翔太君の憂鬱
Added 2022-04-30 15:00:00 +0000 UTC「こんにちは」
「こんにちわ♪」
「今日も綺麗ですね」
「そう? ありがと」
麗奈さんがジム内を歩く度に、トレーニーたちが挨拶をする。
それはまるで、某病院ドラマの総回診のようでもあった。
一つ大きく違うのは皆、畏怖ではなく。尊敬や羨望の眼差しを向けている点だろうか。
「あら、翔太君。今日も頑張ってるかしら」
「あ、はい」
僕はチェストプレスマシンに居たところを、麗奈さんに目敏く発見された。
僕が使っているのは初心者用で、ジムの中でも隅っこの方なんだけど・・・。
「・・・・・」
相変わらず、麗奈さんは迫力が凄い。
“迫力”なんて単語、女性に向けるべきじゃないんだろうけど・・・。
単純なルックスでも、美人とか美女って形容されるぐらいの美形。
今はトレーニング仕様なのか、セミロングの髪をポニーテールに纏めている。
その美貌に、更にスポーティさがプラス。
そして、その美貌が載っているのが、超高身長の極厚ボディなのだ。
上下は、『藤堂製』の特注のトレーニングジャージを着ていて。
胸元は、“Kカップ”の爆乳がドンッと突き出している。
全身そのものは、やや“着膨れ”したかのように、スッポリと収まっている。
勿論、中身は“あの特盛の筋肉ボディ”が入っているのだが決して、そうは見えない。
「どうかした、かしら?」
「い、いえ・・・」
幾ら、僕がマシンに座った状態とは言え。
僕の顔の正面にあるのは、麗奈さんの下腹部だった。
身長が240cm近いと言っても、股下だけで120cm近くあるんじゃなかろうか。
足そのものの長さも然ることながら。その太さ、横幅も半端なかった。
実際、僕の胴体の横幅と、麗奈さんの片脚の横幅が同じぐらい。
大型の猛獣と、小型の・・・いや、昆虫レベルと言っても過言ではない。
「いつも言ってるけど、そんな軽いウェイトじゃダメよ」
「い、いえ。僕にはこのぐらいが・・・」
チェストマシンに載っているウェイトは、10kg。
両手で持つバーベルや、片手で持つダンベルのウェイトではない。
大胸筋を鍛えるマシンのウェイトで、10kgなのだ。
筋トレ初心者でも、ウォーミングアップにすらならない軽量。
でも、身長150cmのモヤシな僕には丁度良いウェイトだった。
自分評価とは言え、顔の作り自体は、中の下ぐらいだと思っている。
だけど、男子の平均身長を大きく下回る150cmという低身長が人生を狂わせた。
まあ、大仰に書いたが、いわゆる“イジメ”に遭った、という奴だ。
自殺したり、までは行かなかったが、それなりに暗黒な学生時代を過ごした。
高校卒業を期に一念発起して、せめて身体でも鍛えようと思ったのだ。
「もうっ、しょうがないわね。来なさい」
「え、ちょ・・・うぉわっ」
麗奈さんは、そう言うや否や。僕の左脇を右手で“ムンズ”と掴んだ。
筋トレを始めてからすら、未だに体重が50kgを超えない僕。
そんな僕は、麗奈さんからすれば、スマホを持つより簡単だった。
「ちょ、やめてくださ・・・」
「だーめ。来なさい」
ポニテジャージな巨女は、僕を一瞬でチェストマシンからヒョイッと引き剥がし。
右手一本で“逆お姫様抱っこ”され、別室に連行された。
「ちょっと、下ろしてください」
「もうっ、わかったわ」
そう言うと渋々、麗奈さんは僕を床に下ろしてくれた。
と言っても、“別室に連れ込む”という目的を達したから、なんだろうけど。
“ここ”は、藤堂ジムの中に有る、麗奈さん専用の個室だった。
個室とは言っても、凄まじい広さだった。
僕のアパートが六畳一間だけど、その何部屋分あるのか、想像も付かない。
「いつも言ってるじゃないですか。無理矢理連れて来るの、やめてください」
「えー、だってぇ」
四つ近く歳上の麗奈さんが、ブーッと膨れた。
美形で令嬢然とした風貌の麗奈さんが子供みたいに膨れると、それはそれで不思議な魅力がある。
「じゃあ、帰る?」
「・・・う」
僕は、扉の方を見て、諦めざるを得なかった。
ジムの通常フロアと個室は、完全に部屋として仕切られている。
その部屋同士を繋ぐのは勿論、“扉”になるんだけど・・・。
「どうしたのかしら? 鍵は掛けてないわよ・・・ふふ♪」
そう言って、麗奈さんが悪戯っぽく笑った。
確かに、“扉”に鍵は掛かっていない。
僕にとっての問題は、その“扉の厚さ”だった。
“扉”は厚さが50cm近くあり、何と、その重さは100kg!
