「・・・77cm、か」
私は自分の部屋で、そう独り言を呟いた。
自身の身体に、“何とか頑張って”巻き尺を這わせた測定結果。
うら若き女子高生の身体にしては、似つかわしくないサイズ。
“何も無かった頃”の私だったら、バストとヒップがそのぐらいだった。
“今の私”だと、他に近いサイズを探すのであれば、『ウェスト(79cm)』辺り。
クラスメイト男子の胸囲がだいたい、『82~84cm』ぐらい。
そんな『男子の胸周り』にニアなサイズが、私の今の『上腕』だった。
力を抜いてダランと伸ばした、筋肉が弛緩した状態の二の腕が、だ。
「いつから、出来なくなったんだっけか」
私は、『気を付け』姿勢が出来ない。
立った状態で腕を伸ばす・・・というよりは、『ハの字』型に“垂らす”感じ。
極限まで力を抜いて尚、スイカのように膨らむ腕が腋に突っかえてしまうのだ。
「・・・・・」
とっくの昔に、姿見鏡に全身は映らなくなっていた。
とはいえ、『ハの字』姿勢が不格好なのは自覚していて。
「ん、っしょ・・・」
せめて、両腕を『くの字』にして両手を腰に付けようとする・・・も。
グググ・・・モリッ。
「ん・・・く、あぁっ」
ホンの少し意識するだけで、大玉スイカ一個半な力瘤が盛り上がる。
モリリッ、モゴォッ。
「え・・・う、っそ」
腰に、“手が届かない”。
前腕の長さより、肘から腰までの距離が遠くなってしまい、届かないのだ。
「・・・ん、っしょ。ふぅ」
結局、小一時間ほど格闘した結果。
上腕二頭筋が前を向くように保持しつつ、手首だけを返す形で何とか腰を持つ事が出来た。
「何、やってんだろ。私・・・」
変形『ラットスプレッド・フロント』姿勢で、そう独り言ちた。
改めて自身を振り返るまでもなく、我ながら凄まじい身体サイズの数々。
身に着けているのは、下(ショーツ)一枚のみ。
ほぼ、一糸纏わぬと言っても過言ではない状態。
今まで幾度となくお世話になっている、高さ『150cm』な姿見用の立鏡。
いつもながら、お腹から下しか映っていない。
とはいえ、私は多分もう永遠に、自分自身でお腹を見る事は叶わない。
『Kカップ』爆乳が、前方へドンと突き出すように鎮座しているからだ。
『男子の胸周り』とほぼ同じウェストだけど、肥満的な太さは全く無く。
シルエット的には、凄くキュッと縊れている。
「えい」
私は、人差し指を自分のお腹目掛けて、突き刺してみる。
ズボォ。
「う、っそ。入っちゃった」
右手人差し指が、第一関節までズッポリと入ってしまった。
いや、“埋まった”という方が正しいかも。
これも、かなり前からだけど。
私のお腹は、普通の腹筋ではなくなっていた。
良く言う、『割れる』と称する六分割な腹筋ではなく。
“隆起する”としか表現出来ない、モゴォッと盛り上がるブロック腹筋。
「えいっ」
今度は、空いた左手を腹筋目掛けて打ち付けてみる、も。
ゴンッ!
という、硬い岩同士がブツかったかのような、乾いた衝撃音しかしなかった。
「痛・・・く、ないや」
自傷趣味は、私には無い。
ただ、何となくだけど、試してみたくなった。
『銃弾』すら効かない、私の腹筋に対して。
今まで“色んなモノ”を破壊して来た『私の力』で殴れば、どっちが強いか。
『矛盾』の語源、『盾と矛』の逸話。
少なくとも、『三野望』に於いては盾の方が強かったらしい。
ホンの数か月前まで、ヒョロガリな貧弱少女だった私が。
とある“出来事”を経て、超筋肉を纏った“スーパーマッチョ爆乳ガール”に変貌。
「ふふっ・・・」
脳内の独り言なのに私はつい、笑みを浮かべてしまう。
呆れるのを通り越して、今となっては自分の肉体を誇らしくさえ思う。
「ん、んっ」
私は胸元に、力を混めてみる。
モリッ、ぶるんっ。
モリリ、ぶるるんっ。
「す、っご」
私の視界の下で、『171cm(K135)』なスイカップ爆乳が大きく揺れた。
セルフ、乳揺れ。
どれだけ筋肉が増量しようが、“ここ”だけは女性らしい柔らかさを失わない。
今はもう居ない、【魔人】によって曲解された結果、得たモノ。
☆両手で掴み切れない程の【爆乳】
☆爆乳に相応しい、男女両方の美を兼ね備えた【肉体】(※筋肉含む)
これらは、“何があっても決して、失われる事は無い。”
それは最早、【願いのランプ】による『強制力』と言って差し支えない。
★私以外の他のクラスメイトの胸が私より【小さくなる】
【3つの願い】の内で唯一、私自身に影響しなかった【1つ目の願い】。
願った時の私のブラサイズは、『Bカップ』だった。
あれから時間は経ったけれど、クラス女子の皆の胸は小さいまま。
誰一人として、“大きくなっていない”のだ。
十代半ばの女子なんて、まだまだ成長期の筈なのに・・・。
それはつまり、未だに効果を発し続けている事になる。
【魔人】が居なくなっても、それは変わらず。
『“願い事”だけは、アタシ自身の力でどうにか出来るモノじゃないの』
「もう、付き合って行くしかないんだよねぇ・・・」
半ば、諦め。
自分自身だけなら、まだしも。
周囲にすら影響を与え続けるなんてもう、自然現象レベル。
科学やら物理法則なんて糞喰らえ、な超オカルト。
そんなの、受け入れるしかないじゃん。
「だけど、“余計なの”は付いてなきゃ良かったのに・・・」
ただ、【3つの願い】には余計な“オプション”が付いていて。
●不逞の輩を引き寄せる
●不逞の輩を斃すと魔人が魂を喰ってしまう
「“今回の”も、きっとそうだよね・・・」
朝、起きたら家の中が散らかっていた。
それだけなら、物盗りか何かに這入(はい)られてしまって。
何か盗られたのかと思いきや、何も盗られてなくて。
記憶が全く無いのを前置きするけど、無意識に泥棒と相対して。
一方的に、屠ってしまい・・・。
むしろ、逆で。
奪われるどころか、私がその泥棒の魂をゲットしてしまった、って始末。
寝てるだけで、不逞の輩を引き寄せ。
寝てる間に、その不逞の輩をヤッてしまった、なんて笑えない。
「そうだ!」
魂を喰ってしまった、のであれば。
やらなきゃいけないことが、ある。
『魔力を使って、消費しちゃえば良いんじゃない?』
『限界を超えるぐらい、力を使えば良いのよ』
私は以前、【魔人】が発した言葉を思い出していた。
「また、“あそこ”に行けば良いんじゃない♪」
私は何処か、気持ちが上擦っていた。
“今の私”の力が、どのぐらい強くなっているのか。
試してみたい、そう思った。楽しみになっていた。
だから、か。
私は、大きな“勘違い”をしていた。
足りない頭で、もっと良く考えるべきだった・・・のかも。
デアカルテ
2025-05-04 23:14:15 +0000 UTCNL
2025-05-04 22:02:44 +0000 UTC