筋肉ダメイド拡大記06「十六文」
Added 2024-10-04 15:00:00 +0000 UTC「はれ? はれれ・・・っ?」
芽衣子は然(さ)も、『何でこうなるのか』と言わんばかり。
まあ、それに関しては僕も同意見。
僕が手伝って無理矢理、芽衣子に着せた男物の【7XL】ジャージ。
そんな特大ジャージは、既に見る影もない。
袖はまともに通らず、臍(ヘソ)がバーンッと出るぐらい裾が足りていない。
それでも、深呼吸しただけで伸縮性に富んだ生地が裂けるのは想定外。
「なん、っ・・・」
芽衣子が身を捩(よじ)る度に、ブッ。
「・・・っで、あ」
ビリッ、とジャージが徐々に裂けて行く。
ファスナーレールを破壊し、チャックを弾き飛ばした『Kカップ』爆乳。
肩の三角筋や上腕二頭筋は生地を引き裂き、動く度に可動域を増やして行った。
「せめて、下は・・・」
「え、穿くの?」
僕は何も、ワザワザ無理に穿かなくてもと思った。
「ん、っしょ・・・」
芽衣子が今まさに、穿こうとしている【7XL】ジャージ下(ボトム)。
片脚分だけでも、僕の胴体ならスッポリ入りそうな程。
「・・・ん。あ、あれ」
そんなビッグサイズであっても、火を見るよりも明らかだった。
というか、速攻で引っ掛かった。
まるで大理石の柱かと見紛うような、芽衣子の剛脚(130cm)。
ジャージ上の時のように無理矢理、通すことすら不可能で。
「んんぅ、んぬぅ~っ」
芽衣子はつい、ジャージを引っ張る手に力を入れてしまい。
ビリィッ!
「・・・あ」
大腿四頭筋の一番太い部位を丁度、境目にして。
またしても、伸縮性に富んだ筈のジャージを引き裂いてしまった。
因みに、上着の袖に相当する筒状の部位のことを、『股下』と呼ぶらしい。
ジャージ下の『股下』は、太腿辺りの生地が分断され、完全に真っ二つ。
「あ、あぁ~っ。お気に入りだったのに・・・」
芽衣子はズタズタになったジャージ下を握り締め、呆然としている。
芽衣子は、僕が愛用するジャージと同じ物を身に着けたいらしく。
ちょくちょく、大きいサイズに買い直していたらしい。
冷静に考えて、ジャージ生地をまるで紙か何かのように。
意図も簡単に破いてしまうのは、凄まじい怪力なんだけど。
そんな自らの怪力を以って、トドメを刺した格好。
「でも、【7XL】って・・・」
襟元にあるタグを見てみると、身長200cm想定。かなり、大柄な人用。
とは言え、筋肉量の増加だけでは今回の“ジャージ破り”は説明が付かない。
尤も、“理由”については既に想像が付いているけど、後回しになっていた。
「芽衣子、すっかり忘れてたけど」
細切れになったジャージの残骸を片付け中の芽衣子に、声を掛ける。
「はい、何でしょう」
ブルンッ。
真っ赤なビキニ姿に逆戻りなので、振り向く際に胸元が大きく揺れる。
「・・・・・っ」
間違いなく、これまでの人生で初めて見るレベルの“乳揺れ”だった。
メロン張りの大質量な乳房は、ちゃんと脂肪の塊の為か。
芽衣子の身体の動きと半拍分だけズレて、動くのだ。
いつだったか、ヒップアタックで吹っ飛んだ僕だけれど。
この『Kカップ』爆乳ですら、顔面に喰らえば一溜まりも無さそうな重量感がある。
実際、個人差はあれど『Kカップ』は片乳だけで『4kg』、両方で『8kg』にもなるそうで。
二リットルのペットボトルで四本分、赤ちゃん換算だと二人分。
「・・・身長、測ってなかった」
爆乳の考察は一先ず、脇に置いておいて。
肝心の身長を測らないといけない。
「そういえば、そうでした」
ようやく、ジャージに別れを告げた芽衣子がスクッ、と立ち上がる。
「この辺りで、良いですか?」
「うん、そうだね」
流石に何度も繰り返したせいか。僕も芽衣子も、もう慣れっこ。
家具とかポスターとか、何もない部屋の壁を探し。
芽衣子が壁を背にして、ピンッと背筋を伸ばす。
最早、芽衣子にまともな『気を付け』の姿勢は出来ない。
太過ぎる二の腕が脇腹に突っかえて、『ハの字』に腕が広がる。
また、“富士山”の様に巨大な背中と、“ボウリング球”なお尻のせいで。
壁を背を向けても立っても、腰は大きな窪みになって壁にくっ付かない。
「・・・『209cm』」
まさかと思ってはいたけれど、芽衣子は更なる成長を見せていた。
