SamSuka
デアカルテ
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悪魔のアプリLv24「握力:500kg↑」

「ホントに、どうしよ・・・」

私は、途方に暮れていた。


「・・・ん」

ビリッ。


「・・・ダメ、か」

買い置きのショーツを穿いてみるも、お尻まで行かない。

それ以前の問題。太腿が引っ掛かって通らないのだ。


『ヒップ:167cm』が入るかどうか以前に。

『太腿:161cm』が通るかどうか、なのだ。


ショーツの形状を考えた場合、お尻周りよりも足の穴の方が小さいのは自明の理。


「膝までは通る・・・のにっ、あ」

ビリィッ!


膝の関門を抜けたショーツは又しても、太腿“最太部”を突破出来ず“破れ去った”。


「引っ張っ・・・あ」

バンッ!


予め、引っ張って生地を伸ばし。慣れさせれば通るかも、という思惑も失敗。

生地を伸ばそうにも、力加減が上手く行かずにショーツが弾け飛んでしまう。


握力も腕力も格段にパワーアップした直後ということもあって、か。

どんなに伸縮性のある生地だとしても、私にとっては綿も同然だった。


「でも、流石にこのまま素っ裸なのは・・・」

幾ら自宅とは言え、真っ裸で過ごすのも限界がある。


一先ず、バスタオルでも身体に巻いて、それから色々試そうと思い。

私は自室のドアノブに手を掛けた。その瞬間。


グニャリ。


「・・・え」

鉄製のドアノブは、私の手の中で小さく拉げていた。

特に、力を入れたつもりは無い。むしろ、力加減はした筈。


「これって・・・」

私は進路変更し、台所に向かう。

台所の隅に置かれていた林檎を、“恐る恐る手に取る”。


ボゴァッ!