「麗奈さん。せめて、普通の扉にしませんか」
「ダーメよ」
麗奈さんの、即答。
前に聞いた時に話してくれた理由は、扱うウェイトのせい、とのことだった。
実際、この個室には、通常フロアではお目に掛かれないようなウェイトばかりが並ぶ。
もし間違って扉にぶつけでもしたら、壊してしまうから、らしいが・・・。
本当に、そんな理由で“ダメ”なんだろうか・・・。
「麗奈さん。これも、いつも言ってるんですが・・・」
「何、かしら」
麗奈さんは、“またいつもの”的な感じで意に介さず、ジャージのファスナーに手を掛け始める。
「どうして、いつも僕にチョッカイを掛けるんですが」
低身長の非モテ、ヒョロガリでモヤシな陰キャ。
僕を形容する単語は、ネガティブなモノばかりが並ぶ。
社長令嬢で且つ、若くして大手ジムの経営者な麗奈さんとは、釣り合う要素は皆無。
巨獣とミジンコ。・・・なんだけど、麗奈さんは僕の質問に、いつもこう答える。
「だって。翔太君みたいなの、イジメ甲斐があるじゃない♪」
ニヤリと妖しく笑いながら、麗奈さんはジャージの上下を脱ぎ捨てた。
「ほーら、私の身体も翔太君をイジメたくてウズウズしてるわ」
ジャージの下は、ビキニタイプのスポーツブラとショーツしか着けていなかった。
「・・・っ!」
何度見ても、圧倒されてしまう肉体美。
麗奈さんのジャージ姿が“気膨れ”している、と評したのは、あくまで一般人体型と比べて、だ。
ジャージを着た状態でブクブクと厚みのあった全身は、それでも尚、“拘束具”に抑圧された状態。
藤堂製の特注ジャージから解き放たれた麗奈さんの全身は、倉庫で見た時より明らかに肥大化していた。
どうやってジャージに隠れていたかわからないぐらい、大きな山を形成している僧帽筋。
三角筋、上腕二頭筋と三頭筋がそれぞれ、バスケットボールぐらいはあろうかと盛り上がり。
ビキニトップなスポーツブラをピッチピチに張らせる“Kカップ”爆乳。
その谷間からは、大胸筋の筋肉の谷間が深いマリアナ海溝を作っていた。
そんな土台に載ったバレーボール二つの尾根を下ると、今度はブロック塀のような腹筋が現れる。
爆乳の横脇から見える大き過ぎる広背筋が、キュッと縊れたウェストと相まって、超逆三角形を形成していた。
至近距離で立って並ぶと、僕の胸元にちょうど、麗奈さんの太腿が来るんだけど・・・。
ジャージの拘束を解いた太腿は、明らかに僕の胴体より二回りは太かった。
「麗奈さん、また“増し”・・・ました?」
「そうよ。やっぱり、わかってしまうかしら」
もしここで、“増えた”なんてコメントしようものなら、キツい“イジメ”が降り掛かる羽目になる。
増す =筋量が増える
増える=脂肪が増える
というのが、麗奈さんの認識らしい。
「一向に扱うウェイトが増えない翔太君に頑張って貰おうと思案してたら、つい」
つい、の先は言わずとも・・・な感じなんだろうか。
「筋肉が増えたってことは、体じゅ・・・」
「・・・何?」
僕はつい、体重を話題に出し掛けて、麗奈さんの氷の視線に慌てて口を噤(つぐ)んだ。
240cm近い超長身の麗奈さんが筋量アップしたってことは。恐らく、体重は300kg近い筈。
筋肉が増えるのは嬉しいのに、体重が禁句なのは腑に落ちない・・・。
「翔太君には早く、筋肉が増える悦びを味わって欲しいの」
筋トレを始めた以上、僕にも身体を大きく、強くしたいという気持ちはある。
だけど、僕みたいな初心者に、麗奈さんのようなトップトレーニーが何故、という思い。
「さぁ、やるわよ。“こっち”に来なさい」
「は、はい」
もうこうなっては、逆らえない。渋々、僕は“麗奈さんの元”に向かう。
「今日は、“これ”ね」
そう言って、麗奈さんはベンチプレス台に寝そべった。
麗奈さんの巨体用に誂えた、超大型の特別製ベンチブレス台だ。勿論、藤堂製。
大の大人どころか、オリンピアクラスの男子ビルダーが二人、横並びで寝られるぐらい広い台に。
鉄柱のような頑強なラックに、これまた鉄柱のようなバーベルシャフトが横たわっている。
麗奈さんのような特大の手ならまだしも、僕のような小さな手ではとても持てそうにない。
そして、その極太なバーベルシャフトの先には。
タイヤをそのまま横に並べたような、ドラム缶かと見紛うウェイト。