「ふぇぇ・・・」
芽衣子から、可愛らしい声が漏れる。
芽衣子は気恥ずかしさからか、あんぐり開いた口を両手で覆い隠す。
両腕のボリュームが有り過ぎて、扇情的な赤ビキニはムギュゥッと窮屈に変形。
僕は何故か、そのポーズに既視感を覚えていた。
突然だけど、ウチの両親は往年の古いバラエティー番組やスポーツ中継が大好きで。
幼い頃、情操教育がわりに録画映像を良く観せられた記憶がある。
確か、グラビア系のタレントだっただろうか。
豊満なバストを外側から両腕で挟み、谷間を強調していた。
芽衣子は今まさに、そのポーズの拡大版をやっている。
『Kカップ』爆乳が壁に挟まれ、マリアナ海溝を形成していた。
「・・・ん、あれ」
身長『209cm』という、数値。
初めて見たし、キリも良くないのに。これまた、懐かしい感じがする。
「何だろう。何で、見たんだっけか・・・」
『ビックリ人間』を紹介するような番組もあったけど、それではなく。
「そうだ。プロレスラー・・・」
グラビアタレントが盛り上げるバラエティー番組とは、正反対の。
スポーツの中でも一際に男臭い、プロレス中継。
「・・・十六文キック」
「何です、それ?」
僕が呟いた言葉に、芽衣子は反応するも。当然、知っている筈もなく。
多分、芽衣子の脳内にはハテナマークが浮かんでいるだろう。
昔、『十六文キック』という、必殺技を使う巨漢レスラーが居た。
名前は忘れてしまったけど、そのプロレスラーの身長が、『209cm』。
「この人、だ」
スマホで検索すると、直ぐに詳細な情報が出て来る。
全盛期で身長209cm、体重145kg。
足のサイズ、32cm。
「十六文キックは、プロレス技だね」
「ほえぇ」
スマホで検索して見せた画面に、芽衣子は興味深々。
当時、このレスラーの靴が海外のサイズ規格で『16』だった。
それを、新聞記者が『文(もん)』という日本規格のサイズに誤解したことで広まった。
技としては単純な、前蹴り。
しかし、高身長による打点の高さと、プロレス界随一と言われた大きな足。
その二つが合わさることで、発揮される威力は凄まじく。
体重が100kg近い対戦レスラーがそれを喰らい、ボールのように吹っ飛ばされ。
一時的とはいえ昏倒してしまい、病院送りになる程だった。
「・・・そう、か。そうだよな」
今更ながらの“気付き”に、つい独り言が漏れてしまう。
「芽衣子。足のサイズも測ろっか」
「足、ですか?」
ずっと、違和感はあったんだけど。
僕自身、その正体に思い至らなかった。
だけど、『十六文』って単語を出した事で、やっと気づけた。
「・・・『35cm』」
足のサイズ。通常、靴選びの際に指標になるサイズが、『35cm』。
30cm定規では足りないぐらいの、特大の足。
参考値として、身長172cmの僕は、27cm。
一般サイズな僕より、芽衣子の足は二回りは大きい。
実際の十六文(38.4cm)まで後、数センチ。
「芽衣子。今履いてるサンダルって、どのぐらい?」
「えーっと、32cmだったと思います」
『通りでキツかったんですね』と、芽衣子は暢気な感想。
考えるまでもなく、プロテインを飲んで筋肉が付いたとしても。
身長が伸びたり、足のサイズが大きくなったりは、しない。
やっぱり、普通に有り得ない話なのだ。
「そりゃ、合わない訳だよ」
身体全体が、ワンサイズどころかツーサイズもアップ。
「でも、さ。普通の靴は履いたりしないの?」
玄関の靴箱に、芽衣子の履き物を余り見ない気がする。
「前は、パンプスとかも履いてたんですけど・・・」
「・・・けど?」
パンプスっていうと、ヒールがある靴のことで良いのかな。
「踵がある靴は皆、直ぐダメになってしまって・・・」
「・・・へ? 踵?」
靴って平均すると、だいたい爪先側から潰れて行くものだ。
女性靴だと、ヒールが折れたりはするかもだけど。
「お見せした方が早いかも知れません」
そう言って、芽衣子は収納棚の奥から包装されたハイヒールを持ち出して来た。
「多分、今の足だと入らないと思いますけど」
芽衣子が身に着けている赤ビキニと同じ、シンプルな赤いハイヒール。
「それ」
「ええ、そうなんです」
恐らく、一度は履いて試したのか。
