肉の日のミイコさん04「夜の交渉」
Added 2025-09-28 15:00:00 +0000 UTC「それって、見学したいってこと?」
「もうっ。何で、そうなるのよ」
ミイコさんは腰に手を当て、プンプンッと怒り顔。
勿論、怒った“振り”なんだけど。
ミイコさんの肉体は、腰に手を当てただけで筋肉が一回り大きくなり。
それはもう『ラットスプレッド』という、筋肉を誇示するポーズにしかならない。
「私、本当はプロレスがやりたかったの」
「やりたいからって、そう簡単には・・・」
生粋のプロレスファンな、ミイコさんではあるけれど。
やる方に回りたい、っていうのは初耳。
「私、強くなったと思うの」
俺の体重より重いウェイトを、ミイコさんは片手で挙げてしまう。
「いや、それは・・・」
否定、出来なかった。
現に今、俺はミイコさんに小手先で弄ばれた。
鍛え上げたレスラーの肉体を以ってしても、片腕すら動かせなかったのだ。
ミイコさんは学生時代、体育は苦手で成績も悪くて。
スポーツに打ち込む事もなく、運動とは無縁な生活だったらしい。
今でこそ、フィジカルモンスターである事は全く疑いようがないが。
もっと早い段階で気付いていれば、パワー系種目でオリンピックなんて未来も有り得ただろう。
「うーん・・・」
筋肉によって齎(もたら)される筋力に、マグレや偶然はない。
これは、俺の持論だ。
改めて、冷静に振り返れば。
対峙した時の威圧感は、ミイコさんの肉体が本物である事を如実に物語っていた。
「・・・ねえ。だめ?」
ミイコさんが俺の肩に手を置いて、懇願する。
メキ・・・ッ。
「ん、ぎ・・・」
俺の肩、三角筋が軋む。
ミイコさん的には下から縋(すが)り付き、見上げているイメージなんだろうか。
だけど、肩越しに掛かる圧力は凄まじく。
メギメギッ。
「んぐっ」
俺は、その圧力に耐えきれず、ガクッと片膝を着く。
このまま、身体をグシャッと折り畳まれてしまいそうな予感さえ、する。
メギョッ、グギョギョッ。
「し、しかしっ・・・だな」
ヤバい。どんどん、身体の軋みが酷くなって行く。
このままだと、本当に身体を縦に潰されてしまう。
「じゃあ、もっかいやる?」
「え」
まさかの、延長戦の提案。
「何回でも、良いよ」
それは、つまり。
何度やっても、ミイコさんは俺に勝つと言っているのだ。
俺を舐めていたり、侮っている感じはしない。
己の実力を把握し、何度も対戦した経験を踏まえた上での判断。
ミイコさんがその気なら、『レバー相撲』なんて間怠(まどろ)っこしい事をやらずとも。
素直に、腕相撲をやれば良かったのだ。
百回やっても恐らく、俺が百敗しただろう。
腕一本、折る覚悟で挑んでも瞬殺されるのがオチ。
俺を怪我させずに済ませるのが難しい、と思ったのかも知れない。
「それとも、“こっち”?」
「え!?」
ミイコさんは、俺を押し倒して。
俺の右手を、その豊満なおっぱいに圧し付けた。
むにゅ、ずぶぶぅ。
「う、ぉ・・・っ」
俺は、何も話せなくなってしまう。
「っ!?」
更に、ミイコさんの可愛らしい唇が、俺の口を塞ぐ。
要求の限界値を、奉仕することで競り上げようと言うのだ。
そんなハニートラップに、この俺が・・・
――。
俺が・・・
―――。
俺、は・・・・・
――――。
チュン、チュン。
朝、になっていた。
俺は抵抗むなしく抱き抱えられ、半ば強引に寝室へと強制連行され。
そして、朝を迎えた。
「どう、だったかしら?」
「おっぱい」
「ふふ♪」
「・・・あ、いや」
力比べだけでなく、夜の生活でも完全にされるがまま、だった。
「じゃあ、お願いね♪」
「あ、ああ・・・」
キングサイズのベッドで、ミイコさんの巨乳に顔を埋めながら。
俺は、そう答えるしかなかった。
―――。
