SamSuka
デアカルテ
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翔太君の受難

「オウ、テメェ。何してくれてんだぁ?」

僕は今、港に近い倉庫で男たちに囲まれていた。


金髪にピアスに、刺青。


大昔なら、不良やチンピラ。一昔前なら、チーマー。

もう少しマシな表現をするなら、“半グレ”だろうか。


つまりは、“そういう輩”に詰められていた。


「テメェのせいで、俺らの“売り上げ”が下がっちまっただろうが」

如何にも商売人な発言だが、実はそうではない。


僕はたまたま、帰り道で挙動が不信なお婆さんを見掛けた。

銀行の場所すら知らないのに、振込に行くというのだ。


よくよく尋ねると、どうにも『特殊詐欺』らしく、警察まで案内した。

思い付きとはいえ、良い事をした。・・・筈だったんだけど。


どうも、その顛末の一部始終を“受け子”が見ていたらしく。

“落とし前”とばかりに、拉致されて今に至る。



「あの、ヤメておいた方が良いですよ・・・」

「あぁ!? お前みたいなチビッ子が何言ってんだ」

ギャハハ、と周りの男たちも盛大に爆笑した。


未成年とはいえ、僕はこれでも成人間近な年齢。決して、子供という訳ではない。

だが、成人男子の平均身長に遠く及ばない上背が、見た目の印象を幼くしていた。


「どぅれ、どうしてくれるってんだ!?」

「うっ!」

ドンッと胸元を小突かれ、僕はもんどり打って尻餅を付いた。


「ぎゃはは、弱ぇ」

「ボクゥ、どうしたのかなぁ?」

男たちが期待したような抵抗は、僕には出来なかった。


「違うんです。早くしないと、“来ちゃう”んです」

「あぁん、“来る”だぁ?」

「正義の味方でも来るってーのかよ」

“それ”が『正義の味方』なら、どれだけ良い事か。

いや、もし“それ”なんて口に出したら、僕も“無事じゃ済まない”んだけど。


その時。


「おい、お前。何モン・・・うぎゃぁっ!」

倉庫の入り口に居たらしい見張り役が、一瞬で視界から消えた。


「あん、何だ?」

「おい、お前。ちょっと見て来い」

へい、と子分らしい返事をして、一人の男が倉庫の入り口に向かう。


「おい、おま・・・うがぁっ!?」

その影が、ぬぅっと入り口を潜って倉庫に入って来た。

様子見の子分は、宙空高く浮いて、足をバタバタさせている。


「ふぅ。やっぱり、ここに居た。翔太君、探したわ♪」

「れ、麗奈さん・・・」

僕は大きな人影に向かって、女性の名前を呼んだ。


「何だ、あのジャージ着たデカ女・・・」

「男一人を片手で持ち上げてやがる」

それは女性どころか、人影というには余りにも大き過ぎた。


男たちは“半グレ”になるぐらいだから、というのは偏見かも知れないが。

上背のある者が多く、僕が何人居ても、勝てそうにない空気を纏っている。

しかし、倉庫に訪れたその女性は、この場の誰よりも頭二つ分は背が高かった。


「翔太君、こんな所で遊んでないで帰るわよ」

「麗奈さん、どうしてここが・・・」

僕は街中で拉致され、連れて来られたのだ。

その女性・・・こと、麗奈さんはこの場所を知らない筈。


「ダメじゃない、“位置アプリ”消しちゃ」

「まさか・・・」

とは言いつつも、ある程度は予想していた。


藤堂麗奈(トウドウレイナ)。

大手企業、藤堂グループの社長令嬢。


弱冠22歳にして、トレーニングジムの経営者。

経営学を学びつつ、ジムを経営して。更に、趣味が筋トレ。


「まあ、ウチのグループのスマホだから追跡も楽だったけど」

