SamSuka
デアカルテ
デアカルテ

fanbox


悪魔のアプリLv26「投擲:130m」

「おはよー」

「おはよー」

いつもの朝の、いつもの登校風景。


・・・なんだけど、私にとっては久々。実に一ヶ月振り。


「おはよ、仁美」

「明子、おはよ」

久し振りの登校で、明子が通学路で落ち合ってくれたのだ。


ざわ・・・ざわ・・・

 ざわ・・・ざわ・・・


まともに外を出歩いたのは、病院に行って以来。

『世間の人は言う程、他人の事を見ていない』とは言ったものの。


「気にしてもしょうがないよ」

道行く人は皆、私の“風体”を見て、ギョッとした表情を浮かべた。


「さ、行こ」

「あ、うん」

明子が居てくれて、ホントに良かった。

独りだったら、このまま回れ右して家に帰ってたかも。


「「「・・・っ!!?」」」

教室に着くなり、クラスメイト達が一瞬、ざわ付く。


「大丈夫だった?」

「身体、どう?」

しかし、クラスメイト達は私を見るなり、心配の声を掛けてくれた。


「ありがとう。でも、大丈夫」

身体が大きくなったことよりも、一ヶ月も病欠した事の方を重大視してくれたのだ。


253cmっていう身長は隠せないが、特注の制服のお陰か、筋肉は目立っていない。

只ちょっと背の高い、ブクブクと太った巨女ってだけ。


上着の袖だけで、普通の制服の上下が揃うぐらいの生地が使われているのは秘密。

予備の制服も何着か用意したので、全部合わせればクラスメイト全員分の制服と同じぐらい。


久々の登校で変わったのは、私自身だけでは無かった。

席の位置が、いつの間にか窓際の一番後ろになっていた。


窓際なのは、通路側に私が座っていると、出入りの邪魔になるから。

後ろなのは、言わずもがな。253cmという超が付く高身長のせい。

何せ、座ったままでも、立った状態のクラスメイト達より頭一つ分は高いのだ。


更に、机がまさかの“教卓”に成り代わっていたのだ。

身体のサイズ的に、学生用の学校机では脚が入らないから仕方ないんだけど。


昼休み。


「すっごーい。手、大っきーい」

明子ほど仲は良くなくとも、それなりに話すクラスメイト達に囲まれていた。


「そ、そう?」

群々(むらむら)と群がられるのはちょっと困る、と内心思っていた。

咄嗟の反応で身体が当たったりすると、下手をすれば相手の怪我に繋がる。


「なぁ、腕相撲しようぜ」

「ごめんね、医者に止められてて」

腕力を比べる腕以前に。手を組み合わせた瞬間、相手の手は圧壊。

仮に何とか手を組めたとしても、今度は相手の片腕に1t近いパワーが掛かる。

サイドブレーキの効かない車を坂道に置いて、それを片腕一本で受け止められるかという話。


他には、前に“やらかした”『くしゃみ』や『伸び』も御法度。

一着が高級ブランド服並の値段になった制服を破きたくない。


そして、放課後。


「仁美、帰ろー」

「ごめん、これから行かなきゃ」

私は、体育の先生から呼び出されていた。


「何かやらかしたの?」

「いや、『体力測定』受けろってさ」

私が病欠していた間に、『身体測定』と『体力測定』があった。

『身体測定』は病院での測定結果を提出して事なきを得たんだけど、『体力測定』はそうも行かず。



「・・・っ!? よ、よぅし、来たな。やるぞ」

体育担当の田村先生(43歳)は一瞬、私を見て怯んだものの直ぐに平静を装った


私も先生も、ジャージの上下に着替えていた。

先生は、学校指定のジャージ。私は勿論、特注製のジャージ。


田村先生はウチの学校の先生陣の中でも一番背が高く、身体もガッシリしている。

体育大学出身で武道の有段者らしいけど、伊達じゃないのが良くわかる。


そんな体力自慢の大人でも、私と比べると大人と子供以上の体格差。

どっちが大人で、どっちが子供かは言う迄も無く。


「先ずは・・・そうだな、『ハンドボール投げ』からやろうか」

「はい」

私としては早く終わらせて、家に帰りたい。『DQ』を進めたい。

そんな無意識の焦りが、つい手の力に表れてしまう。


バァンッ!!


