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筋肉の楽園03「L:レイコ」

「ここ、か・・・」

何度か迷った末に、やっとの事で辿り着いた。


『M倶楽部』。


地下への降り口にある、黒塗りの屋号プレート。

そこには確かに、そう刻まれている。



「ようこそ、お出で下さいました」

豪奢な扉の先には、高級そうなスーツ姿の受付嬢。


「今日はお一人様という事で、伺っております」

「あ、ああ。はい」

返事の声がつい、上ずってしまう。


先輩の都合が付かなかった事もあって、二回目にして単独来訪デビュー。

こういった店は行き慣れていないので、どうしても緊張してしまう。


「そんな、緊張なさらず。退屈はさせませんから」

流石は客商売なのか、見抜かれている。


席に通されると、直ぐに『筋肉嬢(キャスト)』が付いてくれた。


「本日は、私がお相手させて頂きます」

「今日は、よろし・・・っ!?」

椅子に座った関係上、見上げる形になるのだが。


そうでもなくとも、もし立っていたとしても見上げていただろう。

俺より、目線一つか二つ分ぐらいは背が高い。


ザッと見て、『175cm』ぐらいは有りそう。


「ふふっ♪ 初めての方は皆、驚かれます」

慣れていると言わんばかりに、『筋肉嬢(キャスト)』はニッコリと微笑んだ。


姫カットした黒髪のロングヘアに、切れ長の瞳。

こういう店には似つかわしくない、大和撫子な雰囲気の物凄い美人。


「申し遅れました。私、【L:レイコ】と申します」

そう名乗った美女は、全てにおいて度肝を抜く容姿をしていた。


“こういう”お店なので、昨今のコンプラやらフェミニズムは置いておく。

そういう柵(しがらみ)を抜きにして、【L:レイコ】さんを評するのであれば。


とにかく、デカい


その一言に、尽きる。


身に纏う衣装は、高級クラブでは正装とも言える『Vネック』の赤いドレス。

そんな『Vネック』から零れ出そうなぐらい、大きなメロンを思わせる爆乳。


「・・・その」

「素直な感想、仰って下さって良いんですよ?」

駆け付け一杯目のカクテルを作りながら、そう促される。


「女性に対してこう言うのはなんですが、その・・・大きいですね」

脳内でコンプラを無視するのは容易だが、いざ口に出すとなると難しい。


「ふふっ♪ それも、良く言われます」

彼女が微笑むだけで、肩や腕がモリッと蠢く。


『Vネック』ドレスは布地が少ない分、肢体の大半が露わになっているんだけど。

目に見える肌の殆どが、鍛え込まれた筋肉で盛り上がっている。


美人で高身長だとファッションモデルを想像するけど、トンデモない。

迫力だけで言えば、『180cm』超えのモデル以上。


美女然とした顔から伸びる首は、『頸部』と表するぐらい部位として太く。

山なりに盛り上がる僧帽筋から左右にバンッと広がる肩幅。


肩の三角筋、上腕二頭筋はそれぞれが砲丸ぐらいはあろうかという大きさ。

ドレスのスリットから覗く太腿も、大腿四頭筋がモゴォッと盛り上がっている。


「本当に凄い・・・。『ナ●リア・ク●ネツォワ』を思い浮かべました」

「有名なボディビルダーさんに例えて頂けるなんて・・・」

もし、【L:レイコ】さんの顔写真だけ見たら、真っ先に着物姿を想像する。

そんな和風美人の首から下が、海外の一流ビルダー顔負けの肉体なのだ。


「嬉しいです♪」

お淑やかな口調には不釣り合いな、『バイセップスポーズ』。


モゴォッ・・・ミチミチ。


「・・・っ!?」

ウェーブの入った、ゆったりとした『メロー袖』が急にギチギチに詰まる。

砲丸だった二の腕が、ハンドボール大にまで膨れ上がった結果。


ピッ、ピリリッ!