僕のスマホは藤堂製で、新製品のテストだからと無料で麗奈さんから渡されていた。

見慣れない“位置アプリ”が入っていたから、消したんだけど・・・。


「こいつ、身長幾つあるんだ・・・」

「でもよぉ、顔はメッチャ美人じゃね?」

麗奈さんを初めて見た者は、一様に同じ反応をする。


見目麗しい美貌とは裏腹に、彼女の身長は凄まじく高かった。

前に聞いた時の数値だけど、身長は何と、238cm。


そんな上背だけに関わらず、上下のジャージをパンパンに張らせるぐらい身体の厚みが凄い。

胸元にはバレーボールを思わせるKカップの爆乳バストが、ドンッと突き出し。

肩も二の腕も、太腿も、明らかに筋肉の隆起を思わせるボリュームをしていた。


「で、だ。そんな美人のお姉さんがこんな所に何の用だ?」

「そこに居る翔太君を返して貰うだけよ。ついでに“ゴミ掃除”しちゃうかもだけど」

麗奈さんの言葉に、その場の男たちの眉がピクッと動いた。


「へぇ。ちょっとガタイが良いぐらいで、俺らをどうにか出来るとでも?」

「むしろ、“こんなヘナチョコ”で、私をどうにか出来るのかしら・・・ねっ」

ビュンッ!という凄まじい風切り音と共に、“男”が水平に飛んで行った。

そう、会話の最中も麗奈さんの右手一本でリフトアップされていた男、だ。


「なぁっ!?」

ドッガアァンッ!と、男は倉庫の端まで飛ばされ、荷物に頭から突っ込んだ。

麗奈さんに片手で数十メートルは投げ飛ばされた男は、ピクッピクッと痙攣して次第に動かなくなった。


「そこに居る翔太君を弄って良いのは・・・私だけなの♪」

彼女は異常な面を多く持つ、色んな意味で“偏執”者だった。


背が低いのを補えるよう、ジム通いしても一向に身体が強くならない僕。

誰かに絡まれるのは、今回に限った話ではない。


その度に、こうやって彼女は駆け付けてくれる。

上下がジャージのままなのは、ジムから慌てて駆け付けてくれたからだろう。


しかし、その度に彼女は“遣り過ぎ”てしまうのだ。


何故、彼女が僕に纏わり付く・・・偏愛するのか良くわからないけど。

それ以上に、彼女は徹底的に相手を痛め付けてしまう。


「そんなに力自慢したいなら、俺が相手になってやる」

後ろの方から、2m近い長身の大男が出て来た。

恰幅も良く、上背で劣るものの、麗奈さんと迫力はそう違わないように見える。


「アナタ一人、で良いの?」

文字通り、見下ろす格好で麗奈さんが大男をニヤリと見下す。


「このアマ、吠え面掻くなよ」

今日日(きょうび)、言わないような脅し文句と共に、大男は麗奈さんに“手四つ”で勝負を仕掛けた。


“手四つ”とは、いわゆるプロレスでやるようなお互いの両手を組み合う力比べ、である。

筋力プラス体重、それだけあれば大男は麗奈さんに対抗出来る。そう、思ったのだろう。


実際、大男の腕の太さと、麗奈さんのジャージ越しの二の腕はそう、大差ないように見えなくもない。


「あぁ・・・」

僕はつい、溜め息とも悲鳴とも付かない声を上げた。


今は、麗奈さんと大男の勝負に皆が集中していて、僕が何かされた訳ではない。

これから起きようとしている事態に怯えて、なのだ。


「ぐ、あ、あ・・・」

麗奈さんは特に力を入れる風ではなく、ただ身体を前に倒して行く。

それだけで、大男は膝を付き、膝を付いたまま後ろに倒されて行く。


「ねぇ、力入れても良い? アナタ、弱過ぎ。もう、飽きちゃった」

「・・・へ?」

麗奈さんの腕が一瞬、モゴッと膨らむと、その両手が一気に地面に向かって圧し付けされる。


ボキボキボキッ・・・グシャッ!!


