SamSuka
デアカルテ
デアカルテ

fanbox


肉の日の喪女07「喪女の述懐」

私は月明かりを見上げるように、ジャージ姿で立ち尽くしていた。


夜の公園、その奥にある森の中。


「流石に、やり過ぎた・・・」

周りには、横たわる数人の男たち。

泡を吹いている者、痙攣している者。ピクリともしない者も。


「・・・よねぇ」

私は脳内で、走馬灯のように今までの人生を振り返っていた。

実は、こういった形で絡まれるのは一度や二度では無かった。


穏便に済まそうとしても、相手が許してくれず。

私自身の『恵体』が、有り余るパワーを発揮してしまい・・・。



――高校の頃。


「ねぇ、ちょっと。何、アタシの彼氏に色目使ってんのよ?」

「え、いえ。私、そんな・・・」

今思い返しても、完全に濡れ衣だった。


当時、既にメートル超えしていた私のおっぱい(Eカップ)は、衆目の的で。

同級生男子どころか、上級生の先輩にまで広まってしまい。


体育や水泳の授業だけでなく、昼休みに至るまで。

何かに付け、誰かしら見に来る始末だった。


その観衆の内の一人に、この先輩女子の彼氏が居た・・・らしい。


「私は、その。先輩たちとは、会った事もないですし・・・」

「お、おい。そうだせ、俺は別に・・・」

そう言い淀みながら、チラチラと私の胸を見ている。

男は知らないみたいだけど、女って胸元への視線は直ぐにわかるのよね。


「ちょっと! ドコ見て言ってんのよ!?」

ほら、言わんこっちゃない。火に油を注いじゃった。


「アタシに舐めた真似してくれたらどうなるか、わからせてあげる」

この先輩女子、どうやらヤンキー系だったらしく。

彼氏とは別に、数人の子分らしき男たちを連れて来ていた。


「おい、お前。何する気・・・」

「アンタは黙ってて」

高校生にして、既に尻に敷かれているようで。

大元の原因の、彼氏が黙ってしまう。


「アンタの目の前で、コイツをボロボロにしてやるのよ」

「おい! 何も、そこまでしなくても・・・」

先輩女子がキッ、と睨むと。またしても、彼氏はシュンと沈黙。


どうやら、彼氏の前で私をどうにかしてしまえば。

今後は、浮気(的な行動)をしなくなる、という算段らしい。


「おい、お前ら。言った通り、わかってるわね?」

「はい、姐さん。顔以外は、好きにさせて貰いますよ」

どうやら、大昔の不良漫画で流行った『ボディにしな』って奴らしい。


顔の傷は目立つから、服の下の身体部分なら好きに痛め付けて良い。

という加害者目線の、極めて身勝手な考え方。


「え、うそ。何で、私がそんな・・・。や、やめて・・・」

当然ながら、その時の私に今みたいな余裕がある筈もなく。

まだ“か弱い女子(のつもり)”だったので、恐怖で震えていた。


「へっ、へっ・・・」

ステレオタイプな、如何にもワルそうな男が私に近付く。


「おらぁっ」

「きゃっ」

ドムッ!と男の右フックが私の腹部に見舞われる。


「そらぁっ!」

「きゃあ」

更に、もう一発。男は女の子のお腹を、躊躇せず何発も殴った。


「くそっ。何で、倒れないんだ?」

腹を殴って、弱らせてから襲う。

というのが、コイツの常套手段らしかった。


「ちょっと! やめて、って言ってるじゃ・・・」

「おい、何を・・・っ」

何度も殴って来る男の腕が怖くて、私は根源を断とうと男の右手首を掴み。


「ないですかっ!」

ムギュリッ! ベギィッ!!


