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その後の三つの願い04「真夜中トレ」

「“ここ”も相変わらず、だなぁ・・・」

私は、もう慣れっことばかりに“いつもの場所”に訪れていた。


家からちょっと離れた、湾岸エリアに在る『ゴミ置き場』。


敷地面積は、野球場が数個分は入るぐらい広大。

管理会社が居なくなったのか、今はもう荒れ放題でゴミ捨て放題。


ドラム缶に、鋼材。廃車にコンテナ・・・なんて物まで捨ててある。


「また、増えてる・・・」

前に来てから、そんなに時間は経ってないのに。

パッと見、大型のゴミが大量に増えていた。


「ま、私には好都合なんだけど♪」

“今の私”にとっては、お宝の山に等しい。

と言っても、別に鋼材やらを持ち出して売り捌こうなんて訳ではなく。


【願いのランプ】によって得た、この筋肉ボディは。

とっくの昔に、私を人間の埒外に置いてしまっていた。


初めて訪れたトレーニングジムで、『500kg』バーベルをリフトアップ。

しかも、ダンベルカール替わりに片手で挙げてしまった。


そんな超筋力を持つ私に、街のジムでは物足りなくて。

そうやって、辿り着いたのがここだった。


「とはいえ・・・」

既にここでも、私は幾つかの“ウェイト”を持ち上げた。


コンクリートが満載したドラム缶、推定『600kg』。

鋼材『1t』に、廃車『1.5t』。

更には、大型の資材コンテナ『2.5t』。


これだけの馬鹿みたいな超高重量を、私は片手で挙げてしまった。

筋肉に限界まで負荷を掛けて、少しでも【魔力】を消費したいのに。


『真夜中トレ』をやる事で、身体の肥大化を少しでも和らげたいのだ。


「う~ん・・・どうしよっか」

私は、慣れ親しんだ“デカブツ”の前に立つ。


高さ:2m強

奥行き:2m強

横幅:5m強

重量:2.5t


まさしく、百人乗っても大丈夫そうな『資材コンテナ』。


「“これ”も、もうねぇ・・・」

私は、慣れた手付きで地面と設置している縁に両手を差し入れ。

グゴォンッ、と事も無げに傾ける。


「ん・・・っしょ、と」

コンテナの底に右手をピタッと置いて。

お盆持ちのまま、“右腕一本”で持ち上げる。


グアァッ!


「ん、っしょ」

グアァンッ!


「ん、っしょ」

『2.5t』の巨大コンテナが、女子高生の片腕で持ち上がり。

更には何度も、何度も上下動で揺さ振られ。


ゴウンッ、ゴウンッ!


と、鉄の軋む音が周囲に響き渡る。


「これ、だもんねぇ」

コンテナを左手に持ち替え、手持ち無沙汰になった右腕を折り曲げる。


グググ、モゴォッ!!


「す、っご」

我ながら未だに、この力瘤には驚かされる。


『2.5t』“程度”では、もう私に負荷すら感じさせてくれない。

そのぐらいの、超筋力を秘めた腕。


「ん、っぐ・・・」

ギュギュッ!


「無理、か」

私の腕は『90度』、地面に垂直な角度までしか曲がらない。

徳利のような前腕筋と、スイカ『1.5個』分な力瘤がそれ以上の接近を許さない。


「一応、効いてはいる・・・のかな」

負荷を感じない程度の“軽さ”とはいえ、少しは効いているらしく。

筋膨張(パンプアップ)した力瘤は多分、『120cm』を超えているだろう。


「あ。あった」

それは、『ドラム缶』大の鋼鉄製と思しき塊だった。


「そう、これこれ」

少し前に私が、お手製で“工作した”『コンテナ』だった。


原材料は、さっき持ち上げた『資材コンテナ』そのもの。

それを怪力に任せ、潰して成形したのだ。


思い付く限りの最大ウェイトですら、片手で簡単に挙げてしまったので。

破壊する方向なら、もっと負荷を得られるのでは、って感じ。


「・・・ん? これ、って」

圧縮して潰された“コンテナ缶”は、円筒形をしている。

まあ、ドラム缶を模したから当たり前なんだけど。


でも、円筒形って、何か見覚えがあると思った。

いや、正確には“何処か”で見た覚えがある。


「・・・あ」

鋼鉄ですら、手でコネコネ出来る今の私なら。


「先ずは、こうして・・・っと」

私は、“コンテナ缶”の円形の両面にそれぞれ手を置いて。


「ん、ぎぃ・・・っ」

渾身の力を込めて行く。


グギャギャ・・・ッ。


「ん、がぁっ」

ギュゴゴゴッ!


と、徐々に縦幅が狭まって行く。


「・・・ふぅ」

かなりの重労働だった。


元々、これ以上やれないってぐらい圧縮していたのに。

更に、手を入れようというのだから致し方なし。


私は『ドラム缶』型だった“コンテナ缶”を、『タイヤ』型に成形し直した。


「じゃあ、と」

私は先程、ウォームアップかわりに持ち上げたコンテナに取り付き。


「ん・・・っしょ」

両腕を目一杯に広げて、コンテナに抱き付き。

力を篭め、コンテナを潰して行く。


グゴ、グギャリッ、バゴッ!


