SamSuka
デアカルテ
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その後の三つの願い07「バースト」

「あ、っつ・・・」

全身が火照っていて、熱い。

真夏の夜なのもあって、只でさえ暑いのに。


「・・・ふぅ」

だけど、不快感は無かった。


男性経験なんて皆無な私が、まるで絶頂を経験したかのような。

高揚感を経た後に味わう、そんな爽快感。


「大きくなってる、よね?」

自分自身の身体への、問い掛け。

鏡で確認した訳でもないのに、実感としてワカる。


胸元に視線を落とすと、“突起”が露わになっていた。

所々、布地が残ってはいるものの、タンクトップは見る影もない。


「・・・んぅ」

肩の高さで右腕を掲げ、折り曲げる。

いつもの、『バイセップス』ポーズ。


モリリィッ、モゴォッ!


軽く曲げただけでも、巨大な力瘤が隆起する。

上腕二頭筋だけで、大玉スイカはあろうかというビッグサイズ。


「あれ? 何処、やったっけ・・・」

例に漏れず、短パンも既にビリビリになった為か。

ポケットが破けて、巻き尺が何処かに行ってしまった。


「・・・ん、あれって」

私は、視線の隅っこに映る“それ”が気になった。


この『ゴミ置き場』で、最初から置かれていたんだけど。

今まで一度も、気に留めた事がなかった。


私にとっては、取るに足らない物体。

勿体付けるような代物じゃない“それ”は、只の単なる『タイヤ』だった。


「型番、なのかな」

普通車用と思われるタイヤの側面には、


『205/60R15 91H』


と刻印が入っていた。


「浮き輪みたい」

タイヤにはホイールが入ってなくて、中はドーナツ状。


「ん、っしょ」

私は、その大きな“ゴムの輪っか”に腕を通してみたくなったのだ。


「あ、れ」

タイヤは意外と大きいのか、私の腕を普通に通して仕舞えた。

てっきり、引っ掛かるとばかり思ったのに・・・。


「・・・むぅ」

私は口を尖らせ、ムクれてしまう。


こんなタイヤ程度、『力瘤でバーストさせてやる』なんて思ったのに。

力瘤を盛り上げてスイカ一個半な太さにしてやっと、隙間なく埋まるぐらいだった。


それも、その筈。


刻印は、タイヤの寸法を表していて。

『R15』はホイールを嵌める内径の意味で、内周は約『120cm』。


ドーナツ状の輪っかが、『120cm』に対し。

筋肥大込みで私の上腕は多分、『120cm』台半ば。


サイズ的には行けそうなんだけど、ミチミチッと音は鳴るものの。

アスファルトを走る前提の、硬いゴムを破くには至らなかった。


「何か、悔しい」

凄く、モヤッとする。

腕力を使えば、こんなタイヤぐらいは直ぐに引き裂けるけど。


でも、私の剛腕なら力瘤だけでやれる気がしたのに。

現に、先刻(さっき)は筋肥大だけで男二人を抱き潰した。


――と、その時。


ドクン。


「・・・ぁ」

またしても、お腹に熱いモノが。


ドク、ッン。


「これ、って・・・」

私は相変わらず、学習しないタチらしい。


タイムラグは無くなったけど、かといって即時という訳でもない。

先刻の絶頂は、運転男、鉄パイプ男、髭男の三人分。


まだ、“二人分”残っていたのだ。


「んぅ、ぁ・・・ん♪」

身体が求めるまま、大きく私は嬌声を上げた。

右腕にタイヤを嵌めたまま、下腹部辺りで強く拳を握る。


ドクンッ。


「あぁっ、ん。あぁぁっ!」

周りには誰も居なくて、我慢しなかったからか。

それとも二人分なので、【魂】の量が先刻と比べて少なかったからか。


モリモリモリッ!


モリィッ、モゴゴォッ!


ビリッ、ビリリィッ!


追加分。お替わりの、筋肉肥大。


「はぁ、はぁ・・・っ、ふぅ」

慣れて来たのか、落ち着くのも早くなったかも。


「・・・あ」

少しは残っていた服の布地は、綺麗サッパリ無くなっていた。


誰も居ない、深夜のゴミ置き場。

とはいえ、全裸の巨大筋肉女子が佇む様は最早、ホラー。


「あ、でも」

そう言えば、全裸ではなかった。

上も下も一糸も纏わぬ姿だけど、右腕にタイヤを嵌めていた。


ミヂ、ミヂヂッ。


「・・・ん?」

その、件(くだん)のタイヤからゴムの音がする。


ミヂミヂッ。


「これ、って」

ゴムの伸縮性のお陰で、何もなかったとはいえ。

元からして、タイヤの内周を埋めるぐらいの太さはあったのだ。


「ひょっとして」

更に一段階、太くなった私の上腕は。

私の意思に関わらず、タイヤの輪っかを広げようとしていた。


「今なら、やれそう」

再度の、“タイヤチャレンジ”。


「んぅ・・・ぐぅっ!」

男たちを屠った時ですら出さなかった、気合いの入った力み声。

渾身の力を籠め、右腕を折り曲げると。


バァンッッ!!!


