MGガール27「高2:②実験」
Added 2024-11-14 15:00:00 +0000 UTC「何、この映像・・・」
「さぁ・・・」
当事者である筈の真理奈本人が、まさかの初見発言。
紅世宅の居間にある大型液晶テレビは今、モニタ替わりになっていて。
【腕輪】の【超技術】で、『研究所』での出来事が映し出されている。
広い空間の真ん中に、大きな円筒形の物体が置かれている。
材質は革製らしく、砂袋(サンドバッグ)のように見える。
てっきり、真理奈が出て来てパンチ力の測定でもするのかと思いきや。
ボクシンググローブを嵌めた、スキンヘッドのボクサーが現れた。
『コレ、本気デ殴ッテ良インダナ?』
ボクサーは筋骨隆々で、かなり大柄な男。体重は、恐らく100kg超え。
一番重い階級の、スーパーヘビー級だろうか。
『耐久実験ですので、全力でお願いします』
スピーカーから、研究員と思しき声でアナウンスが入る。
「なるほど」
僕は一人、合点がいった。
真理奈が使用するに値する代物なのかどうか、事前に確認しようって所か。
『ジャ、行クゼ。フッ!』
ドズンッ、と見た目も打撃音も重いパンチが炸裂。
『計測値で750kg、良いパンチです。どんどん、行って下さい』
『アァ、任セナ』
ジャブにフック。ストレートに、アッパー。
『フンッ、ハッ! ガァッ!』
ドムッ! ドゴンッ! ボガァッ!
太い腕から繰り出されるパンチはどれも、凄まじい計測値を弾き出した。
一方のサンドバッグは作りが頑丈なのか、倒れる気配はない。
『ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・』
三分を超え、数分間は打ち続けたボクサーはようやく止まった。
試合ではないのでスタミナ配分を無視した為か、息は絶え絶え。
『ナァ、オイ。“コレ”ッテ、モシカシテ・・・』
『一切の詮索は不要です。契約書にも、そう記載している筈です』
契約に厳格な土地の出身なのか、ボクサーは黙ってしまう。
『ア・・・アァ、ソウダナ。今日ノコトハ、ワスレルヨ』
そう言い残すと、肩を落としてボクサーは去って行った。
もしかすると、“他言無用”という条項もあったのだろうか。
次に入って来たのは、黒帯を着けた空手家の男だった。
『突きよりも、蹴りメインでお願いします』
「ああ、わかった」
押忍、と気合を入れると、空手家は直ぐに打ち始める。
「せいっ! はっ!」
突きと蹴りの応酬。指示通り、やや蹴りが多めといった感じ。
「やぁっ、てやぁっ!」
ボクサーと違い、裸拳なこともあってか。
“痛さ”の面では、こちらが上に見える。
「せいっやぁっ!」
渾身の蹴りは何と、1.2トンを計測した。
その後も、キックボクサーや、総合格闘家など。
技では、飛び膝蹴りや胴廻し蹴りなどが高威力を計測した。
「・・・ん? ちょっと、待って」
サンドバッグの寸法は、高さが2mちょい。
直径というか横幅は、1m少しあるぐらい。
その道のプロと思われる格闘技者たちと比べて、“一回り大きい”程度。
サンドバッグの重量も、比重もどうなってるかは不明だけど。
何で、“一度も倒れなかった”んだろう。
部屋の天井はかなり高く、上から吊り下げてはいない。
また、床から支柱が立っていて、支えているようにも見えない。
「あー、思い出した!」
「これ、知ってるの?」
真理奈は、何かに気付いた様子。
「うん。だって“これ”、“私”だもん」
「・・・え」
僕は最初、何を言ってるか理解出来なかった。
「見てて」
サンドバッグ以外、誰も居なくなった実験室に数人の職員が入って来て。
何と、サンドバッグにハサミを入れて、裂いて行った。
「っ!?」
中から出て来たのは、イヤホンをした真理奈だった。
「ほら、ね」
「え、じゃあ、ずっと・・・」
時間にして、二時間近く。真理奈はプロの打撃を貰い続けた事になる。
「音楽聴きながら、立ってるだけで良いって言われた」
「いや、それって・・・」
未成年の女の子に対して、やって良い実験じゃない気がする。
「ちゃんと事前に、“異変を感じたら言って”って言われてたよ」
