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魔女狩り06「王様」


「ん~、何じゃ」

執務室と思しき部屋の奥に居る初老の男が、気怠そうに反応した。


簡素だが、質素ではなく着整えられた服装。

部屋の調度品も、数は多くないが豪奢が物ばかり並んでいる。


「王様、大変です!」

「だから、何じゃと言っておる」

従者と思われる男がスッと跪き、傅(かしず)く。

この男こそが十六代に渡り、この国を統治している国家元首その人だった。


「賊が! 城内に、賊が侵入しております」

「何じゃと。衛兵・・・いや、門番は何をしておる」

王様は、変わらず書類仕事を続けている。目線も従者に向けもしていない。


「どうせ、旅の物盗りか、敵国の間者であろう」

稀ではあるが、これまでも幾度か城内への侵入者は経験しているようで。


「物盗りならば、牢にぶち込め。間者なら、拷問すればよい」

今更何を報告に来たのだ、と言わんばかり。


「いえ、それが・・・“巨大な女”が『王を出せ』と」

「何じゃ、それは」

従者の報告を聞く限り、只の気が触れた闖入者としか思えない。


「女は、『サーラ』と名乗っております」

「なん・・・じゃと・・・」

流石の王様も、その名を聞くと手が止まった。


「それは、金髪の女がそう名乗った・・・のか?」

「は、はい!」

従者の首肯を確認するまでもなく、王様は立ち上がり。


「直ぐに、衛兵部隊を招集させぃ」

部屋の隅に立て掛けてあった、護身用の槍を手に取る。


「いえ、それが・・・あっ、王様! 出られては危険です」

従者が続ける言葉を最後まで聞かず、王様は執務室を出て行く。


「な、な・・・何じゃ、これは・・・」

広い城内の廊下は、逃げ惑う従者たちで溢れ返っていた。


「うわぁ・・・ばけものーっ」

「きゃあー、人殺しー」

「このぉっ・・・ぐ。ぐぁ・・・ぎゃあっ!!」

逃げる者の悲鳴に交じり、衛兵の断末魔が聞こえる。


「ま、まさか・・・」

王様は、王広間に続く廊下を歩く。


「ぎゃー!」

「ぐぎゃっ!」

複数の断末魔が、ほぼ同時に聞こえて来る。


「・・・っ」

王様は息を殺し、気配を消しながら廊下の角から大広間を覗き込む。


「・・・ふぅ。折角、本当の姿を見せてあげたのに」

筋骨隆々の広い背中に垂れ下がる、長い金髪の女。


鎧を着込んだ衛兵を軽々と持ち上げる二の腕は、衛兵たちの太腿ぐらいはありそうな巨大な力瘤は盛り上がり。

何故か、胸と腰を覆う肌着だけの半裸な身体を支える脚は、それこそ衛兵の胴体ぐらいはありそうな剛脚。


「物足りないと、思わないかしら。・・・ねぇ?」

そう言って、廊下の角に向けて。

振り向いた顔は絶世の美女を思わせる風貌だった。


「ひ、ひぃっ!?」

南国の果実を思わせる爆乳に、深く刻み込まれた腹筋。

しかし、それで居てキュッと縊れた腰は、紛れもない美女の肢体だった。


「あら。この私の美しい身体を見て、その反応は頂けないわ」

静かな怒りをぶつけるように、両手で持ち上げていた衛兵二人を。

王様に見せつけるように、顔の前でグシャッとドッキングさせた。


鎧を着た二人の人間が、ホンの一瞬で“一人分の厚さ”に圧縮されてしまったのだ。


「王様っ! お逃げ下さいっ!」

「王様、早くっ!」

実は、王様が指示するよりも早く、衛兵隊は直ぐに賊を排除すべく動いていた。

しかし、それでいて、この惨状なのだ。


「このぉ、忌まわしい魔女めぇ」

手に携えた長剣を、無駄のない所作で袈裟懸けに斬り付ける。


ガィンッ!