ゴムが伸縮限界を超えたのか、爆ぜた。

パンクした時に起こる、バースト並の轟音。


「う、っわぁ!」

弾け飛んだゴムの切れ端が、私の顔を打ち付けた。

痛くはなかったけど、ビックリしちゃうのは仕方ない。


「ふふ♪」

世界広しといえど、力瘤だけでタイヤをバースト出来るのは私ぐらいだろう。

一度失敗したこともあってか、達成感で気分が良くなる。


「~~♪」

左腕でも、試してみた。


ブチブチッ・・・ブチィッ!


少しずつ力を入れるとバーストせず、ゆっくり引き裂く事も可能だった。


「・・・って、ヤバ」

気付くと、空が少し青くなっていた。

月の位置も、だいぶ低くなっている。


タイヤを引き裂いて遊んでる場合じゃない。

自前で着る物がない、全裸状態なのに。


流石に、陽が昇ったら家に帰る事も出来なくなる。

街道に出た瞬間、速攻で通報される。


「仕方ない・・・か」

私はキャタピラやら、油圧ショベル車の残骸から鋼材を引き剥がし。

硬い鋼鉄なのをお構いなしに、手で捏ね捏ね。


バギッ、メギョッ。

メキメキ・・・バギャッ。


「こんなもん、かな」

即席で工作した、“鋼鉄製”の上下衣類。


タンクトップに見立てた、ノースリーブの胸当てに。

短パンに見立てた、スカート状の腰巻き。


材質が鋼鉄なら不意に破れたりしないだろう、という判断。


パッと見、アーマーブレイクした中世の鎧騎士にしか見えないけど。

街灯が少ない裏道を通れば、まあ大丈夫でしょ。



―――。


「・・・ふぅ。やっと、着いた」

裏道だけで帰って来るのは、流石に疲れた。


それでも、全く人目に付かず、とは行かなくて。

通りすがる人たちに、凄く奇異の目を向けられちゃった。


「えーっと、何処だっけか・・・」

帰宅するなり、私は押入れを漁った。


巻き尺は離れた所に落ちていて、ちゃんと回収して帰った。

だから、巻き尺を探している訳ではない。


「あ、あった」

子供の頃に遊んだ記憶の、『浮き輪』。

空気は抜けているので、只のビニール製の輪っかなんだけど。


「まあ、一応ね」

これからやる行為に、意味はない。

さっきやった、“遊び”の延長。


あの場でもっと、色々と試したかったのに時間切れ。

そのせいで、少しだけ消化不良だった。


「ん、と。ぷぅ~っ」

パンクさせないように、少しずつ空気を送り込み。

空気穴の口を閉じて、浮き輪の完成。


「こんなもん、だっけ」

子供心に、大きいと思っていた浮き輪。

海で着けていて、何度も水面に抜け落ちて沈みそうだったのに。


空気を入れて膨らんだ状態でも、タイヤとサイズ感は変わらず。


「・・・ん」

腕を通しただけでギチィッ、とビニールが悲鳴を上げる。


「っしょ・・・」

恐る恐る、腕を曲げようとするも。


パァンッ!


「・・・ぁ」

速攻で、破裂。


ゴムタイヤですら破裂させる、私の超力瘤に。

ビニール浮き輪が太刀打ち出来る訳もなかった。


因みに、ウチにあった浮き輪は、内周が『115cm』。

この後、計った力瘤は、何と『130cm』だった。

Comments

感想ありがとうございます。 やれる所までは描きたいと思っています。

デアカルテ

投稿お疲れ様です 望ちゃんが筋肉成長に慣れて来てるところがとても良かったです! この後も筋肉をどんどん成長させて、個人的には現時点でデアカルテさんの作品で最もデカい悪魔のアプリの仁美ちゃんぐらいかそれ以上までデカくなってほしいです! 後、タイヤを最初はバースト出来なくてムクれているシーンが可愛いかったです

NL


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