「そんな・・・」
歯医者さんで良くある、『痛かったら言って』みたいに言われても・・・。
「うーん。でも、実験内容も事前に説明されてた気がするし・・・」
「え、そうなの?」
真理奈いわく、無線イヤホンを使うのが生まれて初めてで。
そっちばっかり気になって、事前説明をほとんど聞き流していたらしい。
実験の説明責任が果たされていたかどうかは一先ず、置いておくとして。
「おかしいとは、思わなかったの?」
「うーん、別に・・・。何か、“ポコポコ”動くなぁとは思ったけど」
“外革”の厚さは、ハサミで簡単に切り裂けるぐらいだった。
真理奈に衝撃が届いていなかったとは、考え難い。
「その“ポコポコ”って、身体には当たってたの?」
「うん。中は狭かったし、全部当たってたと思う」
サンドバッグの上側に空気穴は開いているものの、中は真っ暗で。
耳には、イヤホンから流れる大音量の音楽。
実際、真理奈の【活動服】に装着されていた計測装置は大半が破損。
衝撃を計測する装置が壊れるのだから、相応の力が掛かっていたことになる。
サンドバックは果たして、“どちら”を守る為のモノだったのだろうか。
身体そのものを武器とするスペシャリストたちが、入れ替わり立ち代わり。
その武器を全力で行使して尚、真理奈は全く意に介さなかった。
もし仮に、面と向かって相対していたとして。
視覚的な恐怖感から、つい反撃してしまったら・・・。
「知らない方が良い事も、あるのかな・・・」
僕は、全く無関係の男たちの心情を慮った。
続いて、画面がパッと切り替わる。
「あ、これは覚えてる」
「何、これ・・・」
先程と同じと思われる実験空間の真ん中に、今度は直方体が置かれている。
サイズ感はサンドバックと同じぐらいだけど、光沢があるので金属製だろうか。
『縦横1m、高さ2m。重さ500kgの貴女専用のサンドバッグです』
それってもう、“サンド”バッグとは言わないのでは・・・。
まあ、“サンドバッグ”自体が一般名詞で通るので、意味はわかるけど。
『お好きなように、ストレス解消して下さい』
「好きにして良いんですか? やったー」
筋肉ボディを弾ませながら、真理奈は“鋼鉄体”に取り付き。
「どっせーいっ」
むんず、と掴むといきなりブン投げてしまった。
ドッゴォォンンンッ!!!
『500kg』の超重量体は床にクレーターを作り、角が欠けてしまう。
『投げ飛ばしたりするのは、施設が壊れるので控えて下さい』
『えー。“お好きなように”って言ったのに・・・』
アナウンスに叱られた真理奈は、シュンとしてしまう。
『500kg』もの超重量を投げ飛ばすな、という注意もアレだけど。
その注意を実際に喰らってしまう少女キングコング、真理奈。
『はーい・・・わかりましたぁ』
真理奈は、角が欠けた“鋼鉄体”軽々と持ち上げ、元の位置に戻す。
『じゃあ、気を取り直して・・・んっ』
気合を籠めて右拳を握り、一気に殴り付ける。
ドゴォンッ!
『やぁっ』
ゴガンッ!!
『えいっ』
今度は、蹴りを放つ。
ズガンッッ!!!
「真理奈。これ、素手に素足だよね?」
「ん? そ、だよ」
真理奈は、何故そんな事を聞くんだろう、な反応。
どう見てもグローブは嵌めてないし、靴も履いていない。
いわゆる、徒手空拳でどんどん、鋼鉄を変形させて行く。
「これ、痛くないの?」
「うん、全然」
真理奈は、平然とそう言ってのけた。
恐らくは人間一人分プラスアルファの体積を想定した、特大サイズの鋼鉄体。
その硬い筈の胴体に、拳大のクレーターが増えて行く。
『えぃやっ』
可愛らしい掛け声とは裏腹な、真理奈の剛脚による横蹴り。
『500kg』の鉄塊の脇腹に、メートル超えの太腿が横から減り込むと。
グニャリ。
と丁度、“腰”の辺りで“中折れ”したかのように二つ折りになってしまう。
『これだと低いから殴り難いなぁ。・・・なら』
真理奈は少しだけ屈むと、『∩字』になった鋼鉄体を抱き抱え。
『んっ・・・』
“厚さ”的には2m分はある筈の鋼鉄を、構わず抱き締める。
メリ・・・メギョッ、グゴッ!
