「・・・・・うぅ」
恍惚感からか、まだ何か意識がフワフワしてる。
少しの間、放心しちゃってたみたい。
『DQ』の中からなのか、別の何処か、からなのかはわからない。
だけど、確かに私の身体中、全身に“何か”が行き渡った感覚がある。
「ちょっ、え・・・うそ」
私は、姿見鏡の前に立って“あられもない”我が身に驚いた。
台座込みで150cmある高さの姿見鏡の上側、ギリギリの所。
そこに何と、私の“秘所”が映っていたのだ。
「下着、何処行っちゃったの・・・」
私には特段、露出癖と言ったモノは無い。
夢遊病的に、いつの間にか下着を脱いだ、なんて事は今まで一度も無い。
「・・・あ」
足元に、“それっぽい”布の細切れを見付けた。
ブラやショーツだったと思われる布切れが、あちこちに散乱していた。
何て事は無い、至極当然な結果。
シャツや短パンと同様に、下着まで弾き飛ばしてしまっていたのだ。
ただ、今までと違うのは。
今までは、どんなに身体が大きくなっても下着を破壊することは無かった。
下着は元々、身体との接地面積が少なく、且つ伸縮性があったので難を逃れていたのに。
裏を返せば、その“今まで”が通用しないぐらい、今回の肥大化が凄いってことに・・・。
実際、前まではどんなに背が高くなっても、腹筋から下が姿見鏡に映っていた。
しかし今は、“秘所”から下しか映っていない。
腹筋のブロック一つを5cmと仮定しても、最低でも15cm近く縦に伸びたことになる。
「・・・243cm」
もう、驚かない。毎回、驚かないと思いつつ、バグった数値に放心しそうになる。
お腹すら映せなくなった、姿見の立て鏡。両膝を床に付けて膝立ちになっても、顔が見切れる。
『身長:243cm』は、どうやっても鏡に入り切らないぐらい、途方も無い数値だった。
「んぅ・・・ダメ、か」
『正座』すれば顔まで映せるかと思ったけど、甘かった。
そもそも、“正座が出来なかった”のだ。
測ってみると、161cmまで肥大化していた太腿。成人女性の平均身長並みの太腿・・・。
因みに、脹脛(ふくらはぎ)も多分に漏れず分厚く、120cmあった。
筋肉に詳しくない私が言うのも何だけど、私の筋肉は凄くメリハリがある。
丸太そのままのような寸胴ではなく、関節に近い所から中心に掛けてドンッと太くなる。
イメージとしては、ラグビーボールとラグビーボールが膝関節で繋がってる感じ。
正座なんて出来る筈も無く、膝立ちとそう変わらない体勢になってしまうのだ。
「あ、でも。この姿勢、楽かも♪」
膝立ちなんだけど、太腿を脹脛が支える形でガッチリと固定されて、椅子に座っている感覚。
普通の人だったら正座の姿勢になるので直ぐに痺れる所だけど、私なら何時間でも行けそう。
「ってか、何か太くなってない・・・?」
身長以外で真っ先に気になったのは、胴回りだった。いわゆる、ウェスト。
上半身やお尻と比べれば明らかに細くて、相対的にはボンキュッボンなんだけど。
腹筋のブロック一つ一つが前より大きくなって、ボゴッと盛り上がり、血管も浮き出し捲り。
腹筋の横、横腹に相当する腹斜筋もモゴモゴッと盛り上がり、太くなった気がする。
「うそ・・・102cm」
某ネコ型ロボットのウェストが確か、129.3cmだっけ。あの、丸っこいウェストまで後20cm余り。
“このまま行く”と、ウェストすら姿見鏡の横幅からはみ出してしまいそうな勢い。
『ウェスト:102cm』って書いたメモを見ると、凄く自分が肥満体に思えてしまう。
しかし、バッキバキに割れ・・・いや、盛り上がった腹筋に、キレッキレの血管。
そのどれもが、脂肪などとは無縁なのを如実に物語っている。
「・・・え、うそ。足りない」
だが、驚異的な成長を遂げていたのは、それだけでは無かった。
トップバスト、いわゆる胸囲が『巻尺』で測り切れなかったのだ。
正確には、『2m』の『巻尺』が、目算で数十センチ分も届かないのだ。
仕方ないので、ビニール紐を持って来て、胸周りに巻き付け、印を付ける。
それを、いつも身長を測る柱に縦に貼り付け、壁に印を付けた。
「うそ、身長と殆ど変わんないじゃん・・・」
独り言とはいえ、さっきから「うそ」を連呼しまくり。
何とか測り切ったスリーサイズは、
B:W:H=231:102:167
だった。勿論、単位はセンチメートル。
「トップが231cmって・・・」
トップバストが遂に、驚異の2mを突破。
ウェストが初めて1m超えたと思ったら、バストがまさかの2m超え。
「“胸囲”だけに・・・なんちゃって」
寒いオヤジギャグと承知しつつも、つい口から出てしまった。
余りの数値に唖然とする自分が、何とか平静を保とうとしているのかも。
「アンダーは・・・うそ、183cm」
前回、アンダーバストは確か、ヒップと同じで145cmじゃなかったっけ・・・?
