天然彼女05「夏服事件」
Added 2025-09-14 15:00:00 +0000 UTC僕の彼女、『進藤奈緒』は天然である。
セクハラを働いた水泳部長を、ピンポン玉のように殴り飛ばし。
ゲームと称してイジメを行った先輩を、腹パン一発で沈めた。
これにより、水泳部内で奈緒は“アンタッチャブル”となった。
体力測定では握力計を握り潰し、背筋力計の鎖を引き千切った。
懸垂においては、『100回』という前人未到の大記録を打ち立てた。
これにより、ウチのクラス(と体力測定で現場に居た者)から一目置かれるにように。
トレーニングルームで、柔道部員たちと鉢合わせてしまい。
ベンチプレス中の柔道部長を、その台ごと持ち上げてしまい。
危険行為と見做(みな)され、学内でのウェイトトレを無期限で禁止された。
「今日から、夏服だね♪」
通学の最寄り駅で一緒になり、そのまま並んで登校。
「何か、嬉しそうだね」
「うん♪ やっと、窮屈な長袖から解放されたと思って」
奈緒は、着痩せする体質。
長袖着用だと、ポッチャリ系の豊満女子なイメージ。
「そ、っか・・・」
本来なら、彼女との楽しい通学。
しかし、今年初めて見る夏服姿が、僕は気になって仕方なかった。
奈緒は長袖の時、かなり大きなサイズを着ていた。
同じサイズなら、半袖でもそうは変わらない…筈だった。
「それ、サイズは幾つ?」
「え、っとね。『3XL』だよ」
へへーん、と奈緒は夏服のブラウスを僕に見せてくれる。
仕草としては、両腕を広げただけなのだが・・・。
モコ・・・モココッ。
「す、凄いね」
本当なら、『綺麗』とか『似合ってる』とか言うべきなのに。
「へへ、そっかな」
明らかに褒め言葉ではないそれを、奈緒は喜ぶ。
照れ隠しに身体をモジモジと捩る、その度に。
モリ、モリリッ。
奈緒を包むブラウスのあちこちが膨らんだ・・・のは気のせいじゃないよな。
「それ、窮屈じゃないの?」
奈緒の夏服は、どう見てもサイズが合っていなかった。
太い首に、襟がピッタリと張り付いているし。
肩は、三角筋そのままの形にブラウスが大きく出っ張って。
袖は、上腕二頭筋の隆起に押し負けて襞(ひだ)みたいに固まってる。
「うん。長袖よりは面積小さいから」
「面積、って・・・」
それはつまり、全身を覆う範囲が少ない分、楽って事なんだろうか。
「“そこ”も、足りてる?」
僕は、彼氏特権を行使してさえ、セクハラと取られ兼ねない視線を送る。
「えー、どこ」
奈緒は、僕が見ている先を理解していなかった。
「・・・・・」
多分、通学電車とかで視線を集めていたんだろうけど。
きっと、それにも気付いていないんだろうな・・・。
「胸元、だよ」
トップ『135cm』、推定『Jカップ』という学生らしからぬ爆乳。
丈が足りていなくて、ブラウスの前ボタンの間隔が開き捲っている。
「“伸び”とか、しちゃだめだからね」
ボタンの隙間から、薄ピンクなブラがチラチラ見えていて。
身体を動かす度に隙間が大きくなり、いつか御開帳しそうだ。
「え。伸びって、“こう”?」
「え、ちょ。だ・・・」
『コント芸』の“フリ”、と思った訳ではないんだろうけど。
『ダメ』と制止するより早く、奈緒は“伸び”の体勢を試みて。
ミチ、ミチチッ・・・ブボァンッ!
「うっ、おわぁっ!」
チュインッ、と僕の耳元をボタンが高速で通り過ぎて行った。
それは、まるで拳銃の弾丸のようだった。
「あ、あれ?」
奈緒自身は、単に伸びをしただけなんだろうけど。
たったそれだけで、ブラウスの胸元のボタンが二つ、飛んで行った。
「替えのボタン、ある?」
「多分、ポケットに・・・」
奈緒自身にやらせると、公衆の面前でブラウスを脱ぐ事になるので。
下駄箱に行かず校舎裏に移動して、何とかボタンの再装着に成功。
家庭科の授業で、ちゃんと裁縫を勉強していて良かった。
「えへへ、ありがと」
「ど、どういたしまして」
何度か、その豊満なバストに手が触れたんだけど。
奈緒は気付かない振りをしてくれたようで、助かった。
幾ら天然とはいえ、流石に気付いたよね?