「っ!!?」

「・・・あ」

特大の力瘤は、豪奢なドレスの袖を無残にも引き裂いてしまった。


「ひょっとして、パフォーマンスか何か、ですか?」

来店して、そんなに時間は経っていない。

お酒もまだ、一杯目。


『筋肉嬢(キャスト)』が、“着ているドレスを自ら破く”なんて。

きっと、そうに違いない。


「や、っちゃった・・・」

「・・・へ?」

“素”が出るぐらい、【L:レイコ】さんは狼狽していた。


「すみませんっ! お客様の前で、端無(はしたな)い真似を・・・」

「い、いえっ。お気になさらず」

着替えて来る、と言いそうになる【L:レイコ】さんを止めた。


「でも、こんな格好で・・・」

「ホンのちょっと、袖が破けただけじゃないですか」

“筋肉女性”好きにとって、『袖破り』なんてご褒美以外の何物でもない。


筋肉隆々な長身美女で、更に“ドジっ娘”属性まであるなんて。


少しでも長く、お相手して欲しいぐらいだ。

着替えでバックヤードに下がらせるなんて、勿体ない。


「じゃあ、ワザと小さいサイズを着てた訳じゃなかったんですね」

てっきり、プロレスラーとかのシャツ破りみたいな『魅せプレイ』かと思ったんだけど。


「・・・はい」

シュンとしていても、【L:レイコ】さんの肉体は大きいままだった。


「そのドレス、確かに凄くお似合いですよね」

「本当ですか? お気に入りなんです」

お気に入りと言うだけあって、サイズ感はピッタリな気がする。


「実は、何度か仕立て直しているんですけど」

今度は恐る恐る、丁寧に袖を捲ってから、力瘤を盛り上げる。

超スローな、『バイセップスポーズ』。


「やっぱり、凄い・・・っ」

赤いドレスにピッタリな、白い柔肌。

それが急激に嵩を増し、曲げた手首にまで届きそうな高さの力瘤が隆起する。


「触って、みますか? 本当はダメなんですけど・・・」

「え、良いんですか?」

責めてものお詫びに、と『お触り』のサービス。


「じゃ、あ・・・」

お言葉に甘えて、と。

嫌らしくならないよう、ガシッと掴むように手を当てる。


「・・・っ!?」

硬い、という単語が出て来なくなるぐらい、ガッチガチだった。

ツルハシやハンマーで叩いても、割れそうにないぐらいの強固さ。


「また、大きくなってしまったのかな・・・」

【L:レイコ】さんは『筋肉嬢(キャスト)』の仕事柄、鍛えるのは日課らしく。

プライベートな時間の大半を、筋トレに充てているそう。


「でも、鍛えたら筋肉って大きくなるものじゃないんですか?」

トレーニーがプロテインを飲むのも、筋肉の元になる蛋白質を効率良く摂取する為。


「私、プロテインは飲まないんです」

「ええっ!?」

【L:レイコ】さんは、『詰まらないですよ?』と前置きした上で。

酒の肴に、と身の上話をしてくれた。


「子供の頃から背が高くて、更に“肥満児”だったんです」

女子で大柄、更に太っているとなると、色んな意味で目立ったに違いない。

俺が想像するまでもなく、いわゆる『イジメ』に遭ったそうで。


「この“胸”も、良く揶揄(からか)われました」

これだけ全身、筋肉隆々なのに、ドレスから覗く谷間は爆乳のそれ。


