”見ていなかったことに気付いた。
「え、ちょ・・・」
レベルはいつの間にか『80』を超え、【85】に。他のパラメータも軒並み、上がり捲っている。
当たり前と言えばそうなんだけど、『あくりょく』だけを上げるクエストなんて存在しない。
とどのつまり、『あくりょく』を上げた分、他のパラメータも上がる訳で。
「タイミング的には、もうそろそろ・・・」
もう来てもおかしくない頃合いではあるけど、今の所は来てない。
『DQ』のレベル上昇によるパラメータの増加分、その【はんえい】は相変わらず、タイムラグがある。
「あ、しまっ・・・」
部屋着そのままの格好なのを忘れていた。
いや、自宅の自室に居るんだから、部屋着なのは全く問題ないんだけど。
特注した、シャツと短パン。それなりに値段も張った。
身長229cm、体重247kgの巨漢な今の私でもゆったりと着ることが出来るぐらい特大サイズ。
何が凄いって、さっきの筋肉ポージングでも一切、生地が張ることが無いのだ。
最大で128cmにも膨らむ力瘤、一番太いポイントで139cmにもなる太腿。
でも、“今のパラメータ”が私に【はんえい】された場合、果たして耐えられるかどうか。
「いや、多分無理・・・うっ、うぁ」
時、既に遅し。
「あ、あぁぁぁっ!」
今までにないぐらい、大きな“衝動”。
ここでちょっとでも抑え込んで、その間にせめてシャツと短パンを脱ぐ。
下着は諦める形になるけど、仕方な・・・
「・・・んぅっっ♪」
無理。我慢なんて、出来っこない。
例えるなら、ずぅーっと貯めてた貯金を一気に散財して、思いっ切り買い物するかのような。
敢えて性的な表現をすれば、内に溜め込んだ“迸り”を全て、外にブチ撒けるかのような。
“未経験”な私だけど、性的快楽なんて目じゃないぐらいの、快感。
「あ、あぁっ・・・ん♪」
ムゴ、ムゴゴ、モゴォッ!
前に明子に録画して貰った経験もあって、自分にどういった現象が起きているかは想像出来てる。
腕が、脚が、全身が隆起を始める。余裕があった筈の部屋着の生地が隙間が、一気に減る。
ミチ・・・ミヂヂッ! ピッ、ピリリッ!!
三角筋が、広背筋が、上腕三頭筋が、大殿筋が、大腿四頭筋が生地に押し付いて行く。
生地にピッタリと張り付き、今度は足りない空間を確保しようと、圧し広げて行く。
「あ・・・、あぁっ・・・」
ビリッ、ビリィッ!
「んぅぁっ・・・ん! あああぁぁっっっ!!」
バリバリッ、バリィッ!! バァンッッッ!!!!!
“絶頂”を迎えたと同時に、なけなしの部屋着は爆発四散した。
デアカルテ
2021-12-16 01:55:32 +0000 UTCデアカルテ
2021-12-06 01:53:30 +0000 UTCデアカルテ
2021-12-06 01:51:53 +0000 UTCokita
2021-12-03 12:14:37 +0000 UTC名無しです
2021-12-03 09:57:05 +0000 UTC