その後の三つの願い05「成果」
Added 2025-07-04 15:00:00 +0000 UTC「ぬぅ、ぐ・・・っ」
私は、顔を真っ赤にして膨らませていた。
女子高生らしからぬ、力み顔での踏ん張り。
「んぐぅ、あぁっ!」
“それ”は、やっと肩の高さまで持ち上がった。
いわゆる、『バーベルカール』と呼ばれる筋トレ。
「はぁ、はぁっ・・・」
只の一回。たったの一回で、汗だくになる。
「ん、っしょ!」
ズズゥッンッ!!
普通に置くだけで、地響きが起きる程の超々高重量バーベル。
「・・・ふぅ」
私は、地面に置いたばかりのバーベルを“正面に見据える”。
ラックに置いた訳でもないのに、立った状態でシャフトに手が届く。
地面に置いて尚、腰の高さぐらいは有る巨大ウェイト。
まるで、巨人族が扱うかのような、バグッたスケール感。
大型重機の巨大タイヤ並なウェイトは、一つで『2.5t』。
シャフト込みで合計『6t』ものバーベルを置けるラックなんて、この世に存在しない。
私は夏休みなのを利用して、足繫く『ゴミ置き場』に通っている。
『2.5t』の資材コンテナで、ウォームアップしてから。
このデカブツに挑戦する、って一連の流れが日課になっていた。
「何だろう、な」
何処か、違和感。
「効いてるのに・・・」
毎日、少しずつだけど。
挙げる高さ、挙げて居られる時間は伸びている。
「ん、ぅっ」
おもむろに、右腕を盛り上げる。
モゴゴォッ!!
ギュギュゥッ!
上腕二頭筋だけで、大玉スイカと同じサイズな特大力瘤。
筋肉が犇(ひし)めき合い、ゴム同士が擦れたような音が鳴る。
「・・・効いてない、みたいな」
一向に、“小さくなる”気配がない。
「むしろ、大きくなって・・・る?」
我ながら、あちこちの筋肉が余りにもデカ過ぎるせいか。
多少、サイズが変わった程度だと気付こうにも気付けない。
「測って、みるか」
念の為に、と『巻き尺』を持参していた。
「・・・え、うそ」
一休みして、力瘤を測定。
2m用の巻き尺は、『122cm』を指していた。
誤差も考え、時間を置いて逆の腕で測ってもみた。
「うそ、変わんない・・・」
それでもやっぱり、『上腕屈曲囲』は確かに『122cm』も有った。
「増えてる・・・」
どれだけ測り直しても、“増えてる”事実は変わらない。
「なん、で・・・」
太腿は、『131cm』だった。
力瘤:118cm ⇒ 122cm(+4cm)
太腿:126cm ⇒ 131cm(+5cm)
『筋膨張(パンプアップ)』では、無い。
休憩前に、入念なクールダウンは済ませてある。
「筋肉、付いちゃった・・・?」
何を今更、な気もする。
『6t』なんていう、人外なウェイトで筋トレを繰り返したのだ。
単純に、『筋肥大(バルクアップ)』したってだけの話。
「思ってたのと、違う」
私の想定だと。
【魔力】を消費して、“余剰に『筋肥大』した分”を減らそう。
そういう、目論見。魂胆。
「ん? あれ・・・」
そもそも、の話。
【魔力】は何処から来て、何処へ流れて行くんだった・・・っけ。
「今回で言えば、空巣の・・・」
何処の誰か、どころか。
何人居たか、すら全くわからないんだけど。
我が家に空巣に入った泥棒たちを、私が屠って。
その【魂】を、【魔人】が喰らった。
「地面に書いてみるか・・・」
デジタル全盛な現代に敢えての、アナログな砂地メモ。
【魂】⇒【私】⇒【魔人】
って流れ、だった筈。
「私を経由するから・・・ん。経由・・・?」
【魔力】が私を通った、その先。
その先の【魔人】は、もう居ない。
『ワタシを取り込み、人間のまま魔人の力を得るなんて』
私は、【魔人】の最期の台詞を反芻する。
「あ、あれ・・・?」
そう、だった。
もう、とっくの昔に。
私自身が、【魔人】なのだった。
これも、一種の『正常性バイアス』なんだろうか。
既に、人外に成り果てていた事実を。
私はまだ、受け入れていなかったのだ。
感情では、もう馴染んでいた筈だったのに。
理性では、何処かでストップを掛けていた。
「・・・なぁーんだ」
今度こそ、になるのかな。
私の中に、ストンッと何かがハマッたような気がした。
「じゃあ、また“ヤラなきゃ”」
夜は、長い。時間はまだ、これから。
「夏休みで良かった」
通学しなくて良いなら、外に出掛ける必要はない。
正確には、外出用の服が無くても、何とかなる。
「今の内に、“ストック”しとかなくちゃ」
夏休みが明ければ、また学校に行かないといけなくて。
当然、制服を着る必要がある。
「“今のまま”だと、無理だもんね」
私の巨体を包み込める学生服は、存在しない。
と、なれば必然。
“【魔力】をゲット”しないといけない。
【魔力】を使った、【アフターケア】を行う為。
私には、ちょっとした目算があった。
「今日は、来るかな」
ここ数日、何度か“来客”が有った。
私の【体質】で、不逞の輩を引き寄せたのか。
それとも、この『ゴミ置き場』が“そういう場所”なのか。
「うーん、勿体無かったかな」
今思えば、何度か“チャンス”は有った。
誰かが来るのを察知すると、私は隠れてやり過ごしたのだ。
タンクトップに短パンを見られるのは恥ずかしいし、説明も面倒。