「揺らすことも、出来ますよ? 端無(はしたな)いですけど」

【L:レイコ】さんの胸が、プルンッと独り手に揺れた。


「・・・え、どうやったんですか」

「大胸筋も鍛えてますので」

表面上は爆乳だけど、その裏の何割かは鍛えた大胸筋らしい。

セルフ乳揺れも、お手の物。


「ダイエット目当てで始めたら、手段が目的になってしまって」

筋肉を付けたい、というよりは。

脂肪を落としたい、が当初の目的。


・・・だった筈か、いつしか筋トレそのものが目的になってしまった。


「私、体質的には脂肪よりも、筋肉の方が付き易かったみたいで」

プロテイン無しで、これだけの筋肉が付いたのか・・・。


プロテインって、どう味を付けても美味しくないのが鉄板。

この話、トレーニーが聞いたら噴飯モノだろう。


「『96』って、何だと思いますか?」

「・・・?」

突然、クイズが始まった。


「私の身体の“数値”、なんですけど」

「【L:レイコ】さんの、数値・・・」

もし、言い当てられたら更にサービスしてくれる、とのこと。


「それ、セクハラになりません?」

「・・・? 大丈夫ですよ。私から言い出した事ですし」

改めて、間近に座る【L:レイコ】さんを見遣る。


「・・・もうっ、嫌らしい視線は禁止ですっ」

「す、すみません」

つい、嘗め回すように全身を見てしまった。


「ふぅ、む」

人間の身体で、『96』っていう大き目の数値が当て嵌まる箇所は限られる。

俺自身で、言うなら・・・。


「バストサイズ、とか?」

「ぶー。外れ、です」

【L:レイコ】さん程の体格なら、それぐらい有ると思ったんだけど。


「じゃあ、ヒップサイズ」

「違います」

【L:レイコ】さんの目が若干、引き気味に見えるは気のせいだろうか。


「うー、ん・・・」

余り、変な箇所を挙げて幻滅させてしまうのは避けたい。


「ヒントは、【ポイント表】には載っていません」

「【ポイント表】って、確か・・・」

来店する毎に、貯めたポイントで特別サービスを受けられる奴、だっけか。


【ポイント表】

01pt:力瘤サイズ、太腿サイズ

02pt:握力

03pt:体重、体脂肪率

05pt:スリーサイズ

10pt:キャスト指名権


「と、なると・・・あれ?」

身体サイズが、殆ど対象から外れる事になる。


「すみません。降参ですっ」

「ちょっと、イジワルな問題だったかも・・・ですね」

単位が『cm』じゃないなら、『kg』かとも思ったんだけど。

握力以外で、例えばバーベルウェイトとかだと『96』は半端過ぎる。


「実は私、『筋肉量』が『96kg』有るんです」

「・・・へ?」

意外な、回答だった。


クイズの難易度としては、少し物申したい気分ではあるけど。

それ以上に、挙げた項目に対応する数値としての驚きが、それを上回った。


「・・・え。筋肉の量が、『96kg』?」

「はい」

ニッコリと微笑みながら、【L:レイコ】さんは首肯した。


「え、え。・・・ええっ!?」

「ふふっ」

この、目の前の美しい女性の、体重ではなく。

その内訳になる何割かの、『筋肉量』が『96kg』!?


