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MGガール30「高2:⑤球技」

「健ちゃん、どうしよう」

「うーん。まあ、行ってみて・・・だね」

僕たち二人は、『研究所』に向かっていた。


夏休みが明けて、新学期になり。

秋めいて来た頃合い、僕たちはとある問題にブチ当たっていた。



「いらっしゃい。事情は聞いてるわ」

白衣姿の星さんが出迎えてくれる。


早速、いつものグラウンドに移動。


「今日は、“それ”でやるのね」

「はい」

真理奈は、既に【活動服】に着替えていた。

競泳水着タイプで、真理奈の肢体はピッタリと覆われている。


「今、って」

「うん。【圧縮】してるよ」

身長は僕より高く、多分だけど『180cm』手前ぐらい。


バレーボールを思わせる乳房が生地を押し上げ、大きさを主張していて。

お腹も、六分割された腹筋がクッキリと浮かび上がっている。


【活動服】という、地球外の超技術による体型補正サポーター。

それを纏っていて尚、プロの格闘家並みの筋肉ボディ。


僕と比べたりなんかしたら、モヤシと大木ぐらい差がある。


「パワーは落ちてるんだっけ?」

「うん。少し、だけど・・・」

真理奈は、事前に用意して貰った研究所特製の握力計を握っている。

片手間に握っているにも関わらず、『187kg』と表示。


「確かに、“少し”だね・・・」

真理奈が本気で握った時の数値は、『441kg』。

それに比べれば、確かに筋力はダウンしている。


「一応、こちらで用意出来る物は準備しておいたから」

「ありがとうございます」

星さんが、大きな鉄の箱を持って来てくれた。


軽やかに扱っているが、かなりの重さの筈。

勿論、星さんも【圧縮】中、である。


「“これ”が、そうなんだ」

箱の中から、真理奈がボールを取り出す。


「ん・・・っ」

パァンッ!と、一瞬でボールが破裂した。


「うぉわっ」

真理奈の手には、外の革がボロボロになったソフトボールが握られている。


「今って、どのぐらい力入れたの?」

「それなりに強くは握ったかも。軽く掴む分には、大丈夫そう」

真理奈は、初めて触れるソフトボールをギュッ、ギュッと握っている。


「・・・・・」

軽く、という割りには楕円形に大きく変形している気がするけど・・・。


「でも、『ソフトボール』なんて珍しいわね」

星さんが言ったのは、競技としてのソフトボールについて。


毎年、恒例行事として催される球技大会。

今年は、男子がバレーボールで女子がソフトボールなのだった。


「ホントに、何でソフトボールなんだろ・・・」

体育の授業でも、一度もやったことがなくて。

真理奈自身も、生まれて初めて参加する競技。


「バレーとかバスケなら、手の抜き方も慣れてるのに」

真理奈が本気を出せば、ネットを跳び越えるぐらいジャンプしてしまうし。

スパイクを打てば、ボールを破裂させつつ天井ホームラン。


しかし、バレーやバスケは、その気になれば遣り過ごすのは簡単だった。


バレーはレシーブに徹していれば良いし、バスケはコートの隅っこに居れば良い。

その場に居ながら、気配を消して参加しなけば良いのだ。


まあ、クラスメイトからはクレームを貰ってしまうけど・・・。

それも、クラスメイトたちの身の安全を鑑みれば、致し方なし。


野球やソフトボールに共通するのは、必ず順番が回って来るという部分。


打者なら、バットを振らないといけないし。

守備なら、ボールを捕って投げないといけない。


手を抜こうにも、初めて過ぎてコツすらわからない状態なのだ。


「キャッチボールでも、してみる?」

「良いんですか?」


「投球動作(フォーム)とかは教えてあげられないけど」

技術的には素人でも、発揮されるパワーは超人のそれ。

スーパー女子な二人同士でないと、キャッチボールも成立しない。