「なぁっ!?」

およそ、鋼鉄製の剣を人体に打ち付けたとは思えないような、音。


「ホンッと、馬鹿の一つ覚えなのかしら」

サーラは既に、何度も剣や槍の攻撃を受けていた。

現に来ていたローブは斬られ突かれたせいで、散り散りになってしまっている。


「このぉっ!!」

如何に、見上げるような巨女相手とはいえ、たった一人の女相手に。

衛兵は躊躇いなく、背後から槍を突き立てた。


グギィンッ。


「そんな、馬鹿なっ!?」

しかし、やはりサーラの肢体に、刃は通らなかった。


「『館』や、“この姿”を見た者を消して来たのは、逆効果だったのかしら」

サーラに襲い掛かった者は皆、その筋肉美体に攻撃が通用しなかったのは体感した。

しかし、サーラは相対した者を全て、屠って来ても居たのだ。


「ねぇ、王様。どう、思うかしら?」

「ひぃぃぃっ!?」

王様に見せ付けるように、近くに居た衛兵や従者“数人”を抱き上げ。

メキメキ・・・と、締め上げて行く。


「う、ぎ・・・ぃ」「ぐぅ、ぇ・・・」「が、ぁ・・・」

ただただ逃げようとする、非武装の従者。

身体に剛腕が食い込んで行く前に、脱出しようと手にした武器を突き立てる衛兵。


メギメギ・・・メギャッ。


「・・・ふふ♪」

そんな抵抗を、只の反応として愉しむかのように、サーラから薄い笑みが零れる。


メギギギ、バギャァッ!!


「「「%$#)(%(#($)#”」」」

数人の男たちの断末魔と共に、サーラの腕の中で人体の二つ折りが出来上がった。


「あら。逃げずに留まっていたのね、偉いわ」

大広間への廊下の角で、王様はヘタり込んでいた。


「もし逃げていたら、追い掛けた次いでに勢い余って殺しちゃってたかも♪」

妖しく微笑む様は、やはり魔女のそれだった。


「・・・それとも。私と追い掛けっこ、したい?」

「~~~っ!」

王様はブンブンッと、高速で首を横に振った。


「この有様を見ても、気が触れないのは流石は王様、って所かしら」

サーラは、死屍累々となった王広間を見て、そう言った。

十数人・・・どころではない、四五十人“分”は有ろうかという、死体の山。


「今日は、ね。お願いに来たの」

「・・・へ、願い?」

ここまでやっておいて今更、何を願おうと言うのだろうか。


「『館』も含めて・・・私の事、そっとしておいて欲しいの」

「それは、不可侵ということ・・・か?」

この状況で尚、魔女サーラに対して対等な口が利けるのは、やはり王たる所以か。


「不可侵というよりは、禁忌って感じかしら」

それは、つまり。


「もし、それを破れば・・・」

諍いを含めた武力衝突をしない、という意味ではなく。

アンタッチャブル。物理的に触れないだけでなく、言葉にすらしないということ。


「あら。まだ、わかってないようね」

「ひぃっ!?」

這いつくばって、その場から命からがら逃げようとしていた従者を掴み上げ。


「“こう”、しちゃうわよ?」

従者の脚を掴んだまま、大理石が敷き詰められた大広間の床に叩き付ける。


バァアンッッッ!!!


「っ!!?」

サーラと王様の間に、人間サイズの大きな血溜まりが出来上がった。


「また、魔女が“狩り”に来るわ」

「わ、わかった。や、約束しよう」

魔女を狩ろうとした結果。

逆に、魔女の狩られ掛けた。


もし、そう隣国に広まれば。平和な世は終わりを告げ。

あっという間に、戦乱の世に逆戻りだろう。


「約束したこと。決して、お忘れなきよう」

筋骨隆々の魔女がスタスタと歩いて城を後にする間、王様は只の一歩も動くことは出来なかった。


Comments

感想ありがとうございます。 当方のミスで過去話と同じ内容を上げてしまっており、申し訳ありません。上げ直しましたので、お楽しみ頂ければ幸いです。

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魔女狩り!とても好きなシリーズです(^^) 更新ありがとうございます!!

Nogi_(°Д°)


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