――と、その時。
「・・・!」
私は、“気配”を感じ取る。
以前よりも、五感が研ぎ澄まされた気がする。
【魔人】化しても、見た目は変わらないままだけど。
ヒトの気配が、離れた状態でも認知出来るようになっていた。
「あ、来た♪」
程なくして。
「「「~~~っ」」」
遠くの方で、人らしき声と物音。
「え、っと。あれ、かな」
夜目が効く上に、遠視まで出来るようになったのか。
巨体を晒す事なく、相手方を伺う。
「オラァッ! さっさと、歩きやがれ」
如何にも、柄が悪そうな男たち数人。
「ひぃっ!」
そして、ソイツらに詰められていると思しき男。
「お、お助けっ!」
「うるせぇっ」
ドガッと蹴られ、男は砂地に顔から突っ伏す。
「・・・・・」
事情を察するに。
ヤバいお金を持ち逃げしようとして捕まった、みたいな感じなのかな。
しかも、そのお金はギャンブルで擦っちゃったらしく。
オトシマエ?を付けられちゃうっぽい。
「“コイツ”から逃げられたら、助けてやっても良いぜ」
男たちの内の一人が、何処からか油圧ショベル車を運転して来た。
そういや、ここって元は建設会社の持ち物だっけ。
油圧ショベル車は、意外と速度が出るみたいで。
逃げ惑う男を器用に追い掛け、『アーム』で何度も小突いた。
「うがぁっ! や、やめっ」
「あっ! おいっ」
男は、転がされながらも機を伺っていたようで。
アームの隙を付いて、男たちの包囲をスルッと抜け出した。
「この野郎! 逃げんなっ」
取り囲んでいた男たちが、総出で追い掛ける。
「え、ちょ」
何と。
逃げる男も、追い掛ける男たちも。
ついでに、油圧ショベル車も。
当事者たちが全員、“私の方”に向かって来る。
どれだけ暗がりで、身を潜めていようが。
月明りに照らされる、私の巨体は隠し切れなくて。
「うが」
「きゃ」
全速力で走っていた男は、私と衝突して。
ドォンッ!
と、私のおっぱいにバウンドして、逆方向に吹っ飛んだ。
「っ!?」
「何だ、お前・・・」
自分たちしか居ないと思っていた所に。
まさかの、先客登場。
「何だ、このコイツ・・・」
「でけぇ・・・。ナニモンだ」
凄く、既視感のある反応。
「ど、どうも~。はは・・・」
私は逃げる間もなく、仕方なく挨拶。
・・・ん?
そういや、“逃げる必要は無い”んだっけか。
「何で、こんな所に女?が居るんだ」
「さ、さぁ・・・」
男たちも私の存在は予想外だったのか、アタフタ。
でも、ね。
ちょっと、気になったんだけど。
「ねぇ。何で今、半疑問形だったのかな?」
「あぁんっ!?」
男は、何を言っているんだと言わんばかり。
「どうします?」
「仕方ねぇ。ソイツは後回しだ」
リーダーらしき髭男が、子分に顎でクイッと指示。
「お、おい! 何するっ」
「うるせぇ。じっと、してろ」
「お前がこれからどうなるか、特等席で見せてやる」
逃げていた男は、二人の男にそれぞれ両腕を拘束された。
「おい」
「「へい」」
残った男たちが、今度は私の後方で包囲を作る。
「先ずは、“コイツ”からだ」
そう言った髭男の視線は、明らかに私を見据えていた。
「私、コロされちゃうの・・・?」
ワザとらしく身体を拗(くね)らせ、品を作って見せる。
「無駄にデケぇ図体してんだ。何なら、抵抗したって良いぜ?」
髭男が、油圧ショベル車を運転する男に顎で指示。
「へっへっへっ・・・」
油圧ショベル車が、『アーム』ごと私に向きを変える。
「・・・そう」
私は怖がる演技そのまま、内心は落ち着いていた。
今のところ、というか。
私は、『降り掛かる火の粉は払う』というモットーは大事にしたいと思ってる。
だけど、“言質”は取れた。
向こうが、私にオーケーサインをくれたのだ。
お言葉に、甘えてしまおう。
「わかった、わ・・・」
私はそう、静かに呟く。
髭男たちに聞かせるというよりは、私自身への納得の意味合いが強い。
だって、油圧ショベル車が相手なんだもの。
手加減なんて、全く必要がない。
女子高生 VS 油圧ショベル車
字面だけ見れば、絶望的な状況。
だけど、月明りに照らされた私の顔は、薄い笑みが浮かんでいた。
Comments
感想、ありがとうございます。 胸に関しては、お話的な意味で整合性を取れれば大きくしたいとは思っています。始めた当初は、ここまで続けることを想定しなかったのが悔やまれます。
デアカルテ
2025-07-15 00:40:46 +0000 UTC感想、ありがとうございます。 引っ張ってしまう形になってしまいましたが、次回はじっくり描きたいと思っています。
デアカルテ
2025-07-15 00:38:10 +0000 UTCこのあとの展開、とても楽しみです(°▽°)wkwk
Nogi_(°Д°)
2025-07-13 12:33:13 +0000 UTC投稿お疲れ様です 確かに望ちゃんが隠れていた分成長出来なかったのは勿体なかったですね・・・ けどその分今回ので盛大に成長してほしいですね 後個人的には望ちゃん筋肉だけでなくおっぱいも更にデカくなってほしいのですがおっぱいは2つ目の願いなので難しいのでしょうか・・・?
NL
2025-07-11 13:45:09 +0000 UTC