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肉の日のミイコさん03「レバー相撲」

これが、今の俺の身体のサイズ。


試合にこそ出てはいないものの、以前よりパワーアップ。

体重を増やしつつ、体脂肪率を下げる事で筋量を増やした。


新生、ニュー『熊野虎雄』。


今となっては、この『肉の日』に照準を合わせていたとさえ思える。


骨は折れると、それまでより骨が強固になると聞く。

肉体的には、今がピークといっても過言ではない。


『レバー相撲』って、何?」

プロレスラーである以上、どんな種目でも受けて立つ覚悟はある。

・・・のだが、聞いたことがない種目で面食らってしまう。


ミイコさんは、生粋のプロレスファン。

ある程度、格闘技の種目については精通している筈だが・・・。


「そう、か」

俺は心の中で、得心した。


ミイコさんは、俺の仕上がった肉体を前にして怖気付いてしまい。

俺を困惑させて、油断させようなんて考えたのかも知れない。


「ふふん」

俺はつい、含み笑いが零れてしまう。

ウチの若奥さんは、やっぱり可愛いじゃないか。


素人が鍛えた肉体と、プロのレスラーがガチで鍛え直した肉体。

こう言っちゃなんだが、やっぱり中身が違うと気付いたんだろう。


「え、わかっちゃった?」

「まあ、な」

結婚して、そこそこな年数が経ったけど。

以心伝心な、熟年主婦の域に達しつつあるのかも、な。


“さっき思い付いた”オリジナル種目なのに」

「・・・え?」

どういうことだ。

俺を惑わす為に、適当な種目をデッチ上げたんじゃないのか。


「体勢は、こう・・・やって」

そう言いながら、ミイコさんは床にうつ伏せになり。

両肘を付いて、俺に向かって上体を上げた。


むにゅんっ。


撓(たわ)わなおっぱいが、お餅のように床で潰れている。

『伏臥上体反らし』と、筋トレ運動の『プランク』の中間の体勢。


「で、“これ”が『レバー』」

ミイコさんは、拳を握りながら右前腕を床に対して垂直に起こす。


「ひょっとして・・・」

レバーって、『梃子(てこ)』の事だったのか。


× Liver(肝臓)

○ Lever(梃子、テコ)


自動車のシフトレバーを見て、『梃子』と表現する人は居ない。

『レバー』と呼ぶのは、確かに合ってはいるが・・・。


「でも、それって・・・」

ただ単に、『腕相撲』の体勢じゃないのか。

『腕相撲』なら、過去に何度かやっている。


「何だ。それならそうと、言ってくれりゃあ良いのに」

とはいえ、『腕相撲』で勝ったのは最初の頃だけで。

ここ数年は、“負け確”な種目となっている。


「あー、違う違う」

同じようにうつ伏せになろうとした俺を、ミイコさんは制止。


「アナタは、肘を着かなくて良いの」

「え、でも」

肘を床に着けないと、腕相撲の体勢を取れない。

それなら、そもそも食卓の上でやれば良い話ではあるのだが。


「アナタは、“両手で持つ”の」

「・・・え。何を言って・・・」

ミイコさんは、その逞しい前腕を更に前に突き出す。


「“ここ”、持って」

「っ!?」

俺はようやく、全てを理解した。


ミイコさんの前腕を、『レバー』に見立てて。

戦闘機の操縦桿のように両手で持って手前に引け、と。


ミイコさんは、右腕一本で俺の全力を相手にする。

そう、言っているのだ。


「は、ははっ・・・」

乾いた笑いが、俺の口から漏れた。


惚れた弱味は、俺の方にあるとは言え。

プロレスラーとして、流石にこれは看過出来ない。


「ミイコさ・・・」

「おっぱい」

・・・!?

