股間の茂みからぶらさがる立派な陰茎と陰嚢を隠すことも忘れ、拳で涙をぬぐいながら男泣きを続ける巨人は、しばらくの間、足元に集まる市民の間に起きた変化に気が付かなかった。
「再び市民に告ぐ。巨人様への誹謗、中傷を即刻中止し、退去しなさい!」
威圧するような大きな声が響き、市民は騒然とした。声の主は迷彩色の制服を着用し、背後には数百人に及ぶであろう部隊、さらには戦車の隊列が控えていた。
「何だと?」「どういうことだーっ!?」。市民は声の主に怒声を浴びせたが、背後の戦車が空砲を打つといっせいに押し黙った。
巨人もようやく異変に気が付き、涙でぐしゃぐしゃの顔をぽかんと制服の男に向けた。
「・・・巨人様、このたびは当国の国民が大変な失礼を致しました」
制服の男は慇懃な声で、巨大な拡声器ごしに巨人に語りかける。
「あなた様の自慰行為を規制していた条例は、本日をもって破棄となりましたのでここに報告いたします」
巨人は何が起こっているか分からず、魔羅をさらけ出したまま、呆然と男の声を聞いていた。無意識のうちに、いつもの癖で包皮を指でつまみ、くるんと亀頭を剥き上げる。だが、数秒後には、生き物のようにゆるゆると元に戻る。その動きはなまめかしく、卑猥だった。
市民であれば怒り狂うであろう巨人の悪癖を目の当たりにしても、制服の男はまったくたじろがなかった。
「それはいったい、どういうことだべ・・・?」
巨人は包皮をいじりながら、ぼんやり口を開いた。
「はい、実はあなた様の放出する精液中に、きわめて貴重な物質が存在することが分かったのです。この物質はわが国の生命科学に飛躍的な進歩をもらたすものです。詳しくは国家の機密保持の観点から申し上げられませんが・・・いずれにせよ、太古の言い伝え通り、あなた様に私どもにとって、神であったのです」
「はあ・・・?」
「ともかく、あなた様は、今日から、お好きなだけ自慰行為に耽ってよろしいということです。ただ、放出した精液の一部を私どもに採取させていただければ・・・」
「それはかまわねえけんども・・・」
巨人は何がなんだか分からなかった。制服の男は、その後も慇懃だがどこか冷たい、事務的な口調で巨人に何事かを説明していたが、巨人には男が何を言っているのかさっぱり分からなかった。話を終えた制服の男は、巨人に敬礼した後、市民と戦車の隊列を引き連れ、巨人の前から姿を消した。
それから、里に変化が起こり始めた。