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筋肉ダメイド拡大記06「十六文」

「はれ? はれれ・・・っ?」

芽衣子は然(さ)も、『何でこうなるのか』と言わんばかり。

まあ、それに関しては僕も同意見。


僕が手伝って無理矢理、芽衣子に着せた男物の【7XL】ジャージ。

そんな特大ジャージは、既に見る影もない。


袖はまともに通らず、臍(ヘソ)がバーンッと出るぐらい裾が足りていない。

それでも、深呼吸しただけで伸縮性に富んだ生地が裂けるのは想定外。


「なん、っ・・・」

芽衣子が身を捩(よじ)る度に、ブッ。


「・・・っで、あ」

ビリッ、とジャージが徐々に裂けて行く。


ファスナーレールを破壊し、チャックを弾き飛ばした『Kカップ』爆乳。

肩の三角筋や上腕二頭筋は生地を引き裂き、動く度に可動域を増やして行った。


「せめて、下は・・・」

「え、穿くの?」

僕は何も、ワザワザ無理に穿かなくてもと思った。


「ん、っしょ・・・」

芽衣子が今まさに、穿こうとしている【7XL】ジャージ下(ボトム)。

片脚分だけでも、僕の胴体ならスッポリ入りそうな程。


「・・・ん。あ、あれ」

そんなビッグサイズであっても、火を見るよりも明らかだった。

というか、速攻で引っ掛かった。


まるで大理石の柱かと見紛うような、芽衣子の剛脚(130cm)。

ジャージ上の時のように無理矢理、通すことすら不可能で。


「んんぅ、んぬぅ~っ」

芽衣子はつい、ジャージを引っ張る手に力を入れてしまい。


ビリィッ!


