SS ひみつのアイプリ 青空ひまり、星川みつき
私立パラダイス学園中等部1年生の星川みつきは、次回予告で次は青空ひまりと共に無人島に流されると聞かされて不安を抱かずにはいられなかった。
「…………無人島から戻って来た時には、ひまりちゃんの赤ちゃんがこのお腹に宿っているかもしれない。ううん、きっと宿ってる」
訂正。期待に胸を躍らせていた。
みつきは無意識に下腹部を優しく摩っていた。妄想の中の彼女は、妊娠中であることが誰の目にも明らかな程にお腹が膨らんでいた。
みつきは大親友であるひまりのことを愛していた。そして、その愛はとても重かった。
みつきとひまりは共にアイドルプリンセス、略してアイプリが盛んな私立パラダイス学園中等部に進学。寮では同じ部屋で寝泊まりするルームメイトになっていた。
ひまりはアイプリの『ミーちゃん』に強い憧れを抱いてアイプリを本格的に始める気になったが、その『ミーちゃん』とはみつきのことだった。そしてみつきが『ミーちゃん』としてひまりに内緒でデビューしたのは、ひまりと共にアイプリを楽しむ為の予習だった。
みつきはアイプリを通じてひまりとの絆を深めたが、平穏な日々ではなかった。ひまりはかなりのコミュ症少女だったが、アイプリとしては天才的な才能を秘めていた。初ライブで、過去にほとんど成功した者がいない衣装チェンジであるバズリウムチェンジに成功。以降、絵に描いた様なサクセスストーリーロードを歩んで行き、高く安定した人気を誇るみつきを追い越していった。
アイプリを通じてひまりは無自覚にアイプリ少女たちを落としていく天然タラシぶりを発揮。みつきのハラハラは止まらない日々が続いた。特に天然不思議系アイプリ鈴風つむぎの登場はみつきを散々に苦しめた。つむぎと遊んだことを楽し気に語るひまりにみつきは心を凍らせた。つむぎにひまりを盗られるのではないかと散々に嘆き苦しんだ。
みつきはひまりとデュオを組んでいたが、アイドルグランプリに向けた練習方針の違いに苛立って解散を申し出た。2人の仲違いは深刻化したが、結局、第2回アイドルグランプリは喧嘩の原因の一つにもなっていたつむぎも加えて即席トリオで挑み、見事に優勝を飾った。
みつきのひまりへの愛は深く重い。一方でひまりはその愛についてよく気付いておらず、仲の良い友達としか考えていない。ひまりに嫌われたくないみつきも親友ポジションを肯定して誤魔化し続けている。
だが、夏休みに入り、青空家は家族旅行で星川家の海辺の別荘に泊まることになった。みつきは夏休み中にサプライズ的にひまりと共に一つ屋根の下で過ごすことになり、一緒に海で遊んだり、アイプリの試練に挑んだりしながらその重い愛情を滾らせることになったのだった。
「夏の海に来てひまりちゃんはいつになく大胆で開放的になっている」
「野獣と化しているひまりちゃんと無人島で2人きりになったら……襲われちゃうのは避けられない、よね♡♡」
みつきの頭の中では、2人きりの無人島というシチュエーションだけで、性欲を滾らせたひまりが襲い掛かってくる展開がナチュラルに展開されていた。
無人島に流れ着くとは聞いているものの、2人きりとはなっていない。クラスメイトの真実夜(まみや)チィも一緒にいる姿が映っている。だが、愛の重いみつきはチィの存在を脳内削除して百合の花が咲き誇る2人きりの楽園に変えていた。そして彼女はとても愛が重いのに反して誘い受けキャラで、ひまりに無理やり襲われる展開を熱望していた。
「ケダモノと化したいひまりちゃんを非力な私が諫めるなんてできるわけがない」
ひまりに怒るととても怖いと評されているみつきは熱弁を奮っていた。
「無人島では助けも来ない。ひまりちゃんに何度も何度も荒々しく身体を求められ、私は抵抗虚しく柔肉を貪られ続けてしまう。今日は危ない日なのと訴えても聞いてもらえない。無人島をようやく脱出した際に、私のお腹にひまりちゃんの娘がいても、自然の摂理的に何もおかしいことはないの……」
悲惨な体験(妄想)を語っている筈なのに、みつきの表情は崩れてニヤニヤしていた。
「妊娠が発覚した私はひまりちゃんの元にお嫁入りして苗字を青空に変えるの。その後もしばらくはアイプリを続けるのだけど、お腹が大きくなってきて限界を迎えるの。これ以上の活動はお腹の赤ちゃんの健康に響くとお医者様に言われて、卒業ライブを決意するの」
みつきは滔々と未来図について述べている。無人島漂着を知ってから何度もシミュレートして来たので淀みがない。
「ひまりちゃんの娘デキちゃった婚宣言と共に行われる卒業ライブ。どんなものにするのか今からしっかり考えておかなきゃ♡」
みつきは最高の笑顔で今回も妄想を締め括った。
「海楽しい~♪ 夏休み、最高~♡♡」
みつきが重い愛に浸る横で、ひまりは夏休みを満喫し続けていた。宿題のことを頭からすっかり忘れながら。