『・・・んぅ』
鋼鉄の塊はベアハッグに負け、徐々に厚みを失って行く。
ギュ、グゴゴゴッ。
『ふぅ』
物の数秒で、真理奈の両腕は完全に閉じてしまった。
「・・・・・」
僕は今まさに、僕を抱いている真理奈の腕を見る。
力を加減されていて尚、僕には微動だに出来ない剛腕。
これがもし、何かの拍子で間違って閉じられれば。
僕の胴体は、記録映像の鋼鉄体と同じ運命を辿るだろう。
鋼鉄の肉体、なんて表現をすることはあるけれど。
真理奈は文字通り、鋼鉄以上の超肉体。
「銃弾にも耐えられそう・・・なんて」
「えー、どうだろう・・・ね」
鋼鉄だから銃弾にも、なんて安易な発言に対し。
真理奈は何処か、微妙な反応。
また、画面がパッと切り替わる。
「今度は、真理奈だけ?」
「うん。そう、だね」
今まで何かしら置かれていた部屋の中心に、真理奈が立っている。
「でも、この格好・・・」
身に纏っているのは、今も身に着けている競泳水着タイプの【活動服】。
しかし、頭部はフェイスシールドのような物を被っている。
キュラ、キュラ、キュラ・・・
「何、これ」
部屋の扉から、大きな機械が“自走”しながら入って来る。
「『実験用砲台』って言うんだって。自走砲を小型化した特別製らしいけど」
真理奈は、そう解説した。
「砲台って、そんな簡単に言うけど・・・」
ミリタリーマニアじゃないけど、聞いた事ぐらいはある。
自走砲とは、つまりは戦車の小型版のような物で。
幾ら、その自走砲を更に小型化したとはいえ、砲台に間違いなく。
これは自動火器であり、紛うことのない“兵器”だということ。
「真理奈。これからやるのって・・・うぎぃ」
僕の脇腹を抑える真理奈の力瘤が数ミリ、モコッと盛り上がる。
でも、たったそれだけで肋骨に圧力が掛かり、ミシッと軋む。
「健ちゃん、“これから”じゃないよ。もう、“済んだ事”」
【腕輪】がモニタに投映しているのは、あくまで記録映像。
これから起こる話ではなく、既に終わった過去の映像。
「心配してくれるのは、嬉しいんだけどね」
真理奈に諭され、僕は仕方なくモニタに視線を戻す。
ボディアーマー(防御鎧)を着込んだ所員が、慎重に準備して行く。
かなり厳重に管理されていた弾丸を設置すると、部屋から出て行った。
『くれぐれも、今の位置から動かないで下さい』
『はい、わかりました』
砲塔の口径は小さく見えるが、砲台と真理奈の距離は三メートルほど。
『では、始めます』
パン、パン、パンッ!
パン、パン、バンッ。
映画やドラマで聞いた事がある、乾いた銃声。
『どうですか』
『何とも、ないです』
【活動服】のお腹あたりに、薄く黒ずんだ汚れが見える。
砲台は、数発の弾丸を的確に、真理奈のお腹目掛けて命中させていた。
「これ、ペイント弾とかじゃないんだよね?」
「うん。今のは、拳銃と同じ弾丸らしいよ」
真理奈のお腹に着弾したと思しき弾丸が、床に転がっている。
弾頭がグニャッと潰れていて、言葉通り金属製であることを示している。
『では、二段階目に入ります』
『【活動服】を簡易版に切り替えて』
アナウンスを受け、真理奈が【腕輪】に指示。
すると、【活動服】がいつの間にか、セパレートタイプに変化していた。
「これ、タンキニって言うんだって」
ビキニ水着のトップスがタンクトップ型なのを、『タンキニ』と総称するらしい。
タンクトップとビキニを合体させて、『タンキニ』という訳だ。
「え、でも。これって・・・」
当たり前だけど、タンクトップとビキニを合わせても、ワンピースにはならない。
競泳水着タイプだった通常版と比べて、布面積が減っている。
夏の海辺で着る水着とは、違う。
実験とは言え、銃火器を前にして布面積を減らす意味が何処にあるのか。
「健ちゃん。まあ、見てて」
僕がツッコミを入れるより早く、真理奈の制止が入る。
『では、行きます』
パン、パン、パンッ。パン、パン、バンッ。
『どうですか』
『ん-、何とも・・・ないです?』