ミイコさんの口から、予想外の言葉が発せられる。


「アナタの好きにして良い、のよ?」

空いた左手で、ミイコさんは豊満な胸を揉みしだいた。


むにょ、ん。


「何の、話だ・・・」

これに関しては完全に、以心伝心。


「勿論、勝った時の報酬よ♪」

「・・・!?」

ミイコさんは、俺が望むままの『プレイ』を許容すると宣言したのだ。

勿論、『夜の生活』での話。そこの認識違いは、無い。


「良い、のか?」

俺の性癖は、百八まである。

いつも、脳内で呟く口癖だ。


如何な夫婦といえど、全てを晒して生活している訳ではない。

ミイコさんに開示していない性癖なんて、幾らでも有る。


「ええ、もちろん♪」

俺の性癖は精々、『おっぱい好き』程度。

ミイコさんはきっと、そう高を括っているんだろう。


甘い、甘過ぎる。

おっぱいの弄り方だけで、片手の指では足りないのに。


「わかった。ルールは?」

「殴ったり、とかはヤメて欲しいけれど」

そんなの、ほぼ“何でもアリ”じゃないか。


「よぅーし」

プロレスラーとしてのプライドなんて、性癖の前には無力。

俺は意気揚々と、両手でミイコさんの右手を掴む。


「・・・・・」

約一年振りに触れる、ミイコさんの素肌。

そんな感触を味わう余裕は、まるでなかった。


「・・・っ」

床に、垂直に立てられたミイコさんの前腕。

手首から急激に太くなるにつれ、血管が走り捲っている。


「・・・んぐ」

俺は、戦闘機パイロットのように座り込み。

お尻を支点にして、それこそテコの原理を応用する。


しかし、操縦桿を引こうにも、錆びて固くなったのか動かない。

まるで、そんなイメージ。


「どうしたの? もう、始めて良いのよ」

ミイコさんは、始まった事にすら気付いていなかった。


「っ!?」

大地に根を張る大木のように、全く動く気配がない。

俺は既に、渾身の力で両腕を引いているのに、だ。


俺も、伊達にレスラーはやっていない。

力の掛け方は問題ない筈、なのに・・・。


「あ、ああ。そうだ・・・なっ!」

仕切り直しとばかりに改めて、全身の力を籠め直す。


「ぬぅ、っ! ん、ぎ・・・ぃっ」

『120kg』に増量した、自分自身そのものをウェイトにして。

腕力プラス体重で、ミイコさんの右前腕を手前に引き寄せて行く。


「・・・お」

少し。ホンの少しだが、ミイコさんの腕がこちらに傾く。


「うおっ、りゃ!」

実際の試合で上げるような、気合いの発声。

このまま、一気に・・・!


「えい♪」

突然。

ミイコさんが手首をクイッ、と返した。


「・・・うぉっ!?」

たった、それだけで。

大柄な筈の俺の身体が、左右に振られる。


「何・・・っで、だ。体重を掛けてるのに・・・っ」

鍛え上げたレスラーの肉体が、良いように振り回されている。

若妻が使っているのは手首の力、だけ。


「虎雄さん、何キロだっけ?」

平然とした表情で、ミイコさんが体重を聞いて来る。


「あ、え? っと、『120kg』だ、よっ」

俺は未だ、全力を入れ続けているのに、だ。


「あー、そっかぁ・・・」

ミイコさんが、落胆の表情を浮かべる。


「それって、どういう・・・っぐ!」

会話を続けつつも、力は抜かない。

もし、少しでもミイコさんが緩めれば、一気に決める腹積もり。


「じゃあ、バーベルと同じぐらいなのね」

「・・・んぅ、っぐ!」

俺は、直接は答えない。

その余裕がない、とも言えるが。


ミイコさんの言う、バーベル。

それはきっと、この居間の隅っこに転がっている『カール用』の事だろう。


確かに、パッと見で『120kg』。シャフト分を入れても、『130kg』。

充分に重いウェイトである事は、間違いない。


しかし今、それと同じぐらいの自重を掛けつつ。

更に、レスラー自慢な俺の腕力も目一杯、籠めている。


「私、ね。今、『150』挙げてるの」

「・・・え。何の、話・・・」

床に直立していたミイコさんの右腕が、徐々に奥側に傾いて行く。

“俺”という負荷を受けていながら、だ。


「う、おっ・・・おっ」

俺は堪(こら)えようと必死に、身体ごと後ろに倒れようと試みる・・・が。


ミイコさんの上腕二頭筋が行き場を無くし、モゴゴ・・・と上方向に膨らみ。

蛇が這い回るように太い血管がモコ、モコッと浮き出る。


「う、っそだ・・・ろ」

俺の尻が、床から浮いていた。

両足も、辛うじて接地しているに過ぎない。


「・・・ん」

それは、力んだというよりは。

単純に、作業が完了した、という声だった。


モゴゴォッ!!


