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MGガール27「高2:②実験」

「何、この映像・・・」

「さぁ・・・」

当事者である筈の真理奈本人が、まさかの初見発言。


紅世宅の居間にある大型液晶テレビは今、モニタ替わりになっていて。

【腕輪】の【超技術】で、『研究所』での出来事が映し出されている。



広い空間の真ん中に、大きな円筒形の物体が置かれている。

材質は革製らしく、砂袋(サンドバッグ)のように見える。


てっきり、真理奈が出て来てパンチ力の測定でもするのかと思いきや。

ボクシンググローブを嵌めた、スキンヘッドのボクサーが現れた。


『コレ、本気デ殴ッテ良インダナ?』

ボクサーは筋骨隆々で、かなり大柄な男。体重は、恐らく100kg超え。

一番重い階級の、スーパーヘビー級だろうか。


『耐久実験ですので、全力でお願いします』

スピーカーから、研究員と思しき声でアナウンスが入る。


「なるほど」

僕は一人、合点がいった。

真理奈が使用するに値する代物なのかどうか、事前に確認しようって所か。


『ジャ、行クゼ。フッ!』

ドズンッ、と見た目も打撃音も重いパンチが炸裂。


『計測値で750kg、良いパンチです。どんどん、行って下さい』

『アァ、任セナ』

ジャブにフック。ストレートに、アッパー。


『フンッ、ハッ! ガァッ!』

ドムッ! ドゴンッ! ボガァッ!