一番外側のウェイトプレートを見ると、『70cm』『12cm』『50kg』と刻印されている。
「麗奈さん、このウェイトって・・・」
「そう、藤堂製の特注品よ」
左から、円形のウェイトプレートの直径、厚み、重量、だろうか・・・。
「ひぃ、ふぅ、みぃ・・・。・・・・・っ!?」
直径70cmのウェイトプレートが6枚で、厚さ72cm。ウェイトにして、300kg。
これが何と、バーベルの“片側”に搭載されたウェイトなのである。
「え、じゃあ、これ・・・」
極太のシャフトも、10kgやそこらじゃ利かないだろう。つまり・・・。
「650kgよ」
「っ!?」
人間離れした超身長とか、人間離れした筋量とか。最早、そういうレベルじゃない。
ベンチプレスの世界記録って確か、500kgぐらいだったんじゃ・・・。
「これ、翔太君が挙げるのよ?」
「うぇぇっ!!?」
いや。いやいやいや・・・。
「翔太君。君に足りないのは、成功体験よ」
いわゆる、達成感とかカタルシスとか。
困難や障害はクリア出来てこそ、初めてモチベーションに繋がる。
「“特別な補助”をしてあげるから大丈夫よ。さっ、来なさい」
そう言って、麗奈さんはベンチプレス台に寝そべり、お腹辺りをポンポンと指した。
「いや、でも・・・」
「自分から“乗る”のと、無理矢理“載せられる”の、と。どっちが良いかしら?」
相変わらず、ニヤリと妖しい笑みを浮かべているが、凄まじい圧を感じる。
対象が変わることで程度の差こそあれ、麗奈さんの“嗜虐性”は本物だ。
いつ、その度合いが、僕レベルから倉庫の男たちレベルにシフトするかわからない。
「本当・・・に、良いんですか?」
「何、恥ずかしがってるの。私が良いって言ってるのよ」
僕は諦め、麗奈さんのボリュームがあり過ぎる“上半身”に寝そべった。
「どう、私のおっぱいは。良い感じの枕じゃない?」
止むを得ず、僕は麗奈さんの爆乳の谷間に、顔を埋(うず)めた。
いや、余りにもマシュマロ過ぎて、自然と埋まった、が正しい表現か。
「す、凄いです・・・」
僕はつい、正直にそう答えてしまった。
体重300kgの大半が筋肉な麗奈さんでも、この胸だけは脂肪の塊と言える代物だった。
むしろ、全身の脂肪を全て集めたのでは、と思えるぐらい、フカフカな枕。
ビキニの上下という事を考えれば、半裸以上な露出度の筋肉巨女。
一方、ノースリーブなランニングシャツのトレーニングウェアに短パンな僕。
筋肉は鎧と評されることがあるが、だからと言って、麗奈さんが半裸なことに変わりない。
そんな、横たわる筋肉巨女の上に、軽装で乗っかる僕。
頭にはおっぱい、お尻にはゴツゴツの腹筋。足には、麗奈さんの大腿四頭筋。
全身一杯に麗奈さんの身体を味わう形になり、頭がどうにかなりそうだ。
「あぁ・・・ん。これが、翔太君の感触・・・」
「・・・え、何か言いました?」
麗奈さんのKカップ爆乳に埋まる形になり、耳が塞がっていて良く聞こえない。
「え、ああ。なっ、何でもないわよ」
麗奈さんは、僕に聞こえるように大き目の声で、何も無かったと否定した。
「じゃ、行くわよ」
「は、はい」
麗奈さんは取り繕うかのように、変則ベンチプレスを始めた。
「ん、っく・・・」
極太のバーベルが、僕の胸元まで下がって来る。
順手でバーベルを抑え、押し上げて行く。
“振り向けない”ので見えないが、確かに、両脇には特盛のウェイトがある。
後頭部が完全に麗奈さんのおっぱいに埋まっているので、顔を動かせないのだ。
「そぅ、っれ」
「ん・・・っぁ」
麗奈さんの呼吸に合わせ、腕を限界まで上げる。
こうやって、麗奈さんの身体に全身を預けていると、シミジミとわかる。
如何に、麗奈さんの身体が巨大なのか、ということが。
実際、僕が上方向に腕を限界まで上げても、麗奈さんの腕は『くの字』に曲がったまま。
恐らく、麗奈さんが目一杯まで腕を上げれば、たちまち僕の手はシャフトに届かなくなる。
「どうかしら? 負荷は」
「はぁ、はぁっ・・・良い、感じ・・・ですっ」
呼吸が荒くなっているものの、決してキツイという感じはしなかった。
程良い負荷、と言った感じだ。
如何に、今までの僕が真面目にトレーニングして来なかったかの証左でもあった。
「麗奈さんは、キツく・・・ないですか?」