「うわ、っちゃ・・・」

林檎は、一瞬で砕け散った。私としては、ただ“持った”だけなのに・・・。


“軽く握る”だけで、鉄製のドアノブを握り潰し。

“手に持つ”だけで、林檎を握り砕いてしまう。


「どうしよ・・・」

下着とは別の問題で、私は又しても途方に暮れる。


“筋肉が成長する”という特殊な状況は、未だに慣れない。

筋肉が増えることで、一晩で筋力の上限値が一気にアップする。


今回で言えば、握力が下手したら100kg近くアップした形。

最大筋力が上がるという事は、私にとって『最低筋力』が上がる事でもあるのだ。


強い、弱いという力加減の感覚は、一晩寝ても変わることは無い。

一割や二割程度の力加減でも、全力で400kgの時と、500kg超えの今では全く違う。


数値が大き過ぎてインフレしてるけど、人間一人分の重さ以上にパワーアップしてる訳で。

それに、『トール』を握り潰した時は、まだ余裕があった。

考えたくないし想像したくもないけど、恐らく握力の最大値は500kgを大きく超えてる。


「・・・・・」

今までも、“これに近い状態”には何度もなっていた。

力を入れ過ぎると物を壊してしまう。だから、力加減を調整して、壊さないよう慣れて行く。


それでも、ここまで酷くは無かった。

今までは“軽く握った程度”なら、鉄を曲げたり、林檎を握り潰すなんてことは無かった。


それが今回、余りにも強くなり過ぎて、林檎を“潰さずに持つ”ことが出来なくなったのだ。

“不意に力を入れてしまって”ではなく、“慎重に力加減を調整して”も尚、強過ぎる。


「慣れるまで、外に出れないじゃん・・・」

下着とか衣服は最悪、両親に頼むなり通販の最速便を注文するなりで対応出来る。

だけど、私の筋力を調整出来るのは、私自身だけ。


純粋な筋力なら勿論、腕や脚も凄いことになってるとは思う。

測定しようがないし、怖くて測りたくないけど・・・。


ただ、腕や脚は振り回したりせず、普通にしてれば意外と日常生活では影響は少ない。

でも、手や指を使わずに生活することは不可能だろう。


「ん、っと・・・」

ブシャーッと蛇口から勢い良く水が流れ出す。


「・・・ふぅ」

取り敢えず、一安心。流し台の、水道の蛇口を壊さずに済んだ。


「小指、か・・・」

そう、私は小指で蛇口を開けるテストをしていた。

固く閉まっていた筈の蛇口は、“小指一本”でいとも簡単に開いた。


もし、蛇口を握って開けようとしていたら、握り潰して大変な事になっていただろう。

自分の持ち物とか果物は良いけど、水回りだけは本当にダメ。


「“これ”はどうだろ・・・・うわ」

親指と人差し指で挟んだ五百円玉は、一瞬で“縦に潰れた”。


私としては、普通に硬貨を摘まんで持とうとした、だけ。

『コイン曲げ』のつもり、すら無かったんだけど・・・。


「粘土、かな・・・はは」

五百円硬貨を潰した感触は、粘土と比べても遜色が無かった。

子供の頃に食べた十円玉チョコの方が、感触としては硬いぐらい。


『コイン曲げ』自体は、身長が2mを超えた頃から出来るようにはなっていた。

それがまさか、力が強くなり過ぎて逆に出来なくなるなんて、皮肉な話。


加減された握力でさえ、『コイン曲げ』を一段上の『コイン圧縮』にバージョンアップ。

問題は、その『コイン圧縮』が何でもないような平時に発動しちゃうってこと。


「え、っと・・・」

もう少し、硬貨の感触を試そうと財布から小銭を取り出そうとする。

財布は革製なので潰れても元に戻るから取り敢えず、力加減は気にしない。


だけど、財布の中の小銭をつい、左手で掴んでしまう。


ぐしゃ。


「・・・あ」

一瞬でわかる、“やっちゃった”感。


「うわ、っちゃ・・・」

利き手じゃない左手であっても、複数の硬貨を潰すのは訳なかった。

五百円玉より硬い筈の五十円玉や百円玉ですら、一塊の“玉”になっていた。


「買い物も出来ない・・・」

もし、コンビニで財布から小銭を出すと、店員には“硬貨製の小玉”を渡す羽目になる。


「『トール』を閉じられれば、それで良かったのに」

まさか、日常生活で困るレベルにまでなるなんて、思っても見なかった。

いや、別に今までも困って無かった訳じゃないんだけども・・・。


「・・・でも」

後悔が無い・・・訳じゃない、けど。

実は、『トール』を通販した時に、私は“それ”を知ってしまった。


その名も、『BBグリッパーHercules』。


ギリシャ神話の力の神をその名に冠する、最強のハンドグリップ。

ポンド換算で、『2400lb』。キロ換算だと、実に『1088.6kg』。


『トール』の『454kg』ですら、ネタとは言え、人外のレベルなのに。

『ヘラクレス』は実に、その倍以上の『1t』超え。まさしく、モンスターグリップ。


「・・・・・」

ゲーマーとしての性(サガ)を何とか抑え込まねば、と内心思っていた。


握力『1t』。


普通に考えて、有り得ない。今回の『500kg』超えですら、異常なのに。

下手したら、『DQ』クリアの方が楽、まである。


「そっか、クリアしちゃえば良いんじゃん?」

元々、『DQ』のクリアが凄く、高いハードルに思えていた。

実際に、そうだろうと思う。今風に言えば、【デスゲーム】をソロ攻略しないと行けない。


でも、現実世界にも『ヘラクレス』みたいな、絶対にクリア出来そうにないハードルがある。

コインを、それこそ指先だけで潰せる今ですら、『握力:1t』という壁は厚過ぎる。


『ヘラクレス』に比べれば『DQ』なんて、と。そう思ってしまった。


元より、筋肉が成長するのを良しとしているのは、死なない為。

ゲームクリアが『目的』であって、筋肉成長はあくまで『手段』。


「クエストは、クリア出来るモノから手を付けるのが鉄則、だよね」

『タスク(課題)』と、言い換えても良いかも知れない。


そもそもの本題からして『DQ』クリアが最優先であり、絶対的な目的だった筈。

そして、『目的』が達成された時点で『手段』は必要なくなる。


『ヘラクレス』は、あくまで『DQ』クリア後のオマケ。

その時に挑戦して“ダメだった”、なら諦めも付く。


私はそう、前向きに捉える事で、『ヘラクレス』への無茶な挑戦は保留にした。


しかし。


冷静に考えれば、クリアが『目的』であれ、筋肉成長という手段が『目的』であれ。

結局は、ステータスアップによる更なる成長を招き、どんどん困ることになるのだが。


この時の私は、その事実に全く気付くことは無かった。

Comments

感想ありがとうございます。 余り描写していませんが、骨も強い設定なので指一本逆立ちも行けると思っています。

デアカルテ

更新お疲れ様です。 握力と言うか、親指と人差し指で持っただけで潰してしまう指の力がとんでも無いですね。 何処かの漫画の様に、指一本での逆立ちとかも出来そうですね。

okita

感想ありがとうございます。 ようやく物語も終盤戦ですが、最後までお付き合い頂けると幸いです。

デアカルテ

感想ありがとうございます。 青天井は難しいにしても、ある程度まではデカくしようと思っています。

デアカルテ

いよいよクリアを目指すようになり物語も終盤が見えて来ましたね どこまで大きく強くなるのか…気になります

名無しです

とどまるところを知らない筋肉成長…良いですね!

sunagimo7


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