最初から『タイヤ』型を想定したからか。

それとも、以前より身体が大きくなり、筋力も増したからか。


殊の外、簡単にメギャッ!と二つ目の『タイヤ』は出来上がった。


「これで、後は・・・」

私は、その辺に転がっている『H形鋼』(※推定1t)をヒョイッと持って来ると。


『H』な断面が『◆』になるように、端っこから丁寧に潰して行き。

更に、『◆』から『●』型になるよう形を整えて行った。


「プラモデルみたい」

と言っても、材質はプラスチックでは決して無い。


持ち上げるのに重機を用い、成形するには高温の熱が必要な、鉄鋼。

それを事も無げに素手で折り曲げ、潰して行く。


観客ゼロの、真夜中の怪力ショー。

尤も、最初の数分で観客はドン引きするだろうけど。


「出来・・・ったぁ」

流石に、ちょっと重労働だった。


一番苦労したのは、『タイヤ』型にした元コンテナな鋼鉄を。

中心に穴を開け、ドーナツ状にする作業だった。


「・・・ふぅ」

やっと、“見慣れた形”になった元コンテナ。


そう。


私が工作していたのは、お手製のバーベルを作る為だった。


バーベルウェイトは、良く有るプレート状には出来なくて。

幅『1m』、高さ『120cm』ぐらいは有る特大のタイヤに。


バーベルシャフトも、鉄棒が十本ぐらい束になったぐらい太い。


片側一つで『2.5t』なウェイトに、『1t』の鋼材バー。

推定で約『6t』な、超々高重量なバーベルの出来上がり。


普通のバーベルが、ミニチュアに思える程にビッグなサイズ。

身長『214cm』な私の腰と同じ高さがあるタイヤウェイトはもう、大迫力。


「ん、ぎぃ・・・っ」

片手で持とうとすも、全く挙がる気配がない。


「ひょっとして、凄いの作っちゃった・・・?」

もしかしなくても、人間が持とうなんて考えるレベルのウェイトでは、無い。


「・・・・・」

私は少し、モヤッとしていた。

内心、軽々と持ち上がるだろう、なんて思ってみても居たのだ。


「ん、ぐ・・・うぅ」

僅かとはいえ、トレーニングジムでの経験を活かして。

逆手で極太シャフトに手を添え、渾身の力を籠める。


「ぬ、ぐぅ・・・っ」

グァッ、とホンの数センチ、持ち上がった。

“挙げた”とは、とても言い辛いレベル。


「・・・何か、悔しい」

私はいつの間にか、“自負”みたいなモノを持っていたらしい。

自身の超筋力に対する、自信と言い換えても良いかも知れない。


「んっ、んぁっ!」

グアァッ!と、今度はさっきより高く持ち上げる事が出来た。


「・・・く、ぁっ」

超々高重量『6t』バーベルは、保持すら困難で。

堪え切れず、地面にバーベルを落としてしまう。


ドッズゥゥッンッ!!


という、凄まじい地響き。地震があったかと錯覚するレベル。


「う、っそ。お、っも・・・」

改めて、何てモノを作ってしまったのか。

我ながら、後悔に似た感想を漏らしてしまう。


「だけ、ど・・・」

ヌルゲーよりも、難しいゲームの方が燃える。


異常な筋力を持つ私は、既に正常な感覚を失っていたのかも知れない。

『6t』バーベルですら、“いつかは持てる”と思えてしまうのだ。


「ぬぎぃ、ぃ・・・っ」

グアァッ、ドズゥッンッ!


「ぬぐ、ぁ・・・っん」

グアッ・・・ドォンッ。


「・・・はぁ、はぁ。ふぅ」

流石に凄まじい重さだったせい、か。

ホンの数回、やっとの事で挙げるのが関の山だった。


「・・・あ」

筋肉が熱を持ち、上気しているからか。

タンクトップも短パンも、汗でベットリと張り付いている。


「これが、『ハイ』って奴なのかな」

いわゆる、『トレニンーグ・ハイ』と呼ばれる感覚。


ドーパミンやエンドルフィンに代表される、脳内物質が分泌される現象。

高負荷の筋トレによって、高揚感や解放感を得る事が出来る。


「・・・・・」

だけど、それは。

私の中で『とある感覚』にも似ている、と思ってしまう。


「・・・っ」

私は自分しか居ない空間で、頭をブンブンッと振った。


「きょ、今日はこのぐらいにしとこっかな」

『その感覚』に意識を寄せるのは怖い、と思ってしまい。

半ば、消化不良な状態でこの日の『真夜中』トレはお開きになった。

Comments

感想ありがとうございます。 伏線の回収を何処までやるかは、いつも迷ってしまいます。

デアカルテ

投稿お疲れ様です 望ちゃんのパワーでも持ち上げれないものを作り上げてしまうとは・・・ 今後望ちゃんがこれを軽々と持ち上げれるくらい筋肉モリモリになるのが楽しみです! 後は魔人が消える時に残された謎が説き明かされるのも期待しています!

NL


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