因みに、俺の身体値は次の通り。


身長:165cm

体重:68kg


身長で比較すれば、“たった”『10cm』差。

なのに、筋肉の量だけで俺より『30kg』近くも重い事になる。


「じゃあ、体重は・・・」

「それは、ヒ・ミ・ツです♪」

どさくさ紛れに聞けるかと思ったけど、甘くはなかった。


「体重は、ポイント対象なので・・・」

【ポイント表】には、体重の他に体脂肪率なんて物もある。


この店では、正確に測っているんだろう。

とはいえ、俄かには信じ難い数値。


「・・・あ。じゃあ、キャスト名の頭のアルファベットって」

「ご明察です♪」

先輩に連れられて、この店に来た時から。

ずーっと、気になっていた。


何で、名前の頭にアルファベットが付いているのか。

てっきり、接客ランクみたいな物だと思っていたんだけど・・・。


『S・M・L』が、そのまま小中大の意味なのだとすれば。


【S:セイラ】さんに、【M:ミイナ】さん。

今思えば、ヒントは既に何度も提示されていた事になる。


「体重、知りたいですか?」

女子の体重、というよりは。

純粋に、目の前の【L:レイコ】さんの筋肉ボディがどれ程なのか、は気になる。


「今日は恥ずかしい所もお見せしてしまいましたし、『1pt』でサービスしますよ?」

そこは、ポイント無料みたいにはしれくれないのか・・・。

中々に強(したた)か、ではある。


「いえ、ヤメておきます」

「どうしてですか?」


「『5pt』貯めて、また【L:レイコ】さんを指名したいので」

「え。・・・嬉しいっ」

ガバァッと【L:レイコ】さんの両腕が開くと。


「っ!?」

俺の身体がガシッと掴まれ、頭がドレス越しに爆乳へと圧し込まれる。


ミシッ、メキメキ・・・。


「~~っ!」

「あぁ、すみませんっ」

直ぐに開放されたので、事なきを得たんだけど。

正直、色んな意味で“召される”のではないかと思った。


一瞬とはいえ、身体が圧壊するのを覚悟した。

爆乳を味わう余裕は、全くなかった。


「つい、嬉しくて・・・」

「ど、どういうことです?」


「私、余り指名されないので・・・」

「え。貴女ほど綺麗な人が、何で・・・」

これは、個人差がある話ではあるんだけど。


筋肉女子好きにも色々、居て。

細マッチョ好きも居れば、バルキー好きも居る。


ただ、比率で言えば、やはり細マッチョ好きが大半を占める。

女性らしいフォルムで、男よりは少し劣るサイズの筋肉で、みたいな。


『M倶楽部』でも、人気なのは【S:セイラ】さんや【M:ミイナ】さん辺り。

だからこそ前回の初回来店は、【S:セイラ】さんが付いてくれた。


今回、二回目とは言え、一人での来店ということもあり。

お店的には“上位人気”を宛がう必要はない、と判断された事になる。


俺自身、常連やお得意様には程遠いので、客としての扱いはそれでも良いんだけど。

こんな素晴らしい肉体を持った【L:レイコ】さんが不人気なのは正直、納得行かない。


「キャスト同士は、凄く仲が良いんですよ」

それは逆を言えば、お客側の指名率には差があるという証左でもある。


「ひょっとして、プロテインを飲まないのって・・・」

「はい。必要以上には、大きくしたくなくて」

プロテインを摂取する事で、少なくとも筋肉量は増える。

裏を返せば、取らない事で筋肉量を抑えようという魂胆。


「【S:セイラ】ちゃんとかには、いつも羨ましいって言われてしまうんですが」

実際に、【L:レイコ】さんは身近な人に噴飯されていた・・・模様。


「今までは偶々、貴女を好きな客が居なかっただけですよ」

“推し”が出来るって、こういう感覚なんだろうか。


「本当ですか? そう言ってくれるなら、明日からも頑張れます!」

【L:レイコ】さんは気合いのポーズなのか、両拳をグッと握る。


モゴゴォッ!


「すご・・・っ」

拳を握り込むだけで、二の腕が又しても大きく盛り上がる。


ピリッ。


「あぁっ、また・・・」

「あはは。ドレスを新調出来るぐらい、通いますから」

お酒で血流が良くなったせいか、ドレスの両袖から裂ける音が聞こえた。


「ナンバーワン・・・は無理かも知れませんが」

ホスト通いする気持ちが、少し理解出来た気がする。


「いえ、またお会い出来るのを楽しみにしていますね」

最低でも後、八回はここに通う目的が出来てしまった。


【キャスト指名権】は、『筋肉嬢(キャスト)』と色々な事が出来る・・・らしい。

先輩から聞いた話なので、真偽不明ではあるけど。


今日、少しだけ片鱗を見せてくれた【L:レイコ】さんの身体に秘められたパワー。

その怪力振りを是非、見たいと思うのだった。

Comments

感想、ありがとうございます。 この話と並行してアンケートを採ったら、上位結果がレイコとキャラ被りしそうで悩ましいです。

デアカルテ

筋肉の楽園!好きなシリーズの続編とても嬉しいです!キャストの名前の意味、そうだったんですね...(°▽°) レイコさん、大きくて大きいのめちゃ好みです!筋肉嬢達の色々な絡みやそのフィジカルから生まれる圧倒的怪力をまた読んでみたいですね(^ ^)

Nogi_(°Д°)


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