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ファイトナイト 学校編外伝 体育館にて

※Pixivにて投稿中の「ファイトナイト 学校編③」にて、主人公A(梅崎あかり)が一般教室棟四階 3年4組教室で出会った『セミロングの茶髪の女』と、「ファイトナイト 学校編④」にて主人公Bが第一体育館で出会った『赤みがかった長い茶髪』の、体育館にて起こった喧嘩の話です。 『セミロングの茶髪の女』視点での描写になります。 〈午前1時00分〉 「第一体育館前」 ゲームが開始してはや一時間が経過したけど、私は未だに誰とも遭遇していなかった。 私のプレイスタイルとしては、ゲームの序盤では目立った動きはせず、他の対戦が終わったところに現れて負傷した勝者を狙い撃つ、いわゆる漁夫の利戦法というやつだ。 しかし生憎、今回のゲームではまだどの喧嘩とも遭遇していない。もう開始して一時間も経つんだから、きっと校内のどこかでは激しい喧嘩が行われているはずなのに。どうやら今日はツイていないようだ。 こうなってしまっては仕方がない。ただブラブラと校内散歩をするのにも飽きてきたし、最初の相手を探すことにしよう。私はそう思って、この第一体育館へとやってきた。 今回の給水ポイントは、この第一体育館の前に置かれた自販機のところだ。長いパイプ机の上にペットボトルの水が置かれている。 ファイトナイトでは、参加者は全裸が必須。不正を防ぐために持ち物の持ち出しは禁止されている。たとえ、ただの水でもだ。だから、参加者は水分補給をするために、必ずこの補給ポイントに来る必要がある。 つまり、ここで待っていればやがて誰かがやって来るということだ。 でもさすがに、夜風をまともに受けながらここで待つのは身体に悪いので、とりあえず風をしのぐために、私は扉が開いていた体育館の中へと入っていく。 最初は見間違いかと思った。でも体育館を歩き進み、ちょうど真ん中ぐらいにまでやってくると、それは確信に変わった。体育館のステージの上に、女が寝転んでいるのだ。 「ちょっとあんた!」 私は大声で呼びかける。ステージで寝転んでいた女は、ゆっくりと起き上がった。そして私を見つけると、立ち上がってステージを飛び降りる。そこでやっと窓から差し込んできた月光のおかげで、私は女の容姿を確認できた。私よりも少し赤みがかった長い茶髪で、それをポニーテールでまとめている。 女は言った。 「やっと来てくれた。誰も来なくて退屈してたのよ」 「ずっとそこで寝てたの?」 「そうよ。こんな広いとこ、歩き回るのめんどいから」 「そんなこと言って、無傷の相手とやる自信がないだけじゃないの」 自分だって漁夫の利を狙おうとしていたけど、それは棚に上げて私はそう挑発した。しかし女は一切表情を変えることなく、言い返してきた。 「どうせ私が勝つんだから、疲れるだけ無駄でしょ」 ・・・・なるほど。よほど自信があるようだ。まあ、それくらいの度胸が無ければ、このゲームに参加しようだなんて思わないだろうけど。 「じゃあ、私にも勝てる気?」 「そうなるわね」 「それは喧嘩を売ってるってことでいいのかな」 「こうして女二人が会った時点で、喧嘩は確定しているじゃない」 女はステージから飛び降りると、私へとゆっくりと近づいてくる。二階の窓から差し込む月光で照らされたその肉体は、しなやかでいて綺麗だ。ほのかに残された陰毛は丁寧に手入れされているようだ。だらしない奴かと思ったけど、女の比べ合いに関してはちゃんと準備しているようだ。 「なにでやりたいの」 私が聞くと、女は少しだけ考えてから言った。 「身体動かしたいし、殴り合いは?」 「いいね。私もちょうどその気分だったの」 「自信あるんだ」 「勝てそうな相手だしね」 「奇遇ね。私もそう思ってた」 にこやかに煽りながら、私たちは近づいていく。拳の届く距離まで近づくと、女は言った。 「一発、殴ってくれない?」 「は?」 「寝起きだからさ。目覚まさせてよ」 「それで終わりにならないといいけどね」 私は言いながら、右拳を固く握りしめる。本当にこの一発でノックアウトさせてやろうって気持ちだった。そして左足で大きく踏み込むと、大振りの拳を女の頬にめり込ませる。 女の顔が後方へと激しく吹き飛び、身体がぐらつく。そのまま倒れてしまえと思っていたが、女は数歩後退しただけで、立ったまま踏ん張った。 「やるじゃ──」 そう言い終える直前、左足で踏み込んできた女は、大振りの拳を私の顔面へとめり込ませた。鈍い打撃音が響き、視界がスパークする。気付けば倒れそうになっていた身体を、何とか足を踏ん張って堪える。口の中が血の味でいっぱいになった。 女は血交じりの唾を床に吐き捨てながら言った。 「あ~痛った。おかげで目が覚めたわ」 「・・・・殴り返してくるなんて聞いてないけど」 「殴られたな殴り返すのは、当たり前でしょ」 「・・・・なるほどね」 口元から垂れてくる血を腕で強引に拭い、私はファイティングポーズを取る。 「それじゃあ、これからは本番ね」 「ええ。楽しませてね」 女も拳を掲げる。そして私たちはぶつかり合った。 それから私と女は、一時間にも及ぶ殴り合いを繰り広げた。殴られたら殴り返す。そんな応酬を繰り返し、体育館の床は血と汗と抜け落ちた髪の毛で塗れた。 「・・・・おぇっ。気持ち悪」 膝に手を着きながら私は言った。床を見る私の視点は定まらない。今すぐにでも床に倒れたかったけど、プライドがそれを許さない。前に立つ女は、腰に手を当てながら天井を見上げて息を整えている。ポニーテールで結ばれていた女の髪は、とっくの昔にほどけてボサボサになっていた。 「あ~きっつ。やば。こんなの久しぶり」 私も女も、もう身体の至る所に痣や蚯蚓腫れがある。特に顔と乳は酷い。激しく殴り合った顔は見るも無残なほど腫れているし、乳は真っ赤だ。 「・・・・まだ動けんの?」 私は息も絶え絶えで言った。少しして女から返事が来る。 「・・・・正直きついかもね」 「私もよ・・・・」 「・・・・じゃあ、ここは引き分けで手を打つ?」 「引き分け?このゲームにそんなのないでしょ。勝つのは1人よ?」 「別に逃げるわけじゃないわよ。一旦、休憩を挟もうって言ってるの。・・・・そうね。4時頃になって、お互いにまだリタイアしていなかったら、ここに集合して決着を付けましょう」 ・・・・なるほど。悪い話ではなさそうだ。このまま殴り合いを継続しても、正直勝てるかわからない。一度時間を空けるというのは良い提案かもしれない。 「いいわよ。それじゃあ、4時ね」 「ええ」 「それじゃあ、それまでに私ら以外の女を潰してくるわ」 私は体育館の出入り口へと、とぼとぼとゆっくり歩き進める。 「私はもうちょっと休んでから、見回ることにするわ」 「そう。それじゃあ、二時間後にまた。必ず生き残りなさいよ」 「こっちの台詞。待ってるから、必ず来なさい」 「ふん。きっちり休んで待ってなさい」 私はそう言い残して、体育館を後にした。 この後、一般教育棟へと入り込んだ私は、その四階で長い黒髪の女と出会うことになるのだけれど、それはまた、別の話。


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