SSSばっどがーる 涼風涼 キュアアイドル
「それでね~♪ 今日も先輩は何とも神々しくてこの汚れた地上に降臨した女神って感じだったんだよ~♪」
秋のある日の放課後。涼風涼は幼馴染である優谷優と共に帰宅の途に着いていた。
優は学校を出る前から憧れの先輩である水鳥亜鳥の話題ばかりとても楽しそうに喋っていた。
「はいはい。パイセンは今日も凄かったんだねえ。良かったねえ……」
涼は適当な相槌だけ打って聞き流している。聞き流しているフリをしていた。だが、その内心は穏やかではなかった。
「何で、私以外の女の話ばかりするんだよ……」
亜鳥の話ばかりすることが涼には不満だった。優をただの幼馴染ではない、もっと特別な目で見ている彼女にとって他の女性で盛り上がる優を見るのは苦痛でしかなかった。
「私の愛妻くれあちゃんは天使♪ 異論は認めないよ~♪」
食い歩きしながら更に歩きスマホで通話している女子大生は、百合婚した嫁自慢を盛んに行っていた。
現代は結婚に関する制限がほぼ取っ払われたFree!婚時代。未成年の女子同士の結婚も決して珍しくない。だからこそ亜鳥に夢中になる優には嫉妬だけでなく不安もまた感じざるを得なかった。
「…………まったく、私の気も知らないで」
涼は陽気に亜鳥信者に務める優には聞こえない様に小さく舌打ちしてみせた。
空を見上げるとどんよりと曇っていた。
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「優の一番でいる為にはただ黙って座しているわけにはいかない」
帰宅後、涼はシャワーを浴びながら優との今後について考えていた。
涼と優は家を隣同士にして生まれた時からの知り合い。優にとって涼は姉妹にも等しい存在で、特別な間柄だった。だが、その特別は涼の望む特別とは意味が違っていた。涼にとっては姉妹ではなく夫婦が好ましい間柄だった。
「外見だけは完璧な亜鳥パイセンを上回る評価を得るには……私はただの涼風涼ではいられない。もっと目立つ、もっと凄い存在にならないと」
見た目のせいで怖がられがちだけど、密かに一部の女子から人気を博している女子高生。そんな現在地を越えてこそ優との関係を変えられる。そう考えて涼は密かに準備を続けていた。
「今日も、頑張らないとっ!」
涼は決意を新たにしながら拳をグッと握り込んだ。
夕飯を終えた彼女は優には気付かれない様に密かに家を出て駅へと目指したのだった。
***
涼が到着したのは音楽スタジオだった。それもバンド練習用のスタジオではない。
アイドルのライブステージを模した煌びやかな光に満ちているのが特徴のステージだった。
涼はピンクと白を基調としたフリフリ衣装に身を包んで大きく跳ねながら歌って踊っていた。その頭には今を時めく謎に満ちた人気アイドルであるキュアアイドルのお面が付けられていた。
「私とキュアアイドルは声が全く同じ。これを活かさない手はないっ!」
涼は学校や自宅で見せるやる気のない姿勢とは裏腹に懸命にライブの練習を行っている。その瞳は真剣そのものだった。
「優の隣に居続けるには私も特別な何かにならないといけない。優の目を惹けるもの。それはみんなの憧れであるキュアアイドルを置いて他ならないっ!」
涼の動きに一層のキレが加わる。熱い情熱が彼女を動かしている。
「優の隣は譲らないっ!! 私のアイドルはごっこじゃない。本気だからっ!!」
優を惹き付けて止まないアイドルになることを追い求める。幼馴染(♀)に憧れ続けた少女の決意だった。
「先輩がアイドルになっちゃったら……借金して破産するまで推し活しちゃう人生になるのは決まりだよね~♪」
亜鳥がアイドルになった姿を妄想してベッドの上を抱き枕ごと転がり続ける優。涼の情熱が彼女に届くのはまだ先のことになりそうだった。