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デアカルテ
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巨大王女

そこは、中世のとある王国。


その王国のお城には、隣国まで轟くほどに美しい王女様が居た。名前は、アトラティアと言う。

生まれたばかりの頃は未熟児で3歳まで生きられないと言われたのだが、それを慮った王様が神話の巨神に肖ってそう名付けた。

すると、どうでしょう。未熟児だったのが嘘のようにスクスクと育ち、王様も神に肖った名前のお陰だと喜んだ。


しかし、物心が付こうかという頃、王女は突然こう言い出した。


「この神様に貰った名前に相応しい自分になりたい」


そういうと、普通の人の二倍、いや三倍は多く食事を採るようになったのだ。

最初は、王様も嘗(かつ)ては未熟児だったこともあり、多少の食事量は目を瞑るようにしていたのだが・・・。



そして数年が経ち、王女は見目麗しく成長した。


誰もが羨む美貌、“スイカの数倍”ほどの大きさもある乳房、括れた艶かしい腰。

・・・それだけを見れば、これ以上ないと言わんばかりの完璧な絶世の美女。

だが、食べに食べ抜いた日々が与えた変化はそれだけでは無かった。


腕周りは、王国戦士団の猛者の太腿程もあり。

太腿周りは、その猛者の胴回り程の太さがあった。


かと言って、ブクブクと太った肥満体型かと言うと、そんなことは無く。

程良い脂肪と、適度に付いた筋肉。前述した通り、出る所は出て、締まる所は締まった肢体。


周りの大人たちとの違いは只々、王女が余りにも“大き過ぎた”ということ。


「ねぇ、お父様」

「・・・う。何だね、アトラティア」

王様は一国の長だけあって、威風堂々とした佇まい・・・の筈なのだが。

王女から見下ろされると、どうしてもその威厳も霞んでしまう。


王国は領土が広大で、資源も豊富である。

従って、王族は領民の比ではないぐらい、豪勢な食事を毎日採っている。

そのお陰か、王様は恰幅が良く、体格も大きかった。正に、王様然としていた。


「遊んで欲しいの」

「い、いや、今は・・・」

だが、幾ら愛娘とは言え、“自分の倍”はあろうかと言う存在から呼び止められれば怯むのも致し方なし。


「お仕事、終わったんでしょ?」

「え、あ、いや・・・」

王女は、王様が執務室から出て来たのを目敏くチェックしていた。

まだ、この世に生を受けてから十年と少し。まだまだ遊びたい盛りなのだ。


「そ、そうだ! おい、衛兵! “団長”を呼べ」

「は、はっ!」

衛兵は、直ぐに王国戦士団の団長を呼んで来た。


「国王、お呼びでしょうか?」

「うむ。良く参った」

室内にも関わらず、軽装とはいえ鎧を身に纏った男が馳せ参じた。


「急に呼び立てて、すまんな」

「いえ、勿体ないお言葉。して、何用で?」

浅黒い肌に、筋骨隆々の身体。王様を上回るぐらいの大男が跪(ひざまず)く。


「団長、アトラティアと少し遊んでやってくれ」

「・・・え。また・・・? あ、いや」

団長はつい、言わなくて良い台詞が口に出てしまった。


「何か、あるのかね?」

「い、いえ!」

王国お抱えの戦士団。ましてや、その団長ともなれば、強さだけでなく器量も問われる。

王様の前だけでなく、一人で居る時でさえ、不満を漏らすことなど皆無と言って良かった。


「まさか、我が愛娘と遊ぶことが嫌だとでも・・・」

「いえ、そんな! 滅相もございませんっ」

戦士団としての仕事は勿論、戦闘。

戦争だけでなく、国内の荒事にも勿論、対応する。


兵士としてだけではなく、いわゆる自警団や警察的な職務も仕事の内、だ。

そして、そんな職務の範囲かどうかに関わらず、王の命令であれば、どんな汚れ仕事でも請け負う覚悟がある。


「そうか、では任せたぞ」

「は、はっ」

今この場で問われているのはその覚悟だと、団長は改めて自分の立場を思い知った。


「王女様。王様に代わり、この私めがお相手をさせて頂きます」

「えー。“また”団長さんなのぉ・・・」

しかし、王女は不満気だった。


「「・・・・・」」

王様も衛兵も早々に、そそくさとその場を立ち去った。

王女と団長のやり取りは、聞かない振り。


「さぁ、王女様。何なりとお申し付け下さい」

「えー、ホントに良いの? じゃあ・・・」

団長は、王女の眼に怪しい光が灯ったのを見た。


「私に“腕相撲で勝って”」

「は、はっ。・・・・・は?」

王女は最初、確かに“遊びたい”と言った。

そして、その種目として『腕相撲』を挙げるのなら、まだ理解も出来よう。


「腕相撲をやる、ではなく。勝て、と仰られましたか?」

「そうだよ。だって、団長さん弱いじゃん」

団長の眉がピクッと、僅かに揺れた。


