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200kg超の彼女02「筋トレデート」

「私、スリムになりたい」

彼女は突然、そんなことを言い出した。


いつもの、デート後。

恒例になりつつある、部屋アフター。


相変わらず、恋人同士の濃厚な時間・・・とはならなくて。

今日は、買い物デートの戦利品の整理がメインの理由だった。


これから暑さを増す季節に備え、お互いの夏服を買い揃えたのだ。


「え、でも」

服を買いに行く前に言うのであれば、まだわかる。


だけど、もう既に服は買った後で。

買う前に、試着して確認を済ませてある筈。


「そう、なんだけど」

彼女は何処か、歯切れが悪い。


「開けて、着てみて良い?」

「うん。良い、けど・・・」

僕は彼女に促され、後ろを向く。


ガサゴソ・・・ビリッ。ガバァッ!


紙袋から買った服を取り出し。

着ていたセーターを脱いで、着替える衣擦れの音。


「・・・っ」

僕はつい、生唾を飲み込んでしまう。


もう既に何度も、彼女の生着替えは経験済。

とはいえ、美人な彼女の艶めかしい肢体に相対すると、やはり緊張する。


トン、トン。


「・・・?」

僕は背中側から、肩を軽く叩かれた。

声を掛ければ良いのに、と思いながら振り向くと。


「っ!?」

彼女は、薄手の生地のブラウスを着ていた。

清楚なデザインで、彼女のルックスにピッタリ。


・・・なんだけど。


「それ、どうしたの・・・?」

「・・・・・」

彼女は、答えない。


正確には、声を発していないだけ。

目線は、ちゃんと僕を見て応えていた。


「だ、大丈夫・・・?」

「・・・っ」

彼女は首から上だけを動かして、頷いた。


「何で息、止めてるの?」

彼女は何故か、息を止めていた。


襟口がキツくて首が締まっている、ような感じはしない。

明らかに自分から進んで、呼吸を止めている。


ミチ、チ・・・。


「~~っ」

彼女の顔が、徐々に赤くなって行く。


ミチ、ミチ・・・ッ。


「何で、そんな無理を・・・」

そう言って、僕はやっと違和感に気付く。


買ったばかりの服なのに、彼女の上半身はパツパツになっていた。

薄い生地が肌に張り付き、筋肉の凹凸がハッキリとわかる程。


「それ、合ってるの?」

「~~~っ」

遂に、彼女は首肯すら出来なくなっていた。

酸素が足りず、徐々に顔が青ざめて行く。


ミチ、ミヂヂッ!


ブラウスの前ボタンが、ドンドンと隙間を広げて行く。

これが噂に聞く、『天使の小窓』か・・・なんて思った矢先。


「~~~・・・ぷはぁっ!」

彼女が堪え切れず、大きく口を開けたと同時に。


ブバァッ、バツッ、バツンッ!

・・・チュイッ、チュインッ!


「う、わぁっ!?」

僕の両頬を、何か弾丸のような物が通り抜けて行った。


「あ、あぁぁぁ~っ」

ビリッ、ビリリリリィッ!!