「翔太君さえ良ければ、何時間でもイケるわよ♪」
麗奈さんの返事に“カタカナ”が混じってると思ったのは、気のせいだろうか。
美人な筋肉巨女に乗っかり、ベンチプレスをするという異常なシチュ。
であるにも関わらず、僕は健全で健康的な汗を掻いていた。
もし、この部屋が個室で無かったら。
変則ならぬ、『変態ベンチプレス』と揶揄されただろう。
尤も、このジム内で、麗奈さんにそんなことを言おうとするトレーニーは居ない。
それは恐怖や、畏怖ではなく。人格者で通っている麗奈さんだからこそ、だ。
倉庫で男たちを屠ったり。“イジメ”と称し、僕を身体に載せたり。
ある種、変態的ですらある嗜虐性は、周囲にバレていなかった。
「ふぅ・・・」
それから小一時間、僕は“麗奈さんの上”で、650kgものバーベルを挙げた。
僕の手はずっと、“シャフトに添えるだけ”だったんだけど。
「どう、かしら」
「す、凄い・・・です」
僕は、完全に語彙力を喪失していた。
650kgという、途方も無いウェイトを挙げた成功体験よりも。
倍以上はあろうかという体格の筋肉巨女の上に寝て、ベンチプレスを挙げたという異常体験。
実際、僕と言うウェイトを載せていた、と考えると。
麗奈さんには実に、700kgもの重量が掛かっていたことになる。
にも関わらず、麗奈さんは汗一つ、掻いてはいなかった。
更に、麗奈さんは僕の負担にならないレベルで負荷になるよう、ウェイトの持ち方を調節していた。
チェストマシンも、ベンチプレスも主に、大胸筋を使う。
その当の僕は、10kgで“ヒーヒー”言っていたのだ。
そんな僕が、“良い感じに負荷を感じる”ぐらいに、力加減を調整する。
一体、どれ程の筋力があれば、そんな事が可能なのだろうか。
「あ、ありがとうございました」
「あら・・・」
名残惜しそうな麗奈さんを尻目に、僕は慌てて麗奈さんから降りた。
「・・・っ」
つい、“変な気”を起こしそうになったのだ。
僕は、こんなナリでも男なのだ。童貞であっても、不能じゃない。
背中越しとは言え、肌to肌。麗奈さんの爆乳やら腹筋やらを、直肌で感じたのだ。
どれだけ筋肉隆々でも、22歳の乙女の柔肌であることに違いはない。
でも、もし。僕が“その気”になったとしたら、一瞬で捻り潰されるだろう。
圧倒的な筋力差からも、結果は火を見るよりも明らかだ。
「・・・あ」
僕は恥ずかしさやら何やらで、慌ててその場を後にしようとして、思い留まった。
そう、僕の力ではこの個室の扉を開けられないのだ。
「麗奈さん。シャワー浴びて帰りたいので、そろそろ・・・」
「しょうがないわね。今日はこの辺にしておいてあげるわ」
麗奈さんはヤレヤレと言った風で、扉を開けてくれた。
「折角だし、シャワーで“続き”する?」
「ちょっ!? な、何言ってるんですか!」
慌てて周りを見回すも、周囲のトレーニーたちには聞こえていないようだった。
扉が開き切っていなかったのと、そもそもの部屋の厚みもあったから、だろうか。
「きょ、今日はありがとうございました」
僕は、振り返って一礼すると、踵を返して個室を後にした。
・・・あの部屋、防音なのか、な。
何となく思った疑問は、シャワーをしている内に忘れてしまった。
Comments
感想ありがとうございます。 数値描写は未だに試行錯誤していまして、アンケート結果も踏まえて増やして行きたいと思っています。
デアカルテ
2022-05-06 01:39:24 +0000 UTC感想ありがとうございます。 今までの作品で余り書いて来なかったお姉さま系で行ければ面白いかな、と思いました。
デアカルテ
2022-05-06 01:38:46 +0000 UTC更新お疲れ様です! 巨女筋肉娘の爆乳って夢の塊だと思うんですよね。土台がデカイから同一のカップ数でもボリューム感もハリも段違いでしょうし… 願わくばカップ数以外にも詳細な数値設定がわかるとありがたいです…
sunagimo7
2022-05-01 17:09:08 +0000 UTC更新お疲れ様です。 年上お姉様系の筋肉娘も素晴らしいですね。 途轍もない重量を余裕を持って持ち上げる事で、底の見えない筋力を感じてとっても良かったです。
okita
2022-04-30 23:41:34 +0000 UTC