王族に傅(かしず)く立場とは言え、一人の戦士。一人の男、である。

二回り以上、歳の離れた少女に言われて良い台詞ではない。


「わ、わかりました。では、こちらへ」

団長は、王女をとある広間へ招いた。

中心には、大理石で出来た円形の台のようなものがあり。その傍には椅子が2つ。


「ここは代々、戦士団の団長を決める儀式で使われる部屋です」

団長の引き継ぎや、候補が複数居た場合などに疲れれることがあると言う。


団長が大理石の台の前に立つ。


台は丁度、団長の腹筋の辺りの高さになる。

肘を付いて、向かい合って腕相撲するのに打って付けの高さ、なのだ。


「この台、小っさくない?」

台を中心に相対するように、向こう側に王女が立つ。


「・・・・・」

正直、遠近感が狂う。そう、団長は内心、思った。


大男の団長のお腹に位置する高さの台。小さい子供の身長と同じぐらいには高い。

しかし、王女の腰は、その台の遥か上にあった。


改めて感じる、身長差。


団長は、国中を見渡しても、一番大柄で体格も良いと言っても過言では無い。

尤も、それは目の前の王女様を除いて、の話。


文字通り、見上げないと王女の顔を視認出来ない。

神話に出て来る巨人はこんな感じなのか、とつい思ってしまう。


「仕方ないわ、しゃがんであげる」

ドレスのスカートが床に付くのも厭わず、王女は両膝立ちになった。


「好きなとこ、持って良いよ」

膝立ちになってさえ、自分より上背のある年端も行かない少女。

台に置かれたその少女の右腕は太く、手は壊滅的に大きかった。


「し、失礼します」

団長は止むを得ず、少女の小指と薬指を右手で握った。


「片手で、良いの? 私、“勝って”ってお願いしたのよ?」

「っ!?」

王国一、強いと言って間違いない戦士団の団長を前に、王女はハンデ戦を申し出た。


「・・・く、わ、わかりました」

ぐぬぬ、と唇を噛み締めながら、団長は王女の巨大な手を両手で抱え込んだ。

抱え込んだ、と言っても団長の両手を以ってしても王女の片手を覆うには至らない。


「じゃあ、いつでも良いよ」

「ぐぅっ! うぅぅんっ!!」

団長が渾身の力を籠める。額には血管が浮き上がり、二の腕には力瘤が盛り上がる。


「どうしたの? もう・・・限界?」

身体との比較からすると特段、太いという訳ではない腕。

しかし、それでも身体のサイズの違いか。前述した通り、団長の太腿より確実に太い剛腕。


「う、が、あっ・・・ぁ、ぁ」

「う、ふふ♪」

微笑む、王女。どちらかというと、嘲笑に近いかも知れない。

王女はにこやかなまま、徐々に腕を倒して行く。


「く、くそっ!!」

団長はつい、乱れた言葉遣いをしてしまう。

しかし、それ以前に格好が余りにも無様だった。


大理石の台に足を掛け、王女の右腕一本に全体重を掛けている。

ついに団長の両足が台に載ってさえ、王女の腕の傾きは止まる気配は無かった。


「ばぁんっ」

「ひぃっ!?」

王女の口を付いた擬音とは異なり、トンッとソフトに優しく団長の両手は台に押し付けられた。


「・・・へ?」

「うふふ。こんな“面白いの”、直ぐに壊したりしないわ」

“面白いの”とは、勝負を指すのか。それとも、団長自身を指すのか・・・。



実は、王女が遊びに託(かこつ)けて、団長を弄ぶのはこれが最初では無かった。


もっと幼い頃は、何とか王様が頑張って対応していたのだが、ついに身体が付いて行かなくなり。

いつしか、王女の“遊び”相手を団長に押し付けるようになったのだ。


団長が両手でやっと抱え上げられるような大岩を、王女は片手でヒョイッと持ち上げたり。

大木を引き抜いてみせろと無理難題を吹っ掛け、団長が出来ないと見るや、片腕でやって見せたり。


団長からすれば、王女は目上の立場である。間違っても、王女の身に何かあっては、いけない。

しかし、そんな心配は、ホンの一瞬で吹き飛んだ。


圧倒的な体格差が、そんな余地さえ与えないのだ。


むしろ、団長は自分の身を守るので精一杯だった。

軽く撫でられただけで、戦争で受けたどんな一撃よりも、重い。


挙句、王女は成長に連れ、自尊心を身に着けて行った。

高貴な立場、というだけではなく。力で劣る相手を弄んで良い、という歪んだ嗜虐性。


肝心の王様は王女を持て余し、団長に日々の世話を押し付ける始末。

団長の苦悩は、まだ始まったばかり。

Comments

感想ありがとうございます。 筋肉王女のセルフオマージュな感じです。現実劇じゃ描けない成長を書いて行きたいと思っています。

デアカルテ

筋肉王女のGTSで幼めなリメイクの様な感じでしょうか? 子供っぽい所が可愛いく、王様が力で敵わなくなった後も更に成長しているかと考えると最高です。 更新お疲れ様です。

okita


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