彼女の嘆きの声を、ブラウスの断末魔が遮る。


「・・・これ、って」

僕は、床をコロコロと転がる物を手に取る。

それは、少し前までブラウスの前面に付いていた、ボタンだった。


チャックボーン、ならぬ。

ボタンパージ、とでも言った所だろうか。


「あ~あ・・・」

彼女の、落胆の声。

しかし、何処か覚悟していた、という風にも聞こえる。


「買う時に、試着しなかったの?」

「うん。だって・・・」

彼女の言い分としては、“試着しても仕方ない”ということだった。


それは、単純な話で。


お店で、好きなデザインのブラウスを見付けて。

お店に有る在庫の内、最大サイズを買った、って事だった。


「ギリギリ、行けると思ったのにぃ・・・」

肺の中の空気を吐き出して、体積を極限まで小さくして。

それでもまだ、あんなピチピチでパツパツの状態だったらしい。


「は、はは・・・」

彼女の上半身は、ビリビリのボロボロ。


まるで、暴漢に襲われたかのような様相を呈していた。

肩口は、袖がバッサリと切り離されてゴツゴツとした三角筋が露わ。


袖は、分離されて支えが無くなったにも関わらず、腕に張り付いたまま。

どうやって通したのかわからない大きな力瘤が、生地を固定しつつ裂け目を作っている。


「食べるのは好きだし、筋肉が付くのも良いんだけど」

「けど?」


「好きな服が着られなくなるの、困る」

既製品が着られなくなるのは、年頃の女子にとっては由々しき問題。

お店で気に入ったデザインを見付けても、着られないって事になってしまう。


「じゃあ、運動してみる、とか」

「そうなる、のかなー」

彼女いわく、これまで自発的な運動は殆どやったことがないらしい。

まともな運動は高校が最後で、大学は必修科目ではないみたい。


「・・・ん? あー、また胸見てるー」

「あ、いや。その、ごめんっ」

僕はつい、彼女の露わになった胸元に目線を置いてしまった。


ボタンが全て吹き飛んだ事で、法被みたいになったブラウス。

黒い色のブラジャーに詰め込まれたメロンバストが、深い谷間を形成している。


彼女の身体は筋肉モリモリだけど、決してムキムキではない。

程良い感じの脂肪が全身に残っていて、女性らしい豊満さを失っていない。


「それなら・・・」

ダイエットは、胸から脂肪が落ちるって聞いた事がある。

彼氏としては、それだけは何としても避けたい。


「ふ、腹筋とか、どうかな?」

「え、腹筋?」

正直、胸に影響し難い運動なら、何でも良かった。


「まあ、運動なら何でも良いかもだけど」

お互い、わざわざトレーニングジムに行く程ではない、のは同意。


ただ、一人で外に出るジョギングとかは提案し辛くて。

今のご時世、軽装な女子一人が定期的に外に居るのは防犯上、良くない。


「それも、そっか。食べた分を消化すれば良いんだもんね」

「じゃあ・・・」

一先ず、僕が実践して見せる事になった。


「イ、ッチ。ニ、イ・・・」

床に仰向けに寝て、上体を起こす。


「サ、・・・ッン」

う、っく。キツ、い・・・。


そもそも、僕自身も特に体育会系という訳ではない。

慣れない体力運動に、全身が直ぐに悲鳴を上げる。


「こ・・・はぁっ。んな、はぁっ・・・感じっ」

ホンの数回の腹筋運動で、既に息も絶え絶え。


「だ、大丈夫?」

「はぁ、はぁっ・・・だっ、だいじょぶ」

彼氏としては、少し格好悪い気がする。


「じゃあ、私やってみるね」

「あ、うん」

僕と、位置を交換。


「イッチ、ニィ」

「・・・・・」

ぶるんっ。


「サン、シィ」

「・・・っ」

ぶるるんっ。


「ゴ、ロク・・・」

彼女が、ピタッと止まる。


「・・・どうしたの?」

「だから、胸を見過ぎだってばー」

彼女は口をプクーッと膨らませながら、僕の視線を咎める。


バレてた、か。


「ひょっとして、“そういうつもり”だったの?」

「いや、違うよっ」

ホントかなー、と彼女は訝しげに僕を見る。


彼女に誓って、決してそんなつもりは無かった。

あくまで、偶然の副産物。


「じゃあ、“こう”しちゃう」

「・・・あ」

彼女は、空いた両手で胸を押さえてしまった。


「ジュウ、ジュウイチ」

彼女は胸が揺れないよう両手を置いたまま、器用に腹筋を続ける。


「・・・サンジュウ、サンジュウイチ」

「え、ちょ」


「・・・ゴジュウ、ゴジュウイチ」

「う、っそ・・・」

僕は、頭を両手で抱えて無理矢理に勢いを付けて、やっと数回出来た程度。