太い腕から繰り出されるパンチはどれも、凄まじい計測値を弾き出した。

一方のサンドバッグは作りが頑丈なのか、倒れる気配はない。


『ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・』

三分を超え、数分間は打ち続けたボクサーはようやく止まった。

試合ではないのでスタミナ配分を無視した為か、息は絶え絶え。


『ナァ、オイ。“コレ”ッテ、モシカシテ・・・』

『一切の詮索は不要です。契約書にも、そう記載している筈です』

契約に厳格な土地の出身なのか、ボクサーは黙ってしまう。


『ア・・・アァ、ソウダナ。今日ノコトハ、ワスレルヨ』

そう言い残すと、肩を落としてボクサーは去って行った。

もしかすると、“他言無用”という条項もあったのだろうか。



次に入って来たのは、黒帯を着けた空手家の男だった。


『突きよりも、蹴りメインでお願いします』

「ああ、わかった」

押忍、と気合を入れると、空手家は直ぐに打ち始める。


「せいっ! はっ!」

突きと蹴りの応酬。指示通り、やや蹴りが多めといった感じ。


「やぁっ、てやぁっ!」

ボクサーと違い、裸拳なこともあってか。

“痛さ”の面では、こちらが上に見える。


「せいっやぁっ!」

渾身の蹴りは何と、1.2トンを計測した。


その後も、キックボクサーや、総合格闘家など。

技では、飛び膝蹴りや胴廻し蹴りなどが高威力を計測した。


「・・・ん? ちょっと、待って」

サンドバッグの寸法は、高さが2mちょい。

直径というか横幅は、1m少しあるぐらい。


その道のプロと思われる格闘技者たちと比べて、“一回り大きい”程度。

サンドバッグの重量も、比重もどうなってるかは不明だけど。


何で、“一度も倒れなかった”んだろう。


部屋の天井はかなり高く、上から吊り下げてはいない。

また、床から支柱が立っていて、支えているようにも見えない。


「あー、思い出した!」

「これ、知ってるの?」

真理奈は、何かに気付いた様子。


「うん。だって“これ”、“私”だもん」

「・・・え」

僕は最初、何を言ってるか理解出来なかった。


「見てて」

サンドバッグ以外、誰も居なくなった実験室に数人の職員が入って来て。

何と、サンドバッグにハサミを入れて、裂いて行った。


「っ!?」

中から出て来たのは、イヤホンをした真理奈だった。


「ほら、ね」

「え、じゃあ、ずっと・・・」

時間にして、二時間近く。真理奈はプロの打撃を貰い続けた事になる。


「音楽聴きながら、立ってるだけで良いって言われた」

「いや、それって・・・」

未成年の女の子に対して、やって良い実験じゃない気がする。


「ちゃんと事前に、“異変を感じたら言って”って言われてたよ」

「そんな・・・」

歯医者さんで良くある、『痛かったら言って』みたいに言われても・・・。


「うーん。でも、実験内容も事前に説明されてた気がするし・・・」

「え、そうなの?」

真理奈いわく、無線イヤホンを使うのが生まれて初めてで。

そっちばっかり気になって、事前説明をほとんど聞き流していたらしい。


実験の説明責任が果たされていたかどうかは一先ず、置いておくとして。


「おかしいとは、思わなかったの?」

「うーん、別に・・・。何か、“ポコポコ”動くなぁとは思ったけど」

“外革”の厚さは、ハサミで簡単に切り裂けるぐらいだった。

真理奈に衝撃が届いていなかったとは、考え難い。


「その“ポコポコ”って、身体には当たってたの?」

「うん。中は狭かったし、全部当たってたと思う」

サンドバッグの上側に空気穴は開いているものの、中は真っ暗で。

耳には、イヤホンから流れる大音量の音楽。


実際、真理奈の【活動服】に装着されていた計測装置は大半が破損。

衝撃を計測する装置が壊れるのだから、相応の力が掛かっていたことになる。


サンドバックは果たして、“どちら”を守る為のモノだったのだろうか。


身体そのものを武器とするスペシャリストたちが、入れ替わり立ち代わり。

その武器を全力で行使して尚、真理奈は全く意に介さなかった。


もし仮に、面と向かって相対していたとして。

視覚的な恐怖感から、つい反撃してしまったら・・・。


「知らない方が良い事も、あるのかな・・・」

僕は、全く無関係の男たちの心情を慮った。



続いて、画面がパッと切り替わる。


「あ、これは覚えてる」

「何、これ・・・」

先程と同じと思われる実験空間の真ん中に、今度は直方体が置かれている。

サイズ感はサンドバックと同じぐらいだけど、光沢があるので金属製だろうか。


『縦横1m、高さ2m。重さ500kgの貴女専用のサンドバッグです』

それってもう、“サンド”バッグとは言わないのでは・・・。

まあ、“サンドバッグ”自体が一般名詞で通るので、意味はわかるけど。


『お好きなように、ストレス解消して下さい』

「好きにして良いんですか? やったー」

筋肉ボディを弾ませながら、真理奈は“鋼鉄体”に取り付き。


「どっせーいっ」

むんず、と掴むといきなりブン投げてしまった。


ドッゴォォンンンッ!!!


『500kg』の超重量体は床にクレーターを作り、角が欠けてしまう。


『投げ飛ばしたりするのは、施設が壊れるので控えて下さい』

『えー。“お好きなように”って言ったのに・・・』

アナウンスに叱られた真理奈は、シュンとしてしまう。


『500kg』もの超重量を投げ飛ばすな、という注意もアレだけど。

その注意を実際に喰らってしまう少女キングコング、真理奈。


『はーい・・・わかりましたぁ』

真理奈は、角が欠けた“鋼鉄体”軽々と持ち上げ、元の位置に戻す。


『じゃあ、気を取り直して・・・んっ』

気合を籠めて右拳を握り、一気に殴り付ける。


ドゴォンッ!


『やぁっ』

ゴガンッ!!


『えいっ』

今度は、蹴りを放つ。


ズガンッッ!!!


「真理奈。これ、素手に素足だよね?」

「ん? そ、だよ」

真理奈は、何故そんな事を聞くんだろう、な反応。


どう見てもグローブは嵌めてないし、靴も履いていない。

いわゆる、徒手空拳でどんどん、鋼鉄を変形させて行く。


「これ、痛くないの?」

「うん、全然」

真理奈は、平然とそう言ってのけた。


恐らくは人間一人分プラスアルファの体積を想定した、特大サイズの鋼鉄体。

その硬い筈の胴体に、拳大のクレーターが増えて行く。


『えぃやっ』

可愛らしい掛け声とは裏腹な、真理奈の剛脚による横蹴り。

『500kg』の鉄塊の脇腹に、メートル超えの太腿が横から減り込むと。


グニャリ。


と丁度、“腰”の辺りで“中折れ”したかのように二つ折りになってしまう。


『これだと低いから殴り難いなぁ。・・・なら』

真理奈は少しだけ屈むと、『∩字』になった鋼鉄体を抱き抱え。


『んっ・・・』

“厚さ”的には2m分はある筈の鋼鉄を、構わず抱き締める。


メリ・・・メギョッ、グゴッ!