いや勿論、決してワザとではないんだけど。まさか・・・。
「まあ、ブラウスは買い替えた方が良いかも」
「う、ん。そうだね」
何処か、歯切れの悪い返答。
奈緒が言うには、長袖に窮屈さを感じた時に買い替えていたらしい。
「お肉、付いちゃったのかな・・・」
そう言って、自身の二の腕を“グニグニ”と摘まんでいる。
「・・・・・」
僕は、奈緒の指が二の腕に全く沈まなかったのを見逃さなかった。
普通なら“プニプニ”という可愛らしい擬音で、脂肪に指が埋まっても良いのに。
握力計を握り潰す奈緒の指が、跳ね返される二の腕。
奈緒の上腕は、伸ばしたままの状態でも砲丸ぐらい大きくて。
水泳部で鍛えた僕の腕が力瘤を盛り上げて尚、足りない。
女子用のブラウスの袖に、砲丸って入るものなのだろうか。
「ジムには、まだ通ってるの?」
出禁になる以前から、奈緒は学校のトレーニングルームには顔を出さない。
冬休み以降、都合で半年近く『街ジム』に通っている。
「うん! 毎週、行ってるよ」
「あ、だめだめっ! ストップ!」
『力瘤ポーズ』を取ろうとした奈緒を、今度は寸での所で制止に成功。
奈緒が腕を曲げた段階で、袖がミチミチッと悲鳴を上げていた。
「村井先輩の言い付けは・・・」
既に卒業した元副部長、今はもう『OG』な村井先輩。
奈緒を『営倉送り』にした元凶、色んな意味での戦犯。
『一ヶ月毎に扱うウェイトをダンベルで5㎏、ベンチプレスなら10㎏ずつ増やして行きなさい』
なんて言う途方もない課題を、置き土産として置いて行った。
「もちろん、守ってるよ♪」
「え。まだ、続けてるの・・・?」
「今、『70』挙げてるよ。ベンチは『140』かな」
「そ、そうなんだ・・・」
ダンベルカールで、『70kg』。
言うまでもなく、奈緒は片手で熟(こな)してしまう。
『70kg』という重量は、単純計算で“僕一人”分。
女子かどうか以前に、大人の男でも容易に挙がるウェイトではない。
奈緒は、その気になれば僕一人ぐらい片手で持ち上げてしまえるのだ。
「夏服を仕立て直すまで、あんまり身体を動かさないようにね」
「うん、わかった」
奈緒は、僕の忠告にハキハキと返事をした。
ざわ・・・
ざわ・・・
教室に着くなり、夏服姿の奈緒に注目が集まってしまう。
少なくとも、クラスメイトは『体力測定』で見てる筈なんだけど・・・。
「何か、また逞しくなった?」
クラスメイトの美紀が開口一番、皆が思っていそうな感想をぶつけた。
「えー、そっかなぁ」
今まで長袖だったのが、夏服の半袖になっただけ。
『体力測定』から、二ヶ月も経っていない。
たった二ヶ月ぐらいで、大きくは・・・なってないよね?
“それ”が起きたのは、昼休みだった。
昼ご飯を終え、皆が思い思いな時間を過ごしていて。
ちょうど風が心地良かったのか、奈緒は居眠りをしていた。
「ねぇ、奈緒。昼休み、もう直ぐ終わるよ」
昼休みの残り時間が後僅かという事で、美紀が気を利かせてくれた。
「う、うぅ・・・んぁ?」
奈緒は、ゆっくりと身体を起こす。
「ふぁ、あ・・・」
しかし、まだ何処か、夢見心地で。
「起き、なきゃ・・・」
目を覚まそうと、奈緒は大きく“伸び”をした。
いや、それだけならまだ良かったんだけど。
グググ・・・。
「うぅ~~、んっ!」
大きく“伸び”た万歳の姿勢から、腕をグッと折り曲げてしまう。
モゴゴ・・・モリ、モリモリリィッ!
ビッ、ビリリィッ!
ブボァンッ!
「「「っ!!?」」」
僕も含め、教室に居た全員が奈緒の席に振り向く。
万歳の状態から腕を曲げれば、それはもう『ダブルバイセップス』ポーズな訳で。
二の腕は、ハンドボールかと見紛う程に大きくなってしまい。
そんな特大の力瘤が袖に収まる訳がなく、袖の生地が完全に弾け飛んでいた。
「ちょ、ちょっと! 奈緒、隠してっ」
「は、はれ・・・?」
前方に大きく張られた胸元は、ブラウスのボタンが三つ程、消えていて。
美紀が大慌てで、手持ちのタオルで覆い隠している。
「なに、なに。何が起こったの」
「うっそだろ、見た? 今の」
「で、でけぇ・・・」
その瞬間を見ていなかった者も、惨状を見れば直ぐに想像が付いた。
高校二年の女子が、筋肉を盛り上げて制服を着破った、と。
まさかの、制服破裂事件。
午後の授業は、奈緒だけ体操着で受けることになった。