前回(https://nuoonu.fanbox.cc/posts/6802745)のイリュージョン失敗をきっかけに仕事が無くなってしまうことを懸念していたマジシャン少女だったが、むしろ以前よりも公演の回数が増える結果となった。
しかし不本意極まりないことに、どの仕事もあの縄師との共演が絶対条件とのこと。事務所の社長が言うには「君の失敗はマニアックなファンの心に火を点けたようだ」だの「今後はセクシー路線で行く」だのと、とても納得のできる経緯でははない。あまつさえこの内容で全国を回ろうなどという計画を立て始める始末だ。
その日もまたマジシャン少女がキツく縛られ、脱出に失敗するというマジシャンとしての痴態を観客に晒すための仕事が与えられた。
舞台の上で共に立った縄師の女性が手際よく縄を巻きつけてくる。
「ふふっ、お似合いよ。あなたはそうやって一生縛られ続けるの。私の手によってね」
「むぐぅ!!」
猿轡で口を塞がれ、反論する余地も与えられない。股にまで通された縄が衣装越しにギュッと食い込み、支配する者とされる者の違いを知らしめようとしてくる。
「ん……ッ!」
「可愛い声。もっと喘いでみせて? お客さんも興奮してくれるわよ」
毎回毎回これの繰り返し。内容が内容だけにテレビの仕事は貰えない。もし貰えたとしてもマジシャンとしてではなく、ちょっとえっちなハプニングを好奇の視線に晒される不名誉極まりない場が与えられるだけだ。
いい加減この関係を終わりにして、以前のような天才と評判の美少女マジシャンに返り咲かなくてはならない。今日は特にその決意を強く胸に秘めていた。
「……あら?」
ある異変に縄師が声を上げた。
「なに? 聞いてないわよ、これ」
段取りではマジシャン少女だけを覆うはずだった巨大な布が二人ともに被さってくる。
すぐさま猿轡を外したマジシャン少女はカウントダウンを始めた。
「3……! 2……! 1……!」
「な、何!? んぐっ!?」
これで終わりだ。
「0!!」
布を取り払った時、そこには縛られた縄師が跪き、自由の身となったマジシャン少女の足蹴にされていた。
いつもと違う演出に静まり返った大勢の観客が、一瞬遅れて歓声を上げた。
「んむぅ!?」
「ビックリしました? 縄抜けと早縄の練習、苦労しましたよ」
マジシャン少女と本来のパートナーであるアシスタントに協力してもらい、何度も縛られては縄抜けし、手早く縛る練習を繰り返した。今では種も仕掛けも無しにこの脱出マジックを演じられるまでになったのだ。
「これからの公演は全部このネタでやるから覚悟してね」
縄師の肩がビクッと震える。
「言っておくけどやめるなんて許しませんから。うちの事務所とは5年更新の契約を結んだばかりでしょ? 勝手にやめたら山ほど違約金を請求させてもらうことになってるので」
「……!!」
簡単には逃がさない。客の反応も上々だし、この縄師への逆転劇を目玉にした公演で全国を回ってやる。
マジシャン少女は必死にもがいている縄師を足蹴にしながら、心躍る展望に期待を膨らませていた。
4wearemanytoo
2024-02-18 17:22:53 +0000 UTCユーリ
2024-01-22 19:46:50 +0000 UTCnyann
2024-01-21 16:35:40 +0000 UTC