不安になって測り直したが、確かに『アンダー:183cm』『ヒップ:167cm』だった。
「胸板が、183cm・・・」
38cmも嵩増しした、胸板。バスト(乳房)を含まない数値なので、純粋な筋肉での増量。
爆乳の土台となる大胸筋、正面から見て脇腹からハミ出すぐらい巨大な広背筋。
下半身も充分に一回りは大きくなっているけど、上半身は二回りじゃ利かないぐらい肥大化。
「・・・ん? ってことは、アンダー差が48cmだから・・・」
『A』、『B』・・・なんて部分はサッと飛ばして、『H』、『I』・・・『N』、『O』・・・
「“P”!? って何、“P”って・・・」
“この項目”に於いては先ず、聞くことの無いアルファベット。
カップ数:アンダー差
Oカップ:47.5cm
Pカップ:50.0cm
なので、『アンダー差:48cm』の推定、『Pカップ』。
【みりょく】のパラメータのせいか、どんなに筋肉が付いても、おっぱいだけは減らない。
むしろ、ここに来ての更なるバストアップ。
自動車挙げとかのせいで、無駄な脂肪が全部、胸に集まったんじゃ無かろうか・・・。
「こんだけデカくても垂れないし、肩も凝らないのは大胸筋のお陰なのかな」
巨乳の人は肩が凝り易いし、胸の筋肉を鍛えてないと垂れる・・・らしい。
不幸中の幸いって訳じゃないけど、私に無縁なのは間違いなかった。
「でも、大胸筋はまだ良いとしても・・・」
スマホを動画録画の状態にして、背中を撮影して見てみる。
「こんな、馬鹿デカい背筋なんて使い道ないのに・・・」
脇腹の後ろ部分を中心に、上側に半円上の大きな僧帽筋。下側に、同じく半円上の広背筋。
つまり、私の背中には山盛りの筋肉で大きな円が出来ていた。
“こんな体型”になってから、色々と調べてみたんだけど。
背筋は基本、腕の動作の補助的な作用をするらしい。
背筋が単体で何か、というよりは、腕の筋力作用の底上げという感じ。
「でも、“この腕”に補助なんて要るのかなぁ」
最後に残ったのは、二の腕周り。
「・・・ふぅ、73cm」
ちょっとだけ、ホッとする数値。二桁ってだけで、何か安心しちゃう。
現に、ウェストが大台を超えたので、残るは二の腕だけなのだ。
いや、落ち着いてるけど、73cmでも充分に太い腕だと思う。
確か前に見た、世界一太い腕の人の記録が、『79cm』だった。
見た目もそまんま、海外コミックの某水夫みたいだった。
しかし私の場合、完全に力を抜いてダランと伸ばした状態での測定なのだ。
それでも、鍛えられていない棒状の腕と違い、血管が浮き上がり、脂肪は一切見当たらない。
そして、筋肉が弛緩した状態でも上腕二頭筋と三頭筋が盛り上がり、球体の呈を為していた。
73cmというサイズ的にも、バスケットボール(外周75cm)がそのまま二の腕になってる感じ。
「腕は太くなり易い、ってホントなのかな・・・」
これも、筋肉を調べていた時に見掛けた、いわゆる『通説』。
上腕は、無駄な動きが多いから太くなり易く。
一方の脚は逆に、可動範囲が限られる為、太くなり難い、らしい。
私の太腿がラグビーボールなら、上腕はバスケットボール。確かに、筋肉の付き方からして違う。
「でも、限度があるよね・・・」
私は、肩の高さで右腕を折り曲げて行く。右手は開いたまま、まだ力は入れていない。
モリ、モリモリモリッ。
「すご・・・」
力が入っていない。つまり、腕が曲がることによる上腕二頭筋の収縮。
それだけで、“それ単体”で球体と表現して差し支えない力瘤が盛り上がる。
「こっから・・・」
腕を只、曲げただけ。それなのに、前腕と上腕の間の隙間はほぼ無くなっていた。
「力入れたら、どうなるんだろ・・・んぅっ!」
改めて、右腕に渾身の力を籠める。
モリッ、モリリィッ、モゴゴゴォッッ!!