片方のヒールがポッキリと折れてしまっている。
「あ、やっぱり入らない・・・」
ヒールが無事な方を履こうとするも、入らず。
「・・・じゃあ」
仕方ない、と言わんばかりに。
芽衣子は靴を、そのまま上から踏み付けるように。
しかし、ゆっくりと優しく自分の足を置いた。
グシャ。
プレス機で硬い物体をプレスする、圧縮実験の映像を観るような。
一定のペースで、“それ”は芽衣子の足の下に消失した。
「っ!?」
一瞬、我が目を疑った。
「・・・え。え?」
瞬きした次の間に、芽衣子の十六文な足はピタッと床に付いている。
「あ、はは・・・」
芽衣子がスッ、と足を上げると“平らに圧縮されたモノ”。
ハイヒールだった物体が確かに、そこに在った。
「う、っそ・・・」
僕は、手品か何かを見せられたような錯覚に陥る。
しかし、種も仕掛けもないことは、間違いない。
だって、芽衣子は確かに“足を置いただけ”なのだ。
いわゆる、『フットスタンプ』みたいなプロレスの踏み付け技を放った訳ではない。
「ヒールって、そんなに脆い物なんだっけ・・・」
今の時代は、本当に便利。困ったら検索すれば、直ぐに見付かる。
「なになに。えーっと、『100kg』ぐらいまでなら耐えられる・・・っと」
それはつまり、ハイヒールの片方だけで耐荷重が『100kg』あるということ。
メーカー毎に差はあれど、それに近い耐久性があるということになる。
・・・つまり。
「なぁ、芽衣子」
「・・・は、はい」
かつての“ドジっ子”属性は、鳴りを潜めたのか。
当の本人も、これから何を聞かれるのか予想が付いたようだ。
「今って体重、どのぐらいあるの?」
いつもながら、女の子に聞く内容じゃない気はしている。
今まで何度も、芽衣子の体重を測っておいてアレだけど。
今のご時世、『体重ハラスメント』なんて言われてもおかしくない。
「えー、っと。その、ちゃんと測れなくて・・・」
「え、嘘。そんな筈は」
何度か、芽衣子の体重を測れなかったこともあり。
今、ウチにある体重計はつい最近、買い替えたばかり。
「一緒に見てみても、良い?」
「はい」
僕は風呂場にある脱衣所から、最新式の体重計を持ち出して来た。
「載って、みて」
「はい」
正方形型の体重計に、芽衣子が赤ビキニのまま両足を乗せる。
「こんな、感じで・・・」
デジタル式の画面には、『***』の表示。
「あれ、おかしいな」
最初、芽衣子の足が、体重計からハミ出ているのが原因だと思った。
実際、体重計の縦幅より芽衣子の足の方が大きいのだ。
だけど、指の付け根と踵をちゃんと載せても、結果は変わらず。
「この体重計、『200』までは行ける筈なんだけどなぁ・・・」
「え、そうなんですか?」
僕と芽衣子は二人、何でだろうと悩む。
しかし、原因に思い至るのに、それ程の時間は要しなかった。
「・・・ん」
「何か、わかりました?」
僕は直ぐ様、チョチョイと体重計を弄って。
「芽衣子、乗ってみて」
「・・・良いんですか? それじゃあ」
改めて、芽衣子が体重計に乗る。
『102』
「ほら、出た」
「あ、あれ。出ましたね」
画面には、『102kg』と表示されている。
「でも、私って痩せたんでしょうか?」
「・・・え、何で」
芽衣子が突然、妙なことを言い出す。
「だって、前に測った時は『166kg』だったのに・・・」
「あー、それはね。実は・・・」
僕は、体重計の『計測モード』を切り替えていた。
実はこの体重計、体組成を算出出来る高性能な分。
限界重量が『200kg』までに制限されていた。
恐らくだけど、内部的な計算で変な結果を出さない為の配慮なんだろう。
実際、普通の一般家庭であれば、『200kg』を超える体重なんて測らない。
そこで、いわゆる『裏モード』的な感じで。
最終結果の体重数値から、特定の数値をマイナスする機能が付いているのだ。
「これ、『100』引いた数値なんだよ」
「え、それじゃあ・・・」
芽衣子が“今の身体”になった理由にさえ、目を瞑れば。
起きていた事象に、何もおかしい点はなかった。
片足で耐荷重『100kg』のハイヒールを踏み潰し。
限界重量が『200kg』までの体重計で、測定不能。
芽衣子の体重は遂に、『200』の大台を超えて。
『202kg』になっていたのだった。