「と、いう訳でして」
「がっ、はははははっ!」
居酒屋に、大きな笑い声が響き渡る。
個室席なのに、隣まで届きそうな大声。
普通な間取りの一般的な居酒屋は軒並み、出禁になった。
ウチの団体は酒癖が悪い者も多く、追い出されては次の店、の繰り返し。
「虎雄が深刻な顔して飲みに誘うから、何かと思えば・・・」
がははは、と又しても大声で笑われてしまった。
「しゃ、社長。もう、その辺で・・・」
俺は、社長を連れて飲み屋に来ていた。
目的は勿論、ミイコさんの“お願い”について。
とはいえ、素面で言えるような内容ではなく。
まして、ウチの団体の皆が居る前で言える訳もなく。
「相変わらず、尻に敷かれてんなぁ」
プロレスラーみたいな男稼業は、女房の尻に敷かれてナンボ、が口癖。
昭和から連綿と続く、生粋のプロレス人な社長。
「まあ、無理ですよね。はは」
酔いの席とはいえ、一度でも話を通せば任務は完了。
“達成”はしていないが、その辺は上手く誤魔化そう。
「面白ぇじゃねぇか」
「・・・え」
社長から、まさかの返答。
「虎雄。俺はな、お前さんの実力は買ってんだ」
俺を見い出し育ててくれたのは、この目の前の社長だ。
現役時代の実力も、それはもう半端なかった。
「そんなお前の脚を折ったばかりか、勝負しても無敗・・・だっけ?」
「こ、ここ数年の話ですよっ」
それに勝負とは言っても、夫婦間のレクリエーション的なモノ。
いわゆる、プロレスの一試合と同列にされるのは困る。
「馬鹿言っちゃいけねぇ。試合や練習で今まで、お前の脚を折った奴が居たか?」
「・・・・・」
ウチは基本的に、“ブック”はやらない。
“真剣(ガチ)”を謳っている以上は、常に全力でやり合う。
「関節を痛めた事なら、何度もありますが」
だからこそ、試合だけでなく練習でも怪我が絶えない。
今の世情に合っていないとも言えるが、そこはウチの方針なので致し方なし。
「でも、お前さんがやられたのは大腿骨だろ。しかも、粉砕骨折」
関節技で骨を折った選手は、今までに何人も居る。
しかし大抵、普通にポッキリ行くか、酷い場合だと複雑骨折。
粉砕骨折は、強い圧力が掛かった時でないと、起きないものなのだ。
「お前の嫁さん・・・何、だっけか。そう、『クラッシャー・ミイコ』」
「クラッシャーは、余計です・・・」
この社長、過去に一度だけだが、ウチのミイコさんには会っている。
実際、ウチらの結婚式の仲人が、この社長だった。
「パワーで売ってるお前を、そこまで遣り込めるんだ。改めて、見てみたいぜ」
そういや、当たり前だが新婚当時の体型しか知らないのか。
“今のミイコさん”を見たら、驚くだろうなぁ・・・。
「兎に角、一度ぐらいは連れて来いよ」
「マジ、ですか」
それは勿論、ウチの団体の練習場に、ということだ。
「ウチの練習場、女人禁制だったりは・・・」
「そういうのは、特に無いねぇ。だって、ウチは相撲部屋じゃねーからな」
そりゃあ、そうだ。
――翌日。
「おう、虎雄。“アレ”、いつでも良いからな」
「あ、はい・・・」
あの後、しこたま飲ませたのに、社長は完全に覚えていた。
これで、俺の逃げ道は完全に封鎖されてしまった。
Comments
感想、ありがとうございます。 ミイコさんは眠らせておくのは惜しいキャラだと思っていたんで、続編は書いていて楽しいです。
デアカルテ
2025-09-29 09:05:06 +0000 UTC肩を軋ませながらの「お願い」しているところや、勝負をもう一回する?と持ちかけるミイコさんとても良い...ミイコさんのこの性格とその圧倒的なパワーのギャップのようなものが好きです!(実際に縦に潰しちょうところとかも見てみたいてですねw)
Nogi_(°Д°)
2025-09-29 03:57:19 +0000 UTC