魔物使いの卒業試験 “ 魔物を使うか、使われるか ”
Added 2024-02-02 15:00:00 +0000 UTC《 ーーー これは “始まりの魔女” と、それが起因して誕生した私たち “災厄の世代” の物語である ーーー 》
ここは人と魔物が “矯正し強制的に共生する” 世界。
この世界では頂点に君臨する人類が、様々な種族の生物を矯正し、“使役” して暮らしている。
そして私が今いる場所こそがその出発点とも言える学園都市セレン。
各地から多くの学生が集まり・学び・成長し、そして “旅立っていく” 。
学園都市であるからには “旅立ち” と言えば “卒業” のことを指し、そのために必要な過程として “卒業試験” が存在する。
「コレクション!!!」
毎年行われるの卒業試験では『矯正魔法:correction - コレクション』を用いて、対する魔物を自身に従わせることが出来れば合格となる。
その魔物は使い魔として生涯を共にし、奴隷のように扱うことが許されている。
使い魔を持つことこそが一人前の “人間” である証であり、そうしてようやく人生が始まるのだった。
「グゴゴォォォォオオオ……」
「やった! 成功だわ!!」
今年の受験数は108名で、“卒業も108” であった。
この結果からも分かると思うが、卒業試験とは名ばかりで『集まり・学び・成長し、そして旅立っていく』とあったように、“毎年全ての生徒が卒業する” 。
「合格おめでとう」
「ありがとう…でも、本当はもう少しランクの高い使い魔が良かったなぁ……」
どうして全ての生徒が卒業できるのか。
その理由の “一つ” に、試験に用いられる魔物にはランクがあり、その中から自分に合ったランクか “それ以下” のランクの魔物を “受験者が” 選べることが言えるだろう。
しかし “もう一つ” 、そして最大とも言える理由が存在する。
「その気持ちは分かるけど、私も “安定を取って” 適性より下のランクを選んだし……」
「…そうだよね。もし “失敗” したら……」
全ての生徒が卒業できる。
しかし全ての生徒が合格というわけではなく、“不合格者” も居るのだ。
矯正魔法は其の実、一方的に主従契約を結ぶ魔法では無く、“強制的に契約を強請する魔法” なのである。
“強制” なのに “強請” とは矛盾しているように感じるが、そもそも矯正魔法などと言うデタラメな事象の前ではこの程度の矛盾などあってないようなもの。
その上で敢えて説明を加えるなら、このデタラメな事象を成立させるためにはまず、相手を契約の場に立たせることを強制する必要があり、それから強請すること……詰まるところの主従契約が “叶えば” 矯正魔法は成功となる。
ここで卒業試験に話を戻すが、試験の合格とはこの成功をさし、成功とは魔物を魔法により矯正し服従させることをさす。
矯正されたモノにはその証として、魔力によって編まれた “首輪と鎖” によって物理的かつ世界の理によって縛らる。
対象が失われるまで効力を発揮し続けるこの矯正魔法は、上から下への魔法であり自身より弱い者へしか効力が無い。
それどころかこの世界における魔法は一種の呪術であり、呪いは失敗すれば己に返ってくるのだ。
そうであれば自身より強い魔物に放たれた魔法は我が身に返り、魔物より弱いとされた術者は……。
この年、人間として卒業を迎えたのは107名で、人間を卒業したのは1だった。
ーーーーー
試験の様子は、後学のために在校生の見学が許されている。
自分の時に備えて試験の流れを見ておいたり、卒業する先輩の “勇姿を” その目に収めたりと、実際にはただ矯正魔法をかけるだけでなく、見どころ満載の卒業試験は学園都市における一大イベントであった。
「はあぁぁぁあああっ! ふんっ! やあっ!! どりゃーーーっ!! ……そろそろいけるかしら…コレクション!!! …よし、成功ね♪♪」
「「「 うおぉぉぉぉぉ!!!!!! 」」」
死闘の末、見事自身よりもランクの高い魔物を従えた卒業生に会場から歓声が上がる。
このように、ただ矯正魔法を使うのではなく魔物を弱らせてから使うことで、高位の使い魔を獲得することも可能なのが “見どころ満載の一大イベント” と言われる所以なのであった。
「いよいよ最後、あの方の番よね?」
「学生会長のリ-ス様ね」
文武両道に才色兼備、実力によって選ばれてきた歴代の学生会長の中でも抜きんでて優秀な彼女の卒業試験には多くの在校生が集まっていた。
だからこそ、この場にいる誰しもが信じて疑わなかった。
《 ーーー 彼女が選択するのは最高位であるSSSランクの魔物だということを ーーー 》
「「「 きゃーーーーーっ///// 」」」