何度かスイカと形容した力瘤は、ミイコさんの上腕を埋め尽くし。


「う、っおわぁっ!?」

俺の身体は、いとも簡単に前転しながら空中で一回転。

ミイコさんの大きな広背筋の隆起に、俺は背中から叩き付けられた。


バッターン!


「え、うそ。アナタ、大丈夫っ!?」

まさか、俺が身体ごと投げ出されるとは思っていなかったようで。

ミイコさんは慌てて立ち上がり、俺を“抱き上げ”た。


第38回【力比べ勝負】

◆レバー相撲 時間無制限一本勝負◆

ミイコ ○ 2分11秒(片手投げ) ● 虎雄


「お、おろし・・・て」

「あら、大丈夫そうね♪」

相変わらず、笑うと愛嬌があって可愛い。

“逆お姫様抱っこ”をされながら、俺はそんな事を思っていた。


「そう言えば、どうやったら勝ちなんだっけ」

「・・・え」

ここまでやっておいて、今更感。

ここでゴネればワンチャン・・・あるようには、とてもじゃないが思えない。


「いつも、ジムだと『150kg』挙げてるの?」

ミイコさんが申告した、『150』という数値は。

『プラチナジム』で挙げている、バーベルのウェイトだった。


「んー、というか。ウォーミングアップで、かな」

「・・・っ!?」

『150kg』でバーベルカールなんて、ウチの団体でも誰一人・・・。


「・・・両手、だよね?」

「うぅん、片手よ」

インストラクターさんに頼み込んで、ウェイトを増やす許可を得たらしい。

とはいえ、その『150kg』は許可的な意味での最大重量。


「『ベンチ用』のを挙げたい、って言ったら呆れられちゃった」

普通に考えて、片手カールで『150kg』の時点ですら馬鹿げているのに。

更に重いウェイトで挙げたい、なんて言われたインストさんの心中は如何ほどか。


「今って、“こう”なのに」

メモ書き、のようなものをスッと差し出した。

それは、ジムで提出したミイコさんのサイズ表だった。


「何、これ・・・うぇっ!?」

いつの間にか、胸周りのサイズで抜かれている。

レスラーの鍛え抜かれた胸板より、若妻のアンダーバストの方が大きいのだ。


「まだ、やる?」

「・・・ぅ」

ミイコさんとしては、別に凄んでいるつもりはないんだろうけど。


俺より太い首から、山のように盛り上がる僧帽筋。

肩の三角筋だけで俺の頭ぐらいあるのに、その先にはスイカ大の力瘤。

『90cm』という柱と見紛う太腿は、俺のヒップサイズまで後僅か。


ミイコさんの身体を見て『専業主婦』だと思う者が果たして、どれだけ居るだろうか。


「じゃあ、私の勝ちで良いわね♪」

「あ、ああ・・・」

『マッスルベアー』の名を冠するパワーレスラーが。

家庭内では奥さんにされるがまま、なんて知られたら商売上がったりだ。


「私、プロレスのリングに立ちたいの」

「・・・え」

勝利者の賞品として。

ミイコさんは、そんなことを言い出した。

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Comments

感想、ありがとうございます。 次の展開も是非、ご期待頂ければと思います。

デアカルテ

レバー相撲、なるほどですw 片手でウォーミングアップする重量が凄まじい!ミイコさんのジムでの筋トレやそれを目の当たりにする周囲の反応とか気になりますね(プラチナジムだとそれが普通なのかもですが)ミイコさんの最後の発言とてもwkwkします(°▽°)

Nogi_(°Д°)


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