『・・・んぅ』

鋼鉄の塊はベアハッグに負け、徐々に厚みを失って行く。


ギュ、グゴゴゴッ。


『ふぅ』

物の数秒で、真理奈の両腕は完全に閉じてしまった。


「・・・・・」

僕は今まさに、僕を抱いている真理奈の腕を見る。

力を加減されていて尚、僕には微動だに出来ない剛腕。


これがもし、何かの拍子で間違って閉じられれば。

僕の胴体は、記録映像の鋼鉄体と同じ運命を辿るだろう。


鋼鉄の肉体、なんて表現をすることはあるけれど。

真理奈は文字通り、鋼鉄以上の超肉体。


「銃弾にも耐えられそう・・・なんて」

「えー、どうだろう・・・ね」

鋼鉄だから銃弾にも、なんて安易な発言に対し。

真理奈は何処か、微妙な反応。



また、画面がパッと切り替わる。


「今度は、真理奈だけ?」

「うん。そう、だね」

今まで何かしら置かれていた部屋の中心に、真理奈が立っている。


「でも、この格好・・・」

身に纏っているのは、今も身に着けている競泳水着タイプの【活動服】。

しかし、頭部はフェイスシールドのような物を被っている。


キュラ、キュラ、キュラ・・・


「何、これ」

部屋の扉から、大きな機械が“自走”しながら入って来る。


「『実験用砲台』って言うんだって。自走砲を小型化した特別製らしいけど」

真理奈は、そう解説した。


「砲台って、そんな簡単に言うけど・・・」

ミリタリーマニアじゃないけど、聞いた事ぐらいはある。


自走砲とは、つまりは戦車の小型版のような物で。

幾ら、その自走砲を更に小型化したとはいえ、砲台に間違いなく。


これは自動火器であり、紛うことのない“兵器”だということ。


「真理奈。これからやるのって・・・うぎぃ」

僕の脇腹を抑える真理奈の力瘤が数ミリ、モコッと盛り上がる。

でも、たったそれだけで肋骨に圧力が掛かり、ミシッと軋む。


「健ちゃん、“これから”じゃないよ。もう、“済んだ事”」

【腕輪】がモニタに投映しているのは、あくまで記録映像。

これから起こる話ではなく、既に終わった過去の映像。


「心配してくれるのは、嬉しいんだけどね」

真理奈に諭され、僕は仕方なくモニタに視線を戻す。


ボディアーマー(防御鎧)を着込んだ所員が、慎重に準備して行く。

かなり厳重に管理されていた弾丸を設置すると、部屋から出て行った。


『くれぐれも、今の位置から動かないで下さい』

『はい、わかりました』

砲塔の口径は小さく見えるが、砲台と真理奈の距離は三メートルほど。


『では、始めます』

パン、パン、パンッ!


