SS かぐや様 白銀圭 暑い
「おにぃ……暑い。むしろ、熱い。エアコン、付けようよ……」
6月末の日曜日の正午過ぎの白銀家の居間。
JC妹妻の白銀圭は急に訪れた酷暑にダウン寸前だった。扇風機だけでは耐えられない高音を室内の温度計は示していた。
「だが、節約を旨とする白銀家では夏本番到来に備えて7月8月以外はエアコンを突けないという家訓がだな……」
「令和の夏の分布と一致しないでしょ、それっ! 6月から9月末までずっと暑いってのっ!」
圭は汗だくだった。
人妻ではあっても思春期の乙女。御行の様にトランクスにタンクトップシャツ姿で過ごすわけにはいかない。だが、服装に気を掛ける分だけ肌の露出は減り、兄夫よりも暑い想いをせざるを得なかった。
「ああ~っ! もうっ、服なんて着てられないってのっ!」
暑さへの我慢の限界を超えてしまった圭は大声を上げながら着ていたものを脱ぎ去ってしまった。ブラもパンツも脱いで文字通り全裸になってみせた。
「裸になって、暑さにも汗が溜まる不快さからもようやく解放された~♪」
乙女として大事なものを捨てた代わりに身体的な快感を得た圭は満面の笑みを浮かべていた。
「圭ちゃん……いくら家族しかいないとはいえ、女子中学生が居間で裸になるのはどうかと思うぞ」
母親役でもある御行は裸になった圭に苦言を呈する。だが、圭の行動を覆すには至らない。
「夫の為に妻がセクシーな恰好で誘惑してるんだから喜べば良いでしょ」
「暑くて脱いだだけの行動をセクシーな誘惑とは言わない」
「とにかく、家でおにぃしかいない時には私は裸で過ごすことに決めたの。この涼しさ、開放感。エアコン付けるよりも快適♪」
圭は家内で全裸でいること。すなわち裸族でいることに心地良さを覚えて抜け出せなくなっていた。
快適そうな表情を浮かべる妹妻を見て段々と心が揺れて行ったのは兄夫の方だった。
「くそっ! 段々とパンツのゴムの辺りに汗が溜まって気持ち悪さが……」
「脱いじゃえば?」
「いやいや。人としての最後のプライドは守らねば……」
喋りながら御行は自分の心が散り散りに動いていることを感じずにはいられなかった。
そんな兄夫を見て、圭は兄を裸族に誘う為の最後の一手を繰り出すことにした。
「じゃあさ、2人で一緒に水風呂に入ろうよ」
「水風呂、か?」
「そう♪ お風呂なら裸になってもおかしくないでしょ♪」
お風呂なら全裸でもおかしくない。圭は悪魔のささやきを御行にしてみせた。
「…………そう、だよな。風呂なら裸でもおかしくない。俺たちは夫婦なんだし、一緒に水風呂に入ってもおかしくない」
「そうそう♪ おにぃもまずはその汗ばんだ身体をどうにかしないと♪」
圭は御行の手を引いてバスルームへと移動していった。
「水シャワーって生き返る~♪」
圭は冷たい水を浴びながら涼を取っていた。
御行は沸かしていない水風呂に入ることで体のべたつきから解放されていた。
そして長い水風呂タイムが終わる。
「服を着ちゃうとまた汗がベタつくし。このまま裸でいようよ♪」
「…………そうだな。服を着ても結局は汗だらけになって洗濯物が増えてしまうだけだ。しばらく裸でいるか」
「うん♪」
兄の言葉に妹は嬉しそうに首を大きく縦に振ってみせた。
こうして令和の初夏に裸族な若夫婦が世田谷の地に爆誕したのだった。
了