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日中美人娘闘争記②

中国人女性のお勧めの中華料理店へと向かう際に、彼女は自分の名が「李長宅(リーチェン)」であることを教えてくれました。そしてこれから合流する、私とそっくりの中国人の友人が「那那(ナナ)」という名前であることも。 姉とリーチェンは、その道中ですっかりと仲良くなったようでした。二人が楽し気に中国語で会話を弾ませている間、私はその後ろで退屈を感じながらただ付いていくことしか出来ませんでした。 案内された中華料理店は、この付近でも人気店として有名らしいのですが、お昼時を少し過ぎていたこともあって、並ばずに入ることが出来ました。 四人掛けの丸テーブルを座り、料理を注文します。少ししてテーブルに料理が運び込まれてきた時、店員とは違う、白いワンピースを着た若い女性がこちらへと近づいてくるのに気づきました。姉も気付き、その人の顔を見た途端、大きな歓声を上げます。 「凄いっ!似てるー」 姉の反応に気を良くしたリーチェンが、さらに大きく笑います。現れたナナはそれに笑顔で応えながら、私の方を見ました。 視線が合い、私とナナは、お互いに驚いた表情をします。目の前にいたのは、自分と瓜二つの人物なのです。特徴的な大きな目、すらりとした鼻、薄い唇などの顔のパーツもそうですし、黒のポニーテールという髪の毛すらも、何から何まで一緒です。身長や体格もほとんど同じで、双子の姉妹というよりは、まるで自分のクローン人間を目の前にしている気分でした。そう思ったのは、ナナも同じようでした。   私はとりあえず、会釈をします。ナナも同じように少し頭を下げて、空いていた私の隣の席に座りました。そこから姉の通訳を交えながらの四人での会話と食事が始まりましたが、その間も、私とナナはお互いの顔をチラチラと見合っていました。私たちはほとんど会話せず、とにかく相手のことが気になって仕方がなかったのです。   ナナの顔を見ている内に、なんだか私の心の中でモヤモヤとした感情が生まれていることに気が付きました。そしてそれは、ナナも同じようでした。お互いを見る眼が段々と細間っていき、いつしか見つめ合うというよりは、睨み合うという表現の方が正しいようなものになっていったのです。私はこの女とは仲良くなれないと思いました。   食事の後半に差し掛かると、ナナはリーチェンに何か言うと、私の方をチラリと見てから席を立ちました。姉に聞いてみると、どうやらお手洗いに行ったそうです。私も行くと姉に言い残し、私は席を立ちました。   お手洗いの扉を開けると、鏡台の前にナナがこちらを見ながら腕を組んで待ち構えていました。私は近くまで行き、同じように腕を組んでナナを睨みつけます。トイレには他に人はいないようでしたが、もしこの光景を見れば、とても驚いたことでしょう。白と黒の対照的なドレスを着た、まったく同じ容姿の女二人が睨み合っているのですから。   私もナナも、相手の言語を理解できません。それも承知の上で、私はナナに向かって言いました。 「ブス」 「婊子」 私が言った直後、ナナも何かを言い返してきました。内容は把握できませんでしたが、きっと、私と同じように相手を侮辱するような言葉を言ったというのは、ナナの表情から理解できました。   これは喧嘩になると、私は確信しました。   どうしてナナのことが気に食わないのか、上手く説明することはできません。同族嫌悪とでもいうのでしょうか。何から何まで一緒の人間が目の前にいると、その人よりも自分の方が優れていると証明したくなる、対抗意識のようなものが芽生えたのかもしれません。お互いの、自分の方が女として上だというプライドが、ぶつかり合っていたのです。   どちらが先に手を出すかの緊張感が、トイレの中のピリピリと漂っていました。そんな時です。扉の外から、数名の話し声がこちらに近づいてくるのがわかりました。私とナナは言葉を交わさずとも相手の考えを読み取り、咄嗟に一つの個室に入り込みました。   狭い個室の中で、小さく膨らんだ胸をぶつけ合いながら睨み合います。鼻先が触れ合い、相手の口から洩れた荒く熱い吐息が自分の口元に掛かり、脳みそに興奮のスパークを散らします。隣の個室に入った客たちに聞こえない様に、私はナナの髪の毛を掴んで頭を自分の方へとひき寄せると、耳元で囁きました。 「貧乳」   ナナも、私の髪を掴んで耳元に顔を近づけて囁きました。 「他妈的女人」 「雑魚女」 「丑陋的」 「間抜け面」 「笨蛋」 「クソビッチ」 「傻逼」   お互いに相手が何を言っているのかはわからないはずなのに、私たちは自分が罵倒されていることをほとんど確信していました。言葉を交わすたびに視線は鋭く、頬は怒りで赤くなっていき、罵倒する言葉の強さも大きくなっていきます。   もはや修繕は不可能でした。どちらが先に顔面に拳を叩きこむかは、もはや時間の問題です。しかし、この狭い個室では十分に戦うことは出来ません。騒動になって途中で横やりが入るのも避けたいです。   そう考えたのはナナも同じなようで、他の客たちがトイレから出た後、ナナは個室から出て、私を見て顎をクイッと動かしました。どうやら付いてこいと言っているようです。 「上等」   私はそう言って、ナナに続いてトイレを出ました。


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