「あ・・・」

「っ!?」

ハンドボールは一瞬で破裂し、只の汚い布切れになっていた。


「な、何だ。古くなってたのか・・・じゃあ、こっちの新しい方を使え」

「は、はい」

私は改めて、“家で練習した通り”に何とかハンドボールを掴むことに成功した。


カボチャを潰さずに持てるようになったら、林檎を試し。

そうやって、家で何度も試した結果、やっと登校出来るようになったのだ。

ずーっとカボチャ料理と林檎ジュースばっかりで、流石に飽きた。


「えーいっ」

私は、“適度な”力でハンドボールを投げ放った。


ギュオオオオッ!と凄まじい勢いで射出されたボールは、グラウンド反対側の防護ネットに当たって落ちた。


「なぁっ!?」

「あ、はは・・・」

推定、130mぐらいは飛んだだろうか・・・。

ハンドボールの高校生平均は、男子で27m、女子で15mほど。


「ば、馬鹿な・・・」

幸い、ハンドボール投げはオリンピック種目ではないので、世界記録的なモノは存在しない。

どんなに体育教師の度肝を抜こうと、ローカルな異常結果、ってことで済む。


「凄く飛んじゃいましたね、てへっ♪」

私はワザと、お道化て見せた。まるで、“頑張り過ぎた”結果とでも言わんばかり。

本当の所はむしろ、逆。


今投げたハンドボールは“普通の放物線”を描いての、推定130m。

もし、全力で投げたら多分、“ライナー軌道”で防護ネットまで行けたと思う。

更に角度が付いていたら、そのまま防護ネットをオーバーして場外ホームラン。


尤も、全力を出そうとボールを握ったら、一瞬で破裂させちゃうんだけど・・・ね。


「う、そだろ・・・」

次の『50m走』の結果を見て、田村先生は唖然としていた。


「そんなに、変・・・ですか?」

タイムは7秒フラット、ぐらい。

確かに、身体が大き過ぎて走行レーンを二人分使っちゃったんだけど。


「その図体で・・・」

花の女子高生に向かって、“図体”呼ばわりはどうなんだろうか。

コンプラ的にアウトな気がするんだけど、それだけ気が動転してるって事なんだろう。


田村先生は多分、私の“体重”を知ってるんだろう。

つまり、“お相撲さん二人分”な私が、男子高校生の平均タイムを叩き出したのだ。


因みに、『50m走』も全力では無い。というか、こと『走り』に関してはもう、全力は出せない。

脚に力を入れると太腿がボンッと太くなり、左右の太腿が擦れ合ってしまうのだ。

一度試したけど、筋肉がぶつかり合って、真っ直ぐ走るのも難しくなってしまった。


「・・・・・」

田村先生は、次第に無言になって行った。


ハンドボール投げ:130m(推定)