水平になった腕の上側、上腕二頭筋は巨大な球体を形成するかのように隆起。
下側も同じように、半球が球体になるかのように上腕三頭筋が肥大化した。
「・・・・・」
“それ”を見て、我ながら絶句した。
折り曲げたのは右腕なので、盛り上がったのは右上腕二頭筋。
その余りにも大きくなり過ぎた力瘤は、“右手”とぶつかってしまい、支(つか)えてしまったのだ。
“それ”と言うのは何も、力瘤だけを指した言葉ではない。
自分で盛り上げた力瘤を曲げた方の手で何なく触る事が出来る、その光景に対して、なのだった。
「うそ、これ以上・・・曲がんない」
普通、力瘤を作るポーズを取ると、前腕と上腕の角度は『45度』ぐらいになる。
それが今の私だと、『80度』ぐらいになっていた。ほぼ、垂直。
上腕二頭筋に、前腕筋と拳が接地している。これ以上、腕が曲がらないのだ。
上腕のシルエットはまるで、バスケットボールが腕の上下に付いているかのようだった。
バスケットボールが縦に二個、くっ付いてる。試しに“高さ”を測ってみみ。
「・・・50cm」
やった、二桁だ・・・とはならない。
上腕の外周とかではなく、縦の高さが『50cm』。
二の腕の“厚みだけ”で、『50cm』ものボリュームがあるってこと。
「・・・156cm」
うん、そうだよね。50cmの厚みの力瘤が、普通の数値な訳ないよね・・・。
上腕二頭筋と三頭筋が合わさった外周は、バスケットボール二個分よりも大きかった。
“こうなる前”の身長が150cm。今の私の腕周りが、156cm。
比べても仕方ないとは言え、思えば遠くに来ちゃった、な感じ。
「ステの上げ方、間違っちゃったかなぁ・・・」
各部位が異常な数値になり過ぎて、私自身も混乱しちゃってるんだけど。
【きゃくりょく:625】に対して、【わんりょく:605】なのが影響しているんだろうと思う。
元より、普通に筋トレして“こうはならない”事は最早、疑いようの無い事実。
だとすれば、上半身や力瘤、太腿なんかは恐らく、『DQ』のステータスが【はんえい】されてる訳で。
「じゃあ、握力は・・・」
ステータス上、【あくりょく:510】となっている。
「買ってて良かった、のかな」
実は『DQ』に勤しむ傍ら、『BBグリッパーThor』も通販していた。
既に手元に、“本丸”が存在することになる。
「・・・・・」
見た目は普通な、むしろ武骨な海外製のハンドグリップ。
しかし、ある意味で私が初めて敗北したハンドグリップでもある。
「せーの・・・っ」
『トール』を、利き手の右手で握り。
「・・・んぅっ!」
一気に、渾身の力を籠めた。
グシャッ。
「・・・あれ」
思った以上に、“呆気ない”結末だった。
「・・・うわ」
右手を開くと、グニャグニャに溶接された鉄の塊が握られていた。
「“これ”をやる為に、私って“ここまで”になったの・・・?」
手の中で“お釈迦”になったハンドグリップと、鏡に映る我が筋肉ボディを見比べた。
『トール』の限界強度は、『453.6kg』。
一見、半端な数値だけど、実はポンドに直すと丁度、『1000lb』になる模様。
因みに、中古品を買ったとは言え、お値段的には決して安いモノでは無かった。
指で、溶接されたグリップを元の二本の状態に選り分けて行く。
単純な鉄の棒程度なら、指だけでも余裕で曲げたり伸ばしたり出来る。
「あ、これ、ダメだ・・・」
『1000ポンド』に耐え得る強度の、肝心のスプリング部分が完全に折れてしまっている。
全力までまだ余力を残した状態なのは、間違いない。
つまりは、推定握力『500kg』超。
「・・・・・」
ネットで検索した結果を見て、私は無言になる。
小学生ぐらいの子供が良く、力自慢を『ゴリラ』と揶揄することがある。