それを彼女は、両手分の重さを胸に置いた状態で、既に二桁後半。


「・・・ヒャー、ック」

「・・・・・」

彼女は規則正しいテンポで、あっという間に『百回』もの腹筋を熟(こな)してしまった。


「つ、疲れてないの?」

「んーん、全然」

彼女は、ケロッとしている。


『百回』の腹筋に対して、所要時間は『二分』と経過していない。

素人目に見ても、かなりのハイペースで熟した事はわかる。


「やり方、合ってるのかなー」

彼女自身、全く効いていないと言わんばかりだった。


「・・・・・」

しかし、彼女の上半身は薄く上気して、ほんのりと汗ばんでいる。

腹筋運動が、彼女に作用しているのは間違いない。


腹筋は文字通り、腹直筋に負荷を与える運動。

上半身というウェイトを、腹筋で以って持ち上げる。


彼女自身、これまで腹筋運動の経験が無かったというだけで。

既に、ブロック状の素晴らしい“六隆起”な腹筋を持っている。


後から調べた知識だけど、人間の上半身は凡(およ)そ体重の七割らしく。

単純計算で約『150kg』近いウェイトを『百回』、彼女の腹筋は持ち上げた事になる。


「あー、今度はお腹見てるー」

「・・・あ、うん。ごめん」

今回ばかりは、僕の視線に嫌らしい意図は全くない。


腹筋の怪力振り、というのも良くわからないけど。

少なくとも、刃物程度で傷が付かないのは、然(さ)もありなん。


「じゃあ、さ。“こういうの”は、どう?」

「ふむふむ」

僕はスマホで検索して、『とある運動』を見せてあげた。


「これなら、僕が“重り”になれるし」

僕は、この時の台詞を後から悔いる事になる。


『レッグレイズ』。


文字通り、仰向けに寝て両脚を上方へ挙げる運動。


「あ、まさか・・・」

「い、いや。そんなつもりは・・・」

今度も、偶然の産物。いや、ホントなんだけど。


彼女はスカートを穿いている。

つまり、寝そべって両脚を挙げれば必然的にスカートの中身が露わになる訳で。


「えっちー」

彼女はそう言いながら、上手い具合にスカートを丸めて腰に仕舞い込み。

スカートの生地が提灯みたいになって、秘所を覆い隠してしまった。


「・・・ヒャク」

またしても、あっという間に『百回』が終わってしまった。


「どう?」

「うーん、あんまり・・・」

僕が勧めた手前、彼女は言い淀んだけど。

多分、全く効いていないのだろう。


『百回』でヤメたのも、特に意味があった訳ではなくて。

キリが良い所でヤメないと、ずっとやり続けてしまいそうだから。


「じゃあ、“乗る”ね」

「うん、お願い」

彼女も、僕に下心が無いことをわかってくれたのか。

両脚の向こう脛に乗る事を許してくれた。


僕は、すっかり忘れていた。


『レッグレイズ』は、両脚を床に対して垂直まで挙げる運動。

それはつまり、僕が乗った“土台”が垂直になる、って事で。


「イーッ、チ」

グンッ!


「う、おっ、わあぁっ!?」

発射台に載ったロケットの如く。

僕は、天井目掛けて打ち上げられた。


「きゃあっ!?」

「うぎぁ」

ドガッ、と天井に頭を打ち付け。

そのまま、自由落下。


「ごめんなさいっ!」

彼女は慌てて、立ち上がり。

頭を下にして落ちて来る僕を、何とかキャッチしてくれた。


「う、っぶ」

でも、キャッチという程、華麗ではなくて。

どちらかというと、プロレス技の『パイルドライバー』みたいな体勢。


「だ、大丈夫っ!?」

「だ、だいじょ・・・」

『パイルドライバー』とはいえ、僕の顔は彼女の方を向いていて。

更に受け止めた関係上、僕の頭は彼女の太腿でガチッとホールド。


「・・・ぉ」

ムチッとした、彼女のボリュームのある太腿。

おっぱいとはまた違う、柔らかい女性らしい肉感が僕の頬を包み込む。


・・・なんて思えたのは、ホンの一瞬だけだった。


メキ、メキキ・・・。


「・・・いぎぃ!?」

僕は急激な圧迫感に、呻き声を上げてしまう。


メギ、メギョ・・・。


「う、が・・・ぁっ」

普通に成人男性な体重の僕を、軽々と打ち上げてしまう脚力。


片脚だけで、僕の胸周りと同等な太さの剛脚。

それが左右から、僕の頭を挟み込んでいるのだ。


メギョギョ・・・。


「・・・ぁ」

万力に頭を挟まれるって、こんな感じなのかな。

僕は薄れ行く意識で、走馬灯を見ながらそう思うのだった。


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