50m走:7秒

立ち幅跳び:512cm

反復横跳び:0回


立ち幅跳びに関しては、男子平均が230cmぐらい。軽く跳んだのに、記録が倍近く行っちゃった。

反復横跳びは、『走り』同様、この身体ではやれない種目なのが判明した。


『1m』幅のラインを順番に跳び越える種目なんだけど、普通に立つだけでラインを越えちゃうのだ。

頑張って両足の幅を縮めつつ跳ぼうとしたら、“グラウンドの地面を削り取って”しまった。

ボコッ、ボコッと土が抉れ、あちこち穴だらけになっている。


持久走の結果については、割愛。

余力は有り捲りだったけど、タイム調整が効いたお陰が普通な記録に収めることが出来た。


「の、残りは体育館で、だな」

「はい」

徐々に“引き”つつある先生を他所に、私はもう少しで終わると意気揚々。


「こんな感じでどうでしょう」

「・・・ん。何だ、『100』って・・・」

私は右手の握力を測り、目盛りが『100』で止まったアナログ握力計を手渡した。


「ズルしちゃダメだろう。ほら、“こう”やって握ってみなさい」

田村先生は私の目の前で握力計を力一杯握ると、『70』の目盛りになった握力計を返して来た。


43歳の中年とは言え、流石は体育教師。握力が70kgというのは、かなり立派だと思う。

立派、なんて上から目線になっちゃってるのは、私の『100』って記録が加減して出たものだからで。


先生に握力計を握ってる様を見せなかったのは、ズルではなく。むしろ、逆。

“親指と小指”だけで握って、一瞬で『100』まで目盛りが進む様はとてもじゃないけど見せられない。


「ほら、見ててやるから。ちゃんと握ってみなさい」

「は、はい・・・」

こうなっては、仕方ない。


「じゃ、やりますね・・・」

力を入れる演技をしつつ力を抜くのは、やっぱり無理があった。


ギュンッ、とホンの一瞬で目盛りが振り切り・・・


「・・・あ」

「・・・・・え」

バキャッと握力計の取っ手が砕けた。


私としてはギリギリで上手く止められれば、と思ったものの、間に合わず。

握力計の目盛りの面が先生に向いた状態で、私は握力計を握り潰した。


「・・・・・」

「す、すみません」

結局、握力は左右共に測定不能となった。


「さ、最後は『上体起こし』だ」

「・・・『上体起こし』?」

私の出身中学はカリキュラムが違ったのか、やったことが無い種目だった。


「仰向けに寝て・・・」

つまりは、いわゆる『腹筋』をやるらしかった。


「足は俺が抑えてやるから、後は・・・」

先生はまるで、遊園地や公園にあるような木馬に跨るように、私の両脚に跨った。


私の太腿が太いのは既に何度も挙げた通りだけど、“高さ”も凄かった。

仰向けに寝そべっても、太腿と脹脛が辛うじて床に付くだけで、“足”は付かないのだ。


「一応、“膝は上げて”おいてくれ」

「・・・? “足を上げれば”良いんですか?」

先生は確かに、“膝”と言った。しかし、私は“足”と勘違いした。

『上体起こし』という特殊な名前が付いていることから、『腹筋』とは違う運動なのだと思った。


そこで頭を過ぎったのは、筋トレで言う所の『V字クランチ』だった。

『V字クランチ』はお尻を床に付けて支点にして、上半身と下半身を上げて『V字』を作る運動。


私はてっきり、それだと勝手に思い込んでしまったのだ。


「足、上げますね・・・っと」

「え、おい・・・」

私は、先生が載ったままの足を『45度』の角度になるように振り上げた。


先生は体格が良く、背も高い。体重は多分、80kg近いんじゃないだろうか。

でも、“片脚”で1t超えの超筋力な私からすると風船・・・は言い過ぎかなぁ。


ドンッ!!


まるで、乗っていたシーソーの反対側に1tの重しが載ったかのような。

そんな、ロケット噴射を思わせるような急激な上空への打ち上げ。


「うぉあぁぁっ!?」

ブワァッッ!!!


と先生は一瞬で、体育館の高い天井ギリギリまで飛ばされた。

体育館そのものはかなり大きくて、高さで言えば三階建ての校舎と同じぐらい。


幾ら頑丈そうな見た目でも、その高さから自由落下したら怪我では済まない。


「・・・・・っ!」

私は慌てて立ち上がり、先生を受け止めようと落下点と思しき辺りをウロウロ。


「あれ、あれ・・・」

先生はほぼ垂直に近い角度で打ち上げられたので、落下点辺りに入るのは訳なかった。

だけど、細かいポイント調整が上手く行かない。


どんなに背が凄く高くなり、筋肉隆々になっても。

野球のフライを捕る才能は身に付かない、という事。


「こっち・・・? この辺・・・?」

「うおあああぁぁぁっっ!?」

先生が絶叫しながら落ちて来る。


「仕方ないっ!」

私は今の自分の身体の大きさを活かそうと、両腕を広げ、落下地点辺りでフラフラ。


ぼよん。ドシンッ。


「うげぇ」

「あれ?」

凡(およ)そ、何かが激突したとは思えないような、衝撃音。


結果から言うと。


先生は私の『Qカップ』スイカ爆乳にバウンドして、勢いが弱まった形で着地した。

所作というか動作的には、サッカー選手の胸トラップみたいな恰好。


私の身体で一番・・・というか唯一の脂肪の塊、おっぱいによるトラップ。

『おっぱいトラップ』のお陰か、幸いにも先生に目立った怪我は無さそうだった。


「う、うぅ・・・」

「先生、大丈夫ですか・・・?」

“クッション”で衝撃が和らいだとは言え、先生は何処か痛めた模様。

結局、『上体起こし』は私一人で計測して記録することになった。


因みに、『上体起こし』はいわゆる『膝立腹筋』の事。

体育座りの要領で、横から見て膝を三角に立て。その体勢で腹筋すれば良かったのだ。


握力:100kg(測定不能)

上体起こし:40回


握力に関しては、実際の数値が『アレ』なので、特に感想は無い。

腹筋は、30秒間で40回が限界だった。


男子の平均が30回、女子だと20回なので、まあこんなものだろう。

Comments

感想ありがとうございます。 今後の展開にもご期待頂ければと思います。

デアカルテ

これはDQでの成長と研究所での測定結果がますます楽しみになりますね!

sunagimo7

感想ありがとうございます。 ただ強くなった、だけではなく細かい描写にも拘って行きたいと常々思っています。

デアカルテ

筋肉が大きくなり過ぎて出来ない事が出てくるのがたまりませんね、こういう描写は好きです

名無しです


More Creators