「ぐぎゃあぁぁっ!?」

小学生の時点で、体育教師の手を握り潰した私の握力は。

高校生に成長した分、更に強くなっていたのは疑いようもなく。


ただ単に握り締めただけで、男の手首の骨は意図も簡単に粉砕された。


「この野郎。何しやがったっ!?」

仲間がやられたことに火が付いたのか、別の男が殴り掛かろうと向かって来る。


「いやっ。来ないでぇ~っ!」

複数人の男に囲まれた経験のない私は、余りの恐怖に目を瞑ってしまい。

そのまま、“手首を掴んだ男”を思い切り振り回した。


「うぉっ!?」「ぶぎゃっ!!」

鈍器がわりになった男は、振り回され。何度も、何度も振り回され。


「いやぁ~! いやぁ~っ!」

高校生男子が宙を舞い飛ぶ、文字通りの人間台風。


「ぎゃっ」「うが」「きゃあっ」

先輩女子やその彼氏も含め、その場の全員を薙ぎ倒すまで、それは止まらなかった。


「・・・あ、あれ」

私が目を開けた時には、呻きながら地面に転がる上級生たち。


手首を掴んだままの男は既にグッタリしていて。

私が腕を掴んだままなので、倒れるに倒れられないで居た。


「きゃあっ」

良く知らない男を握ったままなのが怖くなり、その辺にポイッと投げ捨てた。


――その後。


何度か、お礼参りをされたけど。

来る度、来る度。“キツく”やり返して居たら。


いつの間にか、裏番長と畏(おそ)れ、敬われるようになり。

知る人ぞ知る、みたいな感じ一目置かれてしまった。


金属バットを折り曲げた、とか。

大型バイクを持ち上げた、とか。

車のドアを素手で引き剥がした、とか。

ボンネットを殴ったらタイヤが吹っ飛んだ、とか。


根も葉もない噂を流される始末。

まあ、大半は本当にヤッちゃった事なんだけども・・・。



「お嬢さん、何かお困りですかな」

「・・・っ!?」

突然、背後から声を掛けられ、ギョッとして振り返る。


「おお、っと。背後から、失礼致しました」

男と思しき黒影は、仰々しくお辞儀をした。


「あの、いつからそこに・・・」

「いえ、少し前に通り掛かりまして、ね。物音がしたものですから」

一体、いつから見られていたんだろうか。


「見ていたところ、正当防衛とお見受けしますが」

「いや、まあ・・・はい」

どう見ても、過剰防衛なのに。黒い姿の男は、そうフォローしてくれた。


「もし、何でしたら。私が“処置”しておきましょうか?」

「え、でも・・・」

突然現れた、良く知らない人は。何故か、そんな提案をして来る。


「恥かしながら、当方。この手の“荒事”に慣れていまして」

どう見ても、死屍累々な状況で。男は、そう言い切った。


「でも、どうして私にそんなことを。だって、私・・・」

パッと思い付くのは、お金目当て。単純な治療費だけでも、幾ら掛かるやら。

そこに手間賃を上乗せされたら、貯金のない私に払える訳がない。


「いえ、お金目当てではありません」

男は、私が考えている事など、お見通しと言わんばかり。


「・・・そうですね。強いて言えば、勧誘の一環でしょうか」

「勧誘・・・?」

益々、雲行きが怪しくなって来た。


「私、“こういう者”でして」

私は、恐る恐る男が差し出した名刺を受け取る。


「人材派遣・・・」

『人材派遣』と『職業斡旋』を主な業務としている会社、らしかった。


「でも、私。スキルなんて、無くて・・・。何も出来ないです」

今日付けで、無職にジョブチェンジしたばかり。いや、リタイヤ(退職)か。


「何を仰る。貴女、素晴らしい“モノ”をお持ちではないですか」

黒い男は仰々しく両手を広げて、そう言った。


相貌(ルックス)は、自己評価としては『中の中』な認識。

確かに【おっぱい】は大きいので、“夜のお店”ならやれなくもないけど。


「何か、誤解をされているようで・・・」

“女を売る”商売も否定はしないが今、勧めようとしているのは別。

男は、そう言い切った。


「自覚がない、というよりは。敢えて、気付かない振りをしてるのですかな」

「何を言って・・・」

いや、今の返答は、我ながら嘘な自覚はあった。


「貴女。一部始終、全ての行動において、“冷静”で居らっしゃる」

「そんなこと、は・・・」

・・・ある。


“これだけ”の事を、相手にしておいて。

我を忘れていたかと言えば、そんなことは“全く無く”


「私が言った“モノ”とは何も、筋力を指してだけの話ではありません」

勿論、要素としては非常に重要ですが、と補足しつつ。


“やって良い”から、と言って。誰もが“やれる”とは限らないのです」

例えば、傷害や殺人が罪に問われない、として。

相手がどうなるか慮(おもんばか)る事なく、力を振るえる人間だという事。


「そうですね。今日会ったばかりでいきなり・・・、というのもわかります」

私の戸惑いを見抜いてか、男は妥協案を提示して来た。


「もし少しでも、興味があれば。名刺の連絡先まで、ご連絡下さい」

「考えて、みます・・・」

私はそう、話すに留めた。


【肉の日】の今日、一日。


余りにも、色々とあり過ぎて。

帰って寝たい欲に駆られ、足早に帰宅したのだった。



◀前回に戻る


◀◀初回に戻る

Comments

感想、ありがとうございます。 肉の日シリーズは、29日にちなんだ短編を想定してるんですが、喪女はもう少しだけ続く予定です。

デアカルテ

おぉ!前回で終わりかと思っていましたが続編が!!しかも過去の偉業も紹介して...(キツいお仕置き、、とても気になるw)今後も彼女の活躍が見れるのでしょうか...だとしたらとても楽しみです(^^)(29の日シリーズ本当に良いですね!配信者さんの話も大変自分に刺さってましたw)

Nogi_(°Д°)


More Creators