試験会場に響き渡った黄色い歓声。
それは本日の主役、リースの登場をおいて他にないだろう。
「リース様…今日もお美しいなぁ……それはさて置き、どんな魔物を使い魔に選ぶのか楽しみね」
「リース様ならドラゴンか、はたまたゴーレムか」
「…ダークエルフだってありえると思うわ」
期待のあまり次々と予想が立てられ、会場の盛り上がりは最高潮を迎える。
しかし次の瞬間、興奮冷めらぬこの状況がいつまでも続くと思われた会場の空気が一変した。
「あれは何? オーク?? じゃないよね???」
「…オークにしては小さすぎる……まさかゴブリン?」
リースと会場を埋め尽くす在校生の前に現れたのは “なんの変哲も無い”、この世界では “数だけが取り柄” の、個では “最弱の種族” とされる “ゴブリン” だった。
「数百、数千のゴブリンなら盾や陽動に使えるかも知れないけど…」
「確かに高い繁殖力を活かせば使い捨ての雑兵として無限に……」
「もしかしたらユニークスキル持ちの特殊個体なのかも………」
ざわついている状況こそ同じだが、先ほどまでの雰囲気とは打って変わって会場を包む空気は重い。
それでも在校生は、リースが “ただのゴブリンを選ぶはずがない” と、飲み込めない現実を処理するための理由を探していた。
「…すぅぅぅ……我が名はリース。リース・フォン・キリシュタイン……皇族キリシュタイン家が一人であり、歴代最強の学生会長である」
そんな重たい空気を吹き飛ばしたのは、他の誰でもなくリース本人の名乗り口上であった。
いつも通りの強勢を保ち、凛々しい姿のリースを見て落ち着く試験会場。
しかし “続く言葉によって” この場は一瞬にして凍りつくことになる。
「だがそれは、今日この時までの話だ。…さようなら……」
突如リースの口から発せられた “別れの言葉” 。
「今なんて言ったのですか?」
「さようなら?」
「どういうことだ?」
「聞き間違いじゃないの?」
会場に再び流れる異様な空気。
「コレクション!!!」
その最中にリースから放たれる矯正魔法。
対象となるのはもちろん、最底辺の “Dランク” と評された “雑魚ゴブリン” しか存在しない。
そうであれば結果は、いくらこの場にいる在校生の頭が混乱しているとは言ってもはっきりと出ていた。
……はずだった。
瞬きすら許されぬ刹那ののち、両手両膝を地面につき頭を垂れていたのはリースである。
「…嘘よね?」
「そうよ、何かの冗談に違いないわっ!」
「それにしては悪い冗談すぎるし、何より “あれが” ……」
魔力で編まれた枷は、世界の理によって契約の履行を強制する代物であり、矯正魔法の効力が失われるその時まで消えることはない。
そして今、リースの首には矯正されたことを示すその首輪が嵌められており、そこから伸びた鎖はゴブリンの手に握られていた。
「我が身は卒業を果たし、今や人の子では無くなった。どうぞ、ゴブリン “様” のお好きなようにお使いください」
目の前の状況とリースの言葉が、これを現実だと物語る。
「…でもどうしてリース様のコレクションはゴブリンに効かずに返ってきたの? リース様ほどの実力があれば “あんな低能の” ゴブリンなんかより下のはずがないわよね……」
その疑問は全ての在校生が持っていただろう。
「しかし矯正魔法は多くの意味で絶対のはず……だとすれば、あのゴブリンの方が強いということ。そしてリース様はもう…」
過程はどうあれ結果は変わらず、事実として残るのは眼下に広がる現実のみ。
盛り上がりもざわつきもそこにはなく、ただ茫然と “ゴブリンとその使い魔になったリース” を眺めることしか出来なかった。
「いかがいたしましょう? 最初のご用命は? あ、人でないので服を脱いだ方がいいですよね?」
多くの人が見ている前で、言葉通り人目を気にせず裸になるリース。
また、裸になったリースの体にはいくつかの印が刻まれていた。
「…あれは淫化の……」
「…弱化の淫紋もあるわ……」
「…リース様がああなったのってもしかして……」
リースの体にあった印は、自らに掛けたと思われるバッドステータスの数々であった。
肌だけでなく、自ら秘密を晒したリースだったがそれすらも気にする様子はない。
なぜならリースにとって意味のあるのは “これまで” より “これから” なのだ。
「使い魔になった者の服ですが高く売れると思います。私はゴブリン様の物ですので、この服もゴブリン様の物です。他には何をすればよろしいでしょうか?」
使い魔として自身だけでなく、自身の所有していた無意味な服もゴブリンに差し出す。
しかし、数が取り柄のゴブリンにとっても服やお金などは無意味なもので、意味あることは “子孫を増やすこと” だけである。