パン、パン、バンッ。


映画やドラマで聞いた事がある、乾いた銃声。


『どうですか』

『何とも、ないです』

【活動服】のお腹あたりに、薄く黒ずんだ汚れが見える。

砲台は、数発の弾丸を的確に、真理奈のお腹目掛けて命中させていた。


「これ、ペイント弾とかじゃないんだよね?」

「うん。今のは、拳銃と同じ弾丸らしいよ」

真理奈のお腹に着弾したと思しき弾丸が、床に転がっている。

弾頭がグニャッと潰れていて、言葉通り金属製であることを示している。


『では、二段階目に入ります』

『【活動服】を簡易版に切り替えて』

アナウンスを受け、真理奈が【腕輪】に指示。

すると、【活動服】がいつの間にか、セパレートタイプに変化していた。


「これ、タンキニって言うんだって」

ビキニ水着のトップスがタンクトップ型なのを、『タンキニ』と総称するらしい。

タンクトップとビキニを合体させて、『タンキニ』という訳だ。


「え、でも。これって・・・」

当たり前だけど、タンクトップとビキニを合わせても、ワンピースにはならない。

競泳水着タイプだった通常版と比べて、布面積が減っている。


夏の海辺で着る水着とは、違う。

実験とは言え、銃火器を前にして布面積を減らす意味が何処にあるのか。


「健ちゃん。まあ、見てて」

僕がツッコミを入れるより早く、真理奈の制止が入る。


『では、行きます』

パン、パン、パンッ。パン、パン、バンッ。


『どうですか』

『ん-、何とも・・・ないです?』

真理奈は、小首を傾げている。


カラン、カラカランッ。


大きく弾き返された鉛玉が、床に乾いた音を立てる。


「これ、何で疑問形なの」

「えー、だって・・・」

真理奈のバストサイズは、『141cm』の『Iカップ』。

乳房を半球と捉えるなら、真理奈の胸はハンドボール級なのだ。


「鏡がないと、お腹が見えないんだもの」

巨乳あるあるらしいのだが、豊満な胸を持つ女性は自前でお腹が見えない。


「いや、でも。拳銃の弾だよ?」

「うーん。イメージとしては、お菓子の“食べカス”かなぁ」

何と驚くことに、真理奈は銃弾をお菓子の“食べカス”と表現。


スナック菓子をポリポリと食べて、パラパラと食べカスが落ちる。

その食べカスが身体に付着した時の感触に近い、と言っているのだ。


一般的な人間であれば、どれだけ腹筋を鍛え上げようと。

拳銃でお腹を撃たれたら、普通に風穴が開く。


『次は、事前に指定した通りにお願いします』

『はーい』

所員から指示を受けた真理奈は、肩の高さで右腕を折り曲げ。

モゴォッ、と大玉スイカな力瘤を盛り上げる。


「これは、何してるの」

「“次の”は、お腹だと危険だからって言われた」

お腹でもし何か不測の事態があれば、内臓を損傷してしまう。

勿論、直ぐに動けるよう医療班が常駐しているらしいが、万が一がある。


最初の銃弾でそうしなかったのは、事前の耐久力チェックで問題ないとの判断。

この後の“弾丸”も計算上は問題ないが、万が一の確率が少し上がるとのこと。


『では、行きます』

パァンッ!という爆発にも似た炸裂音。

今までの連射ではなく、単発だが高威力を思わせる衝撃。


ゴンッ、という硬い物同士がブツかった鈍い音が辺りに響く。


発射した瞬間は全くわからず、いきなり真理奈の上腕に弾丸が当たり。

そのまま空中高く打ち上げられた、ように僕には見えた。


『どうですか』

『何か、ゴムで押された感じです』

勿論、ゴム弾ではないのは、明白だった。

床には、弾頭が潰れていて尚、細長い弾丸が転がっている。


『では、次で最後です』

『はぁい』

バァンッ!!という、今まで一番大きな発射音。


『痛っ』

ゴンッ、という着弾音は変わらずだが、初めて真理奈が痛みを訴えた。


『大丈夫ですか?』

『えー、っと。大丈夫、です』

真理奈の上腕には、“赤痣”が出来ていた。


痣、つまりは内出血。


「これ、痛かったんだよ」

そうは言うものの、僕をガッチリ固定する両腕に傷跡は見当たらない。

真理奈が言う通り、本当に“済んだ事”なんだろう・・・。


「何の弾丸だったの?」

「えーっと、最初が拳銃の弾丸でしょ」

真理奈が、右手の指を折りながら数え始める。


「その次が、“ライフル弾”でぇ。最後が、“徹甲弾”だって」

「ライフル弾? 徹甲弾!?」

後から調べてわかった事だけど。

ライフル弾は、拳銃の弾丸の二倍。徹甲弾については、四倍の威力があるらしい。


「いや、でも・・・徹甲弾って」

アーマーピアッシング。鎧通し。

装甲を貫通させる事に重きを置いた、特殊弾頭。


「それ、ホントに“痛い”だけで済んだの?」

弾丸を設置していた所員が着ていた、ボディアーマー。

徹甲弾は、そのボディアーマーすら貫くという。


「うん。ぶっとい注射器で突かれた、みたいな感触だった」

対人用の弾丸では、最早まともに傷が付かないってことなのか・・・。


「でも、何でこんな危険な実験・・・」

幾ら、真理奈が超肉体の持ち主でも、女子高生にやって良い実験じゃない。


「それについては今度、星さんが説明してくれるって」

実験については元々、星さんから特に口止めされていなかったらしい。

Comments

誰も描かない物語こそ、自分で書いてみたいと思った次第です。まあ、かなり特殊な趣味嗜好だとは思いますが・・・

デアカルテ

なぜこのような個性的な話を書こうと思ったのですか?

ゼネガル


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