勿論、それは只の比喩であって、実際のゴリラより強い訳ではない。
「『500kg』って、そうなんだ・・・」
ゴリラの握力は、推定で『500kg』。まあ、『1トン』という説もあるけど。
ゴリラが握力計を握ったりはしないので、あくまで推定からの通説。
問題は、そこじゃなくて。
「文字通り、ゴリラ並みに・・・」
比喩では無く、動物界の怪力王である、ゴリラとタメを張る所まで来てしまった、という事実。
「そう言えば・・・」
まだ、測っていない項目があった。
ゴリラは、体重が200kg近くある自重を片手で持ち上げる事からの推定、とあった。
つまりは、体重の二、三倍の握力がある、という前提。
私は、“そこまでではない”のでは無いか、という希望的観測。
「ん、っと・・・」
私は恐る恐る、体重計に載った。
「・・・『272』」
デジタルの数値が、『272』を示していた。
「なーんだ、たったの『25kg』増か」
思った程じゃなかった、かな。
「・・・いや」
違う・・・よね。
身長が14cm伸びて、こんだけあっちこっち筋肉が増えて。
体重増加が、“たったの25kg”な訳が無いのは流石の私もわかる。
「・・・・・」
何だろう。何か、忘れてる気がする。
「・・・あ」
私は慌てて、『設定』ボタンから詳細設定の画面を呼び出す。
【補正値:マイナス100】
ウチの家、両親は基本的に体重計に載らない。私も、“こうなる”まで載ったことが無かった。
こうなってから何度か載った挙句。前回、『補正値』を弄ったのを忘れていた。
「つまり・・・」
実測値としては、『体重:371kg』だったってこと。
私の体重と握力の比率は、二倍も行かない程度。そういう意味では、ゴリラ以下。
・・・だけど、そういう問題じゃない。
花の女子高生の体重が、371kg!?
前回の体重が『247kg』なので、実に『124kg』もの増加・・・。
歴代の大相撲力士の中でも、体重で300kgを超えた者は居ない・・・らしい。
お相撲さんですら聞いたことが無いような、スーパーヘヴィウェイト。
成人男子だと、六人分。もし、明子で換算するなら、七人分。
“体重だけ”に着目すると、確かに異常な数値なのは間違いない。
「・・・でも」
私は、姿見鏡の前で前傾姿勢になり、“ゴリラっぽいポーズ”を取る。
いわゆる、『マスキュラーポーズ』。
「・・・んぅっ」
一糸纏わぬ姿で、気合に呼応するように全身の筋肉が盛り上がる。
モリッ、モリモリモリッッ!
ギュギュッ、ギュギュギュゥゥッ!!
余りに盛り上がる筋肉が行き場を失い、擦れ合う。
衣擦れならぬ、“筋肉擦れ”という普通には聞こえる筈の無い音が私の全身から奏でられる。
「う、わぁ・・・」
歓喜、ではなく。純粋な、感嘆の声。
それ程までに、私の全身の筋肉の隆起具合は凄まじかった。
本来なら、背後に回らないと見えない筈の僧帽筋が扇形に盛り上がり、首との境目が無く。
バスケットボールな力瘤が胴体側にドンッと迫り出し、Pカップ爆乳がギュッと圧し潰され。
メロンバストの陰に隠れながらも、陰影がハッキリとした六分割の腹筋。
ヒトの身長ほどもある太腿が横に並ぶと、それだけで空間が圧迫されるような迫力があった。
『371kg』という途方も無い体重も、“然もありなん”と言った感じだった。
「・・・ん? あ」
私は事、ここに来て、やっと気付いたのだった。
「着る物、どうしよ・・・」
デアカルテ
2022-01-11 04:44:05 +0000 UTCデアカルテ
2022-01-11 04:43:03 +0000 UTC名無しです
2022-01-08 04:48:43 +0000 UTCokita
2022-01-07 07:12:11 +0000 UTC