「・・・あ」

大腿四頭筋の一番太い部位を丁度、境目にして。

またしても、伸縮性に富んだ筈のジャージを引き裂いてしまった。


因みに、上着の袖に相当する筒状の部位のことを、『股下』と呼ぶらしい。

ジャージ下の『股下』は、太腿辺りの生地が分断され、完全に真っ二つ。


「あ、あぁ~っ。お気に入りだったのに・・・」

芽衣子はズタズタになったジャージ下を握り締め、呆然としている。


芽衣子は、僕が愛用するジャージと同じ物を身に着けたいらしく。

ちょくちょく、大きいサイズに買い直していたらしい。


冷静に考えて、ジャージ生地をまるで紙か何かのように。

意図も簡単に破いてしまうのは、凄まじい怪力なんだけど。


そんな自らの怪力を以って、トドメを刺した格好。


「でも、【7XL】って・・・」

襟元にあるタグを見てみると、身長200cm想定。かなり、大柄な人用。


とは言え、筋肉量の増加だけでは今回の“ジャージ破り”は説明が付かない。

尤も、“理由”については既に想像が付いているけど、後回しになっていた。


「芽衣子、すっかり忘れてたけど」

細切れになったジャージの残骸を片付け中の芽衣子に、声を掛ける。


「はい、何でしょう」

ブルンッ。

真っ赤なビキニ姿に逆戻りなので、振り向く際に胸元が大きく揺れる。


「・・・・・っ」

間違いなく、これまでの人生で初めて見るレベルの“乳揺れ”だった。


メロン張りの大質量な乳房は、ちゃんと脂肪の塊の為か。

芽衣子の身体の動きと半拍分だけズレて、動くのだ。


いつだったか、ヒップアタックで吹っ飛んだ僕だけれど。

この『Kカップ』爆乳ですら、顔面に喰らえば一溜まりも無さそうな重量感がある。


実際、個人差はあれど『Kカップ』は片乳だけで『4kg』、両方で『8kg』にもなるそうで。

二リットルのペットボトルで四本分、赤ちゃん換算だと二人分。


「・・・身長、測ってなかった」

爆乳の考察は一先ず、脇に置いておいて。

肝心の身長を測らないといけない。


「そういえば、そうでした」

ようやく、ジャージに別れを告げた芽衣子がスクッ、と立ち上がる。


「この辺りで、良いですか?」

「うん、そうだね」

流石に何度も繰り返したせいか。僕も芽衣子も、もう慣れっこ。


家具とかポスターとか、何もない部屋の壁を探し。

芽衣子が壁を背にして、ピンッと背筋を伸ばす。


最早、芽衣子にまともな『気を付け』の姿勢は出来ない。

太過ぎる二の腕が脇腹に突っかえて、『ハの字』に腕が広がる。


また、“富士山”の様に巨大な背中と、“ボウリング球”なお尻のせいで。

壁を背を向けても立っても、腰は大きな窪みになって壁にくっ付かない。


「・・・『209cm』

まさかと思ってはいたけれど、芽衣子は更なる成長を見せていた。


「ふぇぇ・・・」

芽衣子から、可愛らしい声が漏れる。


芽衣子は気恥ずかしさからか、あんぐり開いた口を両手で覆い隠す。

両腕のボリュームが有り過ぎて、扇情的な赤ビキニはムギュゥッと窮屈に変形。


僕は何故か、そのポーズに既視感を覚えていた。


突然だけど、ウチの両親は往年の古いバラエティー番組やスポーツ中継が大好きで。

幼い頃、情操教育がわりに録画映像を良く観せられた記憶がある。


確か、グラビア系のタレントだっただろうか。

豊満なバストを外側から両腕で挟み、谷間を強調していた。


芽衣子は今まさに、そのポーズの拡大版をやっている。

『Kカップ』爆乳が壁に挟まれ、マリアナ海溝を形成していた。


「・・・ん、あれ」

身長『209cm』という、数値。

初めて見たし、キリも良くないのに。これまた、懐かしい感じがする。


「何だろう。何で、見たんだっけか・・・」

『ビックリ人間』を紹介するような番組もあったけど、それではなく。


「そうだ。プロレスラー・・・」

グラビアタレントが盛り上げるバラエティー番組とは、正反対の。

スポーツの中でも一際に男臭い、プロレス中継。


「・・・十六文キック」

「何です、それ?」

僕が呟いた言葉に、芽衣子は反応するも。当然、知っている筈もなく。

多分、芽衣子の脳内にはハテナマークが浮かんでいるだろう。


昔、『十六文キック』という、必殺技を使う巨漢レスラーが居た。

名前は忘れてしまったけど、そのプロレスラーの身長が、『209cm』。


「この人、だ」

スマホで検索すると、直ぐに詳細な情報が出て来る。


全盛期で身長209cm、体重145kg。

足のサイズ、32cm。


「十六文キックは、プロレス技だね」

「ほえぇ」

スマホで検索して見せた画面に、芽衣子は興味深々。


当時、このレスラーの靴が海外のサイズ規格で『16』だった。

それを、新聞記者が『文(もん)』という日本規格のサイズに誤解したことで広まった。


技としては単純な、前蹴り。


しかし、高身長による打点の高さと、プロレス界随一と言われた大きな足。

その二つが合わさることで、発揮される威力は凄まじく。


体重が100kg近い対戦レスラーがそれを喰らい、ボールのように吹っ飛ばされ。

一時的とはいえ昏倒してしまい、病院送りになる程だった。


「・・・そう、か。そうだよな」

今更ながらの“気付き”に、つい独り言が漏れてしまう。


「芽衣子。足のサイズも測ろっか」

「足、ですか?」

ずっと、違和感はあったんだけど。

僕自身、その正体に思い至らなかった。


だけど、『十六文』って単語を出した事で、やっと気づけた。


「・・・『35cm』

足のサイズ。通常、靴選びの際に指標になるサイズが、『35cm』。

30cm定規では足りないぐらいの、特大の足。


参考値として、身長172cmの僕は、27cm。

一般サイズな僕より、芽衣子の足は二回りは大きい。


実際の十六文(38.4cm)まで後、数センチ。