真理奈は、小首を傾げている。
カラン、カラカランッ。
大きく弾き返された鉛玉が、床に乾いた音を立てる。
「これ、何で疑問形なの」
「えー、だって・・・」
真理奈のバストサイズは、『141cm』の『Iカップ』。
乳房を半球と捉えるなら、真理奈の胸はハンドボール級なのだ。
「鏡がないと、お腹が見えないんだもの」
巨乳あるあるらしいのだが、豊満な胸を持つ女性は自前でお腹が見えない。
「いや、でも。拳銃の弾だよ?」
「うーん。イメージとしては、お菓子の“食べカス”かなぁ」
何と驚くことに、真理奈は銃弾をお菓子の“食べカス”と表現。
スナック菓子をポリポリと食べて、パラパラと食べカスが落ちる。
その食べカスが身体に付着した時の感触に近い、と言っているのだ。
一般的な人間であれば、どれだけ腹筋を鍛え上げようと。
拳銃でお腹を撃たれたら、普通に風穴が開く。
『次は、事前に指定した通りにお願いします』
『はーい』
所員から指示を受けた真理奈は、肩の高さで右腕を折り曲げ。
モゴォッ、と大玉スイカな力瘤を盛り上げる。
「これは、何してるの」
「“次の”は、お腹だと危険だからって言われた」
お腹でもし何か不測の事態があれば、内臓を損傷してしまう。
勿論、直ぐに動けるよう医療班が常駐しているらしいが、万が一がある。
最初の銃弾でそうしなかったのは、事前の耐久力チェックで問題ないとの判断。
この後の“弾丸”も計算上は問題ないが、万が一の確率が少し上がるとのこと。
『では、行きます』
パァンッ!という爆発にも似た炸裂音。
今までの連射ではなく、単発だが高威力を思わせる衝撃。
ゴンッ、という硬い物同士がブツかった鈍い音が辺りに響く。
発射した瞬間は全くわからず、いきなり真理奈の上腕に弾丸が当たり。
そのまま空中高く打ち上げられた、ように僕には見えた。
『どうですか』
『何か、ゴムで押された感じです』
勿論、ゴム弾ではないのは、明白だった。
床には、弾頭が潰れていて尚、細長い弾丸が転がっている。
『では、次で最後です』
『はぁい』
バァンッ!!という、今まで一番大きな発射音。
『痛っ』
ゴンッ、という着弾音は変わらずだが、初めて真理奈が痛みを訴えた。
『大丈夫ですか?』
『えー、っと。大丈夫、です』
真理奈の上腕には、“赤痣”が出来ていた。
痣、つまりは内出血。
「これ、痛かったんだよ」
そうは言うものの、僕をガッチリ固定する両腕に傷跡は見当たらない。
真理奈が言う通り、本当に“済んだ事”なんだろう・・・。
「何の弾丸だったの?」
「えーっと、最初が拳銃の弾丸でしょ」
真理奈が、右手の指を折りながら数え始める。
「その次が、“ライフル弾”でぇ。最後が、“徹甲弾”だって」
「ライフル弾? 徹甲弾!?」
後から調べてわかった事だけど。
ライフル弾は、拳銃の弾丸の二倍。徹甲弾については、四倍の威力があるらしい。
「いや、でも・・・徹甲弾って」
アーマーピアッシング。鎧通し。
装甲を貫通させる事に重きを置いた、特殊弾頭。
「それ、ホントに“痛い”だけで済んだの?」
弾丸を設置していた所員が着ていた、ボディアーマー。
徹甲弾は、そのボディアーマーすら貫くという。
「うん。ぶっとい注射器で突かれた、みたいな感触だった」
対人用の弾丸では、最早まともに傷が付かないってことなのか・・・。
「でも、何でこんな危険な実験・・・」
幾ら、真理奈が超肉体の持ち主でも、女子高生にやって良い実験じゃない。
「それについては今度、星さんが説明してくれるって」
実験については元々、星さんから特に口止めされていなかったらしい。
Comments
誰も描かない物語こそ、自分で書いてみたいと思った次第です。まあ、かなり特殊な趣味嗜好だとは思いますが・・・
デアカルテ
2024-11-28 08:54:20 +0000 UTCなぜこのような個性的な話を書こうと思ったのですか?
ゼネガル
2024-11-22 07:08:05 +0000 UTC