そのためこの種族は、こと “強精” において長けており、メスであれば種族を問わず苗床として利用する習性があるのだった。
「キシャーーーッ!!」
「きゃっ/// そんな強引にっ/////」
「キキーーーッ!!!」
「分かっております/// すぐに “そちらの” お世話を致しますっ♡♡♡ ……でかっ♡♡♡ いいえ、ご立派ですっ♡♡♡ はいっ♡♡♡ 入れますねっ♡♡♡ ……あんっ♡♡♡ あんっ♡♡♡ あんっ♡♡♡ あんっ♡♡♡ …もっと大きくなって♡♡♡ 出してくださいっ♡♡♡ …んんーーーーっ♡♡♡ …えっ♡♡♡ また膨らんでっ♡♡♡ …くぅぅぅ♡♡♡ …はぁんっ♡♡♡ はぁんっ♡♡♡ …しゅきっ♡♡♡ しゅきなのっ♡♡♡ ゴブリンち〇ぽっ♡♡♡ さいこぉぉぉぉおおお♡♡♡」
高らかに嬌声を上げるリース。
想定外の出来事に在校生と同様の衝撃を受けていたであろう教師たちが、ここにきてようやく事態の収拾に動き出す。
「解散、解散だっ!」
「今年の試験はこれにて終了ですっ!!」
「在校生は速やかに会場を…」
皇族が使い魔に落ちたと言うだけでも、事の重大性をうかがい知るには十分であるが、それに加えて自らに印を刻み “わざと” 人を卒業し、さらには嬌声を上げてゴブリンと交わる姿を恥ずかしげもなく披露しているのだ。
これだけの目撃者がいるのだから、その事実を隠すことはもはや不可能である。
それでも不足に次ぐ不足の事態の数々に、これ以上 “何かが起きてしまう前に” と行動した教師たちだったが、判断が遅すぎたと言える。
「…リース様が犯れているわ……」
「メスであれば何だって構わない低俗なゴブリンに、高貴なリース様が…」
「…でもリース様……気持ちよさそう…」
「リース様という特別な対象じゃなくて、まるで物のように扱われて…」
「どうしてリース様は矯正されて強制的に、強精したゴブリンに襲われてるのに嬌声を上げていると言うの?」
「クールで知的なリース様があんなになってしまうんだし、もしかしたら凄いのかも?」
「…凄い……それは気になる…」
会場の在校生は “憧れ” であったがゆえに、リースの変わり果てた姿にも興味津々であり、教師の指示など耳に届かず、その場に止まってしまったのだ。
リースの処遇、在校生のケア、世間への対応、そして今後の学園都市など、全ての事が片付いたのはそれからしばらくの時間を要した。
皇族でも人でも無くなったリースは規定通り “卒業” して学園都市から旅立ったが、それだけでなく国外にも追放された。
皇族の顔に泥を塗り、学園都市・在校生・世間を混乱に陥れたリースを国内に残しておく事はできないという判断である。
また在校生は学生寮でしばらくは休養し、復帰が可能な者から学園で再び学ぶことになった。
学園都市は徐々に機能を回復し、これまで通りの役割を果たすようだ。
ーーーーー
学園都市とは、各地から多くの学生が集まり・学び・成長し、そして “旅立っていく” 場所である。
それが機能と役割であるなら、卒業試験を行わないわけにはいかない。
あの事件から1年が経ち、再び卒業試験が開かれる。
空には凶星が輝き、地上では嬌声が響く。
「触手、触手すごいのぉぉぉ♡♡♡ お尻から入ってお腹にっ♡♡♡ 喉まで上がって来て…おえぇぇぇ……♡♡♡」
「あ〜〜〜〜♡♡♡ オーク様ぁ♡♡♡ その筋骨隆々の腕で殴ってぇぇぇ♡♡♡」
「服も髪も肌も骨も溶けてく……食人カズラの血となり肉となり養分となり…ずっと一緒っ♡♡♡」
「わ、私は皆のようには屈しないぞ。いくら誘惑したって……はぁん♡♡♡ 私が愚かでしたぁ♡♡♡ 謝ります、謝りますからっ♡♡♡ ごめんなさいっ♡♡♡ サキュバス様ぁ♡♡♡ イかせて、イかせてください♡♡♡」
「一年待った。これがゴブリンの…ゴブリン様の…… “始まりの魔女” を落としたおち〇ぽ、様♡♡♡ じゅぽっ♡♡♡ じゅぽっ♡♡♡ じゅぽっ♡♡♡ んっ♡♡♡ 苦い、けど癖になる♡♡♡ 今度はこっち♡♡♡ ん"ん"ーーーーーっ"♡♡♡ 全然違うっ♡♡♡ 思ってた以上の衝撃っ♡♡♡ これはダメっ♡♡♡ いえ、ダメじゃないっ♡♡♡ もっと♡♡♡ もっとちょうだいっ♡♡♡ あぁぁぁぁぁあああああんんんっ♡♡♡」
この年、試験を受けた全員が人間を卒業した。
始まりの “魔女” 。
それは優秀な “魔法使い” であり、“魔物の女” になったリースのことである。
“始まり” の魔女。
それは私たちが人を卒業することになった “きっかけ” の魔女である。
のちに私たちは “災厄の世代” と呼ばれ、始まりの魔女をトップに据えた学園都市は、魔物が人を “矯正し強制的に共生する” 場となった。