星さんが以前、そのスーパーウーマン振りを見せてくれた事があった。

明らかに慣れていない“女の子投げ”なのに、硬球で『360km/h』を記録。


「えい」

シュゴーッ、バシ。


「え、いっ」

シュバァッ、バシッ。


「すご・・・」

だいたい、『15m』ぐらい離れた位置で二人がキャッチボール。


ソフトボールの投手と本塁間の距離は、男子で『14.02m』、女子で『13.11m』。

野球だと『18.44m』と長く、ソフトボールの塁間距離がそれと同じぐらい。


今やってるキャッチボールは、球技大会を想定した距離・・・で良いのかな。


ヒュッ、ゴバッ。

ヒュォッ、バァンッ。


「「~~♪」」

「・・・・・」

パッと見は、グローブを嵌めた若い女子二人が。

覚束ない手付きで、ソフトボールを相手に向けて投げている・・・筈なんだけど。


ヒュバァッ!

シュバンッ!


「・・・・・」

ボールをリリースしてから、キャッチするまで。

その時間が徐々に早くなり、球速がドンドンと速くなっている。


普通なら、山ナリになりそうな投球動作(フォーム)から、弾丸ライナーが飛ぶ。

只でさえ空気抵抗が大きいボールなのに、硬球並の剛速球。


「今って、どのぐらい力入れてるの?」

「えー、と。半分ぐらい?」「私は、三割ね」

スーパー女子二人は、慣れて来たと言わんばかりに、顔だけこちらに向けている。

勿論、剛速球キャッチボールは継続したまま。


「ウォーミングアップ、だよね?」

「・・・ぁ。あー、うん」

真理奈の奴、目的を忘れてるな・・・。


「速く投げちゃ、ダメなんだっけ」

「ダメ、ではないけど・・・」

一般人レベルで速い球なら、全く問題ないんだけど。

明らかに、ピッチングマシンの最高速レベルな剛速球が飛び交っている。


ソフトボールの球速は男子が『130km/h』、女子だと『120km/h』辺りが最速。

それでも、体感速度は野球よりソフトボールの方が上だと言われている。


そういった“ソフトボール換算”を抜きにしても、メジャーリーガーレベル。


「もっと、スピード落とせる?」

「うーん、やってみる」

真理奈の返事は、何処となく覇気がなかった。

やりたくない、ではなく。やれなさそう、な感じ。


「え、っと。じゃあ、っと」

真理奈は、あくまで“遅いボール”の速度感の確認のつもりだったんだろう。

下手で、手首をクイッと返すようにして、ボールを放った。


シュッ・・・、バシ。


「あら、良い感じじゃない?」

ボールは、星さんの構えたグローブにスポッと収まった。


「・・・・・」

『15m』離れた状態で、下手投げどころか手首を返しただけのボール。

それが、変わらず弾丸ライナーで飛んで行った。


今になって、やっと気付いた。

真理奈は、“山ナリのボールが投げられない”のだ。


どんな投げ方をしようが、少なからず力を籠めざるを得ない。

そんな少し入れただけの力でも、常人の全力の数倍のパワーが発揮されてしまう。


球技大会でソフトボールをプレイするのは、クラスメイト女子も大半が初めて。

そんな輪の中に真理奈が入ってしまったらどうなるか、想像に難くない。


「折角だから、ピッチャーもやってみる?」

「え、良いんですか?」

僕の心配を他所に、星さんの提案で真理奈は投手も体験することになった。


「距離は、このままで・・・良いのかな」

「うん。良いんじゃない?」

超女二人が、キャッキャウフフしながら投手と捕手に早変わり。

とは言っても、星さんが捕手座りをしただけなんだけど。


「いつでも良いわよー」

「えー、っと。こう、だっけ」

真理奈が、見様見真似で下手投げ。


シュゴゥッ、バシィッ!


「・・・っ!?」

綺麗な、ど真ん中のストレート。


コントロールは偶々だとしても、速度は紛れもなく本物。

誇張なしに、投げた瞬間に星さんの構えたグローブに収まっていた。


シュッ、スバァッ!