「うぎゃあぁぁぁっ!!」

「「「・・・・・っ!!?」」」

膝を付いていた筈の大男は、地面に平らになっていた。

膝関節が完全に二つ折りになり、太腿から折れた骨が飛び出している。


開放骨折した膝より酷いのが、大男の両腕。

大男の両腕は、“縦に圧縮”されて潰された。

肘から先に、手と前腕だったと思われる“肉の塊”が付いている。


彼女の身体について、解説をするのであれば。


先ず、大男が腕の太さでそう変わらない、と思ったのがそもそもの大間違いだった。

“身体に対しての比率”で言えば、確かにそうだろう。


しかし、上背で30cm以上、差があったのだ。腕の太さが同じである訳がない。

現に、“今の時点”ですら、彼女の腕は50cm近く太く、力瘤を盛り上げると70cmを超える剛腕なのだ。


「あははっ、弱っーい」

激痛に地べたに這い蹲(つくば)る大男を見て、麗奈さんは嘲笑した。


「こんなの、“クールダウン”にもなんないわ」

麗奈さんはいつも、トレーニング後にクールダウンを行う。

あくまで整理運動なので、負荷の少ない運動である筈なのだが・・・。


足掛け、既に三人の男を潰したのに、軽い運動にも満たないというのだ。


「このアマァ・・・っ! もういい、全員でやっちまえ」

「おう、やってやるっ」

リーダーらしき男の号令で、皆が一斉に麗奈さんに襲い掛かる。


「うふふっ♪」

麗奈さんに掛かれば、たかだか半グレの男たちなど、紙屑同然だった。


「あ、あ・・・」

これもまた、僕の悲鳴。


ワザと死なないように、顔の下半分をアイアンクローで潰したり。

驚異的な握力で、男の腕の筋肉を皮膚の上から引き千切ったり。

ラリアットで男数人を一気に吹き飛ばしたり。


「あははっ♪」

骨が折れ、血飛沫が飛ぶ。

その度に、麗奈さんの顔は恍惚とした表情を浮かべていた。


「ああ、もうダメ・・・イっちゃいそう」

麗奈さんの興奮度に呼応するように、身体が一回り大きくなっている。


因みに、麗奈さんの体重は僕に換算すると、五倍強。

前に、つい体重計を見てしまい。“可愛がり”されたぐらい、アンタッチャブルなんだけど。


『X型何とか』で背が高いとか、『ミオスタチン何とか』でヒトの数倍、筋繊維がある、とか。

彼女が一般人と掛け離れている点は数多いけど、その中でも。


その嗜虐性、それこそが彼女の最大の持ち味であり、欠点。

山盛りの筋肉を盛り上げ、男たちを屠りながら、妖しく笑う様は異様だった。


彼女は身長が高過ぎることを考慮しても、体重が凄まじく多い。

その大半が筋繊維な為、興奮して体内物質が駆け巡ると“彼女本来”の体格へと変貌する。


「翔太君、どう? 私の筋肉、凄い?」

「・・・・・」

麗奈さんが筋肉を盛り上げるポーズを取る度にビリッ、ビリッとジャージが裂けて行く。


「翔太君? “ど・う・か・し・ら”?」

麗奈さんは、呆気に取られる僕に近付き、二回りは太くなった力瘤を見せ付けた。

ひょっとして、二の腕回りは1m超えてるんじゃ・・・。


「す、凄いですっ!」

「そう、ありがと♪」

死なない程度に九割殺しをされた男たちの屍を踏み付けながら、僕は巨大筋肉美女のボディビルショーを見せられたのだった。

Comments

感想ありがとうございます。 ストーキングされてなかったらあわやの危機だったということで・・・。男主人公の話を書いたのは久々かも知れません。

デアカルテ

更新お疲れ様です。 翔太くん全然受難じゃ無いじゃないですか。 羨ましいです。 興奮で筋肉が盛り上がるのも最高です。

okita


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