「芽衣子。今履いてるサンダルって、どのぐらい?」

「えーっと、32cmだったと思います」

『通りでキツかったんですね』と、芽衣子は暢気な感想。


考えるまでもなく、プロテインを飲んで筋肉が付いたとしても。

身長が伸びたり、足のサイズが大きくなったりは、しない。


やっぱり、普通に有り得ない話なのだ。


「そりゃ、合わない訳だよ」

身体全体が、ワンサイズどころかツーサイズもアップ。


「でも、さ。普通の靴は履いたりしないの?」

玄関の靴箱に、芽衣子の履き物を余り見ない気がする。


「前は、パンプスとかも履いてたんですけど・・・」

「・・・けど?」

パンプスっていうと、ヒールがある靴のことで良いのかな。


「踵がある靴は皆、直ぐダメになってしまって・・・」

「・・・へ? 踵?」

靴って平均すると、だいたい爪先側から潰れて行くものだ。

女性靴だと、ヒールが折れたりはするかもだけど。


「お見せした方が早いかも知れません」

そう言って、芽衣子は収納棚の奥から包装されたハイヒールを持ち出して来た。


「多分、今の足だと入らないと思いますけど」

芽衣子が身に着けている赤ビキニと同じ、シンプルな赤いハイヒール。


「それ」

「ええ、そうなんです」

恐らく、一度は履いて試したのか。

片方のヒールがポッキリと折れてしまっている。


「あ、やっぱり入らない・・・」

ヒールが無事な方を履こうとするも、入らず。


「・・・じゃあ」

仕方ない、と言わんばかりに。


芽衣子は靴を、そのまま上から踏み付けるように。

しかし、ゆっくりと優しく自分の足を置いた。


グシャ。


プレス機で硬い物体をプレスする、圧縮実験の映像を観るような。

一定のペースで、“それ”は芽衣子の足の下に消失した。


「っ!?」

一瞬、我が目を疑った。


「・・・え。え?」

瞬きした次の間に、芽衣子の十六文な足はピタッと床に付いている。


「あ、はは・・・」

芽衣子がスッ、と足を上げると“平らに圧縮されたモノ”

ハイヒールだった物体が確かに、そこに在った。


「う、っそ・・・」

僕は、手品か何かを見せられたような錯覚に陥る。

しかし、種も仕掛けもないことは、間違いない。


だって、芽衣子は確かに“足を置いただけ”なのだ。

いわゆる、『フットスタンプ』みたいなプロレスの踏み付け技を放った訳ではない。


「ヒールって、そんなに脆い物なんだっけ・・・」

今の時代は、本当に便利。困ったら検索すれば、直ぐに見付かる。


「なになに。えーっと、『100kg』ぐらいまでなら耐えられる・・・っと」

それはつまり、ハイヒールの片方だけで耐荷重が『100kg』あるということ。

メーカー毎に差はあれど、それに近い耐久性があるということになる。


・・・つまり。


「なぁ、芽衣子」

「・・・は、はい」

かつての“ドジっ子”属性は、鳴りを潜めたのか。

当の本人も、これから何を聞かれるのか予想が付いたようだ。


「今って体重、どのぐらいあるの?」

いつもながら、女の子に聞く内容じゃない気はしている。


今まで何度も、芽衣子の体重を測っておいてアレだけど。

今のご時世、『体重ハラスメント』なんて言われてもおかしくない。


「えー、っと。その、ちゃんと測れなくて・・・」

「え、嘘。そんな筈は」

何度か、芽衣子の体重を測れなかったこともあり。

今、ウチにある体重計はつい最近、買い替えたばかり。


「一緒に見てみても、良い?」

「はい」

僕は風呂場にある脱衣所から、最新式の体重計を持ち出して来た。


「載って、みて」

「はい」

正方形型の体重計に、芽衣子が赤ビキニのまま両足を乗せる。


「こんな、感じで・・・」

デジタル式の画面には、『***』の表示。


「あれ、おかしいな」

最初、芽衣子の足が、体重計からハミ出ているのが原因だと思った。

実際、体重計の縦幅より芽衣子の足の方が大きいのだ。


だけど、指の付け根と踵をちゃんと載せても、結果は変わらず。


「この体重計、『200』までは行ける筈なんだけどなぁ・・・」

「え、そうなんですか?」

僕と芽衣子は二人、何でだろうと悩む。


しかし、原因に思い至るのに、それ程の時間は要しなかった。


「・・・ん」

「何か、わかりました?」

僕は直ぐ様、チョチョイと体重計を弄って。


「芽衣子、乗ってみて」

「・・・良いんですか? それじゃあ」

改めて、芽衣子が体重計に乗る。


『102』


「ほら、出た」

「あ、あれ。出ましたね」

画面には、『102kg』と表示されている。


「でも、私って痩せたんでしょうか?」

「・・・え、何で」

芽衣子が突然、妙なことを言い出す。


「だって、前に測った時は『166kg』だったのに・・・」

「あー、それはね。実は・・・」

僕は、体重計の『計測モード』を切り替えていた。


実はこの体重計、体組成を算出出来る高性能な分。

限界重量が『200kg』までに制限されていた。


恐らくだけど、内部的な計算で変な結果を出さない為の配慮なんだろう。

実際、普通の一般家庭であれば、『200kg』を超える体重なんて測らない。


そこで、いわゆる『裏モード』的な感じで。

最終結果の体重数値から、特定の数値をマイナスする機能が付いているのだ。


「これ、『100』引いた数値なんだよ」

「え、それじゃあ・・・」

芽衣子が“今の身体”になった理由にさえ、目を瞑れば。

起きていた事象に、何もおかしい点はなかった。


片足で耐荷重『100kg』のハイヒールを踏み潰し。

限界重量が『200kg』までの体重計で、測定不能。


芽衣子の体重は遂に、『200』の大台を超えて。

『202kg』になっていたのだった。


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