シュィッ、ゴッ!


シュゴ、バァンッ!


「・・・・・」

僕はまるで、“椀子蕎麦”を見ているかのように誤解しそうだった。


真理奈が投げて、星さんがキャッチ。

星さんは座ったまま、直ぐに真理奈に返球。


これをワンセットとして、一分程で十セットは回転していた。


因みに、暴投も多かったけど、捕球漏れは一度もなかった。

どんなに逸れようが、星さんが座った体勢からジャンプして難なくキャッチ。


【スーパーガール二人の超人ベースボール】


みたいなタイトルで動画を投稿したら、即バズリしそう。

いや、むしろ合成とかの不正を疑われて炎上してしまうかも。


「・・・ん?」

何だろう。何か、臭う。


「何か、焦げ臭くないですか?」

「すんすんっ、そういえば」


「・・・これ、かな」

星さんが、グローブを広げて見せてくれた。


「・・・あ」

「焦げて、ますね・・・」

真理奈の剛速球を余さず受け続けたグローブは、捕球部分が黒ずんでいた。

ボールの回転の威力が余りに強過ぎて、革を擦って焦げさせてしまったのだ。


「私が、ボールを握り潰さないように力を抜いたせいかも」

星さんは、そう済まなそうに苦笑いした。


捕球した際、回転を止めるように力を入れれば、瞬く間にボールは握り潰されてしまう。

かと言って、ボールの回転力をグローブに任せれば、あっという間に焦げてお終い。


革が分厚いキャッチャーミットだったとしても、延命する時間が多少長くなる程度だろう。


「うーん。じゃあ、キャッチャーは“これ”に任せよっか」

星さんはいつぞやの『モノリス』を持って来て、片手間にドズンッと置いた。


『2m』四方で厚さ『30cm』、重さ『600kg』もある巨大な鉄板。

言うまでもなく、人間が扱える代物ではない。


「バッターって、どんな感じかやってみたかったの♪」

星さんは何処に用意していたのか、金属バットを持っていた。

更には、野球用のヘルメットまで被っている。


「バットは振らないけど気分だけは、ね」

『モノリス』の前に立つように、星さんは左半身を真理奈に向けて構えた。


「わかってると思うけど、ブツけても大丈夫だからねー」

「はーい」

打者がデッドボールどんと来いなのも、この二人だからこそ。

それでも、顔面に当たると危なそうな気もするけど・・・。


「じゃ、行きますね」

シュッ、ドガンッ!


「・・・あっ」

「っ!?」

早速、という程にいきなりだった。


頭部へのデッドボール。プロ野球なら、危険球で一発退場。

・・・なんて、レベルではなかった。


「「だ、大丈夫ですかっ!?」」

僕も真理奈も、慌てて星さんに駆け寄る。


「・・・?」

星さんは最初、僕たち二人が何を心配しているのか気付いていなかった。


「あー、うん。大丈夫よ♪」

星さんはニッコリと笑っている。


「ヘルメットは保たなかったみたいだけどね」

ソフトボールの直撃一発で、ヘルメットは粉々に砕けていた。

硬球を使うプロ野球でも、粉々になった、なんて話は聞いた事がない。


「真理奈・・・」

「・・・うん」

僕も真理奈も、考えている事は一致していた。


「“万が一”の事を考えたら、球技大会はやめておいた方が良いかも知れないわね」

「「はい」」

真理奈は学校生活で初めて、学校行事を辞退した。


Comments

感想、ありがとうございます。 野球ネタは温めていたんですが、旬を逃さない内に書いて上げたいと思っていたので、間に合って良かったです。

デアカルテ

超人女性たちの絡みが異次元過ぎてとても良いですね(^ ^)ヘルメットを粉々にする豪速球をものともしてない頑強さとても好きです!こんな女性たちが暴徒などを制圧していくところとか見てみたいですね...!!

Nogi_(°Д°)


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